“喫煙”可能なホテルなど、写真で見るラスベガスのマリファナ事情

屋根も周囲もマリファナ販売店の広告だらけのタクシー。

屋根も周囲もマリファナ販売店の広告だらけのタクシー。

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 この春以降、館内でのマリファナの使用が認められるホテルが出現することになるなど、当地ラスベガスにおけるマリファナに関する事情が劇的に変化するかもしれないという話をお届けしてみたい。
 なお今回のこのレポートはあくまでも現状を客観的に伝えるためだけの目的であり、読者に対して当地でのマリファナの購入や使用を奨励するものではない。
(そもそも日本の「大麻取締法」「刑法第2条」によって、日本国外での使用でも違法となる可能性がある)
 なおラスベガスのマリファナ事情を示す写真は文末にまとめて掲載した。

医療用と快楽用のマリファナ

 まず始めにマリファナに関するこれまでのアメリカにおける法律的な変遷に触れておきたい。
 法律に関わってくるマリファナには大きく分けて2つある。medical marijuanarecreational marijuana で、前者は医療目的限定、後者は快楽用つまり嗜好品だ。
 医療用はかなり以前から多くの州で合法化されており今回の話題の対象からは除外し、快楽目的のマリファナだけに焦点を絞って話を進めたい。

全米で半数の州がすでに解禁

 10年ほど前から全米の各州で住民投票が行われるようになり、いくつかの州がマリファナの合法化に踏み切った。
 その「いくつかの州」の中にはロサンゼルスやサンフランシスコがあるカリフォルニア州(2016年に合法化)、そして当地ラスベガスのネバダ州(同じく2016年)など日本人観光客にとって馴染みのある州も含まれている。
 その後も住民投票を行う州が増え続け、現在では全米50州のほぼ半数の州が何らかの形でのマリファナの販売や使用を認めている。

現実の直視と税収に期待

 多くの州民が解禁を選んだ理由は何か。それは「現実の直視」「税収期待」といわれている。
 何十年も前から違法とされてきたものの、需要がある限り裏世界に生きる者たちによる製造や密売が一向に無くなる気配がなく、結果的に反社会勢力の資金源となってきたのが現実だ。
 違法であるがゆえに市場原理が働きづらく高いヤミ価格になってしまうのが世の常というもので、ますます彼らを利することになり、ならば合法化によって安く流通させることができれば彼らの資金源を断つことができるだろう、というのが解禁論者たちの論拠だ。(彼らはマリファナが売れなくなってもコカインなど他のドラッグを売るので資金源を断つことはできないが)

マリファナ税は役に立っている

 それともう一つ大きな理由が税収への期待で、酒やタバコに代表されるように嗜好品への課税はどこの国でも徴税手段の王道だ。
 そして実際に他の州よりも一足先に解禁してマリファナ税を導入したコロラド州(2012年解禁)では財源に大きく貢献できることが確認でき、多くの州がそれに追随することになった。
 ラスベガスでもマリファナからの税収を学校など教育機関などに回すなどして役立っているという。

 結局のところ、「マリファナを吸いたいわけではないし、解禁には多少の弊害があることもわかっているが、税収につながるばかりか反社会勢力の撲滅や犯罪の減少になるのであれば…」というのが多くの有権者の考えのようだ。
 参考までに、マリファナに関する税金は sales tax、excise tax さらに小売段階や卸売段階など複雑になっているので税率を単純に示すことはむずかしいが、ネバダ州における2021年のマリファナ関連の税収は約1.5億ドル(約200億円)とされている。

買うことができても吸う場所がない

 さて解禁後のラスベガスに関してだが、闇ルート対策や税収などに関してはそれなりの成果を得ているものの、一つだけ悩ましい問題を抱えていた。それは合法化されていない州や他の国からの訪問者がマリファナを買うことができてもそれを吸う場所がないという問題だ。

 解禁時から消費できる場所などに細かなルールが定められており、それによると公共の場所、たとえばレストラン、バー、カジノなどはもちろんのこと、路上、公園、野山、キャンプ場などの屋外も禁止で、当然のことながらホテルの客室内でも消費できない(そもそもホテルの客室内はタバコすらほとんどのホテルが禁止)。つまり事実上マリファナの消費は個人の自宅だけということになっている。

吸う場所がなければ税収は限定的

 そうなると一般観光客にとってはラスベガスに別荘などを持っているか、当地に住む友人などの人脈がない限りマリファナを買っても意味がない。意味がないどころか持ち帰ればその国や地域の法律で罰せられてしまう。
 この消費場所の問題を解決できなければマリファナ販売による税収増も限定的なものになってしまうわけで、観光都市ラスベガスの管理当局としては長らく頭を抱えていた。

ルール無視が後を絶たない

 そもそもこの消費場所に関するルールは当初から解釈や運用においていろいろ議論があった。
「自宅はよくてホテルはダメ」はなんとなく理解できても、自宅とホテルの中間的な存在、たとえば短期契約のアパートウィークリールーム、さらには AirBnB のような民泊の場合はどうなのかとなると判断がむずかしい。

 詳しく規定したルールを作らない限り抜け道を残してしまうわけだが、抜け道を探すことなどせずに堂々とホテルの館内や路上などで吸ってしまう者が後を絶たないのが現実で、消費場所に関するルールは無視されているに等しい。
(とは言えホテルの客室内で吸ってニオイなどを残した場合はチェックイン時に提示しているクレジットカードに違約金を請求されることがある)

ついにホテル内使用にも道を開く

 さて前置きが長くなってしまったが、ここからが本題。
 解禁した州におけるマリファナ購入者の多くは地元民。したがって自宅限定でも特に大きな問題にはなりにくい。
 しかしラスベガスという巨大な観光都市を抱えるネバダ州では事情が異なってくる。くどいようだが、訪問者に買ってもらわなければ販売も税収もこれ以上伸びることは期待できない。

 解禁当初から自宅限定ルールを問題視してきたネバダ州当局は長年に渡りあれこれ議論を重ねながら妥協策を探ってきた。
 その結果、議論の過程や詳細などがわかりにくいばかりか新たな規定にはなお曖昧な部分があるものの、ついにさまざまな条件付きでありながらもホテルでのマリファナ使用に道を開くことに。
 そして先月ラスベガスで第1号となる「Cannabis-friendly Hotel」を標榜するホテルが名乗りを上げたのである。

カンナビスとマリファナの違い

 余談になるが cannabis(カンナビスあるいはカナビス)とは marijana(マリファナ)のこと。どちらも同じで日本では大麻だ。
 ちなみにマリファナには「420」(フォートウェンティ)に代表されるようなさまざまな俗語や隠語があるわけだが、マリファナもどちらかというと俗語っぽい響きがある。
 そんな理由もあってか、最近は植物や成分そのものを意味するカンナビスのほうが学術的な響きがあってよろしいということで、低俗なイメージを出したくない場面ではカンナビスが多用される傾向にある。

Artisan Hotel が Lexi に

 ラスベガス第1号の「マリファナが吸えるホテル」として名乗りを上げたのは Artisan Hotel。
 ストリップ大通りにあるサハラホテルから西に1km ほどの場所にひっそり身を隠すように存在しているわずか 64部屋の小さなホテルだ。
 このあと客室やロビーなどを改装したのち(ニオイが残りにくいように高性能の空気清浄機などを導入するらしい)、4月ごろまでに The Lexi というホテルに改名して再出発するのだとか。
 64部屋が減るのか増えるのかはわからないが、どう考えても需要が供給を上回りそうで、第2、第3と、あとに続くホテルが出てくるのではないかと噂されている。

大型カジノホテルはまだ無理か

 一般の日本人観光客の多くが利用するストリップ地区の巨大カジノホテルが今後どのように対応するのかは気になるところだろう。
 3000部屋もあるホテルがほとんどなので、そのわずか1割だけでもマリファナ客に開放すれば規模で The Lexi を圧倒できる。ビジネス的には興味を示すはずだ。

 ただ簡単にはことが進まないだろうとの意見が多い。ゴージャスな雰囲気をウリにしている巨大カジノホテルにとってイメージダウンを気にしなければならないばかりか、カジノ業界を管轄する組織とマリファナ業界を取り仕切っている当局はまったく別で、前者の組織はカジノホテルのマリファナ解禁に消極的だからだ。ちなみに Artisan にはカジノが無い。

タバコはダメでマリファナはOK?

 現時点ではそのような状況だが、Artisan が Lexi に生まれ変わったあとの業績などによってはどうなるかわからない。
 ひょっとするとかなり短い期間内に流れが大きく変わり、ラスベガスの主要ホテルのほとんどがマリファナ歓迎ホテルになっていないとも限らない。

 もしそうなるとしたら、ここ数年で主要ホテルの多くが喫煙可能な客室をなくして全館禁煙に変化してきている流れとの整合性が気になってくる。
「タバコはダメでマリファナはOK」というわけにはいかないだろう。「マリファナOKの部屋ではタバコを吸ってもかまいません」としたところで、愛煙家からは「マリファナのニオイはイヤだからタバコだけの喫煙ルームを用意しろ」となるに決まっている。
 はたしてどうなることやら。Lexi の今後の運営や業績から目が離せない。現在のラスベガスのマリファナ事情を象徴する写真(すべて筆者撮影)を以下に掲載して今週の記事を終わりとしたい。

ラスベガス市内にマリファナ販売店は数多く存在。この販売店「planet13」は店構えが豪華なためか非常に有名。

ラスベガス市内にマリファナ販売店は数多く存在。この販売店「planet13」は店構えが豪華なためか非常に有名。

planet13 は店内も豪華なことで知られている。

planet13 は店内も豪華なことで知られている。

マリファナの販売や購入は解禁されているが、ホテル内での消費は禁止となっているため、ほとんどのホテルの入口にはこのような注意書きが。(これは LUXOR ホテル)

マリファナの販売や購入は解禁されているが、ホテル内での消費は禁止となっているため、ほとんどのホテルの入口にはこのような注意書きが。(これは LUXOR ホテル)

この春から館内でのマリファナ利用を認めることになった現在の Artisan ホテル。今後は The Lexi に。

この春から館内でのマリファナ利用を認めることになった現在の Artisan ホテル。今後は The Lexi に。

奥に見える横長の構造物は、Sahara アベニューが高速15号線をまたぐための高架部分。

奥に見える横長の構造物は、Sahara アベニューが高速15号線をまたぐための高架部分。

ダウンタウン地区にあるマリファナ販売店。

ダウンタウン地区にあるマリファナ販売店。

マリファナ販売店の広告を載せて、ストリップ大通りの繁華街を堂々と走る宣伝カー。

マリファナ販売店の広告を載せて、ストリップ大通りの繁華街を堂々と走る宣伝カー。

マリファナ販売店の宣伝は、巨大なビルボード広告でもしばしば見かける。

マリファナ販売店の宣伝は、巨大なビルボード広告でもしばしば見かける。

最後はこのページのトップにも掲載した Planet13 の広告だらけのタクシー。

最後はこのページのトップにも掲載した Planet13 の広告だらけのタクシー。

 

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コメント(1件)

  1. JK より:

    アムステルダムみたいに、街中でのマリファナコーヒーショップを作れば解決しそうだけどね。ベガスならもっとおしゃれなショップが作れそうな感じもするし。あとホテルにマリファナ部屋を作るのであれば、タバコみたいに副流煙での健康被害など、あまり知られていない点での検証とかが必要だと思う。それこそマリファナはいいけどタバコはダメっていう言い訳ができないから。

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