コロナ対策で、ベガスの一部のゴルフ場のグリーンからホールが消えたワケ

バリハイ・ゴルフクラブ。コロナ騒動中の現在もオープン。グリーンにホールあり。

バリハイ・ゴルフクラブ。コロナ騒動中の現在もオープン。グリーンにホールあり。

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 新型コロナ騒動で静まり返ってしまったラスベガスの様子は、過去2週間のこのコーナーでお伝えしたとおり。もはやこの時期にラスベガスを訪問しようと思っている読者など限りなくゼロに近いはずだ。
 カジノもナイトショーもアトラクションもすべてクローズ。提供できる楽しい最新情報など何もないし、仮にあったとしても入国制限でだれも来ることができなければ、情報を提供しても意味がない。(在米の読者もホテルが閉鎖されているのでベガス訪問は現実的ではない)

 だからといって、写真や動画で寂れた街の様子を毎週流し続けるのもどうかと思うので、今週は、読者にとってまったく何の役にも立たないが、「へぇー、そうなっているんだ」という程度の意味しかないゴルフ場のコロナ対策に関する話題をお届けしてみたい。

 その前に、ラスベガスにおける活動制限などの現状について。
 現在ラスベガスでは日本と同様、不要不急の活動を控えるよう、勧告が出されている。この勧告は一般市民に対してだけでなく、むしろサービスや商品を提供する側に向けられた規則で、必要不可欠なビジネスessential business と呼ばれている)以外は事業活動をしてはならないという内容だ。違反者には警告だけでなくビジネスライセンスの停止などの罰則まである。
 同業者や市民からの密告などに頼ることなく、実際に警察が出動して営業中のレストランなどを取り締まっているというから、日本と比べるとかなり厳しい。(日本も緊急事態宣言が出されれば厳しくなりそうだが)

 ちなみに「必要不可欠なビジネス」とは、病院、スーパーマーケット、コンビニ、銀行、給油所、ホームセンター、自動車修理などで、業種としてはそれほど多くない。
 一方、その逆の「必要不可欠ではないビジネス」nonessential businessと呼ばれている)は、レストラン、バー、ヘアサロン、ネイルサロン、ナイトクラブ、映画館、スポーツジム、ボウリング場、ショッピングモール、テーマパーク、各種レジャー施設などで、さらに一般的な事務系の事業所までもが自粛を求められるなど、規制対象の業種は多岐にわたっている。

 なお、飲食店の営業が禁止されているのは店内での食事の提供であり、テイクアウトでの販売は認められている。
 とはいえ、高級レストランなどの高価な料理をテイクアウトする者はまずいないので、営業しているのはファストフード店カジュアルな店など限定的だ。
 結果として、一般市民の日々の生活におけるルーティン的な外出の機会は、テイクアウトでの受け取りと、スーパーマーケットくらいしかないのが現実だろう。

 それほどまでに活動が制限されているなか、ゴルフ場の営業は禁止されていない(あくまでもネバダ州の現時点での話であって、他の州も同じというわけではない)。
 ちなみにスポーツという意味では、草野球やサッカーは多数の者が集まりやすいことから原則禁止で、スキー場もレストランなどが併設されているため、広大なエリアでの屋外スポーツであるにも関わらず営業停止となっている。(夏の猛暑や砂漠のイメージが強いので意外かもしれないが、ラスベガス近郊にはスキー場があり、今でも積雪は十分で、今シーズンは4月5日まで営業の予定だった)

ラスベガスのホテル街から1時間以内で行けるスキー場「リーキャニオン」。3月14日に撮影。現在は閉鎖中。

ラスベガスのホテル街から1時間弱で行けるスキー場「リーキャニオン」。3月14日に撮影。現在は閉鎖中。

 トランプ大統領を例に上げるまでもなく、「政治家の多くはゴルフが好きだから」といった冗談じみた話も聞くが(ちなみにトランプ大統領はネバダ州の規則には関わっていない)、それはともかく、ゴルフは広大な空間での屋外スポーツであり、また同伴競技者は4人までが普通なので、他のスポーツと比べると総じて感染リスクが低いことはたしかだろう。
 また、仕事がなくなった多くの市民が自宅に引きこもりがちな生活を強いられていることをふまえ、数少ない健康的な運動の機会を奪うべきではないという配慮があったのではないか、といった話も聞くが、ゴルフ人口がそれほど多くないことを考えると、その説は正しくないかもしれない。

 いずれにせよ、多くの活動が制限されているなか、ゴルフが特異な扱いを受けていることは間違いないところで、それがゆえに、各ゴルフ場はコロナ対策の徹底ぶりをアピールする必要があるのか、さまざまな対策を打ち出している。
 すべてのゴルフ場が同じ方針というわけではないが、それら対策の例をいくつか列挙してみると、たとえば、

受付は屋外に設けたテーブルで。
不衛生な現金は不可、支払いはクレジットカードのみ。
クレジットカードは自分で端末に差し込むこと。
練習場の打席の間隔は通常よりも広めに設定。
プレー開始時や終了時の同伴競技者との握手は禁止。
カートの2人乗車は禁止。1人1台で乗車のこと。
カートのハンドルなどは徹底消毒。
レンタルクラブの貸し出しは無し。
ゴルフ場に併設のレストランは閉鎖。
プレーが終了したら、すみやかに帰ること。

 などとなっている。ここまではだれもが想像できる範囲内だろうが、「へぇー」と思われるコロナ対策がさらに2つある。
 その一つは、バンカー(砂場のようになっている地帯)の砂をならすためのレーキ(熊手みたいなもの)の使用は不可ということ。
 つまりレーキはバンカー内に置かれていない。不特定多数の者がさわるので危険ということらしいが、そのため、バンカーショットのあとは各自がシューズなどできれいに砂の表面を整える必要がある。

 さて、前置きが非常に長くなってしまったが、ここからが今回の記事の本題ともいえる、もうひとつの「へぇー」だ。
 それは、グリーン上のピン(旗竿)にさわってはいけないというコロナ対策で、それを実現するために、各ゴルフ場がさまざまな工夫を凝らしているところがおもしろい。
 さわってはいけないということは、ピンを抜くことができないので、プレーヤー側からすれば、最後までピンを立てたままプレーする必要がある

 ゴルフルールによると、ホール(カップ)の直径は 4.25インチ(約10.8センチ)、深さは4インチ(約10センチ)以上、と決められているわけだが、ゴルフを知らない読者のために説明しておくと、ピンを立てたままだとホールの中に落ちたボールを拾い上げる際、取り出しにくいことがある。
 取り出しにくいとピンを抜きたくなってしまうが、それだと多くの人が同じような部分をさわることになるのでコロナ対策にならない。そこで各ゴルフ場は知恵を絞った。

 本題に入ったとたんに、いきなり終わってしまうのも変だが、各ゴルフ場のそれぞれの工夫を写真で紹介することとして、今週の記事を終わりとしたい。
 なお、それらの工夫は変更されることもあるので、ゴルフコース名はあえて紹介しないこととする。また、通常通りのホールをそのまま採用し、何の工夫もしていないコースや、すでに営業を打ち切っているコースもあること、そしてなにより、コロナの感染のさらなる拡大によってはゴルフそのものが全面的に禁止となってしまう可能性が常にあることもあらかじめ了承願いたい。
 ついでに、「外出の自粛が求められているなか、禁止されていないからといって、こんな時期にゴルフの話題を取り上げるのはいかがなものか」といった批判もあるだろうが、ゴルフを推奨しているわけではなく、単なる息抜き的な話題の提供であることをご理解いただければ幸いだ。

グリーン上に旗はなく、工事現場などで見られるオレンジ色のコーン(cone)が置かれているだけ。

グリーン上に旗も穴もなく、工事現場などで見られるオレンジ色のコーン(cone)が置かれているだけ。

 これは最悪のパターン。ゴルフ場側としては「コーンにボールをぶつけることができたらカップインとみなされるというルールでプレーしてほしい」とのことだが、それだと思いっきり強く打てばグリーンの傾斜などほとんど関係なしにカップインさせることができてしまい、本来のゴルフを楽しめない。そしてなにより、カップというかターゲットが大きすぎ。通常のカップの直径の倍もあり(約20センチ)、もはやゴルフとは言えない。

コーンが置かれているグリーンでプレーしている様子

コーンが置かれているグリーンでプレーしている様子

 ターゲットが巨大であるばかりか傾斜を読む必要がないのでスコアが良くなりやすい反面、グリーンにたどりつく前の段階において、遠い位置から風になびく旗を見て風の向きや強さを読むことができないばかりか、上り坂のホールではそもそもコーンが見えないので、狙い場所がわからず不便極まりない。

ホールのまわりに金属製のリングが置かれており、ボールがカップに入らない

ホールのまわりに金属製のリングが取り付けられており、ボールがカップ内に入らない構造になっている。

 通常通りのピンが立っているところは良い。ボールを取り出しにくいという問題は完全に解消されているので、ピンをさわったり抜いたりする必要は無く安全対策としては完璧だが、前述のコーンと同様、リングに強くぶつけて打つことができ、グリーンの傾斜などを読む楽しみがほとんど無くなってしまうところは大きなマイナスポイント。

ホールの中に硬めのスポンジ製のリングが入っている

ホールの中に、リング状の硬めのスポンジが入っている。

 通常通りのピンが立っているばかりか、ボールをホールに入れることもできるので、ほぼ通常と変わらないプレーを楽しめる。スポンジが入っている理由は、もちろんカップの深さを浅くして、ボールを取り出しやすくするためであることは言うまでもない。結果的に簡単にボールを拾い上げることができるので、ピンを抜く必要がなくなりコロナ対策としても完璧。

スポンジが上に位置しすぎている様子

スポンジが上に位置しすぎている様子

 ただ、ときどきこの写真のようにスポンジが上方向、つまり地表面に近い位置に装着されていることもあり、その場合は、ボールがカップ内に落ちずに通過してしまうことがあるので、パッティングをする前に、押し込んでおいたほうがよい。(手で押し込んだ場合は、手の消毒を忘れずに!)

ホール自体が通常のものとちがい、ボールが深く落ちない構造に。

ホールに埋め込まれた構造物が通常のものとはちがい、ボールが深く落ちない仕掛けに。

 ピンを抜いた状態なのでピンは写真に写っていないが、もちろんピンは立っている。カップの中は、3方向に伸びる金属製の仕切りのようなものがあることによって、ボールが深く落ちない構造になっており、ピンを抜かなくても簡単に取り出せるため便利かつ安全。通常とほぼ変わらないプレーが楽しめる上、上記の発泡スチロールのように押し込む必要もなく、利便性としてもコロナ対策としても完璧といってよいだろう。

以上で今週の記事は終わりです。
何の役にも立たないどうでもよい記事をここまでお読みいただき誠にありがとうございました。

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コメント(6件)

  1. りのらん より:

    「何の役にも立たないどうでもよい記事を」のところでクスッと笑ってしまいました。
    コロナのせいで「他愛もないことで笑う」生活してなかったかも…。
    大全さん、ありがとうございます。
    何かお返しできることありますか?
    意味あるのか分からないまま、とりあえず記事の途中に現れるバナー広告をクリックしてみたり。

    ホテルの閉鎖って、フラミンゴのような「ドアがないホテル」はどうしてるんだろう?と
    気になってましたが、先週のダウンタウンの動画を見る限り、仕切り板を置いて対応してるのかな。
    割られたりするのを防止するためか、台風時のように板を打ちつけてる写真も見ました。
    そんなストリップの中でFat Tuesdayの「NOW OPEN」のネオンは輝いてましたね。
    ルクソールは相変わらずビーム放ってるのかなぁ。

    • ラスベガス大全 より:

      りのらん 様
      ラスベガス大全をご閲覧いただき誠にありがとうございます。
      また、バナー広告のクリックなど、お気づかい、感謝にたえません。
      (クリックしていただく必要はございません!笑)
      なお、ご質問に関しましては、現場に行く機会がございましたら、確認して、記事内などで報告させていただきます。
      簡単ではございますが、取り急ぎお礼まで。

  2. shallot より:

    今夜発出される緊急事態宣言後の自粛施設のなかにゴルフ練習場が挙げられている折、ラスベガスでの対応策は大変興味深く読ませて頂きました😊日本でも営業自粛を表明するゴルフ場が早くも出てきましたが、今回ご紹介してくださった様々な対策をはじめ、レストラン営業をやめてスループレイだけにするなど、日本のゴルフ場も知恵を絞って我らゴルフファンを支えてもらいたいものです⛳

    • ラスベガス大全 より:

      shallot 様
      ご投稿、ありがとうございます。
      すでにご存じかもしれませんが、4月9日から、多くの州と同様、ネバダ州でもゴルフコースが閉鎖されることになってしまいました。

  3. サイモン隆明 より:

    長年、毎年の旅行のときに参考にしてもらい、妻からも「きょうこんな記事あがってたよー」とか、「ここいきたい」とか言われながら旅行してました。
    そんな妻も、去年秋に回復不能な病気になってしまい、もうらすべがすに二人でいくことは叶いません。
    これからも、がんばってユーモアのある情報をお願いします。

    応援しています。

    • ラスベガス大全 より:

      サイモン隆明 様
      回復不能なご病気とは本当にお気の毒様です。
      そんな厳しい状況にもかかわらず当サイトをご閲覧いただき心より厚く御礼申し上げます。

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