観光客にとってのラスベガスは大きく分けると、近代的な巨大カジノホテルが建ち並ぶストリップ地区と、昔ながらの面影を残すダウンタウン地区のふたつに分けることができる。
ちなみに両地区の中心街は互いに 5km ほど離れているので、徒歩で簡単に行き来できるような距離ではない。
(以下はダウンタウン地区の地図)
“ラスベガス発祥の地” はもちろんダウンタウン地区で、今日においても、老舗のカジノやホテルのみならず、この地区周辺には市役所を始めとする各種行政機関も集中しており、当地における行政の中心地となっている。
言うまでもなくダウンタウン地区はラスベガスを代表する観光スポットでもあり、その中心となる繁華街 Fremont Street (写真下)は派手な夜景として世界的に名高い。
一般観光客にとっての「ダウンタウン」とは、まさにその Fremont Street のことで、事実上「ダウンタウン = フリーモントストリート」と考えて差し支えないだろう。
そこには中規模のカジノホテルが所狭しと並んでおり、ネオンの洪水のようなその光景は、デジタルカメラが普及する前の銀塩フィルムカメラの時代でも、「夜間でもストロボ無しで写真が撮れる場所」として知られていた。
ラスベガスを題材とした映画やドラマなどに登場してきた数多くの場面もここで撮影され、長らくこのダウンタウンのネオン街は、ラスベガスを視覚的に描写する際の象徴的な舞台として利用されてきたし、今でもその傾向に変わりはない。
それでも 1990年代に入ってからライバルのストリップ地区の発展がめざましく、相対的にダウンタウン地区の人気は低下していくことに。
そこでダウンタウン地区の商工会は一致団結し、7000万ドルという巨費を投じて 94年末からフリーモントストリートの大改装工事に取りかかり、95年12月、ついにその頭上に 210万個の電球を天井にちりばめた電飾アーケード街 The Fremont Street Experience を完成させた。
これを機にフリーモントストリートは 24時間歩行者天国の華やかなストリートとして甦ったのである。(それ以前は車道だった)
それでもライバルのストリップ地区における巨大カジノホテルの建設ラッシュはとどまる気配を見せず、ダウンタウン地区の相対的な凋落傾向には歯止めがかからなかった。
もちろんダウンタウン地区の関係者も指をくわえてライバルの繁栄をながめているわけではなく、2004年6月には、自慢の電飾アーケードのディスプレイ装置(VIVA Vision と呼ばれている)を改装するなど、集客アップのための努力を続け、その改装で 210万個の電球が 1250万個のLEDに置き換わり、描写できる映像の解像度が大幅にアップ。
そして 2019年春から、さらなる LEDの解像度アップのための大規模な工事が始まるなど、今でも進化は続いている。
ちなみにこの VIVA Vision、400メートル以上のサイズを誇っており、電光表示装置としては世界最大とのこと。
観光する立場の者としては、「ストリップとダウンタウン、どっちの地区が良いか」ではなく、それぞれの違いや特色を理解した上で、両者の持ち味などを堪能しながら訪問すればよいだろう。
ちなみにストリップ地区に対するダウンタウン地区の特徴は、中規模のカジノホテルが狭い範囲内に集中しているということと、ほとんどすべての観光エリアが徒歩圏内にあること、そしてホテル、カジノ、レストラン等の料金的な相場がストリップ地区のそれと比べるとやや低めに設定されているということで、体力的にも時間的にも経済的にも負担が少ない。
あとダウンタウン地区には、ストリップ地区にはない古き良き時代の庶民的なムードが漂っており、それもこの地区の大きな特色といってよいだろう。
参考までに、ダウンタウン地区が形成され始めたのは 1900年代初頭で、ストリップ地区は1940年代後半から50年代。つまりダウンタウンのほうが40年以上も先輩ということになる。
なお、冒頭でもふれたとおり、ダウンタウン地区とストリップ地区は互いに5キロメートルほど離れているため、徒歩で移動できるような距離ではない。両区間の移動はタクシーやまたは公営バス “SDX” を使うのが一般的で、どちらもわかりやすく利用は簡単だ。最近ではウーバーを使うという方法もある。
(これら交通機関の利用方法などは [市内交通]セクションを参照のこと)
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