今週は、このラスベガス大全フォーラムの中で話題になったエリスアイランドのレストランに関して、他の読者から「週刊ニュースで取り上げてほしい」とのリクエストがあったので、それについて書いてみたい。
まず最初に、このエリスアイランドはストリップ大通りに面していないことをお伝えしておく必要があるだろう。
ストリップにある主要ホテルとしてはバリーズが最も近いと思われるが、そのバリーズからでも東方向に約10分ほど歩く必要があり、決して便利な場所ではない。滞在ホテルの位置によっては徒歩は現実的ではないので、タクシーやウーバー利用ということになる。
エリスアイランドは昔ながらの小規模なカジノだ。モーテル形式の宿泊施設も有しているので、さしずめプチ・カジノホテルといった感じの施設だが、今回ここで取り上げるのは、そのカジノ内にあるレストラン「Village Pub Cafe」。
この店の特徴はなんといってもビール製造施設が店に併設されていることで(写真はその施設)、いわゆる地ビールを出す店として知られている。しかしもう一つこの店には特筆すべきことがある。それは価格の安さだ。
日本がデフレすぎるためか、一般の日本人観光客がこの店の価格設定を知ったところで、「安い!」とは感じないかもしれないが、ストリップ地区のホテル内の店の価格設定の高さを考えると、相対論としてかなり安いことは間違いない。
その証拠に、地元最大の発行部数を誇る日刊紙 Las Vegas Riview-Journal が、読者や記者の投票により、毎年各カテゴリー別に「Best of Las Vegas」という賞を選出しているわけだが、この店は、ベガスに数ある飲食店の中から、2016年度の BEST CHEAP EATS 賞を受賞している。(写真は、店内に飾られているその賞状)
「地元有力紙のお墨付き」と表現するのは少々大げさかもしれないが、投票というある程度客観性のある方法で選出されたことを考えると、この店の安さは本物と考えてよく、価格重視派にとっては覚えておいて損はない貴重な店といってよいだろう。
料理のジャンルや店の形態としては、ファミリーレストラン的なものを想像すればよく、メニューはごく普通のアメリカの庶民が好むような一般的なものが中心。
つまり朝食でいえばトースト、パンケーキ、ワッフル、オムレツなどで、ランチやディナーでいえばハンバーガーやステーキといった感じになるが、朝からステーキもやっているので、時間帯を気にせず好きなモノをオーダーしてかまわない。ちなみに営業時間はもちろん24時間となっている。(もちろんの意味は最後に解説)
店内は昔ながらの古い雰囲気が漂っており、近代的なインテリアが好まれがちな最近のレストランと比較すると天井も低く、照明も総じて暗い。
気になる料理のレベルについてだが、いろいろなものを食べてみたわけではないので、勝手な想像でのコメントは控えるとして、実際に食べてみた料理に関しては(写真に写っている「サーロインステーキ & エッグ」や「フライドチキン & ワッフル」)、値段のわりにはまぁまぁといったレベルだった。
全体としても、低料金ながらも可もなく不可もなくといったレベルを維持していると考えてよいのではないか。
この店の特徴は料理そのものよりも安さなので、話題を価格に変えさせてもらうと、パンケーキ $4.99、フレンチトースト $4.99、エッグベネディクト $6.99、オムレツ $6.99、フライドチキン & ワッフル $7.99、サーロインステーキ & エッグ $11.99 などとなっている。
自家製ビールは小瓶サイズの量のグラスで $2.75、ボトルのミネラルウォーターが $0.75、各種ボトルワインは $24から。
これらの価格をどのように評価するかは各自の判断に任せるとして、最後に「24時間営業」に関して。
ここからの話は、このエリスアイランドに関してではなく、カジノを運営するための免許に関する余談。
カジノの運営に対しては、当然のことながらそれなりの法律があり、いくらカジノが合法化されているネバダ州とはいえ、だれもが自由にカジノの胴元をやり始めてしまったのでは、カジノが街中に乱立し、業界も市民生活も混乱してしまうので、州当局はいわゆる「参入障壁」として、カジノの開業に対して厳しい条件を設定している。
以下がその条件で、1991年に法律として制定した。つまり、これら条件を満たしていないと、カジノを開業することができない。事実上、個人や中小企業の資金レベルでは参入できないことがうかがえる。
◎ 201室以上の宿泊施設がカジノに併設されていること。
◎ 30席以上のバー施設がカジノ内にあること。
◎ 60席以上のレストランを24時間、年中無休で運営すること。
この3番目の条件を満たす店のことを、カジノ業界では通常「カフェ」と呼んでおり(法律の条文の中では、restaurant が使われており、cafe という言葉が特に使われているわけではない。また、実際の店の名前に cafe を付ける必要はない)、Village Pub Cafe はまさにこの条件を満たしており、カジノの免許を取得・維持するための店ということになる。
ちなみにエリスアイランドには 201室以上のモーテルが併設されているだけでなく、30席以上のバーもあることはいうまでもない。
なお、この法律ができる1991年よりも前から存在していたカジノに対しては、いわゆる “Grandfather” (日本でいうところの既得権)が適用され、上記条件を満たしていなくてもカジノを運営し続けることができるという例外規定があり、ダウンタウン地区などに、201部屋に満たない小さなカジノがあったりするのはそのためだ。
(エリスアイランドは、レストランとしては 1968年の開業だが、現在の形のカジノとして営業を始めたのは 1997年)
ついでなのでこの規則をもう少し補足しておくと、カジノ免許には、カジノの規模によって二種類あり、スロットマシンやビデオポーカーなどのマシンゲームを15台までしか設置できない小規模なカジノ(バー、コンビニ、給油所などで見かける形態のカジノ)と、それ以上の規模のカジノ(一般のカジノホテルなど)に分かれている。
日本的な表現をするならば、前者が乙種免許、後者が甲種免許となり、今回の上記の3つの条件は甲種の免許に対するものだ。
この規則の存在を知っておくと、ラスベガスのカジノホテルにおいては必ず60席以上の24時間営業の飲食店があるということがわかり便利だ。どんな時間帯でも探せば必ずある。
店の名前には「~ Cafe」という形で「カフェ」が最後に付いていることが多いが、必ずしも「~カフェ」の店のすべてが免許取得のためではないので、「~カフェ」だからといって24時間営業とは限らないことはいうまでもない。