先週、ダウンタウン地区の老舗カジノホテル「プラザ」(写真上)が、昨年11月の閉鎖以来、9ヶ月ぶりとなる営業を再開した。単なる再オープンであれば話題性は少ないが、今回の場合、少々事情が異なる。
インテリアを一新してのリニューアルオープンというわけだが、家具など調度品の仕入れ方法が奇抜なことと、ダウンタウン地区の常識にそぐわない高級路線を目指していることなどから大いに注目を浴びながらの再オープンとなった。さっそく新装したばかりの部屋に宿泊してみた。
ダウンタウン地区といえば、古き良き時代の街並みがそのまま残る情緒豊かな繁華街。安っぽさの中にも何か憎めないテイストがあり、気取らない庶民的な雰囲気が特徴だ。
それが好きか嫌いかは人それぞれだが、ゴージャスな雰囲気が漂う街ではないことだけはたしかで、近代的な大型高級ホテルが建ち並ぶストリップ地区とは趣を大きく異にしている。
そんなダウンタウン地区の各ホテルは、規模が小さいがための利便性や、宿泊料金の安さなどをウリにしており、高級路線を目指したりしないのがこれまでの常識だ。
ちなみに同地区にあるゴールデンナゲットホテルの新館は高級路線を前面に押し出しているが、例外的な存在と考えていいだろう。
そして今回のプラザホテルは何を考えたのか最高級の調度品でリニューアルしたというから注目されるのも無理はない。(上の写真は同ホテルの正面玄関前)
その調度品の調達方法がおもしろい。68階建ての超高層コンドミニアム & ホテル「フォンテンブロー」(写真内の一番大きなビル)の家具を安く買い取るという方法だ。
フォンテンブローとは、サブプライムローン問題に端を発する世界同時不況直前の不動産バブルの象徴ともいえる超大型建造物で、場所は北ストリップ地区にあるリビエラホテルのすぐ北側。
建設は順調に進み、外観の大半がほぼ完成した 2009年、残念なことに銀行からの融資が絶たれ、経営母体の会社が倒産してしまった。
その後、新たな会社が引き取ることになったが、しばらく景気の回復が見込めないとのことで、少なくとも数年間は開業しないとされている。
建設労働者もとっくに去り、だれもいなくなってしまった現在、この巨大ビルは、ときどき地元の消防署が高層ビル火災の消火訓練に使ったりしている以外、特に何にも使われていない。
そこに目を付けたのがプラザホテルで、そのフォンテンブローから家具やその他の調度品を安く買い取り、リニューアルするという方法を選んだ。
そして先週、「いよいよダウンタウンにもストリップ並のゴージャスな部屋が登場か」と期待されながらリニューアルオープンを果たすことになったわけだが、実際に部屋(写真)に入ってみると、期待に反してゴージャス感はほとんどない。
ストリップ地区の基準で評価するならば「中の中」もしくは「中の上」といったところか。
もともとホテルの場合、家具といってもベッドおよびそのヘッドボード、小さなデスク、テレビ台を兼ねたタンス、それに照明のスタンド程度しかないわけだが、どれも決して高級とはいえない質素なものばかりで、これには少々ガッカリさせられた。
そのガッカリは、プラザホテルに対するものではなく、むしろ「フォンテンブローってこの程度だったのか」といった家具の供給元に向けられたもので、プラザに対してはなぜか不満を感じなかった。
それもそのはず、取材日の宿泊料金は税込で一泊39ドル。この料金でこのレベルの内装であれば、だれも文句を言わないだろう。
さらにうれしいことに、このホテルにはリゾートフィーというものがない。(リゾートフィーに関しては、バックナンバー 703号に掲載)
さて高級感はないものの、どの調度品も新しいので、他のダウンタウン地区のホテルの部屋よりはかなり清楚な感じにまとまっており、高望みさえしなければ、日本人の感覚でも十分に使えるレベルにあるといっていいだろう。
特にバスルームのシンク(写真右)は、ストリップ地区の高級ホテルにも負けない洒落たもので、これを見ている限り、フォンテンブローもそこそこのレベルにあったことがうかがえる。
それでもダウンタウンのホテルらしい安っぽさも垣間見ることができ、たとえばトイレットペーパーにひじがぶつかるほどトイレのスペースが狭かったり(写真右)、換気扇の音が異常にうるさかったり、洗面台にあるコップがプラスティック製の使い捨てだったりするところは、ストリップ地区ではあまり見かけないお粗末な光景だ。
また、空調が集中管理式ではなく各部屋に個別に設置されているところも気になる部分で、そのエアコンの品質がよほど悪いのか(ちなみにブランドは韓国の LG)、睡眠に支障が出るほどの大きな騒音を出すのには参ってしまった。たまたまその部屋のエアコンだけの問題であると願いたい。
LG社製の32インチ LEDテレビや暗証番号式の金庫などは特に問題ない。
ベッド(幅152cm のベッドが2台)が柔らかすぎないところもいい。アメリカのベッドはとかく柔らかすぎと言われるが、ここのベッドには適度な硬さがあり、日本人が好む硬さに近いように思われる。
バスルームの消耗備品(写真)に関しては、特に変わったものはないが、必要最低限のモノはそろっている。
さてついでなので客室以外の部分にもふれておきたい。
今回のリニューアルは客室だけでなく全館が対象で、そのため、まだいたるところで工事が行われており、オープンしていない施設もたくさんある。
たとえば、カジノは完全にオープンしているが(写真)、スポーツブックはまだ工事中だ。
3階のビンゴ会場はすでに営業を開始しているが、プール施設やテニスコートではまだ工事が続いている。
まもなく開店予定の寿司店「Island Sushi」もまだ準備中で、前ラスベガス市長オスカー・グッドマン氏の名を冠したステーキハウス Oscar’s も 11月まで待たなければならない。
あれこれ長々と書いてきたが、結論としては、改装直後なだけに清楚にまとまっており、近隣のライバルホテルよりはかなり高いレベルにあると考えて良いのではないか。
ただ、フォンテンブローからの家具に関しては、それほど高級なものではないので、それに期待しすぎると、ガッカリすることになりかねない。
逆に、そのことをあらかじめ承知の上で泊まれば、たぶん後悔するようなことはないだろう。
いずれにせよ、まだ工事中の部分が多いので、このホテルの総合的な評価はあと半年ほど待つ必要がありそうだ。
(上の写真は電飾アーケード。アーケードの向こう側、つまりこの写真のやや左下に見える暗い部分に縦の数本の光っている線がプラザホテル)
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