ZIP Air のサンノゼ線 Full-Flat、ベガス旅行におすすめかも!

サンノゼ空港に駐機する ZIPAIR のボーイング 787-8。

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 まず始めに伝えておきたいことは、今回のこのレポートは ZIPAIR の広告案件などではなく、単なる搭乗体験レポートであること。
(表題では読みやすくするために ZIP Air と切り離して表記したが、公式名称は ZIPAIR。以下 ZIP と省略)

 そしてこのレポートの目的は、コロナ以降における日本からのラスベガス訪問者数が落ち込んだままコロナ前の水準にまったく戻っていないため、「もっとラスベガスに来てください!」という願いを込めて、安くて利便性が高そうな ZIPのサンノゼ路線を紹介してみたくなったという次第。
 というわけで、このたび日米の往復移動の際に ZIP のサンノゼ路線を利用してみたので、その感想や気づいたことを書いてみたい。

 ZIP は日本航空LCC(Low Cost Carrier、格安航空会社)。
 2021年末からロサンゼルス路線を始めていたので、すでに何度か利用したことがある航空会社ではあるが、サンノゼ路線の利用は今回が初めて。

 サンノゼはサンフランシスコから南へ車で1時間ほどの都市なので、いわゆる「ベイエアリア」(サンフランシスコ湾の周辺地域)の経済圏。遠い日本から見た場合、位置的にはサンフランシスコとほぼ同じと考えてよいだろう。
 ちなみにこのサンノゼ一帯の地域はインテルなど半導体関連企業が集結していたことから数十年前からシリコンバレーと呼ばれており、今ではグーグル、エヌビディア、テスラ、フェイスブック、アップルも本拠地にしているなど、ハイテク業界の聖地的な存在として世界的に名高い。
(テスラは2021年から本社機能をテキサス州に移転)

 これら大手ハイテク企業の社員は高額所得者が多いからか、このエリアの住宅価格や家賃がべらぼうに高いことは全米に知れ渡っている現実であり、そんな地域の人達が利用するサンノゼ路線の航空運賃もさぞかし高いのではと思いきや、さにあらず。
 シリコンバレーの大企業の幹部クラスは自家用飛行機や社用機に乗ったり、高給を取っている社員やその家族たちは格安航空会社を利用しないということなのか、ZIPのサンノゼ路線の需要は少ないようで、同じ ZIP のロサンゼルス路線やサンフランシスコ路線よりも安かったりすることが多い。
 というわけで、さっそく ZIPのサンノゼ路線をラスベガス旅行で利用する際のメリットを列挙してみたい。

サンノゼ空港の Terminal-B の道路沿いの目立つ場所に ZIPAIRの大きな広告を発見! 同社の意気込みが感じられる。

サンノゼ空港の Terminal-B の道路沿いの目立つ場所に ZIPAIRの大きな広告を発見! 同社の意気込みが感じられる。

 LCC であるがゆえに JAL、ANA、United、American、Delta など米国西海岸に路線を持つ他の航空会社よりも基本的に安い。

前述の通り、ZIP のロサンゼルス路線やサンフランシスコ路線よりも安いことが少なくない。もちろん例外もあるが。
ちなみに9月の連休の週、東京からサンノゼまでの片道運賃は 49,679円(8月14日時点での公式サイト)。
同じ期間のロサンゼルスは 58,779円、サンフランシスコは 53,379円。

サンノゼ空港は、ロサンゼルス空港(以下 LAX)やサンフランシスコ空港(SFO)と比べて規模が小さいため、ラスベガスとの国内線の乗り継ぎにおいて移動が簡単。
 特に日本への帰路、つまりラスベガスからサンノゼ空港経由で成田に戻る際は出国審査がないため同じ建物内での短距離の移動で済む。
(往路の場合、入国審査の建物が、国内線のチェックインカウンターがある Terminal-B から離れているため、建物の外を少し歩くことになるが、歩かずに無料シャルバスの利用も可能)

多くの航空会社が有料となっている機内 WiFi が無料。(ただし回線速度はかなり遅かったり、繋がりにくいことも)

機体にもよるが(ちなみに ZIPが保有する機材8機はすべてボーイング 787-8)、機内にあるすべてのトイレではないものの、ウォシュレット(TOTOの商品名)付きのトイレもある。

一方、デメリット。

料金に含まれているものは運賃のみで(別途記載がない限り燃油チャージは含まれている)、機内食やスーツケースなどの預け荷物は別料金。(食べ物の持ち込みは可)

各座席にモニター画面がないので映画などを楽しむことはできない。
(各自がタブレットやパソコンなどを持ち込んで楽しめるように、それらを置くのに便利な小さなスタンドのようなものは用意されている。電源も完備)

エコノミークラスの座席の前後の配置間隔がやや短い(ZIPの公式サイトによると座席ピッチは 79cm)。ちなみに親会社のJALの国際線のエコノミークラスは機種にもよるが 86cm前後が一般的。

 その他にも LCCならではの細かいデメリットはあるが、すでにここまで読んだ時点で、「なんだよ、メリットよりもデメリットのほうが気になるなぁ。興味なし!」と思っている読者も多いのではないか。
 たしかにそのように感じるかもしれないが、ガッカリするのはまだ早い。
 ZIP の最大のメリットはエコノミークラスではなく「フルフラットクラス」(Full-Flat)にある。
 今回のこの記事は、そのフルフラットクラスを紹介するために書いているのでここからが本題。

 フルフラットの意味は、単語の意味そのままで、座席がフルフラットになる。つまり 180度まっ平らな座席になるので快適に寝られるというわけだ。
「じゃぁビジネスクラスとどこが違うんだ。なぜビジネスクラスと言わないんだ?」ということになるが、ハッキリ違う部分が2つある。
 それは食事がオプションなのと座席にモニター画面がないこと。
 その他にも、化粧品や小物が入ったいわゆるトラベルポーチが無料で提供されないとか空港ラウンジの利用など、一般的なビジネスクラスとの細かい違いはいくつかあるが、それでも実際の利用における決定的な違いはやはり食事と座席モニターに尽きると考えてよいだろう。

シートを180度フルフラットにして寝た状態。正面にモニターがないことがわかる。

シートを180度フルフラットにして寝た状態。正面にモニターがないことがわかる。

 さて、ここから先に書くことは主観的な部分が多いことをあらかじめ了解いただきたい。
 各利用者の価値観によって感じ方は人それぞれと思われるが、何度もビジネスクラスを利用したことがある人にとっては「大幅に安いのであれば、食事や座席モニターなどどうでもいい」と考えるのではないか。
 実際に一般の航空会社のビジネスクラスよりも数十万円は安い。
 どの程度安いかは、比較対象とする各航空会社の料金が季節や曜日などで激しく変動しているので、具体的な数字で表現することはできないが、この ZIP のフルフラットクラスの片道料金は 20万円台の前半程度だ。もちろんそれよりも高いこともあるが、30万円を超えることはほとんどない。

 20万円台の前半といえば、昨今のドル円レートで換算すると 1500ドル程度
 ZIP の場合、往復運賃はそのまま倍になることがほとんどなので、往復でも3000ドル前後ということになる。
 一般の航空会社の最近のビジネスクラスの往復料金は5000ドルを軽く超えることが多いので金額的なメリットは絶大だ。
(ちなみに今調べたところ、12月の成田-サンノゼのフルフラットは片道16万円台と驚異的に安い)

オーダーした牛丼。フルフラットクラスもエコノミークラスもオプションできる食事の種類や内容は同じ。一般のビジネスクラスの食事との落差が大きいが、ZIPに食事を期待してはいけない!

オーダーした牛丼。フルフラットクラスもエコノミークラスもオプションできる食事の種類や内容は同じ。一般のビジネスクラスの食事との落差が大きいが、ZIPに食事を期待してはいけない!

 すでにふれたとおり、日ごろの旅行でわざわざ高い料金を支払ってまでビジネスクラスに乗っている人の多くがビジネスクラスに求める内容は座席の広さ、つまり「長時間のフライトにおいて狭いエコノミークラスはつらい!」であって、食事、モニター画面、ポーチなどの優先順位は極めて低いはずだ。

 ビジネスクラスやファーストクラスの食事は見た目はゴージャスに感じたりするが、それは空の上での食事という非日常の環境で出されるのでそのように感じてしまうだけで、その機内食をそのまま地上のレストランで提供される場面を冷静に想像してみると、せいぜい2000~3000円程度の価値しかなかったりする。
 地上で3000円も出せば立派な海鮮丼が食べられるが、機内食はそこまでのレベルに達していないだろう。(キャビアやフォアグラなど高級食材が含まれていることもあるが)

機内の機内専用アプリから(WiFi利用)オーダーしたビール。プラスチックのコップだったのは LCCならではの御愛嬌といったところか。

機内の機内専用アプリから(WiFi利用)オーダーしたビール。プラスチックのコップだったのは LCCならではの御愛嬌といったところか。

実は機内アプリのこの画面では、写真で見る限りこのビール(500円は良心的!)はガラスのコップだった(笑) ちなみに精算はクレジットカード。

実は機内アプリのこの画面では、写真で見る限りこのビール(500円は良心的!)はガラスのコップだった(笑) ちなみに精算はクレジットカード。

 そもそもビジネスクラスやファーストクラスで自由に選べるメニューの中からカップ麺をオーダーして食べている日本人らしき乗客をしばしば見かける。
(JAL で言えば「UDON de SKY」。中身は日清食品の「どん兵衛」とほぼ同じ。なんとこの ZIPの機内アプリでも UDON de SKY をオーダーすることが可能!)
 せっかく数十万円も高い料金を払ってまで、地上で200円程度のカップ麺を食べるとは笑ってしまうが、食欲というか味的にはよく理解できる。リピーターにとってはそれだけ機内食には期待していないということの表れなのかもしれない。
 このように冷静に考えると、多くの利用者にとって数十万円も高い料金を払って乗るビジネスクラスの価値は機内食ではないことがわかってくる。

 モニター画面も同様で、機内映画など見なくてもパソコンやスマホに保存しておいたコンテンツを楽しめるし、書籍を持ち込んで読書にふけるのも良い。モニターがないからと言って、絶対的に不便というわけではない。
 トラベルポーチも同様で、何度も乗っている人にとっては持って帰ってもゴミになるだけで、そもそも持ち帰らない人も多いように見受けられる。

 また一般のビジネスクラスの特権としての空港ラウンジの利用もたしかに便利ではあるが、そこで提供される飲食物は「無料で利用できる!」という優越感というか特権的な喜びを感じさせてくれるには十分な内容ではあるが、機内食と同様、冷静に考えたら空港内のレストランで 5000円も出せば、もっと高いレベルのラーメンでも寿司でも好きなもの選んで食べることができる。
 そう考えるとラウンジの価値を金額に換算すると、どんなに高くてもせいぜい 5000円程度で(実際に多くの空港でエコノミークラスの者でも数千円払えばラウンジを使えるようになってきている)、この ZIP でも成田空港のラウンジ利用を 5700円で販売しているという現実を直視するならば、数十万円も高いビジネスクラスの価値はラウンジではないことがわかる。

成田空港のラウンジ。ZIP の搭乗者も利用できる。ちなみにフルフラットクラスの人も 5700円。

成田空港のラウンジ。ZIP の搭乗者も利用できる。ちなみにフルフラットクラスの人も 5700円。

 また出発ゲートでの優先搭乗も特権ではあるが、早く機内に入ったからといって、ウェルカムドリンクなどの提供はあるものの、エコノミークラスの人たちよりも目的地に早く到着できるわけではない。
 降機時に優先的に降りられる特権はあるが、入国審査で待たされたりスーツケースが出てくるのに時間がかかったりするなどで、結局エコノミークラスの人たちと同じだったりする。
 スーツケースに優先タグを付けてもらえても、これまたエコノミークラスのスーツケースとほぼ同じタイミングで回転台に出てくることはよくあることだ。

一般のビジネスクラスと同様、頭上の収納棚は座席ごとの専用になっているので収納スペースに困ることはない。

一般のビジネスクラスと同様、頭上の収納棚は座席ごとの専用になっているので収納スペースに困ることはない。

 というわけで、人によって価値観はさまざまなので異論があることを承知の上であえて勝手に決めつけて書いてしまうならば、ビジネスクラスに高い料金を払ってまで乗る人が本当に求めているものは、「エコノミークラスの狭い席だけは勘弁してほしい! 座席さえ広ければ他のことはどうでもいい」というのが本音ではないだろうか。

 この勝手な決めつけに「たしかにそうだ! 同じ考えだ!」と共感してくれた読者には ZIP のフルフラットクラスを真剣におすすめしたい。
(くどいよだが、広告案件の記事ではない。また経済的にもっと余裕があるハイクラスの人たちが「LCCなんかに乗れるわけ無いだろっ!」と考えるのは当然のことで、そういう人たちがおカネを落としてくれるからこそエコノミークラスの人たちが安く乗れるわけで、今まで普通のビジネスクラスに乗っていたすべての人にこのフルフラットを勧めているわけではない)

 たぶん ZIP の経営陣も、「座席さえ広ければいいのに」といった人たちの需要を狙って機内食や座席モニターを省略しコストを下げ、安い価格で寝ていけるシートを提供する戦略を取っているものと思われる(機内食やモニターを無くすことで機体全体の重量を減らし燃料の節約、さらに飛行のたびに毎回モニターの動作チェックや修理の手間などを省けるので大きなコスト削減効果)。
 ちなみにその戦略が当たっているのか、ZIP は直近の決算で予想以上の利益を計上しており経営は順調のようだ。

日本航空の子会社の ZIP は、写真からもわかる通り第1ターミナルから出発。日本航空が第2ターミナルなので勘違いしやすい!

日本航空の子会社の ZIP は、写真からもわかる通り第1ターミナルから出発。日本航空が第2ターミナルなので勘違いしやすい!

 というわけで長くなってしまったが、もしベガスフリークの人たちで「エコノミークラスの狭い席だけはムリ。でもビジネスクラスは高すぎるので今はベガスに行く気にならない」と思っている人がいたとしたら、ぜひ ZIPフルフラットクラスを検討してみてはいかがだろうか。
 最後におさらいとして、このフルフラットクラスのメリットとデメリット(サンノゼ路線に限らず、LAX路線、SFO路線も含めての)を列挙して終わりとしたい。

メリットは、寝ていける座席なのに一般の航空会社のビジネスクラスよりも断然安い ということ、ただそれだけ。

デメリットは:

エコノミークラスと同様、座席モニターがない(電源はある)

食事はオプションで有料

飲み物もビールなどのアルコール類も含めて機内アプリでオーダーできるが有料

スーツケースなどの預け荷物も有料

人気がありすぎるだけでなく、座席数が少ないので(18席)早めに予約しないとすぐに満席になってしまう。3ヶ月前に満席になることも少なくない。

他の大手の航空会社とは異なり、日本側は成田空港だけで羽田には発着していない。都心部の在住者や、羽田での乗り継ぎを必要とする地方在住者には不便。

サンノゼ、ロサンゼルス、サンフランシスコの各都市とラスベガスを結ぶアメリカ国内線は別に手配する必要がある
 ちなみにその区間の路線に強いサウスウェスト航空のフライトは片道 100ドル以下の便が多数。
(なお ZIP は今年の春からバンクーバー路線も新設。この路線も検討の価値がありそう)

スターアライアンス、ワンワールドなどのマイルを集めている人たちにとっては不都合なことが多い。ZIPポイントJALマイル との互換性に関しては公式サイトを参照のこと。

United や American など国際線も国内線も同じ航空会社にした場合、乗り継ぎのゲートが近接していることもあるが、ZIP の場合、そのような期待はムリ(前述したように特に往路の場合)

 なお、スーツケースを預ける際の料金、機内食の料金や料理の種類、機内持ち込み手荷物にも重量制限があること、ブランケットや枕など機内で使用する各種グッズの料金などは公式サイトを参照のこと。

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コメント(5件)

  1. 栗田直敏 より:

    ZIPの最大のデメリットは、航空券を購入したら、払い戻しができないことです。私は2020年の10月にラスベガス行きをキャンセルしたことがありますが、JALでしたので数万円のキャンセル料で済みましたが、ZIPだったら出入国税以外は返金してくれません。

  2. ぴろりん より:

    サンフランシスコベイエリア在住者です。
    私はとにかく安く日本に飛びたいのでZIPAIRを重宝していて、エコノミー席を何度も利用しています。
    大全さんがZIPのメリットを書いていますが、もうひとつ追記したいメリットとして、子供料金がある点をあげたいです。JALやANAなどは2歳以上は大人料金になりますが、ZIPは6歳未満までは子供料金が適用されます。ですので、6歳未満のお子さんがいるご家庭ではZIPAIRはトータルの料金が安くなります。

    デメリットは一度購入すると払い戻しができない点ですね。ただ、昨年、出発時刻を勘違いして飛行機を乗り過ごしてしまいましたが、幸い、その翌日のZIPAIRが$400で買えたので、買い直しでもそこまで悪くないような気もします(と言ってもこれは時期によって値段が変動しますので、私がラッキーだっただけなんですが)。

  3. ラスベガス大全 より:

    栗田様
    キャンセルができない件、すっかり書くのを忘れていました。
    たしかにおっしゃるとおり、重要なデメリットでしたね。
    ご指摘ありがとうございました。

    ぴろりん様
    子供料金の件、こちらはまったく知りませんでした。
    貴重な情報、ありがとうございました。

    お二人共、引き続きよろしくお願いいたします。

  4. Mr.TAKE より:

    ランバーサポートがないのもデメリットです。バスタオルをいつも腰にひいてなっています

  5. ぴろりん より:

    ZIPについて、ひとつ思い出したことがありました。重箱の隅をつつくような小ネタですが知っておいて損はないので書いておきます。

    多くのエアラインでは往復チケットを購入して、往路便に乗らなかった場合、復路チケットが無効になってしまいます。ですが、ZIPではそれがありません。往復チケットを購入して、往路便に乗らなくても、復路のチケットは有効です。

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