先週の火曜日、開業前から「ラスベガスでナンバーワン」との呼び声が高い食べ放題ダイニング “Bacchanal Buffet” が、約8ヶ月の準備期間のあと、満を持してシーザーズパレスにオープンした。
前評判が高い理由は「500以上もあるアイテムの 8割以上は客の目の前で調理」(シーザーズパレス広報部)という圧倒的な品数と贅沢な方式の導入、そして斬新なインテリアデザインにあると言われている。
客の目の前で調理するいわゆる「ライブクッキング」は、近年のバフェィとしては決して珍しいものではないが、それでも8割という数字は驚異的。
ちなみに開業後のこれまでの数日間の平均待ち時間は1時間30分(現場スタッフ) というから前評判の高さは単なる噂ではなかったことがうかがえる。観光客ばかりか地元民も多いとのことで、2時間半待ちもあったらしい。(写真は、客の目の前でクレームブリュレの表面をバーナーで焼くパティシエ)
インテリアデザインを担当したのは、知る人ぞ知る日本のデザイナー集団、スーパーポテト社。日本はもとより、世界中の著名ホテルの各施設を手がけてきたデザイン界のスーパーカンパニーだ。
今回取り入れたデザインは、ガラス、金属、木などのそれぞれの直線の美しさを生かした斬新なもので、都会的かつ洗練された雰囲気が特徴。大きな窓からの外光の積極利用など、エコにも配慮がなされているところが、いかにも日本らしい。
その一方で、照明器具にガラス食器やキッチンまわりの小物を多用するなど、遊び心も忘れていない。
ちなみに [受付付近の照明](←タップ・クリックで写真表示)、つまり太い柱の上半分の部分は [ガラスのコップ](←同) だ。
ダイニングルーム内の照明も、それぞれユニークなものが使われているので、ぜひ見落とさず、料理とともに和製デザインの真髄も楽しむようにしたい。
さて気になる料理についてだが、圧倒的な数とライブクッキングは宣伝に偽り無しで、食材の内容もこれまでのバフェィの常識をくつがえすほどレベルが高い。バリーズホテルの Sterling Brunch Buffet のような特殊な高級店を除けば「ラスベガスでナンバーワン」と言っても差し支えないのではないか。(写真の鯛は刺身としては出てこないが、各種料理に使われていた)
あまりにも品数が多く、全てを食べてみたわけではないが、さっそく和食、中華、シーフード、デザートなど、順を追って紹介してみたい。
まずは、ラーメンも含む和食から。寿司は、右の写真のように、巻物のみならず握りもあるのが特徴。
機械で握ったシャリに刺身を乗せているのではなく、現場の寿司職人(下の写真番号1) がシャリからひとつずつ握っているのには驚く。バフェィとしては異例といってよいのではないか。
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20~30個ほど握り上がった時点で大皿に盛り付け、陳列台に並べてくれる。そのつど、寿司職人が気分で決めるので、次に出てくる寿司が同じネタになるとは限らない。
つまり、たとえばマグロとエビが出されていたかと思うと、10分後にはハマチとイカになっていたりする。
巻物(写真番号 2)も、ときどき変わる。あらかじめ大量に巻いておいた鉄火巻などを、ひたすら補充しながら出し続ける一般のホテルのバフェィとは大きく違うところで、いろいろ食べられる楽しみがある反面、自分が好きなものをゲットするタイミングがむずかしかったりするのがこの店の特徴だ。
和食は寿司だけではない。「Sunomono」などの小鉢もあったりする。
ちなみに写真はキュウリとカニ(カニかまぼこではない)。味のレベルは日本で食べるものと比べてまったく遜色が無い。
ナメコなども入った「Soba Salad」と表示された小鉢(写真下)もあったが、こちらは残念ながらいまひとつ。
味噌汁(3)のレベルは悪くない。ただ、うつわが椀ではなく、しっかり厚みのある陶器製なので、少量の場合、盛りつけた途端に熱が奪われさめてしまうのが難点。
注目は、シェフ(4)がそのつど作ってくれる麺類のセクション。
麺そのものは、ラーメン、うどん、フォー、さらに麺ではないがワンタンなどからも選択が可能。英語が苦手でも、サンプルが並んでいるので(5)、指で指せばわかってもらえる。
なお、香菜、ネギ、ワカメなどの具(6)は、自分で盛りつけることになるが、ラーメンを選択した場合のチャーシューとメンマは始めから入って来るので(7)自分では選べない。(注文すればフレキシブルに対応してもらえそうではあるが)
ラーメンしか試食していないのでフォーやうどんの味はわからないが、ラーメンのレベルは決して低くない。麺もスープも、アメリカのこの種の場所で食べられるラーメンとしては十分すぎるほどの内容で、期待していなかっただけに少々びっくりした。
なお、「Japanese Beef Curry」と表示されたカレーもあったが、取材時にたまたま品切れとなってしまい、次のものが出来上がってくるまでに時間を要するようだったので試食は断念。
さて次に中華。大きな鍋で作った炒め物や揚げ物(8)が中心となってしまいがちな中華セクションだが、北京ダック(9)や豚(10)など各種肉類がガラスケース内に吊り下げられており(写真)、そこから取り出してスライスしたり、モクモクと湯気が立ち登る蒸篭(せいろ)でショーロンポウ(11)やシウマイなどの蒸し物を提供するなど(写真下)、他のホテルではあまり見られない演出にはただただ驚くばかり。
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味のほうも、中華専門店に勝るとも劣らない高いレベルを維持しているように思えた。
パリッとしたサクサク感をきちんと出している春巻き、野菜のシャキシャキ感がしっかり残った炒め物、きれいに焼き上がり濃厚な風味を放つ北京ダックの皮。
またショーロンポウも(11)、皮が破れて汁が溢れ出したりしないよう、一つひとつ小さな受け皿に乗せられている配慮がうれしい。
一方、炊飯器に入ったコメ(12)だけは、いただけない。入店のタイミングが悪かったのか、それともいつでもこんな感じなのか、炊きたてとは程遠い状態だった。パサパサ感が持ち味の長粒米であることを考慮に入れても、合格点は与えられない。
同じコメでも、粥(かゆ)はかなりまともで(13、14)、日本人の味覚に十分合う。トッピングの具もいろいろなものが用意されており、ステーキなどの洋食に飽きた時の口休めには最適だ。
蒸篭の脇で、熱い湯気の中に積み上げられているツボのような容器(写真)は特製スープ。薬膳系のスープなのか珍妙な味で、好き嫌いがあるかもしれないが、この湯気を使った演出は出来立て感があってなかなか面白い。ちなみに熱くて触れないので、現場の担当シェフに受け皿に乗せてもらってから受け取ることになる。
なお参考までに、和食セクションと中華セクションは近接しており、割り箸は中華セクションの一番端に置いてあった。
日本人にとって一番気になるのはカニやエビなど、やはりシーフードセクションだろう。こちらも総じて高いレベルにあるといってよい。
この店の特徴は、寿司のところでも書いたが、陳列台のすぐ奥の現場スタッフによるライブクッキングのため、大量に作り置きしておいた料理がひたすら補充される形で出てくるわけではなく、タイミングによっては並んでいるモノが変わってくるということ。
このことはもちろんピザやデザートなどのセクションにも言えることではあるが、なんとカニやカキにも当てはまる。
日本で言うところにズワイガニ系のカニが並んでいたかと思うと(15)、10分後にはタラバガニ系のものが並んでいたりする。 (この写真は、サンプルとして陳列されていたカニで、このような丸ごとの状態で出てくるわけではない)
カキも同様で、あっさりしたクセのない種類が陳列されていたかと思うと、クリーミーで濃厚なタイプが出てきたりもするので、いろいろ食べてみたい場合は、時間差をおいて何度も足を運ぶようにするとよい。
ちなみにカキは、あらかじめ厨房で開けてあるものが並ぶこともあるが、種類によっては現場スタッフが客の目の前で一つひとつ開けてくれる(16)。
参考までに、アメリカでは夏場でも、生ガキは季節に関係なく広く流通している。
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知らないとお目にかかれないアイテムもある。たとえば、ハサミが大きく食べやすいことで人気のストーンクラブは、見える場所にはなく、高級なためか、現場スタッフに口頭で個別にオーダーする必要がある。(下の写真はストーンクラブではない)
当然のことながら、その存在を知っている人だけが並ぶことになるわけだが、出てくるまでにけっこう時間がかかり、辛抱強い人以外はなかなかゲットできない。
また、出す側の準備が間に合わないのか、提供する量を制限しているのか、ときどき売り切れ宣言が出され、存在を知っていても並ぶことすらできなくなる。今回の取材ではまさにそれに直面してしまい、いまだにこの店のストーンクラブにありつけていない。
素材がそのまま提供されるシーフード以外に、セビーチェやガスパチョなどのたぐいのものを小さなグラスの容器に盛り付けたアイテムもいろいろ存在する(17~20)。
今回の取材時はイカやホタテを使ったものが目立った。陳列されている姿があまりにも美しく、ついつい手が伸びてしまうのがこの種のアイテムの特徴だが、味的には今ひとつのものもあったりするので要注意。
シーフードといえば、陳列セクションは異なるが、パエリア(21)のたぐいのものを出しているところでも楽しめるので、興味がある場合はそちらも試してみるとよいだろう。
ステーキ、イタリアン、メキシカン、その他一般の洋食のセクションも充実している。
この分野における日本人にとっての興味の対象は、やはりステーキなどの各種肉料理(22)、そしてピザやパスタなどのイタリアン系(23, 24)になるのではないかと思われるが、客の目の前でステーキを切り分けてくれる、薪を使った釜でピザを焼いている、パエリアの実演クッキング、といったたぐいのことは、もはや他のホテルでも見られ珍しいことではないので省略することとし、この店ならではの細かいところへのこだわりの部分を紹介してみたい。
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どうでもいいアイテムではあるが、この店で最もビックリさせられたのはハチミツだ。
なんと、どこから仕入れてくるのか、蜂の巣ごと陳列台に並ぶ。客はそれをこそぎ落とすように取って食べる。(下の写真)
蜂の巣のカスのようなものが口の中に残る独特な食感を体験できる貴重な機会なので、ぜひ試していただきたい。実際に味も素晴らしく、その濃厚な風味に感動するはずだ。
さらにその蜂の巣以外にも、蜜の元となった花の種類別にさまざまなハチミツが用意されており、この店の意気込みが感じられる。
ハムやチーズのセクションもすごい。透き通るような深いルビー色の生ハム(25)を、現場スタッフ(写真)が薄くスライスしてくれる。
日ごろ生ハムを食べている人でも、切り分けた直後のものを食べたことがある人は少ないのではないか。ハチミツ同様、これまた感動すること請け合いだ。
生ハム以外にも様々な種類のハムが陳列台に並んでいるので、いろいろ試してみるとよいだろう。チーズもすぐとなりの場所で同じような演出を楽しむことができる。
これまた地味な存在だが、メキシコ料理のセクションのサルサやワカモレの品揃えも驚異的だ。その数なんと15種類。(写真)
新鮮なトマトのシャキッとした食感を楽しめるさわやかなサルサから、メキシカンらしい激辛まで選択肢は豊富だ。
もちろんタコスの皮などトルティーヤのたぐいも、そのほとんどがその場で焼いてくれる自家製(26)であることは言うまでもない。
一般のアメ食系のメニューとしてはスライダー(ひと口サイズのハンバーガー)がサイズ的にも味的にも上品で日本人の味覚に合いそうだ。(写真)
チキンやポテトなどの揚げ物も、小さなサイズの金属製バスケットに入っていて可愛らしい(27)。これはコスモポリタンのバフェィでよく見られるディスプレイ方法なので、それのマネという感じは否めないが、見た目の印象の良さから今後のトレンドになりそうだ。
健康志向の人にとっては大いに気になるサラダのセクションも、こだわりが感じられる。サラダ本体となる各種野菜とは別に、トッピング用のさらなる薄切り野菜や卵などが用意されており、それらのディスプレイがまたカラフルで美しい(28)。
たまたまこれらトッピングは麺類セクションのすぐとなりにあるので、ラーメンなどに乗せてみるのもよいだろう。
デザート類の充実も想像の通りで申し分ない。各種ショートケーキからムース、プディング、フラン、パンナコッタなど、ひと通りの種類は全て揃っている。
ただ、ショートケーキのたぐいは、パイ系やドッシリ重厚なものはたくさんあるものの、ふんわり軽いスポンジ系のものは少ない。
サイズは総じて小ぶりで、甘さもアメリカのスイーツとしては控えめ。このサイズと甘さは、いろいろな種類を食べてみたい人にとっては重要な要素だが、とりあえず合格点といったところか。
最近の流行をしっかり追っているのか、マカロン(写真)やカップケーキ(29)も忘れていない。ちなみにカップケーキはチーズケーキ系のものが多かった。
金粉が乗ったチョコレートケーキ(30)もひときわ輝き、存在感を主張していたが、それ以上に目立っていたのは、シロップなどをスポイトに入れ、好きな量を押し出せるよう細かい配慮がなされたムース(31)。見た目がユニークでシロップの色がアクセントになっているので人の目を引く効果は抜群だ。
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現場でそのつど作るクレームブリュレなどは、出来上がった順にすぐに無くなってしまうことがあるので、食べたい者は、あるときに確実に確保しておくようにしたい。
特に、焼き上げるのに時間がかかるスフレはその典型で(写真) 、ないことのほうが多いと考えたほうがよいだろう。
クレープ(32)は完全なオーダーメード制で、ストロベリー、ラズベリー、バナナなど、好きなものを指定し、現場スタッフに注文する。
注文といえば、アイスクリーム、シャーベット、ジェラート(写真)なども同様だ。
オーダー方法は、まず自分の好きなサイズや味のコーンや選び、そのあとでフレーバーを現場スタッフに告げる。コーンは脇にいろいろな種類のものが置かれているので(33)、自分でそれを手に取り、スタッフに手渡す。
なお、フレーバーを決める前に味見をしたい場合は 34 の写真の女性客のように、小さなスプーンでテイスティングをさせてもらうことも可能。
棒の先に付いた、いわゆるロリポップ型のスイーツ(写真)こそが、この店の広告宣伝用の写真にも採用されているほどの看板アイテムだ。
いろいろな種類のものがあるが(35)、一番多いのはチーズケーキ系。
まだ開業一週間だというのに、早くもこれの食べ方にはスタイルが決まりつつあるようだ。入店前に並んでいると、食べ終わって店から出てくる客の姿を見ることになるので自然にわかることだが、なぜかこのロリポップ型スイーツは、店を出る際に手にとって、それをしゃぶりながら店をあとにする人が圧倒的に多い。食べ放題といっても持ち出し禁止が暗黙のルールだが、棒状のものならかまわないといったところか。
いいことばかり書いてきた感じだが、もちろん悪い部分もある。(写真は入口前の行列)
一番ひどいのが、待ち時間を長くしている原因となっている片付けの段取りの悪さ。明らかに食べ終わって帰ってしまった客のテーブルをすぐに片付けないのは目に余るひどい光景で、長時間待ってやっと入店した客の多くが、「なんだ、こんなに空席があったのかよ」とあきれている。労働組合(日本のそれとは似て非なるもの)の悪しき習慣が原因だが、それに関しては話せば長くなるので、細かい理由などは割愛。
また、片付け終わっているテーブルがたくさんあるにもかかわらず、店内のスタッフと入口のスタッフとの連携が悪く、すぐに客を入れない誘導の悪さも見るに忍びない。ラインパス(カジノの上客など、行列に並ばなくても良い特権のカード)を持った優待客ですら、長時間待たされているのはひどすぎる。
その他では、これは趣味の問題になるが、BGMがときどきやかましく感じた。冷房が効きすぎているのも、日本人にとってはマイナス要因かもしれない。
あと気になるのは、開業直後の特別サービスであってほしくない、ということ。料理の内容が料金のわりにかなり良いように思われるが、開業直後の評判作りのための期間限定の特別サービスであったら、今後の利用者にとっては意味が無い。そうでないことを祈りたい。
さてその気になる料金について。
あまりの人気で待ち時間が長いため、すぐに値上げになるのではないかと早くも噂されているが、とりあえず現時点では平日の朝食が $19.99、昼食 $29.99、夕食 $34.99 となっている。
土曜日と日曜日の朝昼連続のブランチは $31.99、金曜日と土曜日の夕食は $39.99。シーザーズグループの会員カード保持者は $3 off。すべて外税表示で、消費税率は 8.1%。
それぞれの時間帯は、基本的には午前11時と午後3時で区切られることになっているが、まだ明確に決まっていないのが現状。途切れることなく客が並んでいるので、列の途中でスパっと料金を変えることもむずかしく、試行錯誤の状態が続いているようだ。
なお今回のレポートは平日の夕食の時間帯における体験取材で、朝食や昼食などにどのような料理が並んでいるかは確認していない。
アルコール類は着席後に有料でオーダーすることが可能。ちなみにビールは小瓶一本 $7 だが、$15.99 で飲み放題というオプションもある。
シーザーズグループの全ホテルのバフェィで利用可能な 24時間食べ放題パス「Buffet of Buffets」の保持者は、15ドルの追加料金で入店可能。(現場では $10 追加で入店できた事例もあり、まだ流動的。Buffet of Buffets に関する情報は、少々古いが、この週刊ラスベガスニュースの 698号に掲載。ただし料金は当時と変わっている)
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