CESが開幕、日本勢も奮闘、今後の注目は車載 I T

  • URLコピー

 ラスベガスの新年の風物詩 CES(Consumer Electronics Show)が始まった。世界最大級の見本市とされるエレクトロニクス業界の祭典だ。
(下の写真は、メイン会場となっているラスベガス・コンベンションセンター)


 何十年も続くこの新年のビッグイベントの今年の開催期間は 1月6日から4日間。
 出展企業は約3500社。街の中は 10万人を超える業界人やメディア関係者であふれ、エンターテインメント都市ラスベガスもこの期間だけはいつもとちがった顔を見せる。
 カジノ、ナイトショー、アトラクションといったお遊び系のモノの存在感が薄れる一方、シリコンバレーの精鋭たちや時代をリードする最先端テクノロジー企業のエンジニアらが結集し、さながら世界一のハイテク都市といった様相だ。

 何十年も続く中、当然のことながら主役は時代とともに変わってきている。一昔前までは、テレビやオーディオなどいわゆる家電が中心で、その後はインターネットの普及とともに PC業界、そして近年はスマートフォンなどが花形となってきているが、今年はなにやら新時代の到来を予感させられるような展示も目立つ。
 それは車載関連の革新的な IT技術で、具体的には、グーグルが開発中の車載専用OSアンドロイドMなどを使った車内環境の大変革だ。

 つまり、これまで主流だったブルートゥースでスマホを接続という方式ではなく、車そのものがネットとつながり、人工頭脳とクラウドとビッグデータを駆使した次世代型自動車の開発に各社がしのぎを削っている。
 ちなみにビッグデータといえば、グーグルはすでに、車道上に位置する各個人のスマホのGPS機能を活かし、単位時間あたりの位置変化が著しく遅いスマホの数などからその状況を渋滞と判断してグーグル・マップ上にそれをリアルタイムで表示させることに成功している。
 そういった技術をどんどん発展させ、カーナビ、オーディオ、衝突被害軽減ブレーキといった既存技術を超越したトータル的な車両管理が可能になる日はもうすぐそこだ。そしてその先に見据えるのは全自動運転であることは言うまでもない。

 そのような背景から、カーオーディオの老舗であるケンウッドパイオニアが出展していることは当然として、今年はトヨタ、デンソー、シボレー(GM)、フォード、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、アウディ、ヒュンダイといった自動車業界からの出展が目立つ。(上の写真はパイオニアによる Android Auto の展示)
 それら企業の広いブースと華やかな展示を見ていると、SFのような世界が広がる新時代に対して、各自動車メーカーは明るい将来像を描いているようにも思えるが、必ずしもそうではないようだ。彼らは、自動車業界のおいしいところをグーグルに奪われてしまうのではないかと恐れていると噂されており、実際に、どのOSを使ってどの陣営に入るべきか葛藤しているようで、基本的な部分が定まっていないような展示も少なくない。

 なお、トヨタは水素を使った燃料電池車の展示を全面に押し出しており、自動車のIT化の分野などは、このCESにおいては、カムリなどを使った展示のデンソーに任せているように見受けられた。
(ちなみに上の写真はデンソーのブース。車と住宅の電力をトータル的に管理するホームマネージメントシステムの展示)

 主役の変化は業界にとどまらない。メーカーの国籍にも変化が見られる。
 ひと昔前までは圧倒的に日本企業が存在感を示していたが、ここ数年は韓国企業の躍進がめざましい。
 ところが今年は、TCL、ハイアール、ファーウェイ、レノボといった中国系の企業が頭角を現してきており、今後このトレンドはしばらく続くかもしれない。(上の写真は、通路を挟んで2つのセクションにまたがっているTCLの広大なブース)

 円安効果やアベノミクスで業績が回復してきたためか、日本勢も健闘しているように見えた。パナソニックはメインホールの入り口を入ってすぐの最高のポジションに巨大なブースを構え、車載関連を中心に幅広い分野の製品を展示。混雑度では日系企業の中では一、二を争うほどの盛況ぶりだ。
 業績不信がささやかれているソニーも、ブースの混雑度という意味では、4Kテレビや最新のエクスペリアなどがかなり注目を集めており存在感を示していた。

 東芝も通信技術とロボットとアンドロイドを活かしたホームマネージメントなど重電メーカーらしい独自性を出し健闘している。
 ニコンも目立つ演出で集客に成功している様子で、キヤノンもやや地味なブースながらも豊富なレンズ群に多くの人が足を止めていた。
 一方、カシオは、レンズと本体を切り離した独創的なカメラ FR10 に注目が集まるかと思いきや、ブースのポジションがやや悪いのか、集客という意味では閑散気味。

 シャープも Beyond 4K を合言葉に得意の液晶テレビを全面的に押し出していたが、製品群が似通っている近隣ブースのサムスンに客を奪われてしまったのか、ブース前の通路の人通りが激しいわりには、ブース内に足を運ぶ者はそれほど多くないように見受けられた。
 なお、「リーフ」で電気自動車業界をリードする日産自動車は出展していない。また、これだけアンドロイド関連商品が広く展示されているが、グーグル社自身は側面からサポートするにとどまり、自社の名前ではブースを出していない。

 最後に、これから CESを見に行くという人のために、入場バッジの空港での受け取り場所について触れておきたい。
 すでにオンラインで登録している者は、1月7日までであれば、空港でも入場バッジを受け取ることができる(午前8時から深夜12時まで)。
 第1ターミナルに到着する航空会社(日本からのフライトに関わる航空会社としては、ユナイテッド航空、ヴァージンアメリカ航空以外の大多数の航空会社)で到着した場合は、バゲージクレームの回転台 7番、8番がある付近と、9番、10番がある付近の間にある広い通路に CESの受付カウンターがあるので、そこで名前を申し出てパスポートなど IDを見せれば、すぐに受け取ることができる。
 ユナイテッド航空など第3ターミナルに到着した場合は 20番の回転台の前に同様なカウンターがある。(上の写真は第3ターミナルのカウンター)
同様に主要ホテルのロビーでも受け取ることができるが、こちらは 7日の夕方5時まで。8日、9日の受け取りは展示会場のみ。
 なお余談になるが、CES のことを「セス」と呼んでも通じない。日本では大手メディアでも「セス」と表現することが少なくないようだが、それでは通じないのでタクシーの運転手などに告げる際は要注意。現地での呼称はもちろん「シー、イー、エス」。

関連カテゴリー
  • URLコピー

コメントをお寄せください!

ご意見、ご感想、記事内情報の誤りの訂正など、以下のコメント欄にお寄せいただければ幸いです。なお、ご質問は [フォーラム] のほうが返事をもらえる可能性が高いです。

※ メールアドレスが公開されることはありません。
※ 以下に表示されているひらがな4文字は、悪質な全自動プログラムによる大量の書き込みなどを防ぐためのアクセス・コードです。全角ひらがなで入力してください。
※ 送信いただいたコメントが実際の画面に表示されるまで15分程度の時間を要することがございます。

CAPTCHA