今年の1月、このセクションでマリファナ解禁に関する話題を取り上げたところ(週刊ラスベガスニュース第1042号)、「日本で禁止されているものを、日本人読者に紹介するとはいかがなものか」といった抗議的な意見から、「さらなる詳しい情報を期待しています」といったマリファナ体験を希望しているかのような要望まで、さまざまな意見がメールで寄せられた。
そして先月から今月にかけて、マリファナ販売店の営業開始を知ったと思われる読者から、「ホテル街から一番近い販売店を教えてほしい」、「どこの販売店が安いですか」といった意見が散発的に寄せられるようになった。
念のため、抗議派からこれ以上の抗議を受けることが無いよう、あらかじめ伝えておくと、1月の記事も今回のこの記事も、マリファナ体験を奨励しているわけではない。あくまでも現状の報告 だ。
当たり前のことだが、地元のメディアは何も隠すことなく、きちんと現状を伝えているし、もちろんそれらテレビニュースや新聞記事で、マリファナ体験を奨励しているわけではない。
したがって、ここで現在の状況を書くこと自体、倫理的に何ら問題はないと考えるが、日本で禁じられている行為に関する情報を、日本語で発信することに、まったくためらいがないわけではない。
ちなみに日本の大手旅行会社などは、もっとためらいを感じているのか、在ベガスの現地ガイドに対して、その対応を統一しており、自社の顧客からマリファナに関して質問を受けた際には、「わかりません」、「あいにく情報を持ち合わせておりません」などと答えるように徹底しているようだ。まちがってもマリファナ販売店の場所を教えてしまうようなことはしていない。
そのような事情もあり、ガイドから教えてもらえなかった者が、こちらに問い合わせてくることは、今後ますます増えてくる可能性があるが、すでに書いた通り、こちらもためらいがあるばかりか、そもそもマリファナ体験などまったく奨励しておらず、実際に販売店に関する詳しい情報も持ち合わせていないので、旅行会社のガイドと同様な返事をこれまでして来たし、今後もその予定だ。
その一方で、情報発信を業務としている立場として、「臭いものにはフタ」的な発想でいいのか、という問題意識もある。
そんなこんなで悩んでいたところ、もはや「臭いものにはフタ」ではあまり意味がない状況になってきていることに気づいた。
街の中にマリファナ販売店の広告が氾濫し始めたのである。ただのビルボード的な動かない静的な広告だけではない。いやでも目立ってしまう「街の中を走る広告」までもが登場してきている。もはや隠せる状況ではなく、子供の目にも留まってしまうのが現状だ。
以下の写真がその走る広告。かなり衝撃的な写真かも知れないが、現在の状況を知ってもらいたいという思いから、あえてここで公開することにした。(もちろん当社はこの写真内の広告主とは何ら関係なく、宣伝料などをもらっていないことは言うまでもない)
撮影場所は、ホテル街のほぼど真ん中ともいえる LINQ ホテルの前のストリップ大通り。子供もたくさん見ている昼間の時間帯からこのような広告車両が走っているから驚きだ。
マリファナといえども、合法化された限り、一般の商品と同様に大々的な広告が打たれても、それは資本主義経済の中の商業活動として何ら不自然ではないが、それでもこの写真は多くの人にとって、違和感を禁じ得ないのではないか。
街の中にはこの写真の広告以外にも、さまざまな形態の広告がたくさん存在しているが、それらをここで掲載すればするほど、その販売店の宣伝になってしまうので、あえてこの広告だけ典型的な写真として紹介することにしたが、とにかくこれが現在のベガスの実態だ。
いずれにしても、こちらラスベガス大全ではマリファナ関連の問い合わせには応じられないということをお伝えして終わりとしたいが、解禁に至るまでの経過や、有権者が住民投票で解禁に賛成票に投じた理由などに関しては、バックナンバー 1042号を参照していただきたい。
なお最後に最も重要なこと。それは、たとえ日本の国外といえども、日本人は日本の法律によって違法行為となる ことと(そうではないという専門家の意見もあるようだが)、マリファナを買うことができたとしても、それを使用する場所がない ということ。
使用できる場所は、自宅などプライベートな場所に限られており、公共の場所、たとえばレストラン、バー、カジノなどはもちろんのこと、路上、公園、野山、キャンプ場などの屋外も禁止で、ホテルの客室内も不可だ。(そもそもホテルの客室内は、タバコすらほとんどのホテルが禁止にしている)
したがって、ベガスに自宅や別荘を持たない一般の観光客にとっては、ベガス在住の友人などの人脈がない限り、マリファナを吸える場所はないことになる。(ただし今後の議論によっては、当局の許可を受けた酒場で吸えるようになる可能性はゼロではない)
くどいようだが、以上の2つ、つまり日本人にとっては違法行為であることと、使用する場所がないこと、これだけは絶対に忘れないようにしていただきたい。