ラスベガスのスロットマシンに見る中国の圧倒的な存在感

スロットマシン大手 IGT社の「Dragons vs Pandas」

スロットマシン大手 IGT社の「Dragons vs Pandas」

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 ロシアとウクライナの戦争に関連して日本と中国との関係も今後ぎくしゃくしてきそうな気配だが、政治的な話はまったく抜きにしてアメリカにおける日本と中国の存在感の違いがあまりにも大きいことを少々残念に思う今日このごろ。

 アメリカ社会の中で中国は良くも悪しくも身近な存在だが、日本は存在感が非常に薄い。特にここラスベガスでは。

 必ずしも目立つことが良いとは限らないが、「気にかけてもらっていない」ことへの寂しさはある。そんな疎外感のようなものを感じさせられる場面が最近のラスベガスのカジノでは増えてきているのでそれについて語ってみたい。

総理大臣の名前など誰も知らない

 ベガスでタクシーなどに乗った際、ドライバーから「どこから来た?」ときかれ「日本だ」というと、「トヨタ、ソニー!」といった企業名の話を振られることが少なくない。もしくは「スシ、ラーメン!」など食べ物の話題になったりするのがお決まりのパターンだ。
 ときどき「オータニ!」、かつては「イチロー!」など、野球ファンのドライバーに遭遇することもあったが、総理大臣の名前が会話の中で出てくることはまずありえない。残念ながら岸田総理の名前を知っている者などほとんどいないと思ってよいだろう。

日本人も同じこと

 と、なげいてみても、日本人にとっての諸外国に対する認識も同じようなレベルかもしれない。
 中国の習近平やアメリカのバイデン、そして今ならプーチンの名前は知っていても、小さな国やアフリカや中南米など遠方の国のトップの名前を我々はほとんど知らない。東南アジアなど近隣諸国ですら、そのトップの名前を知っている日本人は少ないのではないか。

知っているのはブランドと食べ物

 では著名な大国に対する認識はどうかというと、これまた心もとない。
 一般の日本人にとってドイツならベンツ、BMW、ビール、フランクフルトソーセージイタリアならフェラーリ、ランボルギーニ、スパゲティ、ピザといったところか。
 フランスだって大統領の名前よりもルイヴィトンシャネル、それにワイン、フォアグラ、エスカルゴのほうが先に頭に浮かんで来る。
 そんなありさまではブランドと食べ物ばかりという意味でアメリカ人の「トヨタ、ソニー、スシ、ラーメン」と何ら変わりはない。

自国文化を他国に根付かせる中国人

 さように、どこの国においても他国のことなどあまり詳しくないのが現実だとわかれば、アメリカにおいて日本が知られていないのは仕方がないことだし、中国に関してアメリカ人がよくわかっていないことも想像に難くない。
 だが中国がすごいところは他国において自国の文化を根付かせていること。特にいわゆる「チャイニーズニューイヤー」といわれる旧正月の文化などは完全にアメリカに定着しており、アメリカの郵政公社が十二支にまつわる記念切手を毎年発行したりしているほど根付いている。フランスでも今年の旧正月に合わせて寅(とら)年の切手が発行されたというからチャイニーズパワーを感じずにはいられない。

謙虚は美徳の日本人はおとなしすぎ

 日本とは違い中国の場合、本国にいる人口のみならず、いわゆる華僑など他国に移住している人たちの数もケタ違いに多い。
 ゆえに十二支の切手の発行などもそれぞれの国において需要が大きいと考えれば、驚くべきほどのことではないのかもしれないが、人口差を考慮してもこの日中のプレゼンスの差は大きすぎるように思える。
 原因は何か。中国人は総じて自己主張が強いとされるが、たぶんそれ以上に日本人がおとなしすぎることに原因があるように思えてならない。
 日本において「謙虚」という言葉はどちらかというと良い意味で使われる。つまり目立たないこと、つつましいこと、控えめにしていることが美徳とされるわけだが、令和の時代になった今でもその価値観が多くの人たちの間で脈々と引き継がれているのは何ともすごいことだ。それが良いか悪いかは別にして。

スロットマシンの「チャイニーズ化」

 さて前置きが長くなってしまったが、ここからがラスベガス大全としての本題。
 といってもあとは写真を中心に紹介するだけだが、最近急激にラスベガスのカジノ内、特にスロットマシンのセクションにおいて「チャイニーズ化」が進んでいるから驚きだ。
 そのチャイニーズ化の度合いがとにかく半端ではない。少々大げさかもしれないが、設置台数にして約半数程度のマシンがすでにチャイニーズテーマのマシンに置き換わっている。
 いや、実際には半数に満たないのかもしれないが、チャイニーズテーマのマシンは総じて大型のタイプが多く視覚的に目立つので、肌感覚としては多くの人が半数程度のように感じてしまうのではないか。

Aristocrat 社の大型スロットマシン「Dragon Link」

Aristocrat 社の大型スロットマシン「Dragon Link」

ギャンブル好きで人口も多い中国人

 日中の人口差に関してはすでにふれたが、ギャンブル好きかどうかという部分でも日中では大きな違いがあり、慎重、堅実、安全などを好む傾向にある日本人に対して、チャイニーズ系の人たちは総じてギャンブル好きが多いとされる。
 さらにラスベガスに近いロサンゼルスやサンフランシスコをはじめ全米にチャイナタウンが無数に存在していることからもわかる通り、人口の絶対数も圧倒的に多い。つまりコロナで海外旅行が困難であろうが、アメリカ国内だけでも十分すぎるほどのチャイニーズ系の人たちがいる。
 だとすればカジノにとってお得意様という意味で重要な顧客は日本人よりも中国人になってしまうことはやむを得ず、スロットマシンの「チャイニーズ化」は当然の成り行きといってよいだろう。

日系企業もチャイニーズマシンを製造

 スロットマシンの「チャイニーズ化」は日本人としては看過しがたい現実だが、だからといって日本テーマのマシンが増えれば日本人観光客などに何か良いことがあるかというと、そんなことはない。とはいえ、このままでは日本のプレゼンスの低さに寂しさというか疎外感がつのるばかり。
 ちなみに当地ラスベガスに拠点を置く日系の大手遊技機メーカー KONAMI もチャイニーズテーマのマシンを製造販売している。そのマシンをカジノ内で見るにつけ、日系企業の活躍を喜ばしく思うと同時に、日本がどんどん忘れ去られていくような焦燥感にさいなまれる。

KONAMI社のチャイニーズテーマのスロットマシン。

KONAMI社のチャイニーズテーマのスロットマシン。

運転手が見せてくれたスマホ

 そろそろ日本も伝統的な美徳である謙虚さを忘れて少々図々しいぐらいに振る舞ったほうがよい時代なのかもしれない。
 そういえば今回のテーマとも中国ともまったく関係ない話だが、数年前、日本に一時帰国する際に体験したタクシーでラスベガスの空港に向かっているときの運転手との会話を思い出す。トヨタの話でもラーメンの話でもない。ソニーのことかと思いきや…。
 日本に行くという会話の中でこちらが日本人であることを察した若い男性ドライバーは高速道路を運転中、「メイドインジャパンは素晴らしい」などと言いながら、得意げに自分のスマホを後部座席の方に向けて見せてくれた。
 ソニーかと思いきや、なんとサムスン社のギャラクシーだった。反応に困ったが、普通の英語ではなかったので好奇心として母国をたずねたらエチオピアからの出稼ぎとのこと。
 それがどうしたというわけではないが、各国のプレゼンスのあり方という意味でスロットマシンの「チャイニーズ化」と似たような似ていないような焦燥感にさいなまれたことを思い出す。
 以下、現在のラスベガスのカジノに設置されている数々のチャイニーズテーマのマシンの中から7機種を写真で紹介して今週の記事を終わりとしたい。

WMS社の「Reel Riches Fortune Age」

WMS社の「Reel Riches Fortune Age」

WMS社の「Dancing Drums」

WMS社の「Dancing Drums」

KONAMI 社の「LUCKY ENVELOPE」

KONAMI 社の「LUCKY ENVELOPE」

WMS社の「COIN COMBO」

WMS社の「COIN COMBO」

Aristocrat 社の「Fu Dai Lian Lian」

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IGT社の「Harmony Riches」

IGT社の「Harmony Riches」

Bally Technologies 社の「Dragon Spin」

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コメント(3件)

  1. 大川史子 より:

    わかります!日本人は奥ゆかし過ぎて、今の時代も変わってないんですよね。若い時の海外旅行ではあまり良い扱いは受けなかった私ですが、ラスベガスに行った時には、歳をとり図太くなったので、英語なんてほとんど出来ないくせに、わかったような顔でハキハキと返事をし、どこでもハロー!サンキュー!と挨拶してたら、おっ?挨拶するんだって感じでニッコリされ、とても良くされました。有名レストランでは、ウェイターさんにどっから来たの?などと話しかけられてる日本人は私だけでした。(話が複雑になる前にでサンキューで終わらせちゃいましたが)。乏しい体験談から偉そうなことに結びつけて恐縮ですが、もっともっと日本も前に出ないと、本当に埋もれちゃうと思います。

  2. TOSHI より:

    インペリアルパレスも無くなって久しいですものね。

  3. キット より:

    あと、日本人は英語を不得手にしている人が多いというのも理由の一つではないでしょうか。しかも英語=学校の教科という感覚があるため、話せないことを恥ずかしいことと思ってしまうために無言でいる場面が多いような気がします。
    私が数年前ベガスに行ってレストランでハンバーガーを頼んだら1時間近く待たされて、スーツを着たマネージャーらしき女性が現れて何事か話しかけてきました。音楽がうるさくて何と言っているのか分かりませんでしたが、ハンバーガーが遅いことに対する説明をしているのは分かったので、大声で「どうしてハンバーガーを食べるのに1時間も待たなくてはいけないんだ!」と英語で言ったら「今夜のお食事代は全て無料にします」と言われてこちらがびっくり。
    別に私が怒ったせいではないかもしれませんが、言うべきことは(日本語でも構わないので)はっきり言うことが必要だと感じました。
    それにしても、コロナ禍でもう5年以上ベガスを訪れていません。またあの賑やかな街に戻れる日を楽しみにしています。

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