この夏、突如ラスベガスに球状の巨大建造物が出現した。
といっても4年以上も前から建設工事が進められていたので、突如出現ではなく突如光り始めたというのが正しい。
この謎めいた建造物の名前は MSG Sphere。MSG はマディソン・スクエア・ガーデンの略、Sphere は球体で、スポーツイベントやコンサートなどのための多目的アリーナだ。
まだ内部の工事などが残っているため完全に竣工したわけではないが、すでに球体の表面の LEDは全面的に点灯しており、ラスベガスの夜空に与えるインパクトや存在感は半端ではない。
ホテル街からやや離れた位置にあるとはいえ、ベラージオホテルの噴水ショーなどと並ぶ当地の新たな名所となることは間違いないだろう。
その光り輝く姿はあまりにも衝撃的なため完成前にもかかわらず世界中のメディアが大きく報道しており、ここの読者の認知度もかなり高いようで、「Sphere の話題を取り上げてほしい」、「どこから見るのがベストなのか」といった問い合わせが寄せられている。
そのようなわけで、この Sphere のサイズ、座席数、総工費といった客観情報は他のニュースサイトや当サイトのバックナンバー(1131号)などを参照して頂くとして、今回はどこから見るのがベストなのか、おすすめの鑑賞スポットあるいは撮影スポットを紹介してみたい。
まずは Sphere の立地場所についてだが、多くの観光客が滞在している繁華街、つまりゴージャスな巨大カジノホテルが建ち並ぶストリップ大通りに面しているわけではない。
具体的にはベネチアンホテルの東側約1kmの地点だ。繁華街から徒歩で行けないことはないが、日没後のその道中は暗い寂れた環境になるばかりか、交通量が多い交差点などもあったりするので徒歩でのアクセスは現実的ではない。
レンタカーなどがあれば、いくらでも絶好の鑑賞スポットや撮影スポットに行くことができるが(たとえば上の写真のような場所)、大多数の一般観光客はレンタカーを使わないだろうという前提で、ホテル街から徒歩で行ける場所に限定して話を進めたい。
また、この Sphere に限らず、スポーツイベントでもナイトショーでも、良いポジションから見たければおカネ次第というのが世の常。つまりこの Sphere も出費を惜しまなければ鑑賞場所に悩む必要はない。
とはいえ旅行予算は人それぞれ。追加費用なしでもそれなりに楽しめる場所など、予算別のベストポジションを紹介していきたい。
【予算無しの人】
Sphere を見るためにおカネを払うのはイヤだ、という人におすすめのスポットはパラッツォホテルとウィンホテルを結ぶ歩道橋の上がよいだろう。
すでにさまざまな言語のSNSなどで知らされているのか、世界中からの多くの観光客が日没後ここに集結している。
写真撮影の場所取りで苦労するほど混雑しているわけではないが、日没後の時間経過とともに人が増えてくる傾向にあるので、なるべく早めに現場に行くようにしたい。
なお、Sphere から少々離れているばかりか、歩道橋の上といえども低い位置からの眺めになるので美しい写真が撮れる環境とは言い難い。肉眼で楽しむ場所と考えたほうがよいだろう。
【予算無し。遠い位置でもOKの人】
少々遠い位置からでもかまわないという人は、MGMグランドホテルの駐車場の上層階がよいかもしれない。ゴルフ練習場のネットなど目障りな物も視界に入ってしまうが、Sphere のほぼ全景を見ることができる。
Sphere の後方にストラットタワー(旧名:ストラトスフィアタワー)の上部が重なるような位置から撮影すると、なにやらモスクのような写真になるのでおもしろい。
なお望遠撮影できるカメラ以外では良い写真が撮れない可能性があるので、それだけはあらかじめ了解しておく必要がある。
【少額の出費ならOKの人】
ストリップ大通りの東側を平行に走るモノレールに乗ればかなり至近距離から Sphere を見ることができる。片道の乗車券は6ドル。
ただし肉眼で見るには最高の環境ではあるが、写真撮影にはまったく向いていないので要注意。
というのも、このモノレールは揺れが激しく、夕方以降の暗い環境ではシャッタースピードが遅くなりがちで手ブレが避けられないからだ。シャッタースピードや感度の設定、そして手ブレ防止機能などそれなりの準備をしてから撮影に臨みたい。
(終点駅などで下車せずに反対路線に乗って戻れば片道乗車券で問題なし)
【50ドル程度までならOKの人】
巨大観覧車「ハイローラー」に乗ればさまざまな高度から見ることができる。モノレールと違い揺れがまったく無いので手ブレの心配もない。
乗車料金は時間帯や曜日などによって多少異なるが、50ドルまで覚悟しておけば十分なはず(表示されている料金に手数料などが加算されたりする)。
注意すべきことは乗るタイミング。明るすぎず暗すぎない日没後15分程度の時間帯に最高点に達するようなタイミングで乗車するようにしたい。
ちなみに1周30分なので乗車してから最高点に到達するまでの所要時間は15分。
搭乗施設内に入ってから観覧車に乗るまでの過程の混雑状況がわからないので少し早めに入場してトイレやドリンクバーなどがある途中のラウンジで時間調整するとよい。
カップルで乗ることが多い日本の観覧車とは異なり 10人程度で乗る大型のキャビンだが、窓際の場所の確保の争奪戦などにはならないので安心してかまわない。(窓のサイズが十分すぎるほど大きいので)
【数百ドル払う覚悟がある人】
Sphere の位置に対して理想的なポジションにあるホテルに宿泊するのがベスト。
そのホテルはベネチアン、パラッツオ、ウィンの三択。ちなみにこの3つのホテルはラスベガスでも屈指の高級ホテルとなっており、曜日などにもよるが1泊数百ドル払う覚悟が必要だ。
重要なことは部屋の位置。チェックインの際に東側の部屋の中層階の部屋をアサインしてもらうことを忘れずに。
高層階からだと Sphere を真上から見下ろす角度になってしまい、低層階はコンベンションセンター、空調施設、ウィンの従業員用の駐車場などが視界を妨げることになる。
【番外編】
ラスベガスを何度も訪れている人ならば思いつきそうなのが各ホテルの駐車場だろう。しかし残念ながら視界の途中に障害物があったりして条件が良い駐車場はほとんどない。
前述の MGM の駐車場はかなり条件が良いほうで、たとえばプラネットハリウッド、パリス、トレジャーアイランドなどの駐車場は MGM よりも Sphere に近いのでよく見えそうだが、まったくダメなので行かないほうがよい。
そんな中、ハラーズの駐車場からは距離的にも角度的にも絶好の場所と言えるが(3枚下の写真)、残念ながら従業員用の駐車場なので従業員の知人などと同伴とかでなければ一般の人はアクセスできない。
従業員用ではない一般向けの駐車場として一番まともな角度から Sphere を見ることができるのはアンコールホテルの駐車場と思われるが、宿泊客やカジノ利用者などのための駐車場なので Sphere 見るためだけの利用は遠慮すべきだろう。
【レンタカー族のためのスポット】
ついでにレンタカー族などのために補足しておきたい。
すでに書いてきたとおり Sphere はまだ完成していないが、点灯を開始してから一ヶ月以上が経過した今、早くもレンタカー族などにとって定番となっている場所がある。
それは Sphere のすぐ東側にある Manhattan Street という道路。
この道路は現時点では通り抜けする車両がほとんどないため路上駐車が可能なことと、少し高くなった土手などから撮影しやすいため毎晩のように多くの車両で賑わっているが、たぶん今後警察などが何らかの進入規制をすると思われるので、いつまで利用できるかはわからない。
Sphere が完全に完成し、実際にコンサートなどに利用されるようになったら(特にイベント開催日は)、この Manhattan Street は自由に進入できなくなることは間違いないだろう。
ちなみにその気になる開業日、つまりこけら落としの日は、9月29日に開催されるアイルランドのロックバンドU2のコンサートになる予定。
どの場所から Sphere を見るにせよ、周囲の者やその施設に対して迷惑にならないよう常識やマナーをわきまえながら見るようにして頂きたい。