CESは「家電見本市」でも「セス」でもない!

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CES 今年も CES の季節がやってきた。来週の火曜日から盛大に開催される。
 CES とは、50年も前から続くハイテク業界の祭典で、ラスベガス最大のコンベンションであると同時に正月の風物詩でもある。
 ちなみにその名称の CES は、長らく Consumer Electronics Show の頭文字を取った略称であって、正式名称ではなかった。

CES しかし数年前から主催者は、このイベントのことを Consumer Electronics Show と呼ぶことを避けるようになり、International CES などと表現してきた。
 理由は、Consumer(消費者)という言葉が、出展企業の業種や出展商品の実態にそぐわなくなってきたからだ。
 Consumer Electronics というと、一般的にはテレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電をイメージしてしまいがちだが、実際に展示されている商品は電子部品から自動車まで、ありとあらゆる分野におよんでいる。
 それでも日本のメディアは、今でも Consumer Electronics という部分を無理やり訳したいのか、このイベントのことを「家電見本市」などと表現することが多い。
 そんな現状に問題意識を持ったのか、ついに主催者は、2018年以降のイベントに対して、以下のようなメッセージを発信した。

The official name of the global technology event is “CES”. Please do not use “Consumer Electronics Show” or “International CES”.

 つまり、世界中のメディアに対して、従来からの略称である CES が正式名称になったことを通達したのである。
 それでも、日本のメディアのみならず、アメリカのメディアもいまだに「CES(Consumer Electronics Show)」などと表記しているのが現状で、元の正式名称が忘れ去られるまでにはまだしばらく時間がかかりそうだ。
 いずれにせよ、家電製品の展示はほんの一部なので、日本のメディアは「家電」という言葉は使うべきではなく、「ハイテク見本市」など、別の表現に切り替えるべきだろう。
 蛇足になるが、この CESを主催する団体の名称は、今でも Consumer Technology Association というから、なんだか笑えてくる。自らの名前から Consumer の文字を取るつもりはないのだろうか。

 名称の話題が出たついでにもうひとつ。CES を「セス」と呼ぶのもやめたほうがよい。実際の読み方はもちろん「シー・イー・エス」だ。
 日本のエレクトロニクス業界の間では、セスと呼ぶ習慣が定着してしまっているようなので、個人レベルや社内レベルではかまわないが、メディアの報道としては好ましいことではないだろう。たとえば、会場にタクシーなどで向かう際、運転手に「セス」と言っても通じないからだ。
 ちなみに朝日新聞は昨年のこのイベントに関する報道においても、「世界最大級の家電・技術見本市 CES(セス)」と、わざわざカタカナを付け加えて報道していた。

CES 名称のことばかりで話が長くなってしまったが、今年の CESは、1月9日から 1月12日までの日程で、ラスベガス・コンベンションセンター(以下、LVCC)、サンズ・エキスポ・コンベンションセンター(同、SECC)、各ホテルのボールルームなど、市内のさまざまな会場で開催される。
 出展企業や業界関係者のみならず、世界中からメディアも集結するため、どこのホテルもほぼ満室状態で宿泊料も高騰。結果的に一般観光客は締め出されるかたちになってしまい、CESウイークだけはカジノ都市ラスベガスも日ごろのお遊び系の雰囲気はトーンダウン。観光客やギャンブラーの代わりにエンジニアやビジネスマン、ビジネスウーマンたちを迎え入れる真面目な都市となる。

CES ハイテクといえば日本のお家芸なので(中国や韓国の台頭で、最近はそうでもなくなりつつあるが)、日本からの出展企業も多く、たくさんの日系企業の関係者がベガスを訪れる。
 そして毎年このラスベガス大全にも、初めてCESを体験する出張族などから、「限られた時間内で効率よく見学するにはどうしたらよいか」といった問い合わせが寄せられる。以下に CES見学のための初歩的なノウハウを書き出してみた。

CES まず最初にやらなければならないことは、入場バッジを受け取ること。(写真内のビジネスマンが首からぶら下げているのがそのバッジ)
 LVCC や SECC などのイベント会場のみならず、空港や主要ホテルなど市内 28ヶ所でもバッジを受け取ることができる。
 どこで受け取ってもかまわないが、LVCC や SECC は長蛇の列になることもあるので、時間を有効に使いたいのであれば、空港に到着した際、スーツケースなどが回転台に出てくるまでの時間を利用して受け取るとよい。
 空港内でバッジを受け取れる受付カウンターがある場所は、回転台が並ぶ付近で周囲を見渡せばすぐにわかるはずなので心配は無用。
 そのカウンターで、あらかじめ登録してある名前を申し出るか、事前に受け取っているバーコードなどをパスポートと一緒に見せれば、すぐに発行してもらえる。
 なお今年から、不正入場や治安維持のため、入場バッジには本人の顔写真が印刷されることになっているので、同僚のバッジなどを使おうと思っている者は要注意だ。また、爆弾テロなどを警戒して、大きなバッグなどの持ち込みが禁止されているので、手荷物などにも注意が必要。

CES 滞在ホテルから会場へ行くための交通手段は無料の専用バスに限る。もしくは渋滞を避けたいのであれば、モノレールでもかまわない。
 タクシーは長蛇の列になることが多く、また安いことで人気の Uber や Lyft は運賃が通常時の数倍になる可能性もあるので、あまりおすすめできない。(タクシーの場合、需要が高くても料金は一定だが、 Uber や Lyft は変動する)
 専用バスとは、CESの主催者が手配している大型バスのことで、ほとんどすべての主要ホテルとイベント会場の間をピストン輸送する形で運行。乗り場や運行開始時間などは各ホテルのロビーに大きく掲示されるので簡単にわかるようになっている。
 モノレールはストリップ大通りの東側を走っているので、MGMグランド、バリーズ、フラミンゴ、リンクなどの各ホテルの宿泊者にとっては利用しやすいが、西側のホテルに滞在している場合はあまり便利とはいえない。
 なお、以下のサイトに、CES参加者向けのモノレールの割引料金に関する情報が掲載されているので利用してみるとよいだろう。

https://tickets.lvmonorail.com/CES2018/ 

CES さて一番悩むのが、展示会場が複数に分かれているので、どの会場を優先して見るべきかということになるわけだが、それは一概にはいえない。
 なぜなら大企業の革新的な技術を見たいという者もいれば、仕入先としての中小の部品メーカーなどを探している者もいたりするわけで、各自のCESに対する訪問目的が異なるからだ。
 したがって、現場で配布される出展企業リストなどの資料をよく見て各自で判断するしかないが、以下のように会場ごとの特徴がある程度決まっているので、それぐらいは知っておいたほうがよい。

 LVCC の Central Hall
CES 世界的なエレクトロニクス関連の大企業が集まる会場。CESの数ある会場の中でも最も中核をなすメインホールで、野球でいえばメジャーリーグ的な存在。出張レポートなどのための写真を撮るならこの会場がベスト。日本からはソニー、パナソニック、キャノン、ニコン、カシオなどがこのホールに出展。その他の巨大ブースとしてはインテル、クアルコム、ポラロイドなどがある。韓国系、中国系企業の存在感も大きい。なお東芝は粉飾決算などの不祥事による業績不振の影響か、一昨年まで長らく確保してきた定位置の巨大ブースを手放した。

 LVCC の North Hall
CES 全自動運転カーやコネクテッドカー(ネットにつながっている車)などの開発で、しのぎを削る自動車業界を中心とした会場。トヨタ、ホンダ、ニッサン、フォード、KIA、ヒュンダイなどの自動車メーカーから、デルファイ、デンソー、パイオニア、JVC・ケンウッドなどの部品メーカーやカーオーディオ系の企業まで、大小さまざまなブースが並ぶ。なお、昨年出展していたフォルクスワーゲン・アウディのグループは(写真右上)、今年はウィンホテルで関係者だけを招待する参加にとどめ、このホールにはブースを出さない。コネクテッドカーにおいて、グーグルやアップルと距離を置くトヨタの動きに注目。

 LVCC の South Hall、1階 & 2階
 このホールは野球でいえばマイナーリーグ、つまり中規模のエレクトロニクス関連企業が中心となっている会場で、ジャンルとしては電子部品関連やスマホやドローンなどのメーカーがひしめき合う。スマホのケースなど、アクセサリー関連のメーカーも多数。昨年まで LVCC に出展していたセグウェイもこのホールに移動。

 SECC の 2階
 このホールは、いわゆる家電系のメーカーが中心で、ジャンルとしては、家電、健康器具関連、スポーツ関連、住宅関連など、ホームエレクトロニクス全般。ハネウェル、ワールプール、アマゾン・アレクサ、そして日本の TOTO もここにブースを構える。3Dプリンター関連のメーカーも数多く出展。昨年までここにブースを出していた JETRO は下の階に回った。スポーツ・健康ジャンルの企業として昨年大きなブースを構えていたアンダーアーマーは出展を見送っている。

 SECC の 1階
CES ここは世界中の中小企業が集まるカオス状態の激混みの会場(この写真はすいている時間帯に撮影)。分野はハイテク系からアダルト系まで「こんなモノ、売れるワケがないじゃん!」と思われるような意味不明の商品など何でもありといった感じ。ブースのサイズは、通称「テン・バイ・テン」(10フィート x 10フィート の意味)と呼ばれる日本でいえば「3坪店舗」の超ミニ・ブースばかりが約800ほど軒を並べている。考えようによっては CESで最も面白い会場といえなくもない。将来の大企業がここから生まれるかもしれないと思いながら見学すると、さらなる興味が湧いてくるはず。

 Westgate Hotel
 Westgate Hotel は LVCC に直結するコンベンション会場を持つ。ここも SECC の1階のように中小企業の小さなブースが目立つが、ジャンル的には電子部品やバッテリー、それにPCの周辺機器など、技術オタク向けのモノが多く、ふざけた商品やバカバカしい商品の展示は、SECC の1階ほどは多くない。

 その他にもウィンやアリアといったホテルが会場になったりもしているが、業界関係者のコンファレンスや商談などのためのスペースがメインで、商品の展示は限られており、時間に余裕がある者以外は行く必要はないだろう。
 なお、キーノートスピーチと称される業界著名人の講演会も多数予定されており、インテル、フォード、ファーウェイ、クアルコム、ベライゾン、バイドゥ、ペプシコ、ユーチューブなどの企業の社長や会長が公演することになっているが、残念ながら今年は日系企業のキーノートスピーチは予定されていない。(昨年は日産自動車のカルロス・ゴーン社長が登壇。なおキーノートスピーチではなく、自社ブースや自社開催のコンファレンスなどで各社の社長がスピーチすることは、日系企業でも珍しいことではない)

 以上長くなってしまったが、これらの情報を参考に効率的に会場を回っていただければ幸いだ。会場間の移動は、もちろん無料の専用バスで可能だが、朝から晩まで見学した場合、毎日2万歩ぐらい歩くことになるので、履き慣れたシューズがおすすめ。

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