今週はボジョレー・ヌーボーの解禁ウィーク。といっても、それとは直接的な関係はないが、読者の中にもかなりワイン通の人がいるようなので、10月27日にオープンした全米最大級のワイン専門店(写真上)を紹介してみたい。
店の名前は Total Wine(正式な社名は Total Wine & Moreだが、一般的には Total Wine と呼ばれている)。米国東海岸メリーランド州に本社を構えるチェーン店で、現在の全米店舗数は 147。ラスベガス地区では今回のオープンで4店目。
じつはこの店の話題に関しては、ラスベガス市長がテープカットをしたベガス1号店の開業セレモニーの記事として、この週刊ラスベガスニュース第690号で紹介している。(この写真はその1号店の店内)
ではその1号店と今回の4号店、何が違うのか。それはホテル街からの距離で、1号店、そしてその後にオープンした2号店、3号店もレンタカーがなければ一般の観光客にとっては行きにくい場所だったが、今回オープンした4号店はホテル街のすぐ近く。観光客にも人気のショッピングエリア 「タウンスクエア」にあるので、公営バス SDX を使って簡単に行くことができる。(タウンスクアに関しては第566、612号で特集)
この店の特徴は何といってもその広さ。倉庫などを含めない店舗面積が約2500平方メートルというから驚きだ。家電量販店やホームセンターならいざ知らず、ワインショップでこの広さは本当にすごい。
ワインショップといっても、ワイン以外の取り扱いも豊富で、広報資料によると 2500種類を超えるビールも棚に並ぶ。さらにスコッチ・ウィスキーなどを始めとするさまざまなアルコール類が約2000種類。
ちなみにワインは約8000種類。もちろんこれらの数字は種類の数であって、ボトルの数ではない。ボトルの総数は把握しきれていないのか、発表はされていない。とにかく正式な社名の後半部分「& More」が示すとおり、ワイン以外でもアルコール類ならなんでも取り扱おうというのがこの店のコンセプトのようだ。
そうなると、我らがニッポンの日本酒や焼酎の扱いも気になってくるが、これがなんと期待に反してお寒い限り。
1号店の記事のときにも書いたが、テキーラ、ウォツカ、ラム酒など、世界各国のさまざまな酒類が大量に陳列されているなか、日本酒や焼酎は、全体の売場面積の 500分の1 にも満たないスペースにひっそりと置かれているだけだ。(上の写真に写っているのが日本酒セクションで、見えている範囲が日本酒セクションのほぼすべて)
寿司ブームといわれ、実際に寿司店はどこの都市にもあり、その店の中では日本酒がかなり消費されているわけだが、この店での不人気ぶりはどうしたことか。(この写真は、安倍総理がオバマ大統領に贈ったことにより人気が急上昇した「獺祭」の精米歩合が50%の純米大吟醸酒)
寿司ブームは、ごくわずかな和食マニアだけの話なのか、それとも一般的なアメリカ人は、大好きな寿司屋に行ってそこで日本酒を飲むことはあっても、自宅ではほとんど飲まないということなのか。
だとすると、寿司屋での日本酒は味が好きで飲んでいるというよりも、店の雰囲気などに流されて飲んでいるだけの可能性もある。我々日本人がメキシコ料理店でメキシコのビールを飲んでみたくなるのと同じようなことと考えれば仕方が無いことかもしれないが、いずれにせよ、アメリカの家庭での日本酒の消費が伸び、この店の棚に大量に並ぶようなことはまだまだしばらく先になりそうだ。ちなみに中国や韓国の酒も日本酒同様、この店での存在感は極めて低い。
話をワインに戻すと、この店では、ブドウの種類、地域別などわかりやすく陳列されており見ていて楽しい。さらにイタリア産とフランス産は単なる国別だけでなく、地方ごとにも細分化されたディスプレイになっており、マニアックな消費者にとっては、地域特産ワインの掘り出しモノ探しなど、時間がいくらあってもたりないほど、あれこれ楽しむことができる。
実際に買いに行こうと思っている人のために店内の配置を簡単に説明しておくと、店に入って中央手前半分がぶどうの種類別に並ぶ棚、右半分が国別や地域別の棚と覚えておくと目的のワインを探しやすい。中央奥がウィスキーなどのハードリカー、左半分の奥がビール、左の手前がスピリッツ類で、ワイングラスやオープナーなど関連雑貨はレジの近くに配置されている。
気になる価格設定に関してだが、ワインはライバル店との間で同一の商品が存在していることが少ないので、ビールで比較するならば、代表的な商品であるバドワイザーの12オンス缶(日本における 350ml サイズの缶)の 12本入り箱売りが $9.99、20本入りが $15.49。
これらの価格設定はホテル街の Walgreens や CVS などのドラッグストアと比べると大幅に安いが、Wal-Mart など地元民が利用する郊外型の一般的なスーパーマーケットと比べると飛び抜けて安いというわけではない。
価格比較が可能なワインで調べてみても同様な傾向にあり、低価格よりも圧倒的な品ぞろえがこの店の特徴と考えるべきだろう。
なお、ワインマニアにとっては多少の価格のちがいよりも、自分が買いたいワインがあるかどうかのほうが気になるところ。そのような場合は、この店の公式サイト (totalwine.com)で在庫を確認できるので、調べてから行くようにするとよい。(上の写真のワインは、ロマネコンティと同等レベルのワインを製造していることで知られるカレラ・ワイナリーの各種ワインだが、カレラで最も人気の「JENSEN」は置いてなかった。この店のサイトで調べても JENSEN は検索されない)
一般の観光客にとっては重いボトルをどうやって破損させずに持ち帰るのかという問題や、日本国内へ持ち込む際の税金のことなど(ワインの場合、1リットルあたり 200円)、悩みは少なくなさそうだが、たとえ買わなくても見ているだけで楽しめる店なので、ワイン通やビール通はぜひ足を運んでみるとよいだろう。
営業時間は平日が 8am~11pm、金曜日と土曜日が 8am~12pm。場所はマンダレイベイ・ホテルの南約2.5kmの地点。ホテル街から2連結車両の公営バス SDX の南行に乗り、Town Square で下車。バス停を降りたら、南側(バスの進行方向)に見える陸橋をくぐって 100メートル進んだ右側。