今後増えそうな「平日不況」による「週末のみ営業」のホテル

平日の営業を中止にした Encore ホテル。

平日の営業を中止にした Encore ホテル。

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 約1ヶ月前のこのコーナー(第1222号)で、新型コロナで静まり返っていたラスベガスに活気が戻ってきたことを書いたばかり。
 そして先週号(1225号)でも、Resort WorldCirca などの新規大型ホテルの建設工事が開業に向けて着々と進んでいることを写真で紹介したが、そんな明るいニュースもつかの間、なにやら暗いニュースが飛び込んできた。

Encore が平日営業を打ち切り

 前から問題視されていた「平日不況」に関連するニュースで、高級カジノホテル Encore が 10月19日から営業日数を短縮すると発表したのである。
 その新たな営業スケジュールは、毎週月曜日の正午に全館を閉鎖、そして木曜日の午後2時に再オープンし、毎週それを繰り返す。理由は、平日の宿泊需要が非常に少ないためとのこと。

週末のみ営業している PALAZZO。右上の暗く見える部分はショッピングモールの屋根。

週末のみ営業している PALAZZO。右上の暗く見える巨大なものはショッピングモールの構造物。

「週末のみ営業」は PALAZZO も

 このような「週末のみ営業」は、今回の Encore が初めてではない。すでに Palazzo ホテルも同様なことをやっており、「平日不況」はコロナ禍のラスベガスを象徴する厄介な現象として、ラスベガスのさまざまな業界を悩ませているわけだが、ようするに 週末にしか人が来てくれない ということ。
 その理由は、航空機が敬遠されていることと、コンベンション、コンサート、スポーツイベントなどが開催されていないことに尽きる。

飛行機よりもマイカー

 海外からでもアメリカ国内からでも、遠くの地域から飛行機に乗ってやって来る訪問者は1泊や2泊で帰ってしまうことはない。3~4泊するのが普通だ。結果的に平日も滞在してくれる。
 ところが今はコロナ感染を恐れているのか、「密」になりがちな航空機の利用を避けたいと考える者が多く、現在ラスベガスを訪問している人たちの大半は、ロサンゼルスやフェニックスなどの近隣地域からマイカーでやって来る陸路での訪問者とされており、そのような近場からの訪問者は週末だけ滞在して帰ってしまう。

イベントは法律で禁止

 航空機の敬遠とともに平日不況に追い打ちをかけているのがイベントの中止で、コンベンション、コンサート、スポーツイベント、どれもラスベガスにとっては重要な集客の原動力になってきたわけだが、いま大きなイベントはまったく開催されていない。ネバダ州の法律で、たくさんの人が集まるイベントは禁止されているからだ(今後変わる可能性はあるが)。

「最大250人」では何も開催できない

 その「たくさんの人」の定義は、つい先日、これまでの 50人から 250人に緩和されたが、その程度の人数ではコンベンションもコンサートも開催できないし、開催できたとしても 250人では大型のホテルの客室を埋めるまでには至らない。そもそもスポーツイベントは無観客というから、客室需要を期待するほうが無理というもの。
 宿泊者がいなければホテル内のレストランなども商売にならず、そんな悪循環が続いている現状を考えると、平日の休業を決めた Encore や Palazzo の判断は妥当といってよいのではないか。

供給過多はさらなる混乱を招く

 その一方で、つい先日 Park MGMPlanet Hollywood という大型ホテルが再オープンした。この両ホテルのオープンは、めでたいニュースのようにも思えるが、ラスべガスのホテル業界全体にとってはさらなる混乱を招くだけのような気がしないでもない。
 というのも、現時点では両ホテルともに平日もオープンするとのことなので、平日の需給バランスが完全な供給過多の状態になってしまう恐れがあるからだ。
 そうなってくると、今後さらに平日休業を余儀なくされるホテルが増えてくる可能性が高い。
 週末だけの営業では利益を計上することは困難と予想され、そこで赤字を垂れ流すのであれば、完全に休館にしたほうが損失を少なくできるのではないか。

公営バスの SDX が運休

SDX のバス停と車両(画面下半分の水色の部分)。

SDX のバス停。左後方は Encore。

 話が急にバスに飛ぶが、先週、公営バスの運行にも変化が見られた。ストリップ地区からダウンタウン地区までの急行路線のバス「SDX」が運休となってしまった。
 マイカーで来ている訪問者がほとんどであることを考えると、バスの需要は少なく当然の結果かもしれないが、何やらベガスの完全復興が遠のいているような感じで寂しい限りだ。
 暗い話題ばかりでべガスファンの読者には申し訳ない記事になってしまったが、今週は以下の余談で終わりとしたい。

カジノ関連会社の株価は異常

 株式市場に興味がない読者にとっては何のことだかわかりにくいかもしれないが、「ラスベガスが好きなここの読者はギャンブルも好き、ギャンブルが好きな者は株式投資も好き」という勝手な発想で書いていることを了承いただくとして、現在のカジノ関連企業の株価は異常とも思える動きをしているので要注意という話。
 日本でもアメリカでもさまざまな業種の企業がコロナの影響で減益や赤字決算を余儀なくされている。それにもかかわらず、コロナ対策などで市中にキャッシュが出回りすぎているためか、株価は総じて高い。
 そこまではある程度テクニカル的な理論で説明がつかないわけではないが、カジノ関連業界に関してはあまり楽観的に考えるのは危険だろう。
 というのもカジノ関連業界は、航空業界、旅行業界などと並び、コロナの影響を最も受ける業界のはずで、実際に今後の決算は真っ赤な赤字になることがほぼ確定している。赤字で済めばよいが、倒産も視野に入れておくべきほどのひどい状況になりつつある。
 にもかかわらず、ラスベガスを代表するカジノ関連企業3社の半年前の 4月1日時点の株価と本日 10月14日の株価を比べてみると、Las Vegas Sands 社が 40ドルから 44ドル、Wynn Resorts 社が 54ドルから 71ドル、MGM Resorts 社が 11ドルから 21ドルへと、それぞれ約10%、30%、90% も上昇している。
 これらの上昇は、4月1日の株価が、コロナが発覚する前(2月中旬)の株価と比べて一時的に大きく値を下げた直後であることも一因ではあるが、それでもこの半年間に業績が大幅に改善したわけではなく(むしろ悪化)、業績と株価がまったく一致していないことは明らかで、異常としかいいようがない。
 というわけで、これらカジノ関連企業の株価は業績とはまったく関係ない部分、つまり信用取引の売り方陣営と買い方陣営の攻防という心理戦的な相場の様相をなしてきているようにも見えるので、これから参戦する場合はそのへんのことも十分に考慮しながら行動したほうがよいだろう。

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コメント(3件)

  1. kenken より:

    バスに関して記事がありましたので、ご存知でしたら教えてください。
    以前にWAX(空港~プレミアムアウトレット)についての記事があったかと思いますが、サービス名がCXになっていました。

    GoogleMAPやRTCのMAPを見る限り、空港からMGMを通りそのまま高速で北上するルートは変わらないようですが、RTCの中にあるCXサービスの時刻表を見るとFLAMINGを通るルートが記されています。

    WAXは使い勝手が良かったので、CXでも同じルートだと助かるのですが、現在運行されているルートについてご存知でしたらご教示願います。

    • ラスべガス大全 より:

      kenken様
      ラスべガス大全をご利用いただき誠にありがとうございます。
      せっかくご投稿いただいたのに本当に申しわけございませんが、あいにく現在の WAX や CX に関する最新の情報を持ち合わせておりません。お役に立てず申しわけございません。

  2. しの より:

    24時間眠らない街。
    すげぇ奴だなコロナ君よ。

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