ラスベガスには質屋が多い。それも半端ではなく他の都市に比べて突出して多い。やはりカジノの影響が大きいようだ。ちなみに英語で「質屋」は「PAWN SHOP」。
なぜ質屋をここでわざわざ取り上げるのか。それはベガスの質屋に行きたがる人が非常に多く、問い合わせがあとを絶たないからだ。
ハッキリ言って一般の日本人観光客が質屋に行くメリットはほとんどない。高級ブランド品が掘り出し価格で売られているなどということはまず無いからだ。
店頭に並んでいる商品は大半が古ぼけたテレビや安物のアクセサリー類などのガラクタばかりで、日本の質屋の商品ラインナップと比べたらまったく別世界。
そもそもギャンブルで身を滅ぼし、質屋に家財を持ち込もうとするような者は元々高級ブランド品などを持っていないのではないか。
国民の大部分が頑張ればブランド品に手が届き、ブランド品に多少なりとも興味を示せる環境にある日本とは大ちがいで、アメリカではごく一部の富裕層しかブランド品などに興味を持っていないし、手が届かない。
そして、そういう富裕層はギャンブルなどに狂っていないか、仮に狂っていたとしても(高額ギャンブラーはたしかに存在しているが)、身を滅ぼすような遊び方はしていない。だからこそ富裕層になれたし、富裕層でいられるのではないか。
そう考えると質屋の世話になるような者が持ち込む家財はおのずと知れており、ガラクタばかりが持ち込まれていることも納得できるはずだ。
一般の日本人がラスベガスの質屋で買うようなものをあえて無理に列挙するならば、それはギターなどの楽器類、パソコン(けっこう新しい機種が持ち込まれたりすることがある)、指輪などのアクセサリー類、などになりそうだが、それでも今ひとつの商品がほとんどなので、あまり期待しないほうがよい。
ではなぜ多くの日本人観光客が質屋に行きたがるのか。
それは、問い合わせてきた人たちに聞く限りでは、どうやら日本のバラエティー番組などがラスベガスの質屋をおもしろおかしく取り上げ、「高級ブランド品の掘り出し物が、まさかのこんな値段で!」などと報じているからのようだ。
番組づくりの演出とはいえ、事実をねじ曲げたり、極めて例外的な場面だけを誇張して報じたりすることは、視聴者をミスリードすることになりかねないのでやめてもらいたいものだ。
さらに悪いことに、そういった番組の影響なのか、観光ガイドブックなどにも質屋が掲載されたりすることがあるのでタチが悪い。その種の記事の多くは実際に取材をしたとは思えないような無責任な情報が目立つ。
いずれにせよ多くの日本人観光客がテレビ番組や出版物の影響で質屋を訪れガッカリして帰っているのが現実。ストリップ地区のホテル街から徒歩で行けるような場所であればまだよいが、大半の質屋はタクシーなどで行かなければならない場所にあり(ダウンタウン地区には徒歩圏内の店もあるが)、多くの者がタクシー代と時間をみすみす無駄にしているのが現状だ。
(上の写真は、2015年10月、ダウンタウン地区に新たにオープンした質屋。そこそこにぎわっているが、それでも一般の日本人が買いたくなるようなものは極めて少ない)
業界関係者とか社会勉強といった特殊な事情や目的がある場合は話が別だが、一般の観光客が行っても何のトクにもならないので、この際この PAWN SHOP のことはきっぱり忘れたほうがよいだろう。
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