先週、ニューヨークニューヨーク・ホテルとモンテカルロ・ホテルの間に、約2万席規模のアリーナ “T-Mobile Arena” がオープンし、読者からもそれに関する問い合わせが寄せられたりしているが、まだアリーナの正門前の広場 “Toshiba Plaza” や、ストリップ大通りからアリーナまでのプロムナード “The Park” の一部が未完成のため、それらの紹介は日を改めるとして、今週は、ラスベガス屈指の高級カジノホテル、ウィン・ラスベガス(写真)が先週水曜日に発表した新しいプロジェクトについて取り上げてみたい。
このたび発表されたそのプロジェクトの暫定名称は Wynn Paradise Park。そして中心となる施設がラグーンということもあり Lagoon Project などとも呼ばれたりしている。
ラグーンとは環礁や砂州など、浅瀬のおだやかな内海などのことだが、まさにその名の通り、砂漠都市ラスベガスのホテル街に浅い海を造ってしまおうというプロジェクトで、その広さは38エーカー(約15.4万平方メートル)というから一辺が約400メートルの正方形に相当する面積だ。
そんな広大な土地がどこにあるのか。もちろんある。それは現在のウィン・ラスベガスの客室棟の裏側に広がるゴルフコース Wynn Golf Club。つまりその一部をつぶしてラグーンにしようというわけだ。(下の写真は客室棟から見下ろしたゴルフコースの様子)
ちなみにこのゴルフコース、かつてはデザートイン・カントリークラブという名門コースだったが、ウィン・ラスベガスのオーナー社長 Steve Wynn 氏が 2000年に買い取ったあと、彼の希望も取り入れながらコースのレイアウトを改造したという経緯があるため、今となってはデザートイン時代の面影はあまり残されていない。
それでも 60年以上の歴史を誇る伝統のコースが水没して消滅することは、当時を知るゴルフファンにとっては少々寂しいはずで、複雑な思いでこのニュースを読んでくれている読者も多いことだろう。
とはいえ、現在のウィン・ゴルフクラブは利用者が少なく、同ホテルの収益にあまり貢献できていないと聞くので、ホテル全体の経営効率を考えると、ラグーンにするなど何か別の形にして土地を有効利用することはやむを得ないのかもしれない。(下の暫定完成予定図からもうかがえるとおり、ラグーンに必要な面積は現在のゴルフコース約130エーカーの 1/3 以下なので、レイアウトを変えてゴルフコースを残す可能性もある)
さてラグーンにしてどうするのか。今回発表された計画によると、水上スキー、パラセーリング、ジェットスキー(カワサキの登録商標)などを楽しめるウォーターパークにするという。
そして一周約1マイル(1.6km)のラグーンの水ぎわはすべて白砂のビーチにして、そのビーチに沿って1マイルのボードウォーク、つまり板張りの遊歩道も設置。さらにラグーンの中央には島を造り、そこから毎晩花火を打ち上げるというから何やらかなりエキサイティングなウォーターパークになりそうだ。
新たに造られるのはそれだけではない。ラグーンの北西側に面した場所に、1000室規模の客室棟も建設するという。現在のウィン・ラスベガスの本館と「アンコール」と称される別館を合わせた客室数はすでに4700を超えているので、完成すれば 5700室という巨大リゾートが誕生することになる。完成時期は 2020年、建設費用は約15億ドル。
何もかもが楽しそうなバラ色のプロジェクトのようにも思えるが、本当に実現するのかと問われれば、そればかりは何とも言えない。ラスベガスにおいて、この種の大型プロジェクトが計画倒れになることは何ら珍しいことではなく、むしろ実現に至ることのほうが少ないぐらいだ。
また今回のプロジェクトにおいては資金面のみならず、水の使用権という問題も絡んでくる。水不足が年々深刻化しているラスベガスにとって水問題は重要な案件なのであなどれない。そのようなわけで、あまり大きな期待はせずに、とりあえず現時点での実現確率は半々ぐらいに考えておけばよいのではないか。
最後に余談になるが、日本では特殊小型船舶の免許がなければジェットスキーを操縦することはできない。でもアメリカではできる。猛暑で知られるラスベガスの夏は長いので、もしこの計画が実現した場合、ゴールデンウィークから10月頃まで、日本人観光客からもかなり注目される人気ホテルになることはまちがいないだろう。