1 dollar shop、インフレと超円安の今こそ知っておきたい100円ショップとの違い

アメリカの100円ショップ 「 99 Cents Only Stores」

アメリカの100円ショップ 「 99 Cents Only Stores」

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 日本でもアメリカでもコロナの新規感染者数は減りつつあるものの依然高止まり。それでも社会全体の雰囲気が「ゼロコロナ」から「ウィズコロナ」に変わってきているためか、今年のゴールデンウィークには少ないながらも日本人観光客が当地ラスベガスを訪れてくれた。

 そんな数少ない訪問者の中に旧知の友人カップルがいた。夫婦そろって自他共に認めるラスベガスマニアなのでカジノが訪問目的であることはいうまでもないが、ショッピングも嫌いではない様子。
 20数回目のラスベガスだという彼らがいうには、これまでとは当地でのショッピング事情が大きく変わっているとのこと。ずばり価格の高騰だ。とにかく何もかもが高いことを嘆いていた。

 アメリカではこの一年、歴史的なインフレに見舞われていることは多くの人が知るところだが、そこに 1ドル130円という超円安が重なったのでは、彼らにとって高いと感じるのも無理はない。
 ベガス訪問のたびにダウンタウン近くにあるアウトレットモールでショッピングを楽しんでいたというこのカップル、今回ばかりはその気になれなかったというから気の毒だ。
 なにやら買おうと思っていた商品が、彼らの生活圏にある南大沢や南町田(どちらも東京の西地区にあるベッドタウン)のアウトレットモールよりも高かったとのこと。
 もはや今のドル円レートでは日本からの海外旅行者がラスベガスでショッピングを楽しめる環境にはないのかもしれない。ちなみにラスベガス地区の消費税率は 8.38% なので日本よりもむしろ低い。

DAISO ラスベガス店

DAISO ラスベガス店

 そんな彼らを車に乗せてラスベガス市内を案内していたところ、日本の100円ショップの DAISO を目にすることに。近年アメリカでも事業を拡大し、昨年ラスベガスにも進出しているので DAISO をアメリカで見ること自体は特に珍しいことではない。
 勉強のためにとのことで店内に入ってみると、日本と同じようなアイデア商品が倍以上の価格で売られていることに改めて日本のデフレ円安を実感させられた様子。
 いろいろ考えさせられることがあったのか、経済動向に好奇心旺盛な彼らは「アメリカの100円ショップも見てみたい」との話になった。

アメリカの1ドルショップ「99 Cents Only Stores」の店内の様子。以下の写真もすべてこの店内で撮影。

アメリカの1ドルショップ「99 Cents Only Stores」の店内の様子。以下の写真もすべてこの店内で撮影。

 さてここからが今週の記事で読者に伝えたいこと。アメリカの100円ショップ、つまりこちらでいうところの dollar shop(1ドルショップ。1万店規模の全国的な大型チェーン店として数社が競い合っている。具体的な企業名は後述)は、日本のそれとはかなり商品内容やコンセプトが異なっているので要注意だ。
 なぜそんなことをわざわざここで伝えたいかというと、今に限らず20年以上も前から「アメリカの1ドルショップに行ってみたい」という日本からの旅行者が常に一定数いて、そのような人たちを実際にショップに案内すると、ほとんどの人はガッカリしているからだ。なぜそうなってしまうのか。

バナナ売り場。1ポンド(約450g) 59セントで売られていた。

バナナ売り場。1ポンド(約450g) 59セントで売られていた。

 日本の100円ショップでは「へぇー、なるほど」と客を感動させるようなアイデア商品のたぐいがたくさん売られているが、アメリカでは牛乳、玉子、バナナ、野菜といった日々の生活必需品がメインだからだ。
 もちろんアイデア商品も多少は陳列されているが、アメリカの消費者が求めている商品の中心はそれではない。日々の食品、必需品、消耗品だ。
 逆に日本の 100円ショップでもスナック菓子や缶詰のたぐいなど食品も店頭に並ぶようになってきてはいるようだが、あくまでもメインはアイデア商品を中心とした生活雑貨だろう。

99セントの商品もあるが、玉子も牛乳も1ドル以上。

99セントの商品もあるが、玉子も牛乳も1ドル以上。

 というわけで、日本の100円ショップのようなアイデア商品を期待して1ドルショップへ行くとガッカリすることになりかねない。
 インフレと円安でアウトレットモールなどでのブランド品のショッピング環境が悪化している時期だからこそ、「じゃぁ1ドルショップにでも行ってみるか」と考える旅行者も多いのではないかと思われるが、限られた滞在時間を無駄にしないようにするためにも日米の違いを知っておいて損はないだろう。
 もちろん1ドルショップの存在価値を全面的に否定しているわけではない。アメリカならではの食品や生活必需品などを安く買ってみたいという場合は足を運んでみる価値は十分にあるはずだ。

5本買えば 4.99ドルだが、単品だと 1.29ドルという価格設定。

5本買えば 4.99ドルだが、単品だと 1.29ドルという価格設定。

 なお蛇足ながら価格に関してふれておくと、日米で共通していえることだが、商品価格は100円や1ドルとは限らない。というか、むしろの近年アメリカの場合は1ドルではないことのほうが多いのではないか。
 日本では円安などの影響で仕入れ(輸入)コストがアップしており 100円以上の商品が目立ってきているのと同様、アメリカでも賃金の上昇などインフレの波には逆らえず、もはや1ドルを維持することが困難になってきている。
 そのため店の名前に「Dollar」の文字があっても、多くの商品が1ドル以上の価格設定になっていることは覚悟しておくべきだろう。

インフレの影響とは無関係に、これらの商品は初めからこの程度の価格設定。

インフレの影響とは無関係に、これらの商品は初めからこの程度の価格設定。

 最後に、アメリカにおける1ドルショップ名を具体的に列挙すると、Dollar General(時価総額、約6兆円)、Dollar Tree(同、約4兆円)、Family Dollar99 Cents Only Stores などが全国規模の大型チェーン店ということになる。
(Family Dollar は Dollar Tree の子会社、99 Cents Only Stores は非公開企業になった)

店の名前に偽りなしの 99セントで売られている商品。

店の名前に偽りなしの 99セントで売られている商品。

 どこも巨大企業のため、アメリカで着々と存在感を高めてきている DAISO にとっては大きすぎる競争相手かも知れないが、高品質なアイデア商品に軸足を置いた差別化戦略による運営はアメリカの消費者にとっても非常に新鮮なのか、実際にラスベガス店も常に混雑している。
 店舗面積あたりの集客数や売上は上記のライバル店よりもかなり高いとの噂も聞いているので、今後のますますの発展を期待して、今週のレポートを終わりとしたい。

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