厳しい喫煙規制があるカリフォルニア州やニューヨーク州などと比べると、ラスベガスがあるネバダ州は長らく喫煙に対して総じて甘いとされてきた。
しかし 2007年1月、法律が改正され、「公共の室内空間は原則として全面禁煙」となった。
したがって、レストランなどは全席禁煙で、またホテルのロビーやトイレ、劇場、空港、タクシー、コンビニなどでも吸うことができない。
ただし、あまり厳しくしすぎると愛煙家がラスベガスを敬遠し、税収や地元経済に悪影響を及ぼしかねないとのことで、カジノ内と、食事を出さない酒場(バーなど)だけは例外的に、喫煙できる場所の設置が認められている。
(後述するが、近年人気が急上昇している電子タバコや加熱式タバコに関しては、2019年時点でも明確な法解釈が示されていない)
とはいえ、カジノ内にも禁煙セクションがあるので、喫煙の際には十分な注意が必要だ。
たとえば、ブラックジャックやルーレットなどのテーブルゲームの現場では、喫煙の可否がテーブルごとに決められており、禁煙テーブルにはハッキリそのことが掲示されている。
また、上の写真のように、スロットマシンなどにおいても「島」全体が禁煙になっているセクションもあるので要注意。
あと、これはもはや日本でも常識だが、ホテルの客室にも禁煙ルームがあるので(というよりも禁煙ルームが大部分。「全室禁煙」とするホテルも急増中)、喫煙者は予約のときだけでなく、チェックインの際にも改めて確認したほうがよい。
ちなみに多くのホテルでは、宿泊予約を受け付ける段階において、喫煙ルームか禁煙ルームかの選択ができるようになっているが、それはあくまでも「宿泊者の希望をとりあえず聞いておく」といった程度の意味であって、「喫煙ルームを確約」ではないので注意が必要だ。
つまり、「喫煙ルームを希望しておいたのに禁煙ルームしか用意されていなかった」といったことは、しばしばおこり得る。(その逆は原則としてほとんどない)
理由は、喫煙者の存在比率に対して、喫煙ルームの数がいちじるしく少ないからだ。大多数のホテルにおいて、全客室に対する喫煙可能なルームの比率を1割以下に設定している。
また最近は「全室禁煙」をうたっているホテルも少なくない。ちなみに日本人観光客に人気のベラージオホテルも 2015年9月から全室禁煙になっている。
その後も多くのホテルがベラージオに追随。もはや喫煙ルームはほとんど無いと考えたほうがよい。
喫煙者の存在比率よりも、喫煙可能な部屋の比率を大幅に少なく設定している理由は、カーペットや寝具などを焦がされたりする被害や火災のリスクといった問題もさることながら、タバコの臭いが付いてしまった部屋に非喫煙者を割り当てた場合、「クサイので部屋を交換してほしい」といったクレームが出てしまう可能性が高いが、その逆の場合、「カジノで吸ってください」で丸く収まることが多いからだ。
またそれはカジノでの売上増にもつながり、ホテル側にとってメリットにもなる。
というわけで、喫煙者にとっては厳しい環境になりつつあるわけだが、困ることは「部屋数が少ない」だけではない。
めでたく喫煙ルームにありつけたとしても、多くの場合、その部屋は「そのホテル内で一番景色が悪い部屋」だったりする。
よくあるのは、一番低い階で、窓の外は空調設備などが見えるだけといった劣悪な景色の部屋だ。
そのような事情を知っている者は、「そんな部屋はイヤなので禁煙ルームにしてもらって、こっそり吸っちゃえばいい」と考えたりしがちだが、最近はチェックインの際に 「禁煙ルームで喫煙した場合、ニオイ除去のための費用として、あなたのクレジットカードに $300 請求させていただきます」といったたぐいの書類(あるいはタブレットPCの画面)に同意の署名をさせられることが増えてきているので注意が必要だ。
なお、アメリカでは 2012年ごろから電子タバコ(英語では e-cigarette)が、そして日本では 2016年ごろから加熱式タバコが流行し始めているが、これらに関してはどこの州、どこの都市においてもまだ法整備が進んでいないようで、「電子タバコならば禁煙場所でも吸っていいのか」は全米各地で大きな議論になっており、ここラスベガスでも確定的な判断はまだ下されていない。
ただそれは、州や市のレベルの法律として決められていないだけで、レストランやホテルなどでは現場の裁量で「禁止」と決めているところは少なからず存在している。
そのようなわけで電子タバコや加熱式タバコを吸う場合は、そのつど現場スタッフなどに確認するようにしたい。
そうこうしているうちに、2018年、まったく異次元の革命的電子タバコ JUUL が爆発的なヒットをし、電子タバコ市場のほぼすべてを独占。
この JUUL の原理やメカニズムが従来のものとはまったく異なることなどから、電子タバコに対する法的な解釈や定義を決めようとしている現場に、新たな問題提起や混乱をもたらしており、今後の法規制の行方はますますわからなくなってきている。そうこうしているうちに、2019年9月、トランプ大統領が「JUUL が、健康に害がないようなイメージで若者世代にマーケティングしているのは問題。安全が科学的に証明されない限り、販売中止にすべきでは」と発言。e-cigarette 業界に激震が走っている。
さて話は変わって価格について。アメリカにおけるタバコの価格は日本とちがい市場原理に任されているばかりか、州や郡によって税金が大きく異なるため、一概に比較できないが、日本と比べると総じて高い。
一般的には、自動販売機で買うよりもスーパーマーケットなどで買った方が安く(自販機は、現金の回収作業などにコストがかかるため、高い料金設定になっているのが普通)、また、当然のことながら1パックで買うよりもカートン(10パック)で買ったほうが安い。
あえて大ざっぱな価格を示すならば、タバコの産地で税金が安い州のスーパーマーケットでのカートン買いで一箱 2~3ドル、税金が高い州の自販機で 13ドル前後といったところか。(上の写真も下の写真もラスベガスのホテル内の自販機)
ギャンブラーとタバコはイメージ的に重なる部分があり、ラスベガスでは安いようにも思われがちだが、意外にもラスベガスのタバコは他州に比べてけっこう高い。
年々タバコに対する税金が高くなっているためだが、マルボロ、ウィンストン、キャメルなど主力ブランドのカジノ内における自販機での価格は 8ドル前後と、日本の倍ほどになっている(ドル円レートの変化でどうにでもなってしまうが)。カジノ内にある小さな売店でも、自動販売機よりはやや安い程度で、基本的には日本よりも高い。
参考までに、ネバダ州におけるタバコ1箱に課税されているタバコ税は 2015年夏まで $0.80 だったが、その後一気に1ドルも増税され $1.80 になった(タバコ税は内税なので意識する必要はないが、消費税 8.375% は外税)。これは全米50州の中で18番目に高い。
ちなみに一番高い州はニューヨーク州で $4.35、一番安いのはタバコの産地バージニア州の $0.30。
ラスベガスで一番安く手に入れる方法は、ストリップ地区から離れた郊外のスーパーマーケットなどでのカートン買いで(先住インディアン居住区まで行けばもっと安く買えるが)、その場合は1箱当り 7ドル以下で手に入る可能性がある。
ちなみにストリップ地区にある代表的な雑貨店 CVS、Walgreens、ABC Stores などでの価格は、特別なセールでもない限り 1箱 7ドル以上なので、円ドルレートにもよるが、愛煙家は日本の空港の免税店などで買って持ち込んだほうが安いことになる。(この写真は 2015年 1月における ABC Stores での価格。今はもう少し高い)
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