11月の第4木曜日と決められているサンクスギビングデーの翌日は「ブラックフライデー」。今年の場合は11月26日の金曜日がその日に当たる。
ブラックフライデーという言葉はここ数年日本でも認知されてきているようなので特に説明の必要はないと思われるが、いわゆる「セールの日」だ。
アメリカでは晩秋の風物詩として長らく定着しており、単なるセールの日というよりも、もはや全国的な恒例イベントといった様相で多くのショッパーが早朝から目的のショッピングモールや大型店などに足を運ぶ。セールの内容によっては前日から徹夜で店の前に並ぶつわ者も少なくない。
「ショッピングの街」としても名高い
カジノやショーなどで知られる当地ラスベガスは「エンターテインメントの聖地」であることは言うまでもないが、「ショッピングの街」としても知られており、大きなアウトレットモールやショッピングモールがたくさんある。
具体的には、ラスベガス・ノース・プレミアムアウトレット(LV North Premium Outlets)、ラスベガス・サウス・プレミアムアウトレット(LV South Premium Outlets)、ファッションショーモール(Fashon Show Mall)、フォーラムショップス(Forum Shops)、グランドキャナルショップス(Grand Canal Shoppes)、ミラクルマイルショップス(Miracle Mile Shops)などで、どこも100店舗をゆうに超える大型施設だ。
高級ブランド店ばかりが軒を並べるショップスアットクリスタルズ(Shops at Crystals)も忘れてはならない。さらにタウンスクエア(Town Square)のような街並みを再現したアウトドア型の商業施設もあったりする。
地理的な位置関係という意味でも当地のショッピングは利便性が高く、他の都市とは異なりショッピングモールはもちろんのことアウトレットすらも中心街から近いところにあるのがラスベガスの特徴だ。そんな環境にあるためか、「カジノには興味がない。ショッピングが目的」といった訪問者も少なくない。
激安の特売セールをやる予感
あれこれ具体的なモールの名前を書き出してみたが、今回の話題の中心のショッピングモールは上記のどれでもない。
「だったら書くな。早く本題のモールのことを書け!」と言われそうだが、それはごもっとも。でも書いてしまったのであえて消すことなく放置することとして、ここからが本題。
過去にもこのサイトで何度かブラックフライデーに関して取り上げたことがあるが、そのほとんどは日本からの来訪者に向けた情報発信だった。
しかし今はコロナの関係で日本からのラスベガス旅行がまだ現実的ではないため、このページを閲覧してくれているのは在米の日本人がほとんど。なかでも 4時間ほどのドライブでアクセス可能なロサンゼルス地区在住の読者が多い。
そこで今回取り上げたいのが、陸路でロサンゼルスからラスベガスへ向かう際に必ず通る州境の町 プリム(Primm)にあるファッションアウトレットだ(前述のファッションショーモールとはまったく別の施設)。確証はないが、閉店セールなど激安の特売をやる予感がしなくもないのである。
寂れたファッションアウトレット
「今さらファッションアウトレットなんて行く価値あるの?」 もしくは 「まだ存在していたの?」と思った読者も多いに違いない。
行く価値があるかどうかは人それぞれだろうが、まだ立派に存在している。いや立派ではないが、とりあえず存在している。
忘れ去られているといけないので、おさらいの意味でこのアウトレットについてふれておくと、所在地は高速15号線をラスベガスからロサンゼルス方向に40分ほど走った場所。
つまり、「ラスベガスのアウトレットは中心街から近い」と書いたばかりだが、このファッションアウトレットだけは高速道路で40分も離れていることになる。1998年の開業当時、アウトレットというものは街から遠く離れた場所に造るのが当たり前だったが、今では業界にそんなこだわりはないのかラスベガス市内に出現したノース・プレミアムアウトレットなどに客を奪われ、ひどく寂れてしまっているのが現状だ。
「プリズム」に名称変更
どれほど寂れてしまっているかについては後述するが、利用客が減りテナントが次々と去ってしまったことからモールの運営企業は経営難になり、2018年から経営を引き継いだ企業が 2019年に施設の名称をファッションアウトレットからプリズムアウトレット(Prizm Outlets)に変更している。
したがって、従来からこの施設を知る読者のためにここまで「ファッションアウトレット」と表現してきたが、実際にはそのような名前のアウトレットはもはや存在していない。
日本人観光客で大盛況だった
全盛期のファッションアウトレットは盛況だった。テナントの顔ぶれもすごく、今だれもが思いつくような著名ブランドのほとんどが出店していたことから日本人観光客からも注目され、当サイトが大型バスをチャーターして毎日ラスベガスのホテル街からショッピングツアーを催行するほどの人気のショッピングスポットだった。
テナント約100店が軒を並べる中には日本人観光客向けに開業したラーメン店もあったり(当時ラーメン店は一般的な存在ではなかった)、さらに日本語を話すスタッフを常駐させる高級ブランド店も少なくなかったと聞かされれば、その盛況ぶりを想像できよう。ちなみにその当時、成田からラスベガスまでノンストップ便が就航していた。
「あのモールは今」
かつて人気を誇っていた著名人の近況報告などの際、「あの人は今」という表現を使ったりするが、今となっては「あのモールは今」と言いたくなるほどファッションアウトレットの変貌ぶりには哀愁を禁じえない。
なんと現在のファッションアウトレット、いやプリズムアウトレットは驚くことなかれ、フードコート内の店や雑貨を売る屋台型のショップ(どちらも1店か2店だけしかない)を除けばテナントは全部で8店しか営業していない。
かつて100店ほど存在していた残りのテナントはコロナによる一時的な閉店ではなく完全撤退というから、現場の雰囲気はまさに風前の灯といった感じだ。
すれ違う人はまばらで、シーンと静まり返った広大な施設内に足音が響く、と表現したくなるほど静寂が漂っているが、実際には床の材質の関係か足音は響かない。
さように寂れたこのモールもブラックフライデーの日だけは多くの人で賑わうのではないかと予想するが、楽観的すぎか。
頑張って営業を続けている8店
頑張って営業を続けているその8店の顔ぶれだが、ブラックフライデーのセールに何かを期待している読者にとってはうれしいことに意外と人気店が残ってくれている。
アルファベット順に Bath & Body Works、Levi’s、Michael Kors、Polo Ralph Lauren、Quartzsite Minerals、Tommy Bahama、Tommy Hilfiger、VIVA Vegas Gift and Souvenirs だ。
Quartzsite は水晶やメノウなどの置物やアクセサリーの店なので一般のショッパーにはあまり関係ないが、その他は名の知れた人気店ばかりだ。VIVA はブランド店ではないが、ラスベガス関連のギフトグッズなどの中には興味深い商品も散見されるので無視すべき店ではないだろう。
激安セールはあるのかないのか
ということで、その8店すべてを実際に訪問しブラックフライデーのセール内容について取材してみた。
結論から先に書くならば、どこの店も、「セール内容はまだ未定」、「本部に確認しないとわからない」、「大幅な値引き期待してください」といった返事ばかりで、何を何時から何パーセント割り引くといった具体的なセール内容を聞くことはできなかった。
結局こちらがコッソリ期待している閉店セール、つまり在庫をすべて処分してこのモールから撤退するため激安セールのようなものをやるのかどうかについての情報は得られなかった。
しかし現在のこのモールの現状を直視するに、その8店がこのまま引き続き営業を続けるとも思えず、遅かれ早かれ営業を打ち切ると仮定するならば、彼らがブラックフライデーを区切りに閉店を決断してもなんら不思議ではない。
そんなことを考えていると今年のブラックフライデーはこのアウトレットが超穴場のようにも思えるのだが、果たして結果はいかに。
以下に各店舗の写真と取材時に答えてくれた店側のコメントを添えて今週の記事を終わりとしたい。なお、通常時のこのモールの運営時間は 10am から 6pm となっているが、ブラックフライデーの日に限り、ポロラルフローレン以外の各店は 8am から 8pm まで営業。ポロラルフローレンだけ 7am から営業。
コメント(3件)
ベガスを再訪できる日を楽しみに日本から毎週楽しく拝見しております。もう20年も前になるでしょうか、印刷した大全さんの記事をたよりにNYNYの裏からバスで行ったのを懐かしく思い出させていただきました。たしか隣にバッファロー何とかというカジノホテルと、こぶりなジェットコースターがある遊園地があったと思うのですが、それらもなくなってしまったのでしょうか。
HAL 様
ラスベガス大全をご利用いただき誠にありがとうございます。またコメント投稿、感謝にたえません。
さてご質問のホテルとジェットコースターに関してですが、ホテルはバッファロービルズというカジノホテルで、現在はコロナの影響なのか、まだ営業を再開しておりません、ジェットコースターもそのバッファロービルズに併設されている施設ですので現在は運行停止中です。
9/11の時
遅めの夏休みでレンタカー一人旅で西海岸周遊中、テロを知ったのはバリーズホテルの部屋でした
2日後の帰国便が飛ぶかもわからないなか(結局飛ばなかった)悲観的にLAへ戻る途中に立ち寄ったこちらのアウトレット内のバーバリー店舗で日本人である私を見かけるや日本語を話される年配の女性に話しかけられ、非常に親切にされた事を思い出しました
当時まだ国際電話も高額でしたが「お家の方が心配されてるからこの電話使いなさい」と店の電話で日本へ通話させてもらいました
自分の母と年代も近く、小柄な体格も似通っていたのでお礼とは違いますがカーディガン試着してもらい、購入させて頂きました(なにがあるかわからないからお金は少しでも手元に残しときなさい、と割引価格からさらに値引いてくれた)
その後お礼に行けないままバーバリーもプリムから撤退し、今回この記事を目にしてなぜかそのことを鮮明に思い出しました
アウトレット無くなっちゃうのは寂しいですね