裁判沙汰に発展しそうな内輪もめで、今後の成り行きが注目されていたスカイウォークの大規模な改装工事が先月やっと完了し、無事リニューアルオープンを果たしたというので、さっそく現地へ行ってみた。
スカイウォークとは、グランドキャニオン・ウエスト(通称、ウエストリム)の絶壁のふちから谷側にせり出すような形で設置された U字型のガラス製の空中歩道のことで、2007年3月のオープン以来、初めてとなる大規模な改装工事が、今年の春から行われていた。
工事の成り行きが注目されていたのには理由がある。一般の施設の改装工事とは異なり、絶対的に必要な工事であることと、スカイウォークのオーナー側と運営側との間で対立が続き、空中歩道プロジェクトが文字通り空中分解するのではないかと心配されていたからだ。
(このページ内に掲載されている写真の中で、スカイウォーク本体の表面が映っている写真は、このたびの取材時に撮影されたものではなく、過去に撮影されたもの。今回の訪問時は手違いで、現場での撮影許可を得ることができなかったため)
観光施設としてのスカイウォークの商品価値は、なんといっても床材のガラスの透明性。足元から下界の谷底が透けて見えてこそスリルがあるわけで、表面にキズが付き、曇りガラスのようになってしまったら価値が無い。
それがゆえに現場では、すべての入場者に対して特製のシューズカバーの装着を義務付け(写真の足元に注目)、さらにモップを持ったスタッフが常にホコリを取り除くなど、床の表面の管理には細心の注意を払ってきた。
しかしそれだけ念入りに管理しても、毎日1000人以上が歩くとなると、細かいキズは避けて通れず、最近は曇りガラスのように透明度が低下していた。
もはやスカイウォークそのものの価値が失われ、ガラスの交換は待った無しの状態になっていたわけだが、なんとそんな重要なときに、仲良く手を組んできたオーナー側と運営側がケンカを始めてしまったのである。
ちなみにオーナーは、スカイウォークという奇想天外な施設を考案し、それをこの地に建設したラスベガス在住の中国系ビジネスマン David Jin 氏。運営側はこの地を統治している先住民ワラパイ族だ。
ウエストリム地区は、いわゆるインディアン居住区として、アメリカ合衆国政府から治外法権的なことが認められた特殊な区域になっているため、一般の企業やビジネスマンが簡単に土地を取得したりすることができず、どのようなビジネスをやるにしても、ワラパイ族との提携が不可欠とされている。
ワラパイ族側は Jin 氏に対して、「スカイウォーク本体だけ建設して、約束したはずのギフトショップなどの施設を最後まできちんと造っていないのは契約違反だ」と主張。
それに対して Jin 氏側は「売上の分配を、約束通り払ってくれていない。もはや信用できない」と反論。
透明度という最も重要な機能を失いつつあるスカイウォークを目の前にして、両者は互いに一歩も譲らず平行線をたどるばかりで、 ぶ厚い特殊なガラスのすべてを取り替える費用の捻出などはどうなるのか、旅行業界の関係者、とりわけこの地で大きなビジネスをしているシーニック航空などは大いなる関心を寄せていたが、戦いは一時休戦し、リニューアル工事を優先することで合意。なんとかこのたび工事が完了する運びとなった。
観光客にとっては、ピカピカの真新しいガラスが入り、スカイウォークは完全に復活したので、透明度という意味では、今が絶好の訪問チャンスといえるかもしれない。
ワラパイ族側が主張する通り、本来併設されるはずだったギフトショップやレストランなどの施設はまったく出来ていないが、スカイウォーク自体の利用にはなんら問題はないので、興味がある者はぜひ行ってみるとよいだろう。
ちなみにこのウエストリムでは、ヘリコプターで谷底に降りたり、季節的にこれからが楽しいコロラド川での川下りなども可能だ。
騒音規制や安全ルールなど、うるさいアメリカ合衆国の国立公園の法律に縛られているサウスリムでは、それらは許されていない。
(サウスリムでは、指定された空域の上空をヘリで飛行することは条件付きで許されていても、谷底への着陸は緊急時を除いて不可)
また、ウエストリムでは絶壁に手すりがまったく無いなど、荒削りの部分が多いところが、「大自然のままのワイルドな管理がいい」と隠れた人気だ。
サウスリムに比べて、渓谷の規模がやや小さいという難点があるが、ヘリコプター体験や川下りを短時間で効率よく楽しみたければウエストリムしかないだろう。
行き方としては、レンタカー利用も可能だが、途中、舗装されていない道路をかなり走行しなければならないのと、行けるのはゲートまでで、そこから先、つまり各ビューポイントやスカイウォークなどの施設までは、ワラパイ族指定のシャトルバスでアクセスするしかないので、手っ取り早い方法としては、空路とワラパイ区域進入料やシャトルバスなどすべてがセットになったパッケージ型のツアーで行くのが一般的だ。
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