ラスベガス訪問の目的といえば、ナイトショー、カジノ、ショッピング、大自然ツアーなどが通り相場で、ゴルフというのは少数派だろう。
それでもゴルフ目的の人も少なくないようで、ゴルフに関する問い合わせがこちらに寄せられることは決して珍しいことではない。
そして彼らとやりとりしていると、リピーターであることが多く、在ベガスの大半のコースを知り尽くしているつわものもいたりする。
ようするに、ベガスにゴルフ目的でやって来る人は少数派だが、ゴルフ好きは徹底的にやっているようだ。
今週は、そんなマニアックなゴルファーでも、まだプレーしたことがないであろう一風変わったゴルフコースを紹介してみたい。(上の写真はこのコースの練習場)
場所は、ラスベガスから北に約2時間のユタ州セントジョージ市を通り過ぎてすぐのところ。
ラスベガスにおける一般的なコースのほとんどがホテル街から 30分以内の位置にあることを考えると、かなり遠い感じがしなくもないが、日本の首都圏で日ごろゴルフをやっている者にとっては、2時間ぐらいどうという距離ではないだろう。(上の写真はこのコースのスコアカード。ブラック・ティーから 7315ヤード)
コースの名前は Sand Hollow Resort。サンドはもちろん砂のこと、ハローは小渓谷、へこんだ場所、くぼ地、などの意味。
「名は体を表す」とよくいわれるが、このコースの特徴はまさにその砂と小渓谷で、特に砂は最大の注目点だ。
赤茶色というよりもむしろオレンジ色に近い砂の大地の上に造られているため、バンカーの砂はもちろんのこと、ターフを取ったあとの地面もオレンジ色だ。
なにやら奇妙な色ではあるが、アメリカ大西部においては、このような色彩の場所がところどころに存在しており、たとえばモニュメントバレー、ザイオン、バレーオブファイヤーなどでも見ることができる。
したがって、まったくあり得ないような環境ではないが、ゴルフコースがこのような場所に造られているのはかなり珍しいといってよいのではないか。(上の写真は 9番ホールのグリーン右手前の巨大バンカー)
ゴルファーとして気になるのはバンカーの砂質だろう。写真で見る限り砂というよりも土に見えるが、これは明らかに土ではなく立派な砂だ。(写真は 17番ホール)
ならば色が違うだけで普通のゴルフコースと同じような感覚でバンカーショットを打てばいいのかというと、必ずしもそうではない。
砂の深さにもよるが、深い場合、あまりにも砂粒が細かくて軽いため、クラブヘッドが地面で跳ね返されること無く、そのままどんどん下に潜って行ってしまうミスショットを犯しやすい。特に砂がまったく湿っていなくて乾燥している場合は要注意だ。
砂粒の細かさを少々誇張して例えるならば、通常のコースの砂があら塩やグラニュー糖だとすると、ここの砂は小麦といった感じでとにかく細かくて軽い。
砂以外の特徴をあげるとすれば、周囲の絶景だろう。広大な大地もさることながら、ところどころに点在するオレンジ色の奇岩が景色に絶妙なアクセントを添えており、たとえスコアが悪くても、この場所に身を置いているだけでも楽しい気分になれたりする。
ちなみにこの奇岩が風化して砂状になったものがこの大地を形成しており、上の写真(8番ホールのグリーン)内の芝生が薄くなっている部分にそのオレンジ色の砂の存在がぼんやりと確認できるはずだ。
グリーンが巨大なのもこのコースの特徴で、そのサイズにはだれもが驚かされることだろう。特に 3、6、11、14番などのグリーンは圧巻だ。
ちなみに上の写真は 10番ホールのグリーンで、このコースとしては特に大きいほうではないが、この写真に写っている部分は全体の半分にも満たない。
結果として、パットが苦手な者は3パットはおろか4パットも続出ということになりかねないので注意が必要だ。
最後にこのコースの特徴をもう一つ書き加えておくと、前半と後半でレイアウトがまったく異なっているということ。これだけ大きく異なっているコースは珍しいのではないか。
右のレイアウト図からもわかる通り、前半9ホールは比較的せまい範囲(といっても一般のコースと比べると広大な範囲)にまとまって存在しているのに対して、後半9ホールは広大な荒野の外周をグルリと回るように配置されている。
さらに、ただ単にレイアウトが異なっているだけではなく、後半は左右のバランスという意味で極端に偏っているところが戦略的でおもしろい。
つまり前半は、低くなった窪地に造られているのに対して、後半は高台。その高台の外周の崖っぷちに沿って時計回りにレイアウトされているため、ほとんどのホールにおいて左側が崖となっているばかりか、そのフェアウェーも左に傾斜している。さらにグリーンも、乗ったと思ったら、左に落ちてしまうような急傾斜になっているホールが多い。(上の写真は 12番ホール)
したがって、ドローボール・ヒッターは崖に落としやすく、結果的にフェード・ヒッターに有利なホールが続くことになり(特に 12、13、14、15番)、アンフェアな部分もあるが、それはそれで仕方がないといったところか。
長くなってしまったが、砂の色、砂質、巨大グリーン、後半の左傾斜、そして絶景など、極めて特殊な環境にある戦略的なコースなので、ゴルフマニアはぜひ行ってみるとよいだろう。(上の写真は 1番ホール。ここでも芝生の下がオレンジ色の砂になっていることが見て取れる)
なおこれからの季節、ラスベガスより気温がやや低い傾向にあるので寒さ対策は忘れないようにしたい。後半9ホールはボールを無くしやすいので、多めのボールも必携。
予約はこのコースの公式サイト sandhollowresorts.com がおすすめ。