日本でもコロナによる行動規制が緩和されてきたためか今年のゴールデンウィークは久しぶりに旅行需要が旺盛と聞く。
ここラスベガスでも日本からの観光客の来訪がそれなりに期待されており、コロナ前のレベルにはまだ及ばないものの当地の旅行業界も元気を取り戻しつつあるようだ。
そんな中、ゴールデンウィークにベガス旅行を計画しているという読者からナイトショーの料金に関する問い合わせメールを頂いた。「料金情報が古くてわかりづらい!」と。
そう言われてしまうのも無理はない。そもそも当サイトのナイトショーセクション内のコンテンツはコロナ前からまったく更新されていないばかりか、ここ数年でナイトショー業界のチケット販売システムが大きく変化しているからだ。
というわけでコンテンツを長らく放置したままにしているお詫びの意味も込めて、その大きく変化しているチケット販売システムについてレポートしてみたい。
料金体系がわかりにくくなっている最大の原因はダイナミックプライシング(dynamic pricing)の導入だ。
この言葉は日本でもかなり定着してきているようなので今さら説明の必要もないと思われるが、ひとことで言ってしまえば変動価格ということになる。つまりナイトショーのチケット価格において定価のような決まった価格が無くなってきているということ。
変動価格そのものは日本でもアメリカでも今に始まったことではない。
野菜などの生鮮食料品においては遙か昔から当たり前のことで、またスーパーマーケットなどで売れ残りそうな惣菜や期限切れに近い商品を割引販売することなど日々目にする光景だ。
航空運賃やホテルの宿泊料金なども変動価格の代表格といってよいだろう。
変動価格を採用している場合は定価というものが存在していないため、利用者にとって価格を覚えにくいといった不便や、異常な高値が出現しやすいといった問題もあるが、メリットも少なくない。
たとえば高速道路の料金や通勤電車の運賃などにおいて混雑時には高く、すいている時間帯には安く設定するようにすれば、需要が平均化され混雑の緩和につながる。また賞味期限が近い商品などを安く販売できれば廃棄物を減らすことも可能だ。
そのようなメリットが期待できるのであれば、需要と供給のバランスで価格が決まるという市場経済の原理原則論などを持ち出すまでもなく、変動価格は自然な流れとして今後も幅広い分野で導入が進むものと思われる。
というわけでナイトショーのチケットにおいて定価という概念がなくなってきていることは何ら不思議ではないが、価格の変動幅があまりにも大きかったり、株価のように秒単位で変化したのでは購入者は戸惑ってしまうので現状がどうなっているかは気になるところだ。
ちなみに変動価格といっても人間が価格を決める場合と、アルゴリズムに従ってコンピュータが決める場合があるわけだが、ナイトショーのチケット価格はアルゴリズムによる全自動であることがほとんど。
チケットの売れ残りを最小限にしたいが、やみくもに価格を下げたら利益も減ってしまう。需要を予測しながら利益の最大化を目標に価格を刻々と変化させるのがダイナミックプライシングが目指すところだ。
それはそうと変動価格という言葉とダイナミックプライシングはほぼ同意であることはすでに書いたが、前者よりも後者のほうが激しい変化、つまり価格の変動幅が大きく、変動する頻度も激しいような響きがあるのは気のせいか。
さて前置きが長くなってしまったが、実際のところ現在のラスベガスにおけるナイトショーのチケット価格はどの程度ダイナミックに変化しているのか。
代表的な例として日本人観光客に人気のシルク・ドゥ・ソレイユの「KA」と「オウ」の公式サイトでゴールデンウィーク期間の価格を調べてみた。
以下が2023年4月19日の時点におけるその公式サイトでの料金表のキャプチャー画面。
はたして価格が大きく変動していると見るか、大して変動していないと見るか。その判断は各読者に任せるとして今週の記事を終わりとしたい。
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