先々週のこのコーナーでリゾート・フィーの話題を取り上げたところ、ホテル選びに関する問い合わせが数件寄せられた。
宿泊料金に占めるリゾート・フィーの割合が大きくなっているだけに「リゾート・フィーの内容を知りたい」といったものもあったが、基本的にはどれも「どこのホテルにしたらよいのかわからないのでアドバイスを」といった内容だった。
しかしその質問に対する答えはむずかしい。ホテルに期待する内容が人それぞれちがうからだ。そもそも予算が異なれば選択肢も大きく変わってくる。
できるだけ安いほうがいいという人もいれば、ある程度はゴージャスでなければイヤだという人もいる。深夜まで出歩きホテルは寝るだけなので立地条件さえ良ければグレードなどどうでもいいという人もいれば、駐車場の近さが絶対条件だという人もいる。
本来ホテル選びは旅行前の楽しみのひとつなので、各自であれこれ研究しながら決めてもらいたいところだが、初めてラスベガスを訪れる人にとっては、どこのホテルを選んだらよいのかわかりにくいのも事実。
特にベガスのホテルはそれぞれがテーマを持っているなど個性豊かなため、それがなおさらホテル選びをむずかしくしているかもしれない。
そこで今週は、ホテル選びに悩んでいる読者のために、「目的別のホテル選び」という形で、独断で数件ずつ推奨ホテルをピックアップしてみた。異論もあると思われるが、あくまでも当サイトの勝手な意見ということを承知の上で、お役に立てて頂ければ幸いだ。
【 一般的な旅行の場合 】
予算にゆとりがある場合は、ベラージオかコスモポリタンが無難だろう。宿泊料金は高いが、ホテル街の中心地にあり、バス停などにも近く利便性は抜群。
この2つのうちのどちらにするか迷った場合は、ゆったり派はベラージオ、活動派はコスモポリタンにするとよい。
なぜならコスモポリタンは客室からストリップ大通りに出るまでの距離が非常に短く(特に Boulevard Tower と呼ばれる東側の棟。上の写真内の左側の建物がそれで、右側は Chelsea Tower、手前はベラージオホテルの噴水)、ベラージオはその逆で、距離が長いからだ。
つまり宿泊ホテルからひんぱんに街に出たり入ったりする場合は断然コスモポリタンのほうが便利ということになる。なお、館内はベラージオのほうがゆったりしており、客室はコスモポリタンのほうが総じて広い。
同じ高級路線でも、シーザーズパレスは館内の構造が複雑で使い勝手に難があるので避けたいところ。ウィン、アンコールは中心街から離れすぎているため何かと不便。ベネチアンとパラッツォもやや北に位置しすぎているきらいがあるが、泊まって後悔するようなホテルではない。
宿泊料金をやや落としたい場合は、パリス、プラネットハリウッド、モンテカルロなどが人気。ミラージュも悪くない。建設時期が古いため部分的に老朽化した部分が散見されるが、フラミンゴやバリーズも立地条件的には申しぶんない。ただしバリーズは館内からストリップ大通りに出るまでの距離がやや気になる。
【 新婚旅行 】
やはり予算にゆとりがある場合はベラージオかコスモポリタンが無難。
予算をやや切り詰めたい場合はミラージュ、パリス(写真)、プラネットハリウッドなどがおすすめ。フラミンゴやバリーズは築年数が古いため、ゴージャス感を大切にしたい新婚カップルには不向きかもしれない。
なお新婚旅行といえば、いろいろな人にみやげを買う必要に迫られたりするものだが、もしそういったショッピングにかなりの時間を費やす予定の場合は、みやげ系の商品が豊富な ABC Stores が館内にあるプラネットハリウッドがなにかと便利で、Walgreens にも非常に近い。(Walgreens とは、全米規模の薬局も兼ねたドラッグストア系の大型コンビニといった感じの店で、ラスベガスの店舗ではみやげになるような商品も多数取り扱っている)
【 学生旅行 】
必ずしも「学生=予算にゆとりがない」とは限らないが、あくまでも「学生=貧乏旅行」という前提で語るならば、エクスカリバー、トロピカーナ(写真)、フーターズなどが安い。
ストラトスフィア、SLS は、たとえ安くても立地条件的に避けたいところ。街の中心街へ出るための交通費(バス代やタクシー代)がかさんでしまい、結局、高くなってしまうからだ。また、移動のための体力と時間の無駄を考えると、安い宿泊料金のメリットはほとんどない。
【 長期滞在・自炊派 】
ゴージャスなレストランが多いラスベガスでの食事は決して安くない。また食費もさることながら、長期滞在していると、カップ麺、レトルト食品、フリーズドライ食品、缶詰など、日ごろ食べ慣れているものを食べたくなったりするもの。
その種の食品をベガスに持ち込む予定の人にとって便利なのがキチネット(簡易キッチン)や電子レンジの存在で、それらはトランプ、ヴィダラ、ポロタワー、ヒルトン・グランド・バケーションズのフラミンゴ、オンザストリップ、エララ(写真上)、などにある可能性が高い。部屋によってはない場合もあるので、念のため予約の際にそれらが客室内にあるかどうか確認するとよいだろう。
なお、上記の各ホテルの中では立地条件や利便性という意味でエララが断然おすすめ。ポロタワーも立地条件は申しぶんないが、エララは屋外に出ることなしに ABC Stores など食材を売っている店にアクセスが可能だからだ。また同じく食材などが豊富な Walgreens にも近い。
【 ショッピング重視派 】
ラスベガスのホテル街には大小さまざまなショッピングモールが存在しているが、その中でも突出して大きいのがファッションショーモール。
シーザーズパレスとミラージュの間にあるフォーラムショップスと、ベネチアンとパラッツォの間にあるグランドキャナルショップスがそれに続く。
ひんぱんにショッピングに出かける可能性がある場合は、これら3つのモールのほぼ中心に位置するベネチアン(写真)、パラッツォ、ミラージュ、トレジャーアイランドなどが便利。
なお、一般のショップではなく高級ブランド店限定の「クリスタルズ」(アリアホテルに隣接するモール)やベラージオホテル内のモールなどが目的の場合は、ベラージオ、コスモポリタン、プラネットハリウッドなどが近い。ちなみにプラネットハリウッドには一般店のモール「ミラクルマイル」も館内にある。なおアリアはクリスタルズに近くても、ストリップ大通りからかなり奥まった場所にあるのでなにかと不便。
【 子連れファミリー 】
子連れファミリーであればサーカスサーカス(写真)かエクスカリバーで決まりだろう。
一般的にラスベガスのホテルは、カジノが重要な収入源になっているため (一昔前と比べるとカジノ収入の比率は相対的に下がってきているが、それでも経営の大黒柱であることに変わりはない)、もともと未成年者の宿泊は期待していないし、想定していないし、そのための準備もほとんどしていない。
そんな中、サーカスサーカスとエクスカリバーは子連れ大歓迎のスタンスを明確にしており、その受け入れ体制が整っている。(大規模な子供向けのアーケード・セクション、つまり日本でいうところのゲームセンターもある)
特にサーカスサーカスは乳幼児など、かなり低年齢の子供にまで守備範囲を広げているので、レストランなどでもあまり周囲を気にせず乳幼児同伴で利用することができ、親の精神的な負担も少なくて済む。実際にサーカス・サーカスの宿泊者の大半は子連れファミリーで、ロビーなどに行くと子供の多さにビックリするはずだ。
ただ、サーカスサーカスは北に位置しすぎていることも事実。つまり中心街からかなり離れている。ではこのホテルをどのように評価すべきか。それは、その地理的なマイナス点と、子供にやさしいというプラス点のバランス感覚で判断するしかないだろう。もし地理的な部分を重要視するのであればエクスカリバー、子供にやさしい部分を重要視するならサーカスサーカスというのはどうか。
なお、どちらのホテルも館内のバフェィにおいて子供料金がハッキリ設定されていることは子連れ族にとっては非常にうれしい。(ほかのホテルの場合、「3歳以下無料」などとしているだけで、子供料金を設けていないところが多い)
以上の2つのホテル以外に、まったく別の観点から気になるホテルをひとつ挙げると、それはフラミンゴだ。ただし、このホテルはサーカスサーカスやエクスカリバーのように子連れファミリーをターゲットにしているわけではない。むしろ、アダルト向けのバーレスク系のショーを開催していたり、館内のいたるところにバーがあるなど、他のホテルと同様、おとな向けのホテルといってよいだろう。
しかし考えようによっては子連れ族にとって使いやすいかもしれない。その理由は、3000部屋を超える大規模ホテルであるにもかかわらず、すべてにおいて移動距離が少ないという館内の物理的な構造と、中庭の存在だ。
フロントロビー、エレベーター、レストラン、カジノ、プール、そしてストリップ大通りとの位置関係が、他のホテルと比べて総じて移動距離が少なく、何かと荷物が多くなってしまいがちな子連れファミリーにとっては負担が少ない。
そして中庭には、鯉などの魚や鳥類を飼育している簡易動物園のようなくつろげる場所があり、またその位置関係も非常によく、子供を退屈させない施設が充実している。世界最大級の観覧車「ハイローラー」にも近い。というわけで、第三の候補としてこのフラミンゴをおすすめしたい。
なお駐車場は位置的にも内容的にも便利とはいえず、レンタカー族にはまったくダメだ。またサーカスサーカスやエクスカリバーとは異なり、レストランで子供が騒いだりすることに対する寛容性が高くないことも知っておくべきだろう。
【 レンタカー族 】
大自然観光や郊外のショッピングモールなど、レンタカーを利用して宿泊ホテルから頻繁に出たり入ったりする予定の人は、外の道から駐車場へのアクセス、駐車場から客室へのアクセス、高速15号線へのアクセス、そして駐車場そのものの利用のしやすさなどを考慮したいところ。
どこのホテルも一長一短あるので優劣をつけにくいが、総合的に考えると、混雑しやすいストリップ大通りを使わずに高速道路にアクセスでき、なおかつ駐車場の構造も悪くないトレジャーアイランドとニューヨーク・ニューヨーク(写真)が便利かもしれない。
モンテカルロも裏道を使って出入りできるが、現在おこなわれているアリーナの建設工事による交通規制などが気になるところ。シーザーズパレスも裏道利用が可能だが、駐車場そのものの構造やエレベーターの位置に難があり使いづらい。
一方、ストリップ大通りを使う必要があるものの、駐車場の構造や館内との位置関係から意外と使いやすいのがベラージオとウィン。ただしウィンは、徒歩で街に出る場合のことを考えると北に位置しすぎているので、できれば避けたい。同様にマンダレイベイ、ルクソールも南に位置しすぎ。
穴場的な存在なのがエララだ。プラネットハリウッドホテルの巨大な駐車場の南端側に駐車すると、エララの裏口に直結する形ですぐに館内に入れて、なおかつ客室へのエレベーターも目の前にあり超便利。
なお、駐車場と客室がほぼ直結していたため、かつてはレンタカー族から圧倒的な支持を得ていたバーバリーコーストは、クロムウェルに改装・改名された今、駐車場の位置が移動してしまった上に、セルフパーキングではなくなったため(バレーパーキングのみになった)、かつての利便性はほとんどなくなっている。
【 コンベンション族 】
コンベンションへの出展や見学のためのビジネス出張族は、そのコンベンションが開催されている場所から最も近いホテルに宿泊するべき。
なぜなら、大きなコンベンションの場合、タクシー乗り場や道路が非常に混雑するため徒歩で会場にアクセスできることが重要になってくるからだ。
参考までに、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)を始めとする巨大イベントは、ウェストゲート(かつてのラスベガスヒルトン)、ベネチアン、マンダレイベイにそれぞれ隣接するコンベンション施設で開催されることが多い。
なおラスベガス・コンベンションセンター(ウェストゲートに隣接)で開催されるイベントの場合、モノレールでのアクセスが可能なため、モノレールの駅があるホテルも宿泊候補地として検討するのも悪くない。それに該当するのはフラミンゴ、ハラーズ、リンク、バリーズ、MGMグランド など。
【 路線バス多用派 】
ストリップ大通りにはたくさんのカジノホテルが軒を並べているが、文字通りの「軒を並べる」といった感じをイメージすると大まちがいで、となり同士のホテルの距離は近いように見えてかなり遠い。
そのため徒歩での移動に疲れ果て、タクシーや路線バスを使うことになりがちだ。
幸いにも路線バスは「1日乗り放題 $8」、「3日乗り放題 $20」などの乗車券を発行しており、タクシーと比べると金銭的な負担は少なくて済む。
したがって、宿泊ホテルからさまざまな場所へ何度も移動することが予想される場合は、バス停の位置をホテル選びの際の重要な要素として考慮すべきだろう。
バス停に近いホテルはずばり、パリス、プラネットハリウッド、ベラージオ、コスモポリタンの4ヶ所だ。
なぜなら路線バスには、各バス停に停車する2階建てのバス DEUCE(写真上)と、複数のバス停を通過する急行路線の2連結バス SDX(写真)があり、DEUCE と SDX の両方の、なおかつ北行きと南行きの両方の路線のバス停に近いのはこの4つのホテルだからだ。
なおウィンの前のバス停にも急行路線が停車するので上記4ホテルと同じような条件にあるが、いかんせんホテル自体が北に位置しすぎているため、徒歩での移動を考えると不便感は否めない。
【 ギャンブル重視派 】
宿泊ホテルにこもって朝から晩までカジノで過ごす者にとってはロケーションや交通事情などあまり重要な要素ではないはずだ。よって、自分がプレーするゲームのルールなどの条件が良いところを選べばよいだろう。
なお大して重要な要素ではないが、しいてあげればプレーヤーズカードの利用可能範囲という意味で、系列ホテルがたくさんあるホテルを選んだほうがよいかもしれない。
プレーヤーズカードとは、各カジノホテルが、航空会社のマイレージカードや家電量販店などのポイントカードと同様、その顧客のカジノでのプレー実績に応じて、各種割引や特典、さらにはキャッシュバックなど、さまざまな還元サービスをおこなうために発行しているカードのこと。
ちなみに各カジノホテルでは、そのプレーヤーズカードに独自の名前を付けていることが多く、たとえば、MGM Resorts 社系列のカジノホテルでは「M life Card」、同様に Caesars Entertainment 社系列のカジノでは「TOTAL REWARDS CARD」という名称で利用客に発行している。
プレーヤーズカードの取得は簡単で、各カジノホテルのカジノフロア内にある専用窓口に出向き、簡単な用紙に必要事項を記入し、写真付き身分証明(一般の観光客はパスポート)を提示すれば、その場ですぐに発行してもらえる。もちろん手数料や年会費などは一切ない。
利用方法も特にむずかしいことはなく、たとえばスロットマシンなどをプレーする際に、そのマシンに用意されている専用挿入口にカードを差し込みプレーするだけでよい。プレーしている間の投入金額やプレー回数などが自動的に記録されポイントとして貯まっていく。
ブラックジャック、ルーレット、バカラなどのテーブルゲームをプレーする場合は、プレー開始時に現場のディーラーにカードを提示しておけば、退席時に、ディーラーもしくはピットボスと呼ばれる現場の責任者が、平均的な賭け金やプレー時間を端末機器に入力してくれる。
なお、これまで長い間、このプレーヤーズカードは、カジノでのプレーだけが対象だったが、最近は宿泊や館内のショップなどでの利用もポイント加算の対象となるホテルが増えてきており、利用範囲が広がりつつある。
また、レストランやナイトショーなどにおいて、「プレーヤーズカードを提示すれば1割引」といったサービスも見かけるようになってきた。
ちなみに現在のラスベガスのカジノホテル業界は、前述の MGM 社と Caesars 社(およびその子会社)が市場を寡占しており、この両社でストリップ大通り地区の大型カジノホテルの約70%の市場シェアを占めている。(なおサーカスサーカスは MGM社系列のホテルではあるが、ポイント加算の対象外)
したがって、今後もラスベガスを継続的に訪問する予定の者は、複数のカジノで利用可能な共通カードを発行しているこれら2大グループのホテルに宿泊したほうがポイントを貯めるチャンスが広がることになり、なにかと便利だ。
ただ、貯まったポイントの有効期限はそれほど長くはないので(半年とか1年程度の場合が多い)、毎年ラスベガス(もしくは、系列ホテルが存在している他のカジノ都市)を訪れる予定がない者にとっては、プレーヤーズカードの存在自体、あまり気にしなくてもよいのかもしれない。
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