プロジェクトの実現が待たれるラスベガスの4ヶ所の土地に何が出現?

ラスベガスのホテル街の超一等地に放置されたままになっている更地。中央やや右は タイムシェアの POLO TOWER。

ラスベガスのホテル街の超一等地に放置されたままになっている更地。中央やや右は タイムシェアの POLO TOWER。

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 常に進化し続けるラスベガス
 どこの国どこの街においても、古き良きものを大切にすることは重要な価値観だが、この街ではむしろ破壊と創造に街づくりの原点や哲学があるように見受けられる。
 つまり新しいモノを生み出す際には、惜しまれながらも古き良きものを積極的に壊してきた。

 そんな創造的破壊によって発展してきたこの街では失敗も少なくない。
 破壊後にその計画が中断、頓挫、変更になったりするのはよくあることで、それも小さなプロジェクトではなく、世界に冠たる目抜き通り「ストリップ」に面した大型プロジェクトであったりする。

 すぐに行動に移し、その結果としての前向きの撤退や失敗は、慎重すぎて物ごとが早く進まない弊害よりも良いと考えているのか、この街には日本の都市などでは感じられないダイナミズムがある。

 今回はそんなダイナミズムによる破壊のあと、中断されたまま放置され続けているプロジェクトを4ヶ所紹介してみたい。
 どれも好立地条件の大型案件ではあるが、今後の見通しが立っていないところに興味をそそられる。

【ハーモン通りとの交差点】

 ストリップ大通りとハーモン通りの交差点の南東カド。
 この交差点には大型カジノホテル「プラネットハリウッド」「コスモポリタン」が建つなど、ベガス屈指の超一等地となっている。
 そこが現在なにも存在しない更地のままなので、新たなプロジェクトの開始が待たれている。ちなみに広さは 6.2エーカーというから約25,000平方メートル(7600坪)と広大だ。

手前が今回の話題の空き地。右はヒルトン・グランド・バケーションズ、左はプラネットハリウッドホテル。

手前が今回の話題の空き地。右はヒルトン・グランド・バケーションズ、左はプラネットハリウッドホテル。

 その場所にはかつて何があったのか。何が破壊されたのか。
 それはハーレーダビッドソンカフェだ。一昔前までのラスベガスを知る者にとっては、「巨大オートバイが目印のカフェ」と言えば思い出すのではないか。さらにそのカフェ以外にも小さな商店街やモーテルもあった場所で、とにかく立地条件は申し分ない。

現在の空き地に当時存在していたハーレーダビッドソンカフェ(2005年撮影)

現在の空き地に当時存在していたハーレーダビッドソンカフェ(2005年撮影)

 ではそこで何が計画されているのか。
 ゴールデンナゲットホテルのオーナー Fertitta氏が 43階建てのカジノホテルを建設しようとしている。
 しかし1年ほど前にその計画は発表されたものの、今では無期延期との噂も流れているので今後の進展はまったく読めいない状況だ。
 このあと計画は再開されるのか、立ち消えとなるのか、今後の成り行きを見守りたい。

【Mandalay Bay ホテルの向かい側】

 ストリップ大通りの南端地区にあるマンダレイベイホテルの向かい側の土地も数々の計画が頓挫した土地として知られている。
 こちらの広さはなんと 26エーカーというから 105,000万平方メートル(32,000坪)と広大だ。

後方はマンダレイベイホテル、手前に見える2本の柱状のものは観覧車を支えるはずだった支柱。10年以上もこの状態のまま放置されている。

後方はマンダレイベイホテル、手前に見える2本の柱状のものは観覧車を支えるはずだった支柱。10年以上もこの状態のまま放置されている。

 ここではかつて世界最大級の巨大観覧車の建設計画が発表され、実際に建設も開始された。リーマンショック直後の 2012年ごろの話だ。
 時期が悪かったのか計画は途中で頓挫し、その観覧車を支えるはずだった2本の巨大な柱は今でも残されたままとなっている。その姿はなんとも痛々しい。
 その無惨な姿は新たなプロジェクトの邪魔になるばかりか景観的にも見苦しく、すぐに撤去されるべきものではあるが、撤去にも莫大な費用がかかるためか、新たなプロジェクトが決まるまでは放置され続けることになりそうだ。

この2本の支柱は邪魔であるばかりか見苦しい。左下に見えるのはMGMグランドホテル。

この2本の支柱は邪魔であるばかりか見苦しい。左下に見えるのはMGMグランドホテル。

 この土地の所有権が転々とするなか、2年ほど前にまた新たな投資会社がこの広大な土地を購入したので、いよいよ何かが建設されるのかと期待されたが、土地の値上がり目当ての購入だったようで具体的な建設計画はまったく聞こえてこない。

 地元紙などの報道によると、その会社は1エーカー(4047平方メートル)あたり700万ドル(約10億円)、合計1億8200万ドル(270億円)で買い手を求めているようだが、その価格では買い手は現れないだろうというのが業界人の見立てだ。

 それでもその売り手としては、この土地の立地条件から強気の姿勢を崩していないようだ。
 というのも、この土地は数年後に完成するメジャーリーグ野球のオークランド・アスレチックスの新球場に近く、さらにすでに完成しているアレジアントスタジアム、そしてやや離れているもののTモバイルアリーナにもほど近いため、スポーツイベント需要を見込んだホテル建設などに最適の物件と考えているからだ。
 はたして売り手の思惑通り新ホテルの建設などが実現するのか、こちらも今後の成り行きを見守りたい。

【 Wynn Las Vegas の向かい側】

 ラスベガス屈指の高級カジノホテルのひとつ Wynn Las Vegas の向かい側にも広大な土地が放置されたままになっている。

ニューフロンティアホテル。(2005年ごろ撮影)

ニューフロンティアホテル。(2005年ごろ撮影)

 ここが更地になる前に存在していたのはニューフロンティアホテルだ。1950年、60年代に一斉を風靡した古豪カジノホテルで、2007年に半世紀以上の歴史に幕をおろし爆破解体され、現在は更地になっている。

現在の様子。左右に伸びる帯状の黒いフェンスの向こう側が、かつてニューフロンティアホテルが存在していた場所。右側の建物は Wynn の北館 Encore、左は Hilton などが入居する Resorts World。

現在の様子。左右に伸びる帯状の黒いフェンスの向こう側が、かつてニューフロンティアホテルが存在していた場所。右側の建物は Wynn の北館 Encore、左は Hilton などが入居する Resorts World。

 この土地はさまざまな投資家や企業の手に渡り何度もホテルの建設計画などが発表されたが、一度も実現に至っていない。
 現在は Wynn Resorts社が所有し、同社はこの土地に、現存の本館 Wynn Las Vegas、そして北館 Encore棟に次ぐ西棟として新館を建てるという計画を発表したこともあるが、最近はすっかり鳴りを潜めている。
 地元紙の報道によると、同社はこの土地に西棟を建てることよりも、アラブ首長国連邦で進められているリゾート開発のほうを優先したいようだ。たぶんこの先数年は空き地のままで放置され続けるものと思われる。

【フォンテーヌブローの北側】

 フォンテーヌブローはラスベガスで最も新しい大型カジノホテルでサーカスサーカスホテルなどが存在する北ストリップ地区に立地している。
 そのフォンテーヌブローと、さらに北側に位置するサハラホテルの間に広大な土地が放置されたままになっている。
 かつてこのエリア一帯はウォーターテーマパークが存在したりしていた場所だが、かなり昔のことなので今となってはそれを知る者は少ないはずだ。

ストリップ大通りを北側から南側を見た様子。手前に見える台形状の空き地が今回の話題の土地。濃いブルーの大きな建物がフォンテーヌブロー。

ストリップ大通りを北側から南側を見た様子。手前に見える台形状の空き地が今回の話題の土地。濃いブルーの大きな建物がフォンテーヌブロー。

 この土地は前述の3つの土地と比べると何かが建設される可能性が高いと見られがちだが、何ごとにおいても頓挫、中断、変更が付きもののラスベガスのこと、大きな期待は禁物かもしれない。

 ではその「何かが建設される」の何かとは何か?
 それはずばりプロバスケットボール NBAのチームをラスベガスに誘致するためのアリーナだ。
 18,000人収容のそのアリーナと、それに併設される約2000部屋以上のホテルやコンドミニアムのプロジェクトが実際に発表されたりもしているが、実現にはいくつかの問題をクリアしなければならない。
 それは資金調達や採算性などの問題はもちろんのことだが、近隣の高層コンドミニアム(ターンベリー・プレイス)の住民から「その建設計画は我々の住居からの眺望を遮る。またスポーツイベント開催時の騒音や渋滞も懸念される」といった反対論も出てきており、近隣住民との意見調整が難航しているようだ。

 ちなみにNBAチームのベガス誘致は遅かれ早かれ実現するだろうとの意見が支配的だが、そのチームのホームアリーナの建設には他のベガス郊外も候補地として検討されたりもしているので、このフォンテーヌブロー北側の場所だけが注目されているわけではない。

 というわけで長くなってしまったが、以上の4ヶ所のプロジェクトはどれも広大な土地だけに実現したら新たな注目スポットになり、またストリップ大通りの景色もさらに賑やかになるはずだ。観光客の集客にも少なからず貢献できることだろう。
 あまり大きな期待はせずに、急がずゆっくりその実現を待ちたい。

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