エンターテインメント都市ラスベガスといえば、ナイトショー、カジノ、グルメなどのイメージが強いが、映画に関しても話題にこと欠かない。
街自体の特異な性格から、映画の題材やロケ地に選ばれることが多く、これまでに数々の名作がこの地で作られてきた。また今の時期は、芸術の秋というだけでなく、気候的な理由からラスベガスは映画シーズン真っ盛りだ。
つい先日も、ラスベガスでドタバタ劇を繰り返す人気コメディー映画「ハングオーバー」の第3弾(来年公開予定)の撮影が始まったばかりだが、ビル・クリントン元大統領が出演するのではないかとの噂で、早くも芸能メディアがざわついている。
また、ロバート・デ・ニーロやマイケル・ダグラスが当地で砕けた役を演じることから “高齢者版ハングオーバー” と揶揄される「ラスト・ベガス」の撮影も今週から始まり、がんを克服して復帰したダグラスの演技に期待がかかるなど、こちらも注目度では負けていない。
さらに、このたびシルク・ドゥ・ソレイユを題材とした「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」の公開日(11月9日)が正式に発表された。この映画も基本的にはラスベガスを抜きに語ることはできない。
当地を訪問する前に、新旧さまざまな作品を通じてこの街の現在や過去を知っておくことは、興味の対象が広がるばかりか、旅がより一層、有意義かつ充実したものになるはずだ。
また、何度も訪問しているリピーターにとっても、自分が知らなかった映像の中に新たな発見や感動を覚えたり、懐かしい光景に思い出を重ねることもできる。
旅行前は準備などで何かと忙しいが、出発前にベガス関連映画を鑑賞し、訪問地に対する造詣を深めておくことは決して無駄ではないだろう。もちろん旅のあとの鑑賞で、帰国後の楽しみにアクセントを添えるのもよい。
今週は、ベガスを題材とした数ある映画の中からタイプが異なる以下の5本をピックアップしてみた。あらすじとともに見どころなども書き添えてあるので、秋の夜長のエンターテインメントとして、そして訪問前の事前勉強として役立てていただければ幸いだ。
◎ Casino [ 邦題: カジノ ]
1995年公開、 マーティン・スコセッシ監督
◎ Vegas Vacation [ 邦題: ベガス・バケーション ]
1997年公開、 スティーブン・ケスラー監督
◎ Ocean’s Eleven [ 邦題: オーシャンズ 11 ]
2001年公開、 スティーブン・ソダーバーグ監督
◎ 21 [ 邦題: ラスベガスをぶっつぶせ ]
2008年公開、 ロバート・ルケティック監督
◎ The Hangover [ 邦題: ハングオーバー ]
2009年公開、 トッド・フィリップス監督
★★★★★★★★★★★★★★★★
◎ Casino [ 邦題: カジノ ]
1995年公開、 マーティン・スコセッシ監督
1970年代、大阪万博の開催に日本が沸き、沖縄の返還(1972年)や、コンビニエンス・ストアが初めて誕生(1974年、セブンイレブン)した頃、ラスベガスには煙草の煙に包まれた薄暗い世界があった。
そこは、裏でマフィアに支配されていた空間。ショッピング、グルメ、華やかなナイトショーなど、健全な大人のエンターテインメント・シティーとなった今日のラスベガスとは異なる想像し難い世界がそこにあった。そんな歴史を 1995年に映し、話題となったのがこの「カジノ」。
「Adapted from a true story」(実話から構成された)から始まる通り、実際に 1970年代のラスベガスで起こっていた出来事を基にした作品で、登場人物は基本的に実在者、ストーリーも原則としてすべて実話。
つまりこの作品は、フィクションが常識の映画というエンターテインメントではなく、史実を再現したノンフィクション・ドキュメンタリーに近い。
なぜ、葬られたはずの闇の世界を再現することができたのか。それは、後述するマフィアの弁護士を務めていたオスカー・グッドマン氏、当時の警察、メディア、カジノ従業員など関係者らの協力で、可能な限りの情報を結集させることができたからだ。
当然のことながら、数々の暴力や殺しのシーンも、すべて実際に当時のマフィアたちが行なっていた方法による再現であり、気が弱い人にとっては目をそむけたくなるようなシーンも少なくない。
しかし史実を知り、今日の健全なラスベガスを理解する上で必要不可欠な知識や情報も多く、ラスベガス・ファンにとっては絶対に見逃せない超一級の作品といってよいのではないか。
また、ファンならずとも、日本でもカジノ解禁論が議論されている昨今、カジノ・ビジネスの性(さが)や、カネというものへの人間の飽くなき欲望が見て取れるこの3時間の大作は、多くの人にとっていろいろ考えさせられるものを与えてくれるはずだ。
実在のマフィア Frank Rosenthal、そして彼の人生を大きく変えることになる妻の Geraldine McGee、さらに、常に犯罪に手を染め罪を重ねる極悪人 Anthony Spilotro は、この作品の中ではそれぞれ主人公のサム(ニックネームは「エース」)、ジンジャー、ニッキーとして登場する。
その主人公のサム・ロススティーンを演じるのは「ゴッド・ファーザー」で知られる名俳優、ロバート・デ・ニーロ。
ジンジャー役は、その高い演技力から、本作品でゴールデングローブ賞主演女優賞(1996年第53回ドラマ部門)を獲得したシャロン・ストーン。
そしてニッキーを演じたのは、1990年公開の映画「Goodfellas」でアカデミー助演男優賞を受賞した実力派俳優ジョー・ペシ。
ペシは Goodfellas の中でもマフィアの役としてロバート・デ・ニーロと共演しているばかりか、監督も本作品と同じマーティン・スコセッシであったことから、封切り前から「カジノ」への期待は大きく、実際に期待を裏切らなかったその名演技は本作品の見どころの一つといってよいだろう。演技ばかりか、体格や風貌も注目され、背がかなり低かった実在のマフィア Spilotro とそっくりだったことから、「これ以上ありえないほどのはまり役」との評価が高く、人選という意味でもこの作品は話題を集めた。
キャスト関連の話題はこの3人だけでは終わらない。あまりにもリアルで驚く話がまだまだあるのがこの作品のすごいところだ。
サムが経営するカジノで一度は大勝ちし、結局あとで大負けする日本人ギャンブラー「イチカワ」とは、実在した人物、柏木昭男氏のことだ。
柏木氏は、山梨県で不動産会社を経営していた実業家で、当時ラスベガスでもかなりのハイローラー(超高額を賭けるギャンブラー)として知られていた。そしてなんとそのイチカワをこの映画の中で演じているのは「Nobu」こと、今をときめくカリスマシェフ、松久信幸氏と聞けば、驚く人も多いのではないか。
ちなみに柏木氏と松久氏、実世界ではあまりにも対照的に大きく明暗を分けた。柏木氏は、1992年に山梨県の自宅で何者かにより日本刀らしきもので殺害され、犯人が捕まらぬまま 2007年に時効を迎えてしまった。
この事件、海外でのギャンブルとなんらかの関係があるのではないかと噂されたりもしたが、運悪く捜査の時期が、山梨県上九一色村に本拠を構えるオウム真理教の全盛時代と重り、忙しすぎた山梨県警の手が海外にまで回りにくかったことから、県警としては痛恨の極みの迷宮入りという結果になってしまった。 「実は犯人像はわかっている。しかし逮捕できない事情があった」との噂もあるが、真相は不明。
一方の松久氏は、ビバリーヒルズに高級和食店「マツヒサ」を開業、そこの常連客だったデ・ニーロと親交を深め、この映画に出演することに。
その後もデ・ニーロから資金サポートを受け、ニューヨークや東京を始めとする世界各地にレストラン「ノブ」を展開。
そして 2013年には、ついにラスベガスを代表する高級ホテル、シーザーズパレス内に自身の名を冠したホテル棟「NOBU Hotel」を持つことになるなど大成功、まさにアメリカンドリームの具現者だ。
結果的に、ベガスで大損をし命まで落とした柏木氏を演じた松久氏が、その18年後、大成功の象徴ともいえるホテルをベガスに持つことになったわけだが、なんという運命のめぐり合わせか。
実話の再現に力を入れているだけに、まだまだ馴染みの人物が登場する。エースとニッキーの会話の中で、ブラックリストに載る名としてアル・カポネが出てくるが、もちろん彼も実在したマフィアの一人。1987年公開の映画「The Untouchable」では偶然にもロバート・デ・ニーロがカポネの役を演じている。
その他にも、白トラや象を消すマジックショー「Siegfried & Roy」で長い間ラスベガスのショービジネス界を盛り上げていた二人のエンターテイナーも、本人たち自ら中盤に登場。
注目したい登場人物の極めつけは、なんといっても 1999年から 2011年まで 12年間もラスベガス市長を務めたオスカー・グッドマン氏だろう。地元ベガスでは周知の事実だが、彼は市長になる前、長い間マフィアを顧客に持つ豪腕の弁護士だった。それもチンピラ級のマフィアを相手にしていたのではなく、この映画の主役と準主役のモデルとなっている実在人物 Frank Rosenthal や Anthony Spilotro の裁判に関わるほどの筋金入りの弁護士で、その法廷での証拠写真の存在は、今でも伝説的な史実として地元では広く知られており、後述する博物館で見ることができる。
そんなグッドマン氏がこの映画の中では、そのままの役を実名で演じているからなんともすごい。古今東西、映画界広しと言えども、裏社会の出来事を、当事者本人が、それも実名で演じる場面はそう多くないのではないか。シーンとしては短い一瞬ではあるが、史実を知っている者にとってはあまりにもリアルで興奮する場面だ。
ちなみに彼の妻、キャロライン・グッドマンが 2011年、ラスベガス市長の座を引き継いでいることも、通な情報として押さえておきたい。もちろん夫婦ともに、正当な選挙を経ての結果であり、裏社会のコネなどで市長に就任したわけではない。
「マフィア担当の弁護士や、その妻が市長になるのはいかがなものか」といった批判的な意見も以前からあるが、選挙という民意の結果と考えれば、批判されるべきはグッドマン夫妻ではなく(そもそもグッドマン夫妻は犯罪者ではない)、有権者だろう。
それでも、映画でしかあり得ないようなことが現実に起こってしまうのがラスベガス。ここはひとつ、有権者の良識を疑うよりも、ジョークのようなことも容認してしまうこの都市の遊び心あふれる寛容性や特異性に注目したい。
蛇足ながら、週刊ラスベガスニュース(バックナンバー780号)にも記載の通り、オスカー・グッドマンは市長を引退したのち、自身の名を冠したレストランをダウンタウンのプラザホテル内にオープンさせている。
そしてなんと、このレストランの前身となったのが、映画の中でも登場する当時マフィアが実際に利用していた Center Stage という店だ。偶然か必然か、とにかくこの映画はあまりにもリアルすぎて驚くことばかり。ダウンタウンへ出向く際はそのシーンを思い出しながら、この店(現在の店名は Oscar’s )に立ち寄ってみるとよいだろう。
舞台となっているカジノホテル「タンジール」は、実世界では Frank Rosenthal が仕切っていたカジノホテル「スターダスト」。そして実際に撮影されたカジノ内のシーンのロケ現場はスターダストの向かい側に位置する「リビエラ」で行われた。
残念ながらスターダストもリビエラも、すでに閉鎖され、今ではその姿を見ることはできないが、どちらも北ストリップ地区に君臨し一世を風靡した名門ホテルだ。ちなみに、サムとジンジャーの結婚式の会場として登場するのも当時のリビエラに実在していたチャペルだ。
なお、カジノの外を描写する場面における映像では、となりに「フラミンゴ」、向かいに「デューンズ」(現在の「ベラージオ」がある位置に存在した)、その奥には「シーザーズパレス」が映し出されているので、この映画の中で登場する「タンジール」は現在の「バリーズ」周辺という位置設定と考えてよいだろう。
サムとニッキーがドライブするシーンもラスベガスを知る者にとっては楽しい。さらにダウンタウンの「フリーモント」、「フォークイーンズ」、「プラザ」などのカジノホテルもカラフルな電飾を放ち、また、今は閉鎖されてしまった「サハラ」(現 SLS ホテル)の煌びやかな光景も実際の世界と重ねて楽しむことができる。
エースとジンジャーがガラス張りのレストランから眺めるダウンタウンの景色も美しい。そのガラス張りのレストランこそ、前述のグッドマン氏の店だ。もちろんインテリアは改装されているので、ロバート・デ・ニーロとシャロン・ストーンが撮影時に座っていた座席そのものは存在しないが、同じ位置から夜景を眺めながら食事を楽しむことは今でも可能だ。決して高い店ではないので気軽に行ってみたい。
映画では、サムが経営者側としてのカジノの教えも説いている。それは「客に賭け続けさせること」と「誰かが必ず見ている “監視の世界” にしておくこと」。
この2つの教えは、現在でもカジノ経営における重要なセオリーであり、我々賭ける側、つまり客としても、常に頭の片隅に置いておきたい現実だ。
華やかなテーマパークである今日のラスベガスに、映画やドラマの世界でしか知ることができないマフィアが実際に関わっていたことに対しては、少なからず衝撃を受ける者もいることだろう。
カジノでの不正行為が発覚し、指をハンマーでたたきつぶされる客、売上金の勝手な横領、仲間割れから半殺しの状態で畑に埋められてしまうニッキーの最期、自動車に仕掛けられた爆弾による暗殺シーンなどなど、すべてが実話であり、そしてその時代からまだ半世紀も経っていないという事実に驚きを禁じ得ないわけだが、その後ラスベガスはマフィア支配の時代を終え、デ・ニーロがこの映画の中のナレーションで語るように、「健全なディズニーランドへと様変わりした」。とにかくラスベガスの歴史は面白く、興味が尽きない。
さらに掘り下げて史実を知りたい場合は、ダウンタウンにある通称「The Mob Museum」(マフィア博物館)こと「National Museum of Organized Crime and Law Enforcement」(週刊ラスベガスニュース788号で紹介)へ立ち寄ってみるとよい。
そこでは、この映画の冒頭と最後で見られるサム、つまり実在マフィア Rosenthal が自身の車に乗り込んだ瞬間に爆発される衝撃の殺人未遂シーンを取り上げた実際の新聞記事や写真を見ることができる。わずか 30年ほど前の 1982年10月の出来事だ。
その爆発から九死に一生を得て生還した Rosenthal が、マフィア時代の終焉後、フロリダなどで余生を静かに送り、世を去ったのは 2008年10月。つい最近までマフィア時代の当事者本人が実在していたとはなんとも感慨深い。
彼らマフィアたちの多くが当時住み、この映画にも登場する住宅の多くは、今でもラスベガス・ナショナル・ゴルフクラブ内のコースに沿って点在しており、そこでプレーさえすれば(パブリックコースなので観光客でもプレー可能)、それら住宅をだれでも見ることができる。
ラスベガスにはまだたくさんの史実が残っている。彼らの生きざまに思いを馳せながら実物を見に行くのも、べガスファンの行動としては悪くないだろう。そのためには、まずはこの映画で歴史を知ることから始めたい。
◎ Vegas Vacation [ 邦題: ベガス・バケーション ]
1997年公開、 スティーブン・ケスラー監督
今日は家でくつろぎながら、何も考えずに面白い映画を観たい。そう思う日にはこの「ベガス・バケーション」がいいかもしれない。
コメディアンで俳優の、チェヴィー・チェイスが主演するシリーズ4作目で、エンターテインメントの聖地ラスベガスとコメディーとのコラボレーションが見どころの作品だ。
シカゴに住むグリスウォルド一家(父クラーク、妻エレン、娘オードリーと息子ラスティー)が家族旅行でラスベガスへ行くというストーリー。
空港やリムジン送迎を始め、ストリップ大通り、ダウンタウンの景色やカジノフロア、プールにスパなど、観光客目線でのベガスシーンがこれでもかというほど登場し、これからラスベガスを訪問する者にとってはモチベーションが急上昇すること請け合いだ。
この映画で見過ごせない注目の出演者は、なんといっても本人役で出た通称「ミスター・ラスベガス」ことウェイン・ニュートン。彼自身の豪邸までが登場する。
実世界における彼のショーは 70年代、80年代を中心に、映画の舞台となった MGM Grand 以外にも、Harrah’s や Stardust、Hilton、Tropicana、Flamingo など、数多くのホテルで行われてきた。
高齢となった今はあいにく定期公演は行われていないが、今後の彼の復活そして活躍を大いに期待したい。
ベガスに精通するもう一人の俳優として挙げたいのが、ウォーレス・ショーン。トイストーリーのレックス(ティラノサウルス)の声や、アメリカの青春ドラマ、ゴシップガールを始め、様々な映画やドラマに出演した実績を持ち、本作品では敏腕ディーラーとして登場する。
彼がベガスに精通する所以は、出演作であるアメリカの SFドラマ「Star Trek」のシリーズの一つ「Deep Space Nice」(1993年~1999年に 7シーズン放送)。
スタートレックは、放送が終了している現在でも、毎年ラスベガスでコンベンションが行われているほど、この地と縁が深いもので、彼自身もコンベンションに幾度も顔を出している。そんな彼が、ドラマと同時期に放映されたこの映画に出演したということで大いに注目され、ベガス通には放っておけない作品となった。
これからラスベガスに行こうと考えている人へ、映画に登場する「ラスベガス」を簡単に説明しておきたい。
まずはマンダレイベイ・ホテルのすぐ南にあるベガスの象徴「Welcome to Fabulous Las Vegas」の看板。(このページの一番上にある写真)
物語の序盤に登場し、これから始まるラスベガス旅行への興奮を高めてくれる名物サインとして名高く、2009年、米国内務省により、国家歴史登録財 (National Register of Historic Places)に認定されたほどの有名なモニュメントだ。
また、ベガスのホテルでは常識となっているかもしれないが、ホテルのフロントでの一幕、客室までの長い道のりのくだりには、思わず共感してしまう。映画ほど大げさではないが、実際にもフロアマップを渡され、ペンを片手に部屋までの行き方を説明してくれるホテルが多く、そんな場面での客たちの心の叫びをうまく表現しているところが面白い。
砂漠都市ベガスだというのに、イルカの可愛らしいジャンプ姿の映像に驚く人も多いことだろう。実在するこの Mirage ホテルの「Dolphin Habitat」へ行けば、そんな光景を見ることもたやすい。癒される場所なので、ぜひ行ってみたい場所の一つだ。
そのほかにも、ダウンタウンのフリーモント・ストリートは、現在も映画と同様に鮮やかで古風な雰囲気を醸し出しており、また、最後に夫婦が式を挙げた The Bells も、由緒ある有名なウェディング・チャペルとして世界中からカップルが集まる。このチャペルは Stratosphere タワー付近に位置するので、近くを通ったらぜひ目を凝らして見て頂きたい。
「ラスベガスを観る」という視点からいうと、一番の見どころはやはりフーバーダムのシーンだろう。ラスベガス観光の名所で、映像においてもその偉大さを感じ取ることができるはずだ。映画と同様、施設内部を一般に公開しているので、興味がある人は立ち寄ってみてはどうか。映画内では、所々で笑いをとる演出も忘れておらず、「ダム」ツアーを二つの意味でかけたジョークもアメリカらしく面白い。
ちなみに、陸路で行くグランドキャニオン・ツアーなどにおいても、ダム自体の内部は見られないものの、ダムを見下ろす巨大アーチ橋に立ち寄るので、そこから見下ろ絶景を楽しむことが可能だ。
映画から15年もの月日が経つと、映像自体もそうだが、Mirage や MGM も、どこか古めかしく、味が出ている印象を受ける。そういった部分もこの映画の面白さではあるが、今現在は存在していないものも少なくない。
クラークが舞台に上がり、ホワイトタイガーが見ものであった人気のマジックショー「Siegfried & Roy」は Mirage で13年間続いていたものの 2003年に終了。また、映画の中では Riviera ホテルの向かい側にあったはずの Westward Ho ホテルや、Stardust ホテルも解体されて跡形もない。ラスティーが最初に車を当てた、O’Sheas カジノも、2012年4月に取り壊されてしまった。
MGM の顔の部分だけを大きく強調したライオン像は CG ではなく、実際にあったものだが、今はもうその姿は見られない。映画公開年の 1997年に撤去され、代わりにライオンの全身像が造られた。映画終盤の Keno のスペースも今は無くなっている。
映画に登場するそれらシーンを今のベガスで見られないのは残念だが、消えるものがある代わりに、Bellagio や Wynn をはじめとする様々な新しいホテルやショッピング施設などが生まれており、常に進化を遂げているその様子を味わうのも楽しみのひとつで、何度もベガスを訪れたくなる理由もそんなところにあるのだろう。
この映画では、先に述べたようなベガススポットに注目しつつ、日本の「お笑い」とは違う「異文化のお笑い」を感じ取ることができればいいのではないか。
じゃんけんやコイントス、「どっちの手にコインが入っているか」などのギャンブルや、Riviera ホテルの前で偽ID を入手する場面など、所々で登場する非現実的な展開も単純に面白い。ばらばらになりかけた家族が、絆を取り戻していく姿にも親しみが持てるはずだ。
ラスティーの運の良さは異常で、グリスウォルド一家の結末にも驚きだが、とにかく「ベガスに行きたい」と思わせてくれる映画になっていることはまちがいない。クラークのように、ギャンブルにのめりこみ過ぎないよう注意しつつ、ぜひとも非日常都市ラスベガスを楽しんでいただきたい。
◎ Ocean’s Eleven [ 邦題: オーシャンズ 11 ]
2001年公開 (日本では2002年)、 スティーブン・ソダーバーグ監督
ラスベガスが舞台で思い浮かぶ映画といえば、この映画も一つであろう。1960年に公開された Ocean’s 11(邦題は、オーシャンズと11人の仲間)のリメイク版として製作された本作品。アメリカではもちろん、日本でも大きな人気を博し、以後、2005年、2007年に続編が公開されている。
信用詐欺で捕まったダニエル・オーシャン(ジョージ・クルーニー)が仮釈放されるところから始まるこの物語。
彼は、ロサンゼルスで退屈な日々を送るラス(ブラッド・ピット)を訪ね、彼と共に9人の仲間を集めていく。
カジノディーラーのフランク、資産家のルーベン、爆弾マニアのバッシャー、胃潰瘍持ちで詐欺師のおじいさんソール、スリの天才ライナス、仲が悪いようで息がぴったりな双子のモロイ兄弟、電気オタクのリヴィングストン、中国サーカス団のメンバーイエン。
それぞれ能力を持ち合わせた11人。その目的は、ダニー(ダニエル)が刑務所で練っていたある計画だ。
それは、ラスベガスの三大カジノホテル Bellagio、MGM Grand、Mirage の売り上げを奪うという難攻不落の金庫破り。
「勝つにはいい手が来た時に一発勝負に出るしかない」 — 巧みな計画と、メンバー個々の専門分野を活かすテクニックの数々を駆使して、ベラージオホテルの地下金庫に眠る大金を狙う。はらはらどきどきの展開から目が離せない。
ダニエルはもう一つ、「ある人」を取り戻す計画も練っていた。そこに登場するのが元妻テス。彼女は、上に挙げた三大カジノのオーナー、ベネディクトの恋人。初めは、元夫の出現に動揺を隠せず、彼を遠ざけようとするが、次第に何かを企むダニエルのことが気になりだす。彼女のそんな心の変化も見逃せない。
この映画には、内容はもちろんのこと、作品の魅力をさらに引き立てる要素が二つある。第一に、出演者の顔ぶれだ。
豪華ハリウッドスターの出演で話題となった本作品は、アメリカの長寿ドラマ「ER」から映画界への転身を遂げた名俳優、ジョージ・クルーニーを始め、EDWIN のジーンズ「503」のコマーシャルが懐かしいブラッド・ピット、本作品上映の直前、2001年3月に、ブラッドと映画「The Mexican」で共演したジュリア・ロバーツ、のちにボーン・シリーズ「The Bourne Identity」、「The Bourne Supremacy」、「The Bourne Ultimatum」で名を馳せたマット・デイモンら、今や映画界には欠かせない見ごたえのある豪華メンバーが勢揃いする。
ちなみに、モロイ兄弟の兄を演じるケイシー・アフレックは、「Armageddon」や「Pearl Harbor」出演の俳優で、マット・デイモンの幼馴染でもあるベン・アフレックの弟という意外なつながり。
「ラスベガス」というキーワードで最も注目したいのは、モロイ兄弟の弟役、スコット・カーン。スコット自身の認知度は低いが、実は彼、1972年公開の映画「The Godfather」へ出演したジェームス・カーンの息子だ。ジェームス・カーンといえば、2003年より5年間放送されたアメリカのテレビドラマ 「Las Vegas」 に出演している。親子揃ってベガスに深い関わりを持っているというわけだ。
他にも、ボクシングの試合のシーンでは、ボクサー役に、元プロボクサーのレノックス・ルイスが出演。さらに「ミスターラスベガス」こと、歌手で俳優のウェイン・ニュートンの姿も見られる。
作品の魅力の第二は、ラスベガスの雰囲気。現実離れした遊園地とも言えるラスベガスの景色を楽しむには、この映画はまさに打ってつけだろう。
ラスベガスのアトラクションを代表するベラージオホテルのゴージャスな噴水ショーの場面はふんだんに使われ、特にラストシーンのそれは思わず見とれてしまうほど美しい。
そのほかにも同ホテル内のアートギャラリーやフレンチレストラン Picasso、MGM Grand ホテル内のアリーナなども登場する。
彼らの作業場として使われた倉庫は、ベラージの西側にあり、その背景には Paris、Planet Hollywood、Bally’s、Flamingo など、ストリップ沿いのそうそうたる顔ぶれのホテルが並ぶ。夜のシーンが多いため、ゴージャスな夜景も必見だ。
もちろん、ベラージオの内部の様子もうかがえる。劇中、ダニーがプレイしていたスロットマシンは、Buffet や「O」シアターがある辺りであろうか。
ホテルのエントランスはもちろん、フロントやカジノフロア、なかなか入ることができないスイートルームやハイローラーのスペースも映し出されるので、高級感あふれたリッチな世界をかいま見ることもでき、その種の場所を知らない人にとっては、見ていて興味が尽きないはずだ。
ラスベガス、とりわけベラージオを訪れたことがある人は、この映画を思い出と重ねながら、そして訪れたことがない人にとっては、訪問前の下調べとして、それぞれ違った角度から楽しめばよいのではないか。
さらに実際に訪問した際は、スイートルームに泊まるのは難しくても、スーツやドレスに身を包み、映画の場面を実世界で体験してみるのも悪くないだろう。夜には是非とも噴水ショーを見て、このゴージャスかつ美しいラスベガスを満喫して頂きたい。
◎ 21 [ 邦題: ラスベガスをぶっつぶせ ]
2008年公開、 ロバート・ルケティック監督
題名を見て興味をそそられる人も多いのではないか。カードカウンティングという手法(ラスベガス大全内、[カジノ]セクションのブラックジャックの項を参照)で大金を稼ぐという、実話を基に作られたこの作品は、ブラックジャックの別名とも言える「21」というタイトルをひきさげ、2008年にアメリカで公開された。
主人公はマサチューセッツ工科大学(MIT)の学生、ベン・キャンベル。ハーバード医科大へ合格したものの巨額の学費に頭を抱える毎日。奨学金を得るには、何十人もの候補者の中から、何かで卓越した一人にならなければならず、ましてや 30万ドルもの大金を母に頼ることも出来ない。
そんな彼が出会ったのが、ミッキー・ローザ教授率いる、ブラックジャックのチームだ。チームの一員になる決心をした彼は、ルールや暗号を覚え、カウンティングを学び、ついに勝負の地、ラスベガスへと乗り込む。
勝負に没頭し、次第に離れていってしまう友情の行方や、憧れのマドンナ、ジルとの恋模様、そして驚きの結末などが見どころ。
この作品には、映画マトリックスシリーズ(1999年、2003年に2作)への出演でお馴染みのローレンス・フィッシュバーンや、「アメリカンパスタイム 俺たちの星条旗」(2007年)で中村雅俊と共演したアーロン・ヨーなどが出演している。
彼らに加えて注目したいのが、ディーラー、ジェフリー役で特別出演したジェフ・マー。実際に 1990年代、MITブラックジャックチームが存在し、そのときの張本人が、なんとこの彼だ。劇中、ベンはジェフリーを「異母兄弟」と呼んでいる。二人の共演は映画中盤あたりになるので、見逃さないようにしたい。
主人公が MITの学生ということで、マサチューセッツ州ボストンやケンブリッジを舞台にストーリーが始まる。実際にベガスが映し出されるのは 40分を過ぎたあたりからで、そこからのベガスの魅力を以下に紹介してみたい。
Cosmopolitan や Trump など、最近オープンしたホテルは見られないが、映画公開が 2008年と、比較的新しいため、輝きを放つ Wynn など、オーシャンズ11 では見られなかったホテルも登場する。
勝負の舞台として、チームが主戦場に選んだのは Hard Rock Hotel と Planet Hollywood Hotel。
ベンにとっての初戦の地は Hard Rock で、明け方になって彼が外に出てくるシーンでは、出入口付近に Bon Jovi のポスターを見ることができる。
ロックをテーマにしているこのホテルは、実際の世界でも著名ロックスターがコンサートを開くことで知られており、ドアの取っ手がギター型になっていたりする部分など、細かいところも見落とさないようにしたい。
スイートルームとして出てくる部屋からの美しい夜景は、Caesars Palace、Bellagio、Paris などのイルミネーション。噴水がはっきり見えるので、この部分の撮影はハードロックではなさそうだ。
郊外のカジノとして、Red Rock が何度も登場する。カジノフロアはもちろんのこと、ナイトクラブ(Cherry)やゴージャスなプールなどのシーンもここでの撮影だ。ストリップ地区からかなり離れているため(下道で約30~40分、やや遠回りだが高速利用で約25分)車がないと不便だが、近くに景勝地「レッドロック・キャニオン」などもあるので、興味がある人は行ってみるとよいだろう。
映画の後半には Riviera も登場する。言わずと知れたこの老舗カジノホテル、ストリップ地区の中心街からやや離れた場所に立地しているばかりか、老朽化も激しいため、近年の人気は低下気味だが、ダウンタウンのカジノのような昔ながらのラスベガスを感じることができるホテルとして、今でも一目置かれる存在だ。
他にも、Wynn 内のショッピング街や、Palms のゴーストバーなど、思わず訪ねてみたくなる所がたくさん登場する。
邦題のタイトルと実際の内容に多少のギャップはあるものの、カジノのシーンでのチップの山や、美しい夜景が醸し出すゴージャスな雰囲気など、ラスベガスのカジノの魅力を十分に感じられる作品となっているので、この映画を見て、リッチな雰囲気の中でブラックジャックをやってみたい、と感じた人も多いことだろう。
もし今後、21 を楽しむ機会があったら、声には出さずとも、ぜひ心の中で叫んでみて欲しい。”Winner winner chicken dinner.”
◎ The Hangover [ 邦題: ハングオーバー ]
2009年公開、 トッド・フィリップス監督
2011年には続編、そして2013年には第3作目が公開され、今後シリーズ化が期待される「ハングオーバー」。今回ここで紹介するのはその第1作目。
ラスベガスが舞台となった映画の中では比較的新しく、アメリカにおいて高い興行収入を得たヒット作品ではあるが、基本的にはコミカルなドタバタ劇の域を出ていないのも現実。
それでも、眠らない街ラスベガスの特徴をうまく引き出しながらの演出は絶妙で、単なる笑いを超えた含蓄ある描写も多く、見ごたえのある作品に仕上がっている。
「ハングオーバー」の意味は「二日酔い」。人生の晴れ舞台である結婚式を2日後に控えた新郎ダグと、友人である教師のフィルに、歯科医のステュ、ダグの義弟となるアランの 4人が、独身最後のひと時を過ごすために、ロサンゼルスから男だけのラスベガス旅行へと旅立つ。
「何があろうと、なかったことにする。やりたいことをやり尽くし、すべて忘れる」をモットーに大いに弾け、最高の夜にすることを誓うまではよかったが、一夜にして状況は一変。
翌朝気が付くと、彼らが泊まった豪華スイートルームは大荒れで、空き巣が去ったあとのような散らかりよう。それだけではない。なぜかその部屋では鶏が歩き、トイレにはなんと生きた本物の虎、そしてクローゼットでは見ず知らずの赤ちゃんが泣きわめく。
そんな珍妙なゲストらと引き換えにステュの前歯が無くなり、ダグも忽然と姿を消す。二日酔いにより頭は殴られたように痛く、吐き気も止まらず、そのうえ誰も何も覚えていない。
かすかな手がかりをもとに、3人(と赤ちゃんと虎)はダグ探しに出かける。彼らに残されたわずかな記憶は、果たして役に立つのか。そしてロサンゼルスでの結婚式に間に合うのか。
この映画の中で、日本人に一番馴染みのある出演者を挙げるとすれば、ボクシング界の野獣ことマイク・タイソンであろう。彼はラスベガスと無縁ではなく、現役時代、数多くの試合を MGM Grand のアリーナで行なっている。そのアリーナで宿敵ホリーフィールドの耳を噛みちぎり、反則負けを喫した試合は多くのボクシングファンが知るところ。
タイソンはその後も実際にラスベガスに住むなど、この街との関わりは深いが、彼の演技力がいかなるものかは、その目で確かめて頂きたい。
最後の最後にではあるが、ベガスの帝王ウェイン・ニュートンも出てくる。さらには、この映画の監督であるトッド・フィリップス氏自らも、エレベーターのシーンに出演。コメディー映画ならではの演出だ。
余談だが、アラン役のザック・ガリフィアナキスはこの映画の前年に、「What Happens in Vegas」(邦題: ベガスの恋に勝つルール)にも出演しているので、2年続けてベガス関連の映画に出たことになる。
また、フィル役のブラッドレイ・クーパーは 2011年に「最もセクシーな男性」(ピープル誌)に選ばれ、一気にスターの座にのし上がった若手のホープ。今後の活躍にも注目したい。
ベガス通としては、どこの場面が出てくるのかが大いに気になるところ。
まず彼らが泊まるホテルは Caesars Palace。歌姫セリーヌ・ディオンのショーが見られることで知られるこのホテルは、古代ローマ調の肖像が並び、開放的で清純な「白」のイメージがよく似合う。
フロントからプール、エレベーターに至るまで、清楚で爽やかな雰囲気を漂わせており、一度は泊まってみたいホテルの一つだ。
ちなみに、出産などで現場を離れていたセリーヌも、2012年からコンサートに再び戻っている。
Caesars Palace の屋上からの夜景にはだれもが心を奪われるにちがいない。北側には Wynn や Encore、Venetian、Palazzo といった高級ホテルがクールなオーラを放ち、南側では Paris、Planet Hollywood、Bally’s、Flamingo など、明るいネオンを彩ったホテルが、夜の誘惑の世界へと引き込んでくれる。これぞ「大人のテーマパーク」とでも言うべき、ラスベガスならではのゴージャスな光景だ。
もちろん実際に屋上に立ち入ることはできないので、同じような夜景を楽しみたければ、Paris ホテルの「エッフェル塔」に行ってみるとよい。
また、Stratosphere タワーや、Palms ホテルのゴースト・バーにあるスカイデッキから見る眺めも悪くない。
極めつけに夜景ヘリコプターツアーで締めくくれば、優雅で贅沢な癒しの時間を過ごせることまちがいなしだ。
ちなみに彼らの夕食は Palms ホテルでステーキだったので、店はたぶん同ホテルのステーキハウス「N9NE」と思われる。車がストリップ通りの真ん中で発見された場面は Bellagio や Paris 付近か。こうして映画を見ながら実際の場所を想像してみるのもラスベガス映画の楽しみだ。
この映画では Caesars や Riviera など、総じてストリップ地区の北側が舞台の中心となっているように見えるが、一部、南側の景観も登場している。チャウが飛び出してくるシーンの後方では Luxor のスフィンクス像が 3人を見守っていた。また、Mandalay Bay から始まり Excalibur や MGM Grand、Tropicana など、南地区もそれなりに映し出されている。
ジェイドの家はストリップの南西方向だろうか。New York New York のジェットコースターや、シルクドソレイユのショー「Zumanity」の広告がかすかに見え、右手には、Excalibur やハンバーガーショップ 「IN-N-OUT」 の看板がそびえ立つ。
中盤で登場するチャペル「The Best Little Chapel」は映画のために作られたもので、実際には存在しない。
この場面のロケ地はストラトスフィアの北側に位置するストリップクラブ「The Talk of the Town」や、多くの有名人が挙式を行ったことで知られる 「The Little White Wedding Chapel」の周辺。
ラスベガス独特の「ドライブスルーウェディング」ができるのもこのチャペルに隣接するアーケードで、このあたり一帯は、日本に比べ格安の費用で挙式が出来ることで人気が高いウェディング街だ。
ラスベガスといえばやはりカジノ。キャンブルのシーンも見逃せない。選ばれたのは老舗ホテル Riviera。本作品の他にも様々な映画の舞台となっているこのホテルの魅力は、やはり昔ながらの趣があるという部分か。
オレンジ基調の豪華な装飾に、落ち着きのある絨毯やカジノテーブルの色合い。他のホテルに比べ「古き良き」という言葉が似合う独特な雰囲気が漂う。ストリップ地区の中心街からやや離れているが、この映画を見たからにはぜひ訪れてみたいホテルの一つだ。往年の懐かしいベガスを感じることが出来るにちがいない。
ラスベガスの繁華街はアメリカでも数少ない「路上での飲酒が認められている区域」であり「ハングオーバー」と題する映画にとってはまさに打ってつけの場所。
主人公たちのように酒に酔って羽目を外し、記憶をなくすことは、飲酒者にとってはありがちな話。この街で、同じような体験をしている人は毎晩たくさんいるにちがいない。
この作品は、そんな人々を共感させながら大いに笑わせてくれる映画といってよいのではないか。少々下品な映像や発言も登場するが、深いことは気にせず「ハングオーバー」の世界に酔いしれてみるのも悪くないだろう。
そして機会があれば実際に訪問し、そのときばかりは現実の世界を忘れ、彼らのように思い切り楽しんでみるといい。
ちなみにラスベガス市の観光局が掲げるこの街の公式スローガンは、なんと驚くことなかれ「What happens in Vegas, stays in Vegas」だ。(このスローガンの意味は、週刊ラスベガスニュース第814号に掲載)