コロナ禍以降、日本から当地ラスベガスにやって来る来訪者の多くはカジノ好きのリピーター、もしくは在米日本人の家族や友人などが中心で、初ベガスの一般観光客はまだまだ少ない。
そしてリピーターといえどもラスベガスに来る人は少数派で、円安の影響などもあるのか、なかなかベガス訪問に踏み切れないベガスフリークも多いようだ。
彼らは近年のベガスの現状について興味を示していると思われるので、今週はそんな彼らに向けて「あのホテルは今」と題して最近営業を打ち切った2つのカジノホテル「Tropicana」と「Mirage」の現状を写真で紹介してみたい。
まずは Tropicana から。
1957年開業の老舗カジノホテル。南国の楽園をテーマにしたゴージャスなホテルとして一時代を築いたが、今年の4月、67年の歴史に幕を下ろした。
解体後の跡地には、本拠地をカリフォルニア州オークランドからラスベガスに移転する予定のメジャーリーグの野球チーム「オークランド・アスレチックス」のホーム球場(2028年ごろの完成をめざすとしている)が建設される予定。
ホテルの併設も検討されているようだが、何ごとにおいても大幅な遅延や頓挫が付きもののラスベガスのこと、完成するまでどうなるかはわからない。
(2023/04/26 付けのこの週刊ラスベガスニュース 1352号で、アスレチックスのスタジアムの建設予定地に関する記事を書いたが、そのときの予定地はトロピカーナホテルの跡地ではなかった)
現在現場の様子はどうなっているのかというと、これまでのカジノホテルの解体手順(営業中の姿のまま爆破解体)とは異なり、まずは壁、床、天井などを取り払ったスケルトン状態にしてから爆破解体するとのことで、現在は上の写真のような状態になっている。
さてその気になる爆破解体の時期について。
アスベストの飛散対策(事前に除去)や、22階建ての2つのタワー棟の構造がそれぞれまったく異なるなどの理由で、当局からの解体許可に時間がかかっている。
そのようなわけで長らく解体の日程が決められなかったようだが、たまたま本日それが発表され、10月9日と決まった。
(上の写真内の交差点に近い側のタワー棟が鉄骨構造、敷地の奥にあるほうが鉄筋コンクリート構造。爆破解体の準備や手順、さらには爆薬の使用方法などがまったく異なる)
次に Mirage。
ラスベガスに巨大テーマカジノホテルの建設ブームを巻き起こした草分け的な存在として 1989年に営業開始。
その前庭で毎晩演じられてきた火山のショーはあまりにも有名で、ラスベガスの観光名所にもなったほどの人気ホテルだったが、今年の7月、35年の歴史に幕を下ろした。
とはいえ爆破解体されるわけではない。ここ数年の運営権の変遷などは複雑なので省略するが、数年前、これまで長らく運営の主体だった MGM社から Hard Rock社に運営権が移った。
そして火山ショーが行われていた前庭の部分にギター型の客室棟(約600部屋)が建設されることになり、それが完成すればこれまでの客室約3000部屋と合わせて合計約3600部屋の巨大ホテルとして復活デビューすることになる。
現在は火山が取り壊されている段階で、まだギター棟の建設は始まっていない。
なおその建設には3年を要するとのことだが、それが完成する前に既存部分の3000部屋だけで営業を再開するかどうかや、その再開時期に関しては現時点では未定となっている。
(ギター型のホテルといわれてもその形を想像しにくい場合は、フロリダ州にある Seminole Hard Rock の 公式サイトを参照するとよい)
最後におまけというかついでに「あの人は今」。
冒頭のタイトルでそのように表現してしまったが、何人も取り上げるわけではない。今回ここで取り上げるのはたった一人の人物。
前述のミラージュホテルを開業させ、その後、トレジャーアイランド、ベラージオなどの人気カジノホテルを次々に建設し「ベガスのホテル王」などと呼ばれたりもしたことがあったスティーブ・ウィン氏だ。御年82歳。
彼がラスベガスで最後に手掛けたホテルは自身の名前を冠した Wynn Las Vegas とその別館的な位置づけの Encore。ちなみにマカオにも同様な名前のホテルがある。
ギャンブル好きのカジノフリークやここの常連読者にとって、ラスベガスで一番有名な人物といえばこのウィン氏だろう。それほど当地では有名な人物だ。
そんな彼は今どうしているのか。すでに知っている読者も多いと思われるが、複数の従業員へのレイプなどのセクハラ・スキャンダルで失脚し、CEOという役職のみならず株主としての権利も失い、今はおもにフロリダ州で隠居生活を送っているとのこと。
カリフォルニア州やニューヨーク州などにも不動産を所有したりしている関係で必ずしもフロリダ州にいつも滞在しているとは限らないが、ベガスに来ることはないことだけはたしかなようだ。
ちなみにミラージュホテルの最後の営業日の閉館セレモニーに、自身がクリエイトしたホテルという立場としてウィン氏も出席するのではないかと噂されたりもしたが、元妻が出席しただけでウィン氏は姿を表さなかった。
というわけで彼はラスベガスおよびマカオのカジノ業界から完全に身を引いているが、彼の名前を冠した Wynn というホテルや社名は今でもしっかり存在しており、現経営陣はこの名称の存続に頭を悩ませているとの話を聞いたことがある。
定着しすぎてしまっている名前だけに簡単に名称変更するわけにもいかないだろうが、はたしてベガスとマカオから Wynn という名前が消える日は来るのだろうか。
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コメント(3件)
コロナは本当、人々の人生に色々な形でブレーキをかけましたよね。
私的には、バフェィが平均して高級なものとなってしまったのが本当に残念ですが、ベガスの活気そのものはほぼ戻ったようで物凄く嬉しいです。
トロピカーナはたしかに『ダイヤモンドは永遠に』的な60~70年代の雰囲気が中途半端(経費節約的)な形で保存されていた印象なので、そろそろ潮時かなぁとは思ってました・・・が、ミラージュがなくなるのはいささか寂しい。ハードロックとしての再誕にも興味ありますけどネ。
スティーブ・ウィン・・・できる限りベガスに居続けて欲しかった。
セクハラ云々、彼の場合はレイプというより「彼の権力に圧倒されほぼ同意の上で行為をした女性たちに後から攻撃された」パターン(#MeTooに都合よく便乗した類の人々)が主であるような気がします。あそこまで仕事に没頭していた人がそこまで多くの人々に無理やり何かをする時間も余裕もなかったんじゃないかと・・・。
もしまだ彼がベガスにいたなら・・・と思うこと多々。
もう1~2軒、素晴らしいホテルができていたんじゃないかなぁ、と。
とにもかくにも、来週、久々にベガスに行く予定です。
かつてのWynnホテル並みに充実したラスベガス大全さん、またお世話になります。
毎週、楽しみに拝見させていただいてます。
Wynn には、毎年夏に宿泊しています。Wynn の名前は、ぜひ残してほしいです。名前が、Win勝つ
と日本語では同じで縁起がいいと思います。カジノ好きな方には、好感持てる、カッコイイ名前だと思います。
また、ホテルの流線形のデザインも素敵だと思います。
トロピカーナホテルが無くなったのは痛い。
ラスベガスの駐車場が有料化される中、無料で頑張っていたのですよね。
ロケーションも良く、値段もリーズナブルなので良く利用してました。
ホテルの高騰してる中こういう良質なホテルがなくなるのは残念です。