今週は先週に続き日本の読者にはまったく役に立たない情報で恐縮だが、スーパーボウルとスポーツブックの話題の続編。
(スーパーボウルやスポーツブックに関しては先週号に掲載)
先週号で「世界最大のスポーツブック」を名乗るウェストゲートホテルのスポーツブックを紹介したところ、在米の読者から「ダウンタウンのサーカホテルも世界最大を名乗っている」とのメールを頂いた。
たしかに一昨年の秋にオープンしたサーカホテルのスポーツブックが大きいことはかなり知られてきているが、どっちのほうが巨大かは真剣に考えたことがなかった。
2つのホテルが同時に「世界最大」を名乗っているということは、どちらかがウソをついていることになる(両方ともウソの可能性もあるが)。
だとしたらそれは聞き捨てならない重要な調査案件なので、さっそく現場に足を運んでみた。
結論から言ってしまえば、両者はほぼ互角で「引き分け」といったところか。現場の大きさを厳密に測定したわけではないのであくまでも目視による体感ではあるが、施設の規模に大きな違いは見られない。
ただ、形状は大きく異なっており、ウェストゲートは平面的に横方向のサイズが非常に長くなっているのに対して、サーカは3フロア吹き抜けの上下方向に広い造りになっている。
またサーカの場合、吹き抜け構造を生かして座席フロアが劇場のように傾斜しているが、ウェストゲートでは傾斜はなく完全なフラットだ。
照明も対照的でサーカは全体的に明るく、ウェストゲートは映画館のごとくかなり暗い。
どっちのほうが広く感じるか、そしてどっちのほうが好きかは人それぞれ意見が分かれるところだろうが、どちらも巨大であることは間違いなく、「世界最大」を名乗ることに対してはあまり突っ込みを入れる必要はないだろう。
さてここまでは物理的な広さの比較論だったが、賭けの種類に関してはどうか。つまり賭けの対象となっているスポーツの種類や、それぞれのスポーツイベントに対する賭け方のバラエティーさなどはどちらが豊富か。
実はこちらも細かく調べ尽くしたわけではないが、予想以上にサーカも頑張っており、これまたいい勝負といってよい。
サーカは開業してまだ1年ちょっとしかたっていない新参者ではあるものの、元祖「世界最大」のウェストゲートと互角に渡り合っており、すでにウェストゲートをおびやかす存在になってきているようにも見受けられる。
さて利用者として一番気になるのは施設の広さや賭けの種類の数よりもオッズ、つまり配当倍率だろう。ちなみに今週末のスーパーボウルに対するその数値は以下の2つの写真からもわかるように、これまたほぼ互角となっている。
両ホテルの違いはシンシナチ・ベンガルズに賭けた場合のマネーラインの +175 と +176 だけ。このわずか 1ポイントの差には、新規参入のサーカの挑戦者としての意地が感じられる。
というのも、通常オッズは 165、170、175 など5の倍数で設定されるのが普通だからだ。このたった1ポイントでもライバルを上回りたいという意気込み。上のほうに掲載したサーカの広告の写真内の左側に見られる LOWEST PERCENTAGE HOLD(最小の手数料)という宣伝文句もまんざらウソではないのかも知れない。
ちなみにこの両者とはまったく別のスポーツブック「BET MGM」(MGM系列のホテルのスポーツブック)における同じスーパーボウルのオッズは「Rams -200、Bengals +165」となっており、まったく話にならない。(ベンガルズに賭けた場合の配当倍率が悪すぎるということ。これら数値の読み方に関しては先週号に掲載)
今回はスーパーボウルのオッズでしか比較していないので断定的な判断は控えるべきだが、施設の物理的な規模のみならずオッズという意味でもこのサーカとウェストゲートは肩を並べる存在として、今後ラスベガスのスポーツブック業界をリードしていくような気がする。
そうなってくると、ロケーションの数で圧倒しているMGM系列やシーザーズ系列(William Hill 社がスポーツブックを運営)のスポーツブックもこのまま黙っているわけにもいかず、なんらかの戦略の見直しを迫られるだろう。
というのも MGM系列やシーザーズ系列は、オッズの悪さをロケーションの数でカバー、つまり少々配当倍率が悪くても販売窓口の数による大きな売上が期待できたが、今後オンラインでの賭けが主流になってくると窓口の数は意味をなさなくなり、サーカやウェストゲートと配当倍率で戦わなくてはならなくなるからだ。
いい意味での競争が激しくなり、業界全体としてのオッズが改善されれば(カジノ側から見て控除率が少なくなれば)、スポーツに賭けるすべての人たちにとって朗報となるはずだ。
スーパーボウルの賭けにはまだ間に合う。在米の読者はぜひラスベガスに来て年に一度のスーパーボウルという国民的イベントを楽しんでみてはいかがだろう。