あの街は今… アウトレットなどで一世を風靡していたプリム地区はどうなっている?

高速15号線でカリフォルニア州からネバダ州に入るところの州境。このエリアがプリム地区。

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 あの人は今 —-。かつてそんなテレビ番組が日本にあった。その内容は、すっかり忘れ去られてしまった著名人などの近況を伝える番組だ。
 それのマネというわけではないが、今週はベガス版「あの街は今」をお伝えしてみたい。

 その街とは プリム(Primm)。ラスベガスがあるネバダ州と、ロサンゼルスなどがあるカリフォルニア州の州境にある街で、ラスベガスのホテル街から高速15号線を南へ40分ほど走った場所にある。

赤い★印が Primm。赤い線がラスベガスとロサンゼルスの位置。★印のところに斜めに走る点線が州境。(Google Map)

赤い★印が Primm。赤い線がラスベガスとロサンゼルスの位置。★印のところに斜めに走る点線が州境。(Google Map)

 20年ほど前まではそれなりに賑わっていた街だが、もともと数軒のカジノホテルやショッピングモールなどがあるだけという意味では「街」と表記するよりも「町」のほうがふさわしいかもしれない。
 いや、住民が住んでいるわけでもないので「町」というのも実態にそぐわない。「砂漠の中のオアシス」というべきか。

 そのオアシス、ラスベガス市内から離れているばかりか公共の交通機関がないため行きづらいのが難点ではあるが、当時は一世を風靡していた人気の大型ショッピングモール「ファッションアウトレット」があったため、日本人観光客の多くがレンタカーを利用したりオプショナルツアーなどで訪問していたものだ。

プリム地区で最大の人気スポット「ファッションアウトレット」。(2000年頃撮影)

プリム地区で最大の人気スポット「ファッションアウトレット」。(2000年頃撮影)

 先週そんなプリム地区にたまたま行ってみたところ、激変していたので当時の様子を知るラスベガス・リピーターなどの読者のために各施設ごとに現状をレポートしてみたい。

 取り上げる施設はカジノホテルのプリムバレーウイスキーピーツバッファロービルズ、そしてプリム地区から車で10分ほど北側にあるジーン(Jean)地区のゴールドストライク
 カジノホテル以外の施設としては前述のファッションアウトレット、そして現在この地区で唯一活況を呈している Lotto Store(宝くじ販売店)、さらにジーン地区にある世界最大級の給油所と、インスタ映えする観光スポットとして人気のセブンマジックマウンテンも合わせて取り上げてみたい。

プリム地区の歴史

 ネバダ州とカリフォルニア州の州境にあることから 1996年までは州境の直訳的な意味の「ステートライン地区」と呼ばれていたが、この地区の開拓者である Ernest Primm 氏の名前にちなみ、97年から「Primm 地区」と呼ばれるようになった。

高速15号線の先のほうの右奥に明るく広がる大地が IVANPAH DRY LAKE。画面左側に明るく光って湖のように見えるのは太陽光発電施設。

高速15号線の先のほうの右奥に明るく広がる大地が IVANPAH DRY LAKE。画面左側に明るく光って湖のように見えるのは太陽光発電施設。

 このプリム地区は広大なドライレイク(乾燥して湖底が露出した真っ平らな砂漠 )として知られる IVANPAH DRY LAKE(上の写真の右奥)の北端に位置しており、基本的には砂漠地帯だ。
 したがって1980年代、Primm 家がこの地に入植し開拓を始めるまでは、まったく何も存在しない月世界のような場所だった。

 Primm 家はそこに3つのカジノホテル(バッファロービルズ、ウイスキーピーツ、プリマドンナ(のちにプリムバレーリゾートに名称変更)を建て、初期のプリム地区が形成された。その後、大型アウトレットモール「ファッションアウトレット」も出現し、多くの訪問者で賑わうようになった。

 とはいっても、このプリム地区の役割は、ロサンゼルスからラスベガスに陸路で向かう際、40分ほど近いという地理的な条件から、基本的にはロサンゼルス地区から陸路でやって来るギャンブラー(ナイトショーなど各種エンターテインメントには興味がない、つまりラスベガスまで行く必要がないリピーター型のギャンブラー)たちのためのものだった。
 それは今も昔も変わらないため、日本人観光客は言うに及ばず、世界各地からの一般のラスベガス観光客もこの地に宿泊するということはまずない。
 もちろんギャンブラーかどうかに関係なく、ラスベガスまでの長距離運転(ロサンゼルスから4~5時間)の途中での給油食事休憩のためのオアシス的な役割は今も果たしている。

 なお余談だが、観光客の増加に伴い、遅かれ早かれ現在のラスベガス国際空港のキャパシティーが限界に近づくことが予想されていることから、20年以上も前からラスベガス第2空港の建設予定地としてこのプリム地区が候補地とされてきた。
 これまではあくまでも「計画」ということで現実的な話は進展してこなかったが、近年のコロナ以降の観光客の急増で、2037年ごろの開港を目指して実行に移すべきとの話も浮上してきている。

Whiskey Pete’s(閉鎖中)

 ウイスキーピーツは、プリム地区に建設された3つのカジノホテルの中では、クセがないというか奇をてらったことをしていない標準的なカジノホテルとして、そこそこの知名度で長らく認知されてきた。
 しかし近年は慢性的な客不足から、ついに昨年の12月に営業を打ち切ることになり現在は閉鎖中となっている。

1999年当時のウイスキーピーツ。写真内の右側に見えるのは、このホテルとプリムバレーを結ぶ無料モノレール。

1999年当時のウイスキーピーツ。写真内の右側に見えるのは、このホテルとプリムバレーを結ぶ無料モノレール。

現在のウイスキーピーツ。手前に進入禁止であることが示されている。(2025年3月4日撮影)

現在のウイスキーピーツ。手前に進入禁止であることが示されている。(2025年3月4日撮影)

 開業後オーナーシップは何回も入れ替わっており、かつては MGM社が所有していたこともあったが、現在は全米でカジノやスポーツブックを運営する Affinity Interactive 社が所有。
 同社は、同じプリム地区内にある プリムバレーリゾートバッファロービルズも所有しているが、3つのカジノホテルは需要に対して供給過多との判断で、今後このウイスキーピーツを営業再開する予定はないとしている。
 その代わり、ロサンゼルス地区から陸路でやって来る人たちのためのツーリストセンター的な施設にするとの話が同社から出てきているが、詳細や実現性は不明。

Primm Valley Resort(風前の灯)

 プリム地区に建設された3つのカジノホテルの中では異色の中庭付きの低層階の構造を特徴としており、かつてはプリマドンナという名称だったほど、建物もホテル名も特異な存在であった。

プリマドンナからプリムバレーリゾートへ名称変更になったあとの 2002年ごろの写真。

プリマドンナからプリムバレーリゾートへ名称変更になったあとの 2002年ごろの写真。

現在の様子。営業中ではあったが、正面玄関前の駐車場には車両の姿がほとんど見られなかった。(2025年3月4日撮影)

現在の様子。営業中ではあったが、正面玄関前の駐車場には車両の姿がほとんど見られなかった。(2025年3月4日撮影)

 このホテルも現在は Affinity Interactive 社が所有しており閉鎖はしていないものの、駐車場にはほとんど車が存在していなかっただけでなく、人影もほぼゼロで、見た目は閉鎖中といった感じになっている(平日の取材だったため、週末はそうでもない可能性も)。
 見かける車両は充電目的でやってくるテスラ車がほとんどというのが現実で、とにかく閑散としている。(このホテルの駐車場にはテスラの充電施設が多数ある)

プリムバレーリゾート内のカジノフロア。客があまりにも少ない。(2025年3月4日、正午ごろ)

プリムバレーリゾート内のカジノフロア。客があまりにも少ない。(2025年3月4日、正午ごろ)

 ホテル内に入ってみるとカジノフロアは全盛時代の4分の1ほどのスペースに縮小されており、客も3人しかおらず、まさに風前の灯といった状態だった。

だれもいないレジストレーションデスク。「チェックイン、チェックアウトはバッファロービルズで」と書かれている。

だれもいないレジストレーションデスク。「チェックイン、チェックアウトはバッファロービルズで」と書かれている。

 宿泊客のためのレジストレーションは存在しているが、そこには「チェックイン、チェックアウトはとなりのバッファロー・ビルズに行ってやってください」といった説明が。
 カジノ内にたった一人だけいた現場スタッフに今後どうなるのか質問してみたところ、「カジノフロアや飲食施設などを改装したあと、かつてのようにフルサイズの規模で営業を再開すると聞いている」とのこと。

Buffalo Bill’s(超閑散)

 ローラーコースターがホテル棟の周りを走行するというかなり独創的なカジノホテルとして開業。そのローラーコースターは当時世界最速を誇っていたこともあり、それなりの注目を集めたカジノホテルだった。

1999年当時のバッファロービルズ。写真左側に黄色く見えるのは、世界最速を誇っていたローラーコースター。

1999年当時のバッファロービルズ。写真左側に黄色く見えるのは世界最速を誇っていたローラーコースター。

現在のバッファロービルズ。駐車場に停まっている車の数がなんとも寂しい。

現在のバッファロービルズ。駐車場に停まっている車の数がなんとも寂しい。

 現在の経営は プリムバレーやウイスキーピーツと同じ Affinity Interactive 社。
 プリムバレーよりは人影が多かったものの、かなり閑散としており、チェックインをしようとしていた客はいたが、スタッフはしばらく出てこなかった。

現在のバッファロービルズのレジストレーションデスク。客はいたがスタッフは見当たらない。

現在のバッファロービルズのレジストレーションデスク。客はいたがスタッフは見当たらない。

カジノ内も閑散としていた。ブラックジャックなどのテーブルゲームはない。

カジノ内も閑散としていた。ブラックジャックなどのテーブルゲームはない。

 カジノ内は全盛時代とほぼ同じサイズで運営されているが、ブラックジャックやルーレットなどのライブでのテーブルゲームは一切無しでマシンゲームのみ。
 飲食店もデニーズを除いて閉鎖中で、バフェは週末のみの営業。ローラーコースターなど各種乗り物も閉鎖中

Fashion Outlets(閉鎖中)

 1998年の開業後、オーナーシップは何回か変更になっており、現在は全米で商業施設などを手掛ける Kohan Retail Investment 社が所有。
 開業直後は、ロサンゼルからラスベガスに向かうドライバーの多くが立ち寄っていただけでなく、ラスベガスの住民や観光客までもが足を運ぶほど絶大なる人気を誇っていたショッピングモールだったが、ラスベガス市内に次々と大型のモールが出現すると人気は急降下。

全盛時代のファッションアウトレット。(2000年頃撮影)

全盛時代のファッションアウトレット。(2000年頃撮影)

上の写真と比べると、なんとも寂しい現在のファッションアウトレット。

上の写真と比べると、なんとも寂しい現在のファッションアウトレット。

 2020年から Prizm Outlets に名称変更し復活に期待がかかったが、コロナ以前から出店テナント数が減り続け、近年は10店以下の寂しい運営が続けられていた。
 そして昨年ついにテナントは1店だけとなり、このたびあえなく閉鎖に

Lotto Store(盛況)

 現在プリム地区でそれなりの存在感を示しているのは、宝くじを販売している Lotto Store だけと言っても過言ではない。
 コンビニほどのサイズのこの店がなにゆえ盛況なのか。それはカジノの利権を守るため、ラスベガスがあるネバダ州では宝くじ(Lotto)の販売が禁止されているからだ。
 一方、ネバダ州以外の多くの州では宝くじの販売が認められており、それらの宝くじで1等賞が出ない場合(番号を選ぶ方式のため的中者が出ないことがある)、賞金は次回に持ち越されることから、かなりひんぱんに1等賞金が超高額になる。

現在の The Lotto Store at Primm。(2025年3月4日)

現在の The Lotto Store at Primm。(2025年3月4日)

2016年、1賞金が超高額になったときの様子。このような長蛇の列はひんぱんに見られる。

2016年、1賞金が超高額になったときの様子。このような長蛇の列はひんぱんに見られる。

 そんな超高額の宝くじを買いたいラスベガスの住民にとって一番近い売り場が、カリフォルニア州の宝くじを販売している州境のこの店というわけだ。長蛇の列になることがしばしばあるほど大繁盛している。

Gold Strike(廃墟)

 ラスベガスからプリム地区まで行ったら必ず通ることになるジーン地区。プリム地区から高速15号線で10分ほどラスベガス寄りの場所だ。
 そこに長らく存在していたのがカジノホテルのゴールドストライク。かつてはあのサーカス・サーカス社が所有していたこともあったが、現在は長らく閉鎖されたままで現場は廃墟状態になっており、営業再開の気配はまったくない。

2001年当時のゴールドストライク。左手前に見える道路は高速15号線。

2001年当時のゴールドストライク。左手前の道路は高速15号線。

現在のゴールドストライク。あまり変化がないようにも見えるが、客室棟に併設されていた建造物が消滅していることがわかる。現在は営業していない。

現在のゴールドストライク。あまり変化がないようにも見えるが、客室棟に併設されていた建造物が消滅していることがわかる。現在は営業していない。

巨大給油所 Road House(営業中)

 ゴールドストライクが閉鎖になってしまったあとのジーン地区の見どころといえば、給油ポンプの数が 96台もある超巨大な給油所 Road House だ。
 本当かどうか知らないが、この96台という数は世界一との噂もあったりする。ギフトグッズなども豊富な大きなコンビニも併設されているので、給油の必要がなくても立ち寄ってみるとよいだろう。

ジーン地区にある超巨大給油所。

ジーン地区にある超巨大給油所。

最後の1台のポンプ番号が96番になっていることがわかる。

最後の1台のポンプ番号が96番になっていることがわかる。

ギフトグッズも多数扱っている大型のコンビニが併設されている。

ギフトグッズも多数扱っている大型のコンビニが併設されている。

 当店に関する詳しい情報は、このラスベガス大全のバックナンバー第1126号を参照のこと。

Seven Magic Mountains(好評)

 ジーン地区から少しラスベガス寄りの砂漠の中に Seven Magic Mountains がある。
 こちらはインスタ映えするスポットとして 2016年の開設以来、観光客が絶えることなく引き続き人気だ。

現在の Seven Magic Mountains。(2025年3月4日撮影)

現在の Seven Magic Mountains。(2025年3月4日撮影)

見る角度によって見え方が異なる。この写真の左手前方向の位置にある駐車場(無料)から現場までは約200メートル。

見る角度によって見え方が異なる。この写真の左手前方向の位置にある駐車場(無料)から現場までは約200メートル。

 強い紫外線の影響などで塗装がすぐに色あせてしまうため、せっかく行っても鮮やかではないこともあるが、ときどき再塗装されているようで、現在はかなりきれいな状態になっている。
 この施設に関する詳しい情報はバックナンバー第1158号に掲載。

 以上、プリム地区、ジーン地区の近況レポート「あの街は今」でした。

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