先月、いわゆる 「半額ショーチケット屋」 と呼ばれるディスカウント・チケット店が新規にオープンしたので紹介してみたい。
これまでに存在していたディスカウント・チケット屋といえば、このコーナーで何度も取り上げてきた Tix 4 Tonight (以下、Tix) が有名というか、ほとんど Tix の独占状態。(Tix に関してはバックナンバー 912号、812号、639号、426号に掲載)
今回紹介するのは、そのライバル的な存在として新たに登場した Tickets on Demand で、このたび一気に5店舗がオープンした。
「Tix を知っておけば、それで十分ではないか」 と思われるかもしれないが、両者の間には大きく異る部分が3つあるので、Tickets on Demand (以下、Tickets) も知っておいて損はない。
両者の違いを説明する前に、初めてこのサイトを訪れる読者のために、まずはディスカウント・チケット屋について。
ここでいうディスカウント・チケット屋とは、各ナイトショーの劇場前にある公式のボックス・オフィス (チケット販売窓口) とはまったく別に存在している独立系のチケット販売店のこと。
自称 “Half Price Show Tickets” (半額ショーチケット) などをうたい文句にしていることが多いが、それはあくまでも最大に割り引かれたときの話であって、いつも半額で売っているわけではない。
つまり 「半額になることもあるよ」 といった程度で、実際には 20~40%程度の割引率であることがほとんど。さらに販売手数料と称して、チケット 1枚につき数ドルが加算されるので、値段的にはあまり大きな期待はしないほうがよい、というのが現実だ。
それでもボックス・オフィスの正規価格と比べると安いことはたしかなので、始めから無視するのは賢明ではない。
特に最近は Tix の多店舗化による露出度の高まりから (現在 Tix は8店舗)、始めから Tix で売られることを前提に、つまり 「ボックス・オフィスで正規の値段で買う者は少ないだろう」 との目論見で、定価を異常に高く設定しているショーも増えてきている。
ようするに、「正規の値段で買ってくれれば儲けもの」 という戦略なので、もし観たいショーがあって、まだチケットを買っていない場合は、必ず Tix や今回オープンした Tickets の窓口に行って、各ショーの割引価格を確認すべきだろう。その価格は店頭のディスプレイに掲示されているので、店員に聞くまでもなく、語学力などまったく気にする必要はない。
どのショーが売りに出されるかに関してだが、通常のルート、つまり公式ボックス・オフィスや公式ウェブサイトなどで販売しきれない当日分や翌日分の余剰チケットがほとんどなので、いつも完売になる人気のショーや、通常ルートでまだ売れる可能性がある数日先の公演のチケットが店頭に並ぶことは少ない。
とはいえ、すでにラスべガス入りしている観光客にとって、必要なチケットは当日分や翌日分のはず。何日も先の公演のチケットが必要なわけではないので、Tix や Tickets の利用価値は十分にあると考えるべきだろう。
というわけで、ディスカウント・チケット屋の内容がわかったところで、冒頭でふれた Tix と Tickets の異なる3つの点について。(写真は Tix)
3つのうちの2つは、Tickets のほうが、利用客にとって良い部分で、残りの1つは Tix のほうが良い。
まず最初に、Tickets のほうが良い部分は、日本人観光客に人気のシルク・ドゥ・ソレイユのショーのチケットを取り扱っているということ。これまで Tix でも扱っていたが、流通枚数が少なく、簡単には手に入らないことが多かった。
今回の取材に対応してくれた Tickets の責任者 Mady さんによると、「もうシルクはチケットを Tix には卸しておらず、取り扱えるのは当社だけ」 とのこと。
Tix が本当にシルクを扱っていないかどうかは確認できていないが (今回店頭に行って見た限りでは確かに扱っていなかったが、別の日に売り出さないとも限らない)、たしかに Tickets では、ミスティアを除くすべてのシルクのショーを販売していた。
ちなみにそのすべてのシルクのショーとは、オウ、KA、ズーマニティー、LOVE、マイケル・ジャクソン ONE、クリス・エンジェル・マインドフリーク、そして最近シルクが買収したブルーマン、以上の7タイトルだ。
ミスティアだけが除外されているのは、MGM系列ではないホテル 「トレジャーアイランド」 で開催されているため。上記の7タイトルの公演はすべて MGM系列のホテルで開催されており、ショーの主催者も MGM社となっている。
なおこれは余談になるが、かつてトレジャーアイランドも MGM社のホテルだった。しかしリーマンショックで資金繰りに困った際、MGM社はトレジャーアイランドを別の会社に売却してしまったのである。
さて気になるシルクのショーの割引率だが、現場に掲示されている価格表をそのまま訳すならば、「最高で 30% 引き」 といった感じの表現になっている場合が多い。その数字が、20%、25%、40% になっていることもあるが、あくまでも 「最高で」 という表現が伴う。ショーの種類、座席の位置、時間帯、曜日などによってかなり流動的のようで、断定的な表現はできないらしい。
この程度の割引率で、さらに、十分な枚数が必ず売り出されるかどうかわからない状況では、事前に公式サイトなどで買っておいたほうがよさそうだが、もし当日までに手配していない場合は、とりあえず Tickets の窓口に顔を出してみる価値はあるだろう。
さてもう一つの Tickets のほうが良い部分。それは、店頭で受け取るチケットが、その段階ですでに本物のチケットになっているため、ショーの会場にあるボックス・オフィスに出向いて並ぶ必要が無いということ。
どういうことかというと、Tix の場合、店頭で受け取るのは、あくまでもバウチャー、つまり単なる引換券であり(したがって、原則として座席番号などは書かれていない)、それをボックス・オフィスに提示して、本物のチケットと交換してもらう必要がある。
開演直前のボックス・オフィスは長蛇の列になることが多いので、これはかなり大きなメリットといってよいだろう。
最後に3つめの異なる点。これは、現時点における Tickets においては、ショーのチケットしか取り扱っていないということ。
一方の Tix では、ショーのみならず、博物館やアトラクション施設の入場券、さらにはレストランの割引券なども取り扱っている。
したがって、ショー以外のディスカウントチケットなどを探し求めている場合は、Tix に行くしか無い。
ただ、前出の Mady さんいわく、「ゆくゆくはショー以外も扱っていく」 とのこと。
今回オープンした Tickets の5店舗のロケーションは以下の通りで、すべて MGM系列のホテルや、その私有地の中にある。それは MGM社の協力を得て開業したためとのことだが、今後 MGM系列以外のホテルにも出店する可能性があるかどうかに関しては、回答をもらえなかった。
営業時間は午前10時から午後8時まで。不夜城ラスベガスのビジネスとしては、ずいぶん早く閉まってしまうことになるが、業務が 「当日のショーチケットの販売」 であることを考えると、妥当な営業時間といえるだろう。
人気のショーになればなるほど販売枚数が少なくなり (午前中に完売ということも)、売り切れになりやすいので、夕刻前までの時間帯が勝負ということになるわけだが、必ずしも早い時間に行けばよいというものでもない。なぜなら夕方になって開演時刻が迫ってきてから、ショーの主催者側が余剰チケットをリリースしたりすることもまれにあるからだ。
したがって、時間に余裕がある場合は、何度か店頭に足を運び、価格表をこまめにチェックしてみるのもよいかもしれない。
◎ Circus Circus 店
サーカスサーカス・ホテルの正面玄関を入ってすぐ目の前に見えるカウンターにある。(写真)
ちなみにこのホテルの正面玄関は、ストリップ大通り側から見ると裏側にあり、カジノ側にある派手な出入口ではないので要注意。位置的には、「正面玄関は裏口」 と考えるとよい。つまりストリップ大通り側からは、館内のカジノエリアをすべて通り抜けて行く必要がある。
◎ Mirage 店
以下の3店舗もそうだが、この店舗はホテルの館内ではなく屋外の歩道にある。一番簡単な見つけ方としては、このホテルの一番高い広告塔を探すとよい (写真がその広告塔)。その広告塔のほぼ真下に販売ブースがある (黄色く見える部分がブース)。ショッピングモール 「フォーラムショップス」 の北側のストリップ大通りに面した出入口からも近い。
◎ Bellagio 店
ここもベラージオ・ホテルの館内ではなく屋外にある。路線バス DEUCE や SDX のバス停のすぐ近くを探せばすぐに見つかるはず。
もっとわかりやすい探し方は、ベラージオ・ホテルとプラネットハリウッド・ホテルを結ぶ横断歩道 (歩道橋ではなく地上の横断歩道) のベラージオ・ホテル側に行けばよい。コスモポリタン・ホテルからもかなり近い。
◎ The Park 店
The Park とは何か? それはモンテカルロ・ホテルの名称が、まもなく変わることになっており、その新しい名称が The Park。
正確には、ホテル名は The Park MGM になる可能性が高く、その横にあるプロムナードが The Park。
とにかく現在のモンテカルロ・ホテルが Park に変わることから、その名称変更を先読みして、店舗名を付けたということになる。
具体的な位置に関してだが、現在のモンテカルロ・ホテルとニューヨークニューヨーク・ホテルの中間付近の、ストリップに面したところにある人気のハンバーガーショップ 「シェイク・シャック」 を見つけて (大きい店なのですぐにわかる)、そのすぐとなり(モンテカルロ寄り) を探せば、街路樹に隠れたような場所にこの店舗はある。
◎ MGM Grand 店
この店舗も MGMグランドの館内ではなく、外にある。一番わかりやすい見つけ方は、同ホテルの周囲で、最も高い広告塔を探すこと。それは、ストリップ大通りに面したところに見つかるはずなので、その広告塔の真下に行けば、そこにこの店のブースがある。(写真の下に小さく黄色く見えるところがブース。あえてその広告塔全体を入れて撮影)
なお、反対側の車線側の歩道を歩いていた場合、The Park 店のほうが近いので、わざわざその広告塔があるほうに渡る必要はない。