今週は、カジノやナイトショーといったラスベガスの一般的なエンターテインメント系の話題とはまったく関係ないマニアックな話題をお届けしてみたい。
データセンターを見るのは貴重な体験
日本でもアメリカでも、データセンターという施設を見たことがある人がどれほどいるだろうか。たぶんほとんどの人は見たことがないはずだ。
一般的にデータセンターは街から遠く離れた不便な場所にあるのが普通なので、意識的に見に行かないことには偶然遭遇するようなことはまずない。もしくは保安上の理由から秘密の場所にあったりするので小規模の施設の場合、近くまで行ったとしても気づかないこともあるだろう。
今回たまたまわけあってグーグルの施設(外部のみ)に行く機会を得て気づいたことだが、データセンターというものを実際に目にすることは非常に貴重な体験になるはずなので、興味がある読者はこの先を読み進めて頂きたい。
サーバーなどが一ヶ所に数十万台
そもそもデータセンターとは何か。さまざまな形態があるのでひとことでは説明しづらいが、だれにでもイメージしやすいように表現するならば、サーバーといったパソコンのような機器などが数十万台以上のレベルで設置されている施設と考えればよいだろう。
youtubeも銀行の情報もここに保管
では何のための施設か。これも用途が多岐に渡っているので一概には言えないが、たとえばグーグルやアマゾンやマイクロソフトなどが重要なデータを保管している場所と思えば大きくまちがっていることはない。
もっと具体的に身近な例をあげるならば、たとえば gmail や Facebook などのデータ、youtube などの動画、Amazon の商品情報や購買履歴などの保管だ。
もちろん一般企業の経理情報や顧客情報など、いわゆるクラウド向けの用途としても広く使われていることは言うまでもない。
最近は金融機関の顧客情報といった超重要なデータでさえも、オンプレミス管理(on-premises: 自社内に置いたコンピューターで管理)が主流ではなくなってきているので、今後ますますデータセンターの役割や重要性は高まっていくはずだ。
巨大なデータセンターがベガスに
地球上の何億人もの人たちが gmail や Facebook などを使っていることは想像に難くない。そう考えるとデータセンターがいかに大きな施設であるかはなんとなく想像がつくだろうが、具体的にその実際のサイズをイメージすることはむずかしい。
そんなデータセンターをラスベガスで実際に見ることができると聞けば、行ってみたくなるのではないか。
Switch と Google
現在ラスベガスには2社の巨大なデータセンターが存在している。Switch社と Alphabet社(グーグルの持ち株会社)の施設だ。
ちなみに Switch社(もちろんニンテンドーの Switch とは無関係)はラスベガスに本社を置くデータセンターの専門企業でニューヨーク証券取引所に上場。そのティッカー(日本株でいうところの銘柄コード)は SWCH で、主な顧客としては eBay などのIT大手企業が多い。Alphabet社はグーグルそのものと考えればよいので特に説明の必要はないだろう。
巨大すぎて隠せない両社の施設
セキュリティ上の観点からデータセンターというものはテロリストなどから攻撃されないよう厳重に管理されており、本来であれば見えないような場所に設置するのが理想ではあるが、在ベガスの両社の施設はあまりにも巨大すぎるがために隠しようがなく、一般市民の目にさらされてしまっている。
とはいっても刑務所のように外界とは完全に隔離された状態で存在しているので(特に Switch社の施設は高い塀で囲まれている)、見ることができるのは外観だけだ。
(Switch社の公式サイト内に施設内を見学させてもらう申し込みフォームがあるが、業界関係者以外はなかなかむずかしかったりする)
見れば何かを感じ取れるはず
外観だけであっても興味がある者にとっては現場まで足を運んでみる価値は十分にあるだろう。
多くの人にとってグーグルなどは日ごろから毎日のように使ってはいるものの姿や形がまったく見えていないだけに、その実態を初めて目にすれば、感動や驚きといった単純な言葉では言い表せない何か不思議なインパクトを受けるはずだ。
ある人は IT業界のダイナミズムを肌で感じ、ある人はクラウド時代の未来像をイメージしたりするかもしれない。そういった体験や知見が今後の株式投資や自身のビジネスなどの役に立つ可能性もあるのではないか。
東京ドーム9個分?!
ではどれほど大きい施設なのか。大ざっぱにいうならば Switch社の敷地は東京ドーム約9個分(本誌が推計した概算値)、Google は4個分。
(「東京ドーム」はれっきとした面積や体積の単位で、それぞれ約4.6万平方メートル、124万立方メートルと定義づけられている)
「思っていたよりも大きくない」と感じる人もいるかもしれないが、そのスペース内にサーバーがびっしり詰まっていると考えると想像を絶する台数になるはずだ。
ちなみに Switch社の施設は十年以上前から、そして Google は昨年完成し今年から本格稼働している。
広大な施設の中に何台のサーバーが存在しているかは日々増加しているようなので正式な数字としては公表されていないが、各自が外観からその数を想像してみるのもおもしろいかもしれない。
自然災害が少ないベガスは適地
なぜこの2社はラスベガスにデータセンターを建設したのか。理由はいくつかあるようだ。(もちろん両社ともにラスべガス以外にもデータセンターを複数持っている)
保守スタッフが通勤できる範囲内に安く入手できる広大な土地があった、ハリケーンや竜巻や地震などの自然災害が少ない(ネバダ州は全米の各州の中では地震が多い州ではあるが、地震の規模は極めて小さく災害になるレベルのものではない)、施設内の放熱に必要な電力事情が良い(決して飛び抜けて安いわけではないが)、地元の自治体の誘致運動による税金の優遇、などが挙げられている。(Google の施設があるのは正式にはラスベガス市ではなく、となり町のヘンダーソン市)
データセンターの聖地になれるか
ラスベガスはカジノ、ナイトショーなどはいうに及ばず、コンベンション、ナイトクラブ、ボクシングなど各業界の総本山や聖地的な都市となっているが、今後はデータセンターの適地として世界中のIT企業から注目されるかもしれない。
とはいえ、あまり一つの都市に集中しすぎると災害時のバックアップ体制が脆弱になってしまうので、一つの会社がラスべガスに集中的に建設ということはないだろう。
レンタカーで行くのが現実的
さて実際に現場に行く場合の注意点だが、公共の交通機関がないので一般観光客はレンタカー、タクシー、ウーバーなどを利用することになる。
ただ現実問題としてレンタカー以外はあまりおすすめできない。ピンポイントで「ここで下車すべき」という場所がないばかりか、下車したあとも広大な範囲を歩かなければ全体像を見ることができないからだ。
レンタカーで 10分と 20分
ストリップ地区のホテル街からの位置関係としては、Switch社の施設は南西方向に車で10分ほどの場所、Google は南東方向に20分ほどの場所なのでどちらも決して遠くはない。
それぞれの施設の入口付近の位置を示す北緯・西経の座標を以下に示しておいたので、この数値をそのままグーグルマップに入力すれば、その位置や周辺の様子がわかるはずだ。
Switch: 36.058908, -115.212569
Google: 36.055186, -115.007217
ITの巨人3社がクラウド市場を席巻
最後に余談。多くの人にとってアマゾンはネットショッピングの会社、マイクロソフトはウインドウズ、エクセル、ワードなどの会社といったイメージが強いだろうが、両社ともにそれらは収入源という意味ではもはや本業ではない。
アマゾンにとっては AWS(Amazon Web Services)、マイクロソフトにとっては Azure と呼ばれるクラウドサービスがドル箱で、両社ともにそれらが経営の大黒柱となっている。
この2強に続くのがグーグルの GCP(Google Cloud Platform)で、この3社が世界中のクラウドサービスを席巻しようとしている。
この3社の勢力図が今後どのように変わっていくかは予測困難だが、クラウドサービスが今後もますます拡大していくであろうことはほぼ確実なので、この3社に分散投資しておけば長期的には損をしないように思えるがいかがだろう。
(投資は各自の個人の責任でお願いします)
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コメント(2件)
赤い換気口みたいのが目立つので、通りかかるたびにここはなんだろうと思っていましたが、
データセンターだったんですね。謎が解けました。
NY様
ラスベガス大全をご利用いただきありがとうございます。
おっしゃるとおり、あんな巨大な施設はすごく目立つので「あれはあなんだろう?」って思っちゃいますよね。
謎が解けることのお役に立ててよかったです。