今週は、今年で5回目を迎え、すっかりラスベガスに定着してきた感のある秋の風物詩 RiSE を紹介してみたい。
RiSE とは、夜空にランタンを飛ばす幻想的なイベントで、今年の開催日は 10月5日と翌 6日。開催場所は、ラスベガスのホテル街から車で南に30分ほど走った地点に広がる砂漠地帯の中。
ちなみに英単語の rise の意味は「上昇」なので、この RiSE という名称もそれを意識してのネーミングと思われるが、あくまでも主催者団体がこのイベントに対して付けた固有名詞であって、ランタン関連のイベントの総称ではない。
名称こそ異なるものの、類似のイベントは、日本を含め世界中で流行の兆しを見せており、「夜空にランタンを!」といったたぐいの行事は、もはや珍しいものではなくなりつつある。
特に台湾やタイのものは日本人の間でも人気のようで、それらに参加するためのパッケージツアーなども急増中と聞く。
ブームということになると当然のことながら、伝統文化的な行事だけではなく、商業主義的なランタン・フェスティバルのようなものが増えてくることも自然な流れで、実際にこの RiSE もビジネス目的のイベントと考えてよいだろう。
伝統行事、ビジネス、さらには追悼イベント、チャリティーイベントなど、ランタンを飛ばす目的やコンセプトはさまざまで、また、毎年決められた時期に開催されるものもあれば、台湾の十分(シーフェン)のように、1年365日いつでもランタンを飛ばすことができる場所もあるなど、その形態は多様化してきている。
そんな数あるランタンイベントの中で、この RiSE にはどのような特徴があるのか。
それはなんといっても規模だろう。とにかくランタンの数が半端ではない。
世界各地の類似イベントでは、せいぜい千個から数千個ぐらいまでだが、RiSE ではなんと2万個が夜空に舞い上がるというからまさにケタ違いだ。
関係者によると、ギネスブックなどには申請していないようだが、この数は世界一らしい。
「ベガスの RiSE を経験したあと、アジアの類似のイベントを見ると、あまりにも規模が違うことにガッカリする」という話を聞いたことがあるが、まんざら大げさではないのかもしれない。
スケールの大きさはランタンの数だけにとどまらない。開催場所の広さもケタ違いで、たぶんこれも世界一と思われる。ではどれほど広いのか。
実はその広さを数字で表すことはむずかしい。なぜなら現場は砂漠の中にあるため、番地、地名、区画などがないばかりか、会場の範囲も明確ではなく、測定不能だからだ。
とはいえ、場所を特定できないと不便なので、しいてその場所を表現するならば、「モハベ砂漠に数多く存在するドライレイクの中のひとつ」ということになる。
モハベ砂漠とは、アメリカ南西部に広がる広大な砂漠地帯のことで、ドライレイクは、水が干上がった湖のこと。
今回会場となるそのドライレイクの外周は約8km。世界広しといえども、これほど広大な場所でランタンを飛ばすイベントはたぶん他にないだろう。
なお、この場所の正確な位置を知りたい場合は、そのドライレイクの中心が北緯35.7887度、西経 115.2567 なので、グーグルマップの検索ボックス内に「35.7887, -115.2567」と入力すると、その場所を確認することができる。
RiSE の特徴は、ランタンの数や広さといった規模的な部分だけではない。他の開催地と比べ、天候、周囲の環境、そして宿泊施設などの条件が圧倒的に恵まれていることも特徴だ。
雨が降ることはまずないので中止になってしまう可能性がほとんどなく、周囲に民家などが一切ないため、大きなランタンをたくさん飛ばしやすい環境にあり、またラスベガスには巨大なホテルが無数にあるため、1万人が押し寄せてもなんの問題もなく受け入れ可能というわけだ。それが結果的に大規模な開催を可能にしている。(RiSE の観客の定員は1万人)
なお、これはたまたま偶然に巡り合わせた好条件ではあるが(主催者が意図的にねらった可能性もあるが)、今回の開催日の夜空に月はない。
暗い夜空の演出には満月などはじゃまになるわけだが、ランタンを飛ばす予定時刻 10月5日 20:15 における月齢は 26.38日なので、半月はおろか三日月もない。翌日も同様だ。
というわけで、ここまで良いことばかりを書いてきたが、悪いこともないわけではない。
以下にそれを列挙してみたので、実際に参加を検討している者は、知っておいたほうがよいだろう。
この RiSE は、夜だけのイベントではなく、実際にランタンを空に放つ時刻(午後8時ごろ)の4時間ほど前から、ステージで生演奏が始まるなど、音楽フェスティバル的な演出も含まれているため、そのような部分に興味がない者にとっては時間を持て余す可能性がある。
また、当然のことながら空腹になった場合、食べ物や飲み物を買い求める必要があるわけだが、行列になってしまうことが多い(昨年度までの場合)。
ランタンは想像以上に大きく(長さ1メートル程度、直径もかなりある)、固形燃料に火をつけ、内部の空気を温める作業に思いのほか時間がかかり、飛ぶようになるまでの作業はかなり疲れる。
ちなみに飛ばすランタンの数は、参加者1人につき2個まで。追加で飛ばしたい場合は1個につき $12。
閉会後、シャトルバスに乗るための行列、そしてシャトルバスが駐車場から出て高速道路に入るまでの渋滞がひどい。レンタカーで行った場合も同様に駐車場で大混雑する。
以上のように問題点もいくつかあるが、今年は昨年の会場とは異なる場所なので、改善されていることに期待したい。(この写真は昨年のもの)
さて、参加の方法だが、公式サイトに行ってチケットを買う必要がある。チケット料金は $129 、マンダレイベイホテルから出発するシャトルバスの往復運賃が $39、それにチケット販売手数料の $19.81 と、運賃に対する税金 $3.18 が加算され、$193.86 が最終合計となる。
レンタカーで行く場合は、シャトルバスの運賃 $39 の代わりに現地の駐車場代が $29 になるので、合計は $182.31。
どちらで行くにせよ、まもなく売り切れのようなので、参加を検討しているなら早く行動を起こしたほうがよい。公式サイト(英語)は以下の通り。
https://risefestival.com/event-details/
なお、「自分で手配し、自分で行くのは心配」という場合は、エイチ・アイ・エスのラスベガス支店が、この RiSE ツアーをやっているので、それに参加するという方法もある(ただし 10月5日限定)。
ツアー料金は $269 だが、その申込みサイト(日本語)の「クーポンコード」のところに、ラスベガス大全読者専用のクーポンコード LVTAIZEN と入力し、オレンジ色の「適応」をクリックすると $10 割引になって $259 になるとのこと。(4名以上の場合、さらに $20 安くなる)
自分ですべてを手配しシャトル利用で行く場合よりも $65 ほど高いことになるが、日本語ガイドによる入場手続や小道具一式セット(ランタン、固形燃料、マットなど)の受け渡し、さらには点火方法の指導などが含まれているばかりか、ホテル街の最南端にあるマンダレイベイのシャトル乗り場まで行く手間が省けることと、帰りの渋滞がほとんどないことなどを考えると(RiSE のオフィシャルバスをチャーターし、専用駐車場を確保するため一般参加者とは別行動が可能)、このツアーに参加するのも良いかもしれない。その日本語サイトは以下の通り。
https://tour.his-usa.com/city/las/detail.php?tid=5005
最後に、多くの人が知りたがっている質問として、「2万個も飛ばしたランタンはどうなってしまうのか?」に関して。
主催者いわく、「あまり遠くまで飛んで行かないように固形燃料の量を調節してあり、落下したランタンはすべてボランティアなどが回収。仮に回収できなかった場合でも、自然界に溶け込める材料で作ってあり、環境破壊になるようなことはない。もちろん当局の許可も得ている」としている。
ちなみに、イベント会場外の広大な範囲を含めて回収活動を行うわけだが、もともと落ちていた他のゴミもついでに拾うことになっており、開催前よりもきれいな砂漠になるとのこと。