ビルボード、つまり高速道路や街道沿いなどに高くそびえるように設置された広告塔のこと。それが当地ラスベガスには非常に多いということを先週のこのコーナー(週刊ラスベガスニュース 第1367号)で書いた。今週はその後編。
- ベガスの地形的事情と業界的な事情
- ある業界がビルボード業界を席巻
- あまり美しいとは言えない現実
- INJURY、INJURY、INJURY
- 離婚のビルボードは1本だけ
- 百聞は一見にしかず、まずは写真で
- コロナで従来型の広告主の激減が原因?
- 従来型広告主が広告枠を買い負け?
- 超高額訴訟が普通というわけではない
- 相手に支払い能力がなければ興味なし
- 相手が大企業かどうか
- 定額制の離婚案件は美味しくない
- カネか正義か、日米で分かれる価値観
- アメリカの弁護士にうんざりした実話
- うんざりした実話の「その2」
- うんざりした実話の「その3」
- 弁護士広告の急増はコロナと関係あり?
- 分野によって品格に差がある弁護士業界
- INJURY 弁護士のことがうらやましい?
- 事実は事実として知っておきたい
ベガスの地形的事情と業界的な事情
当地にビルボードが多い背景には、砂漠内に人工的に造られた比較的若い都市であるばかりか、カジノホテル以外には高層建造物がほとんどないため遠く離れた位置からでも視認性が高く、広告主にとっては好条件という地形的な事情がある。
さらにラスベガスならではの業界的な事情も。おもな広告主、つまりカジノホテル内のレストランやナイトショーなどの広告主にとっては新聞、雑誌、テレビなどの広告媒体よりもビルボード広告のほうが都合が良かったりする。
なぜなら、それら広告主は一般住民ではなくその日にラスベガスにやって来る観光客に告知したいわけで、多くの観光客は当地に到着したあと夕食やショーが始まる時間帯までに新聞や雑誌を読んだりテレビを見たりすることはほとんどないからだ。
一方、彼らはレンタカーであろうが空港からのタクシーであろうが、車窓からの景色を興味深く丹念に見る傾向にあり、レストラン、ナイトショー、ナイトクラブなどにとってビルボード広告は効果的ということになる。
ある業界がビルボード業界を席巻
そこまでの話は先週号のこのコーナーでも書いてきたことだが、近年そんな当地のビルボード広告業界において大きな変化が起こっている。
ある分野の広告主がすさまじい勢いで存在感を増してきており、もはや広告本数でレストランやナイトショーなどを圧倒。特にホテル街を少しでも離れたエリアではその分野の広告だらけになっているから驚くばかりだ。
あまり美しいとは言えない現実
結論から先に書くならば、その分野とは弁護士事務所のことだが、注目すべきはそれだけではない。
弁護士事務所といっても、その広告主はある特定のジャンルをターゲットにした弁護士事務所に集中しており、それに気づくとアメリカ社会の「あまり美しいとは言えない現実」(批判意見もありそうだが)を思い知らされることになる。
その現実とはこのあとに詳しく説明するが、批判覚悟で書いてしまうならば、ウソに近いことを主張してでも相手から多額の損害賠償などを取ろうとするビジネス方針の弁護士が多いということ。
INJURY、INJURY、INJURY
一般的に弁護士という職業の守備範囲は幅広い。身近なところでは離婚、破産、交通事故、飲酒運転などの個人レベルの案件から、特許、債権回収、企業買収といったビジネス関連、さらには刑事事件の加害者や被害者のサポートまで仕事の範囲は多岐に渡っている。
ところが現在ラスベガスのビルボード広告を席巻している弁護士事務所が狙っているジャンルは、なぜかある一つに集中。それは「INJURY」だ。
高速道路の右を見ても左を見ても、そして街の中でも目に飛び込んで来るのは INJURY 関連のビルボードばかり。その数、半端ではない。ちなみに空港構内を走っていたら同時に3本の INJURY 広告が見えた地点もあった(この下の11枚目の写真がその地点)。
離婚のビルボードは1本だけ
INJURY にはもちろん「ケガ」という意味以外にも漠然と「被害」、「損害」といった意味もあるが、ようするに「ホテル内でケガをしたあなた、ホテルを訴えちゃいましょう!」(17枚目の写真の弁護士事務所)と言わんばかりに、交通事故を含む何らかの理由でケガを負った被害案件を狙っている弁護士たちがビルボードに積極的に広告を掲載しているというわけだ。
ちなみに今回ラスベガス周辺の高速道路や主要道路をくまなく走って確認してみた限りでは、離婚案件をターゲットにしたビルボード広告はたった1本しか見つからなかった。その他の数十本はすべて INJURY 系だ。
百聞は一見にしかず、まずは写真で
この現実について弁護士の知人にその背景などを聞いてみたが、それはこのあとに書くとして、その前にまずは「百聞は一見にしかず」。以下はこのたび車窓から撮影したビルボード広告の写真なのでじっくり見ていただきたい。
何十枚も撮影できたが、ダウンロード速度が遅くなったり記事が長くなってしまうので 十数枚だけ取り上げてみた。
「INJURY」あるいは「INJURED」という言葉がやたらと目立っていることがわかるはずだ。
(高速で移動する車内から窓ガラス越しに撮影した写真なので、ピンボケや画角の悪さなどはご容赦を)
コロナで従来型の広告主の激減が原因?
いつから弁護士事務所の広告が増え始めたのか。あいにくハッキリとした記録を取っていないのでわからないが、肌感覚として近年急に増えてきていることは当地に住む住民や頻繁にラスベガスを訪問している者の多くが感じているはずだ。
コロナによって一時的にショーやレストランなどの従来型の広告主の掲載が激減したことによる広告掲載料の低下というタイミングを狙って弁護士業界が一気に参入したのではとも考えられなくもないが、ここ数年の広告費の変化を調べたわけではないので何とも言えない。
従来型広告主が広告枠を買い負け?
そもそもラスベガスの観光業界はすでにコロナ前の好景気に戻っていることを考えると、ショーやレストラン業界が広告を手控える理由も見当たらない。
だとすると弁護士業界のほうがより高い広告費を受け入れる体力があり、結果的にショーやレストラン業界が広告ワクを買い負けているという可能性もありそうだが、これも勝手な推測の域を出ない。
いずれにせよ確実に言えることは、これだけ多くの弁護士事務所が広告を掲載しているという現実は広告効果があるということ。つまり支払う広告費に対して収入が見合っていると想像できるわけだが、そんなに INJURY 案件は儲かるということか。
超高額訴訟が普通というわけではない
ここで少々本題からそれるかもしれないが、日本人が誤解しがちな部分を補足しておきたい。
「アメリカの訴訟では原告側がとんでもない超高額を要求する」、「アメリカの被害者はすぐに裁判に持ち込む」といった部分についてだ。
たしかに、たとえば飲食店などで出された料理でヤケドを負ったような案件で何百万ドル(数億円)も要求、といった話はよくニュースなどで耳にする。
とはいえそれが普通というわけではない。その逆にどんなに大きなヤケドを負っても少額どころか裁判にすらならない場合がいくらでもある。
相手に支払い能力がなければ興味なし
訴訟案件になるかならないかの分かれ道は何か。それは民事の場合、相手から多額の賠償金を取れるかどうか。つまり相手に支払い能力があるか無いかですべてが決まる。もし支払い能力が無いことが確実であれば裁判にまで発展することはまずない。
なぜなら、そもそも裁判を起こすかどうかは被害者の意思や希望というよりも弁護士側の判断が優先されることがほとんどで、いくら被害者が裁判に持ち込みたくても多額の弁護士費用を負担しない限りは弁護士にとって利益にならないからだ。
たとえばヤケド案件の場合で言うならば、現場が個人経営の店でなおかつ損害保険にも入っていないような場合は裁判に持ち込んでも多額を勝ち取れる見込みがないので弁護士は興味を示さない。
相手が大企業かどうか
一方、小さなヤケドであっても相手が大企業の場合は支払い能力があるため何百万ドルもの裁判を起こしたりすることがある。
もちろん多くの場合、被害者主導ではなく弁護士主導だ。勝ち取った巨額の損害賠償金の中から成功報酬(たとえば30%とか)を受け取れる可能性があるため魅力的な案件というわけだ。
したがって日本人が思い込みがちな「アメリカの被害者はすぐに裁判に持ち込む」は少々補足が必要で、「相手が大企業などの場合に限り、被害者本人ではなく弁護士側が被害者を焚き付けるような形で裁判になったりしているケースが多い」というのが現実に近いだろう。
定額制の離婚案件は美味しくない
そのような事情を知っていれば、離婚案件を専門としている弁護士のビルボード広告が少ないこともわかってくる。
弁護士としては、相談相手の配偶者が高額の支払い能力を有する芸能人や億万長者などではない限り大きな成功報酬は期待できないため、定額の弁護士費用で仕事を引き受けることになりやすい。
そして一般人カップルの離婚案件の場合、その定額費を高めに設定すると集客しにくくなるため、おのずと離婚はビルボード広告費を回収できるような美味しい案件ではないということになる。
カネか正義か、日米で分かれる価値観
以上のように、金銭的な損得勘定で動きがちなのがアメリカの弁護士だ。いや弁護士だけではない。被害者自身も相手から取れないとわかれば裁判に持ち込むことはない。
そもそもアメリカ人は、損害賠償額をいくらにするべきか、もしくは加害者側が払えるのかどうかという部分に議論の余地がまったくないような事案(つまり支払い能力無し)には裁判に持ち込む価値がないと考える。
一方、日本では金額の大小ではなく、どっちが正しいのか白黒決着つけるための裁判となりやすい。
たとえば芸能人や著名人が名誉毀損などを理由に出版社やユーチューバーなどを訴える裁判などはその典型で、「被告には50万円の支払いを命ずる」といった少額の判決はアメリカ人には理解できないだろう。
日本においてもアメリカにおいても裁判を起こすためにはその事案の経緯の調査や書類の作成など膨大な時間と労力を要するわけで、そこまでして起こした裁判の結果が「勝訴で50万円」ではだれの得にもならないとアメリカ人は考える。
ところが日本人は、「それみたことか。オレが正しい。お前が悪いことがわかっただろう!」ということを証明するために裁判を起こしたりする。
合理性で動くアメリカ人、合理よりも感情を優先する日本人、どちらが正しいのか。こればかりはさまざまな意見があるだろう。
アメリカの弁護士にうんざりした実話
ついでなのでベガス在住の友人から聞いたアメリカの弁護士にうんざりしたという話を紹介したい。
つい最近、その友人の妻がラスベガス市内でちょっとした追突事故に巻き込まれた。幸いにも彼女にケガはなく、車両のキズもごくわずかだったとのこと。
もちろん相手がいることだし保険会社も関わってくる事案なので彼女は弁護士に相談。
すると「本当にケガがないか病院に行って精密検査をしてもらうように。そしてその検査費用を知らせてほしい」とのこと。弁護士としては加害者もしくはその保険会社から検査費用などを取り立てることが仕事なのでそこまでは普通の話だ。
彼女としては「まぁそれはそうか」ということで念のため病院に行ってみたところ「特に異常なし」との診断。
その数日後、たまたま彼女は実家の日本に行く用事がありベガスを離れると、弁護士から日本までメールで「あとになって後遺症とかが出てからでは遅いので MRI とか CTスキャンを使った精密検査を受けるように」との連絡が。
彼女はその必要性を感じていなかったものの、とりあえず指示に従って日本の病院で検査を受けることに。そして数万円の検査費が記載された書類の写真を撮って弁護士に転送。もちろん検査結果は異常なし。
するとなんと驚くことに、「なんだよ、この金額は! 何千ドルもするはずだ。もっと高いちゃんとした精密検査を受けるように」との返信が。
彼女は日本の医療費の安さを知らなかったその弁護士からの返信にあきれ返ると同時に、顧客のケガの状況や健康状態よりも自身の収入を気にしていることを改めて知ることになり悲しい思いをしたという次第。
一般的に被害側や原告側を担当することになった際のアメリカの弁護士は、成功報酬を大きくしたいがために検査費用や治療費を水増しするのは常套手段のようだ。
うんざりした実話の「その2」
これまたつい数週間前にベガス在住の知人と話していた合間に聞かされた話。こんどは短い話なのでストーリーとしては簡単だが、弁護士当事者からの話ということだったので、いろいろ考えさせられるものがあった。
その知人の娘さんは何年も前から弁護士をやっていたので会話の流れの中で特に深い意味も目的もなく「娘さんはお元気にご活躍ですか?」と話題を振ってみた。
すると知人は「最近弁護士をやめて検事になったよ」というので当然のことながら「えっ? どうして?」とその理由をたずねてみたところ意外な返事が。それは収入や仕事のきつさなどの労働条件ではなかった。
「娘いわく、弁護士の業界はありもしないことをでっち上げたりウソばっかりの話で駆け引きをするのが日常なので、そんな業界がイヤになったらしい」とのこと。
現場に身を置いていたその娘さんの意見なので弁護士業界の実態としては真実に違いないだろうことを思うと、弁護士の役目や正義とは何なのかを改めて考えさせられると同時に、この国に住む怖さも頭の中をよぎったりした。
うんざりした実話の「その3」
これまた偶然にも1ヶ月ほど前に友人から聞いた話で、これもストーリーとしては超単純だが、「ふざけるな、バカヤロー!」と言いたくなるような残念な話。
その友人がベガス市内の交差点で信号待ちの停車をしていたところにゴツンと後方から追突された。幸い速度が遅かったためケガも車両のキズもごくわずか。
それでも保険会社などに対して事故証明が必要なので警察を呼んだところ、ぶつかってきたドライバーは警察に「こいつがなぜかいきなりバックしてきた!」とのまさかのとんでも証言。
警察はとりあえず事故証明を発行し、あとは保険会社の判断ということになるが、聞くところによるとアメリカでは証拠がなければ(ドライブレコーダーなどの記録がなければ)ウソでも自分が有利になるような発言をすることは当たり前で、それがウソとわかっていても弁護士は顧客が有利になるよう最大限の努力をするのが仕事のようだ。
まさに前述の友人の娘さんの「ウソだらけの世界」というのがアメリカの弁護士業界の常識と考えると悲しい気持ちになってくる。
ちなみにその後この友人の事故処理の結末がどうなったかはまだ本人から聞いていない。
弁護士広告の急増はコロナと関係あり?
話は3本の実話で横道にそれてしまったが、ビルボード広告の話に戻す。
なぜ INJURY 分野の弁護士のビルボード広告が目立つのか。ビジネス分野の弁護士の知人に意見を求めてみた。
すると彼いわく、はっきりしたことはわからないのであくまでも私見との前置きをした上で、コロナのうっぷん晴らし的な荒い運転が増えてきているのか事故率もあがり保険会社も保険料率を上げてきたりしていることを考えると、弁護士側が成功報酬を得る機会も増え広告効果が高まってきているのかもしれない、とのこと。
もちろんこの彼のコメントは信頼できるデータなどで確証を得たものではないのであくまでも個人の意見と理解していただければ幸いだ。
分野によって品格に差がある弁護士業界
その知人がもっと貴重な興味深い話をしてくれたのでそれも紹介してみたい。
これもあくまでも彼の個人的な意見だが、弁護士業界の中にも専門とする分野によって品格というか格調のような部分に上下関係があるようだ。
といっても、もちろんそれは上位の位置にいる(と思い込んでいる)分野の弁護士たちからのいわゆる「上から目線」的な客観性のない見解とも思われるわけだが、それでも広告の実態などを見ている限りでは真実味があるように思えてくる。
彼が説明するその格付を端的に言ってしまうと、企業のコンサルティングや M&A などビジネス関連を専門とする分野の弁護士たちは、INJURY分野の弁護士たちのことを格下に見ているということ。
実際にビジネス分野の弁護士たちは、なりふり構わず広告を打ったりするようなことはしないらしい。ましてやビルボードには絶対に掲載しない。
理由はビルボードなどに広告を打ったりすると一流として見てもらえないとの思い込みがあるからとのことだが、その気持ちもなんとなくわからないでもない。
INJURY 弁護士のことがうらやましい?
ではビジネス法律事務所などはどうやって広告、もしくはその存在を告知しようとしているのか。
それは意外というか古典的な方法だった。業界人の集まりなどの名刺交換会やゴルフ談義などで地道にネットワークを広げ口コミや人脈にたよったり、M&Aエージェントやコンサルタントという人たちが広告を打って案件を取り、その案件をビジネス法律事務所に回すという仕組みが出来上がっているとのこと。
なにやら広告よりも効率が悪そうだが、それでもプライドが高いのか、ビルボード広告などを使うわけにはいかないらしい。
そのようなわけでその知人いわく、格上とされる(もしくは本人たちがそう思い込んでいる)ビジネス法律事務所の弁護士たちは、ビルボードでの顔出し広告の弁護士たちのことを内心で軽蔑している一方で、ビルボードでなりふり構わず効率よく集客していることをうらやましく思っている節もあるとのこと。
参考までに最近の日本のテレビ広告などでは、アメリカのそんな業界慣習の「格付け」を無視するかのように、M&Aを専門とする企業などの宣伝が目立ってきているというからその慣習の違いは興味深い。
事実は事実として知っておきたい
長くなってしまったが最後に。INJURY 弁護士たちが本当に格下に見られているのかどうかは別にして、当地のビルボード広告においてその存在感を増してきていることは疑いのない事実として認めざるを得ない。
そしてその分野の弁護士たちは、運悪く加害者側になってしまった者やその保険会社などから「カネを取れる」と判断した場合、「うんざりした実話」の中で取り上げたように少々のウソをでっち上げてでも徹底的にカネを取ろうとする傾向にあることも否定し難い事実であり(もちろんすべてのINJURY弁護士たちがそうとは限らないが)、その現実は日本の読者はともかく、アメリカで暮らす人たちは知っておいて損はないだろう。
それにしてもこのたびのビルボード広告の調査をしているタイミングで知人から知らされたその娘さんの弁護士から検事に転職した理由、つまり弁護士の世界に身を置く当事者たちもうんざりしているという話はあまりにも衝撃的すぎ、いろいろ考えさせられてしまったということを改めてここでお伝えして今週の記事を終わりとしたい。
コメント(9件)
とても興味深いお話をありがとうございました。25年前に新婚旅行でラスベガスを初訪問することになり、ラスベガス大全を発見してから毎週拝読しています。その後も計15回ほどラスベガスを訪れています。次は年末にラスベガスに家族で行く予定です。その際に改めてビルボードに目を配ろうと思います。そして旅行保険についても再考しラスベガス旅行を楽しみたいと思います。これからも毎週記事を楽しみにしています。
実話の3番目は「アメリカでは自分が悪いと思っても決してSORRYと言ってはいけない」という、30数年前アメリカに最初に旅行する前に聞いていたエピソードを思い出します。ところが実際に現地へ行くと「SORRY」という発言をそこかしこで耳にして、そんなことはないことがわかるわけですが。でも「俺は悪くない!」と言い張って弁護士が出張ってくる困ったケースもあるわけですね。気をつけます。
アメリカ社会と日本社会での裁判に対する考え方の違い、大変興味深く読ませていただきました。
あくまで個人の意見ですが、とにかく相手が悪いと必死になる日本社会のほうが陰湿のように
思います。 もちろん、お金に目ざといアメリカ社会のほうが、いやらしいと思う人もいるでしょう。
韓国語は『交通事故』です。
10年以上前から、都市部の地下鉄駅などで、この手の顔出し広告はよく見かけましたが、ここ2~3年で、ベガスにかぎらず、全米のロードサイド看板に増えてきましたね。看板業界が仕掛けた流行のような気もします。日本でも、なぜか、インプラント歯科業界で顔出し看板が流行ってます・・
この手の弁護士は、Amburance Chaserという蔑称で呼ばれます。怪我した人に訴訟を起こすように
もちかけるため、救急車を追っかけているからですね。
なお、対象は交通事故だけでなく、例えばホテルの段差でつまずいたり、荒れた舗装で転んだりしたときは、
ホテルや市や郡を訴えさせます。
でも、こういう訴訟で損害賠償まで至るケースは少ないです。そんなくだらない訴訟で税金を
使い、裁判官の貴重な時間を使うのは無駄なので、基本的には裁判官が和解を勧めます。
また被告だって、訴訟にかかる弁護士費用と時間が無駄なので、さっさと和解を受け入れます。
そして和解金の中から成功報酬を持っていくわけですね。
補足です。彼らだって最初からAmburance Chasingをやろうとして猛勉強して
弁護士資格を取ったわけではないのです。日本でも大手弁護士事務所に入所できるのは
ごく一部の人だけで、残りは企業の社内弁護士として勤めたり、小規模な事務所に入ったり、
自分で個人事務所を開くわけです。
でも、アメリカはこの競争が比較にならないほど厳しいのです。10年ほど前の時点では
アメリカの弁護士の数は日本の35倍ほどいて100万人を超えていました。殆どの弁護士は
生きるために仕方なくAmburance Chasingを行わざるを得ないというのが厳しい現実なのです。
さらに補足です。
成功報酬について書かれていましたが、弁護士はこの手の訴訟は無償でやり、弁護士報酬は取らない
ところも普通の訴訟案件と違うところです。弁護士にお金を一銭も払う必要がないので、事故にあった人は
訴訟を起こしても一円もかからないため絶対損はしないわけです。
一方、弁護士も、和解金なり損害賠償金を得て成功報酬を貰わないとお金にならないので、
とっとと和解して和解金を得たほうが、自分の時間を取られずに報酬を得られることになります。
昔は破産弁護士の広告を空港から向かう途中で見かけました。