ゴージャスな巨大ホテルと、まばゆいばかりのネオンサイン。カジノとショービジネスの総本山ラスベガスはまさに砂漠の中の人工都市。
そんなラスベガスはもうひとつ別の顔を持っている。「人工」の対極にある「大自然」だ。
世界遺産グランドキャニオンなど、アメリカ大西部の雄大な景勝地を訪れるためのゲートウェー都市として知られ、実際に「カジノやナイトショーにはあまり興味がない。大自然観光が楽しみ」という観光客も非常に多い。
そんな人たちがまず最初に訪れる場所はグランドキャニオン(写真)と相場が決まっているが、2回目以降のベガス訪問では意見が分かれたりする。モニュメントバレーがいいという人もいれば、ザイオンの人もいる。デスバレーも人気だ。
それでも訪問順が異なるだけで、結局はどの絶景にも感動し、ブライスキャニオン、セドナ、バレーオブファイヤー、アンテロープキャニオンなど主要な大自然観光スポットのすべてを訪問する人も少なくない。
今週は、そんな大自然派のベガス・リピーターでも見落としがちな絶景観光スポットを紹介してみたい。
その名は Bonneville Salt Flats。直訳すればボンネビル塩平原。
一般の日本人でこの地を知る人はまずいない。それでも、映画 『世界最速のインディアン』(2005年)の撮影現場にもなったりしているので、「地上で世界最速を競うレース場」と聞けば思い出す人も多いのではないか。
そう、ここは地平線の彼方までまっ平らな塩の平原で、障害物がまったく無いことから超高速レースが可能となっている。
(上の写真は現地に設置されている案内板。WORLD LAND-SPEED RECORD RUNS という文字が読み取れる)
ちなみに毎年夏から秋にかけて二輪車、四輪車、エンジンサイズ別などさまざまなカテゴリーの超高速レースが開催されており、ロケットエンジン部門では時速1000km 以上の記録が飛び出すこともあるというからなんとも豪快だ。その数字を聞いただけでも、どれほど広大な場所か想像できよう。
(ロケットエンジン搭載の車両の写真などは著作権の関係上ここで掲載することはできないが、Blue Flame Automobile で検索すればその写真を見ることができる)
さようにこのボンネビル塩平原はレース場として知られているわけだが、もう一つ忘れてはならない見どころがある。それは “北米のウユニ塩湖“ と称されるほどの絶景だ。
面積こそ本家に遠く及ばないものの、雨水などが薄くたまった広大な平地の光景はまさに南米のウユニ塩湖そのもの。地平線をはさんで、空と大地がまるで鏡に映っているかのように上下対称に見えるところがハイライトだ。
もちろん目で絶景を楽しむだけでなく、中に歩いて入って行くことも可能で、飽和塩分濃度(約26%)に達した重い水(通常の水の 1.2倍の重さ)の中を歩く不思議な感覚は多くの人にとって初体験となることだろう。
ちなみにその南米のウユニ塩湖は、“天空の鏡“ と称される人気の観光スポットではあるが、あいにく日本からは地球の裏側に近いボリビアの秘境にあるため、そう簡単に行くことはできない。また標高が富士山の頂上とほぼ同じ3700m に位置しているため、高山病になってしまいやすいのが難点。
しかしこのボンネビルはラスベガスから陸路で大した苦労もなく行ける。標高も1300mなので高山病の心配はない。(上の写真は南米のものではなくボンネビルの塩湖)
「そうは言っても、何度もベガスに行っているオレが知らないぐらいだからとんでもなく遠いんだろう」との声が聞こえてきそうだが、そんなことはない。
ラスベガスから北北東の方向に車で約5時間半、走行距離にして片道570kmの場所にある。日本の一般的な感覚では決して近い距離ではないが、大自然派のベガス・リピーターにとってこの距離が遠いと感じることはないだろう。むしろ「そんな近くにあったのか!」と思うのではないか。
なぜならモニュメントバレーはボンネビルよりも遠い640km、グランドキャニオン、アンテロープ、セドナも 440km 前後でボンネビルよりも1時間程度近いだけだからだ。
というわけで、もはや主要大自然観光スポットを制覇したリピーターにとっては行くしかない必見の場所ではあるが、あらかじめ知っておいたほうがよいことがある。
それは、現場まで行ったからといって必ずしも期待通りの絶景に遭遇できるとは限らないということ。ようするに気象条件などに恵まれないと、残念な結果になることもある。大自然観光の宿命だ。
たとえば長期間に渡って降雨がない場合は水がなくなってしまう。水がなければ空が大地に映ることはない。また、水があったとしても強風の場合は、水面が鏡のようにはならないのでこれまたダメだ。静寂が感動を増幅させるこの地においては風の音も似合わない。
そうは言っても、こういった気象条件による不都合はグランドキャニオンなどでも同じこと。むしろ標高が高く霧などの悪天候に見舞われやすいグランドキャニオンやブライスキャニオンのほうが確率的には残念な結果になりやすいようにも思われる。またモニュメントバレーも強風時は砂だらけになってしまい観光どころではない。アンテロープも積乱雲などが近づくと鉄砲水のリスクですぐに立入禁止になってしまう。
いずれにせよ天候のことは運にまかせるしかないので、行く前から心配しても意味がなさそうだが、ボンネビル地区は総じて晴天が多いということだけは付け加えておきたい。また、水がまったくない真っ白な平原のほうがいいという声もあるので、必ずしも水があるほうがいいとは限らない。
仮に運悪く天候に恵まれなかった場合でもガッカリするのはまだ早い。
ラッキーなことに、ラスベガスからこのボンネビルへ行く道中のほぼ中間地点に、もう一つ大自然が造った芸術的な絶景スポットがある。そしてそこは悪天候にめっぽう強く、雨も風も関係ない。カーレースで立入禁止になることもないので季節も関係ない。
リーマン鍾乳洞こと、知る人ぞ知る Lehman Caves National Monument だ。鍾乳洞といえば世界遺産のカールズバッド国立公園やマンモス・ケーブ国立公園があまりにも有名だが、リーマン鍾乳洞を馬鹿にすることなかれ。規模でこそ両国立公園に及ばないものの、その変化に富んだ形状などは勝さるとも劣らない造形美を誇っており、鍾乳洞マニアの間ではこちらのほうが人気があったりすると聞く。
というわけで、このボンネビル・ソルトフラッツとリーマン鍾乳洞のセットの旅は、「ベガス周辺の大自然はすべて制覇した!」というレンタカー利用のリピーターにぜひおすすめしたい。
なお、日帰りで行く場合、往路か帰路のどちらかは夜間の長時間走行になりやすい。もしどこかに宿泊するのであれば、ボンネビルのすぐ西側に位置するネバダ州とユタ州の州境の町 West Wendover がよいだろう。比較的宿泊料金が安く、カジノもあるので退屈しないばかりか、町のサイズが適度に小さく非常に落ち着けるはずだ。
やや遠回りになるが、もし往路か帰路で高速15号線を使う場合はソルトレイク・シティーに宿泊するという方法もある。その場合は、モルモン教の大聖堂などの市内観光もよいが、バイソンやシカなど大型野生動物の生息地として知られるグレートソルトレイク内の「アンテロープ島」(写真上。橋が架かっているので車でアクセス可能)にもぜひ立ち寄ってみたい。
なお、「レンタカーは苦手」という人もあきらめる必要はない。H.I.S.ラスベガス支店が、ボンネビルとリーマン鍾乳洞を訪れる日本語ガイド付きの一泊ツアーを販売しているので、それに参加するという方法がある。(日米間の航空券やホテルを H.I.S.経由で手配していない人でも参加できるとのこと)
予約や質問など詳しくは H.I.S.ラスベガス支店のメール info.las@his-world.com まで。
コメント(1件)
今年12月に女性二人でラスベガスからアンテロープ、モニュメントバレー、セドナに行きたいと思っています、希望の場所に行けるツアーはありませんか?