昨日のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はめでたく日本の感動的な優勝で幕を閉じた。
ただ単に試合に勝っただけではなく、準決勝のメキシコ戦も決勝のアメリカ戦も最後の最後までドラマのような劇的な内容だっただけに我々日本人としては大いに盛り上がることができた。
優勝した当日に新聞社から号外が発行されるなど日本での注目度は半端ではなく、各メディアではこのあと数日はWBCの話題で持ち切りになるに違いない。
戦争、強盗、物価高騰など暗い話題が多いなか、久しぶりの国民的規模の超明るいニュースといってよいのではないか。
さてその一方で、アメリカでのWBCに対する無関心ぶりや知名度の低さがメディア外でときどき話題になったりすることもある。
それの真偽はこのあとの写真などから読者に判断して頂くとして、日本のメディアがそのことを真剣に取り上げることはほとんどないように見受けられる。
それは当然だろう。試合中継の視聴率の確保や、開催期間中のバラエティー番組などにおいてはWBC話題で番組進行ができればネタ探しなど番組制作に苦労することもないわけで、せっかく盛り上がっているWBCに水を差すようなアメリカの無関心ぶりをわざわざ報道する必要性はまったくないからだ。
ちなみに憲法第21条にある言論や表現の自由により「報道の自由」も保障されていることから「報道しない自由」もメディアの権利として認められているわけで、「国民の知る権利」などが騒がれていても報道したくないことは無理して報道する必要はない。
参考までに先週イギリスの国営BBC放送がジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川氏による未成年者に対する性加害について世界に向けて大々的に発信したが、そのようにBBCが報道するのも自由だし、そのBBCの行動を日本のメディアが黙殺スルーして報道しないのも自由だ。
同様に話をWBCに戻すと、日本のメディアがWBCを大きく盛り上げて報道するのも自由だし、アメリカのメディアがWBCをどのように報道するかも自由。実際のところ、あまり大きくは報道されていない。
さて、ではどの程度アメリカの国民やメディアはWBCに無関心なのか。どの程度WBCは知名度が低いのか。
それは無関心や知名度のレベルの定義、つまり国民の何パーセントが知っていれば知名度が高い低いといった尺度のようなものが決まっていない限り簡単に論じることはできない。
したがってここでは絶対的な尺度としての知名度の高い低いを語ることは無理だが、相対的な変化としてWBCの人気や知名度が少しずつではあるが上昇してきていることは間違いないだろう。
2006年に第1回が始まったWBCの初期のころは、レギュラーシーズンの試合のほうを重要視してか、もしくはチーム側が参加を奨励しなかったのか、メジャーリーグのスター選手はほとんど出場しなかったが、今回の大会では様相が違った。
各国のチームにスター選手が勢ぞろいしており、そのことからもWBCの人気や注目度が相対的に高まってきていることがうかがえる。
さてここで読者にとって最も興味があるのは、現在のWBCの人気や注目度の絶対的な度合いだろう。
それをある程度推測できるのが、各試合を放送するテレビ局の顔ぶれや新聞メディアなどの報道ぶりということになるのではないか。
今回のWBCの各試合を放送したのは、日本の地上波民放キー局のような存在の3大ネットワーク ABC、CBS、NBC ではなく、放送権を持っていたFOX系列のケーブル局 FS1 と FS2。
あとはスポーツ専門チャンネルの ESPNがニュースなどで取り上げていた程度だった。
新聞に関しては日本の優勝が決定した翌朝 2023年3月22日付けの2紙を調べてみた。
以下がアメリカを代表する全国紙 USA TODAY と、当地ラスベガスで最大の発行部数を誇る Las Vegas Review Jounal (以下 LVRJ)のそれぞれのスポーツ欄だ。
両紙ともネット版が存在しているが、紙面のスペースの割り振りでWBCへの思い入れの大きさなどがわかるのであえて紙版で調べてみた。
さてこの現実をどのように解釈するべきか。アメリカでWBCはまったく人気がないのか、それとも人気が出てきているのか。その判断は読者に委ねることとして、今週の記事を終わりとしたい。
(なおこの記事はあくまでも日本のメディアが報道しないアメリカの現状を客観的に伝えることが目的であり、日本の優勝という大変めでたい快挙に水を差すつもりで書いているわけではない)
以上が USA TODAY と LVRJ の WBC に対する扱いの現実だ。
USA TODAY では、決勝戦の結果が時間的に間に合わなかったことが理由であったとしても、日本対メキシコの準決勝の結果はアメリカと対戦する相手が決まる重要な試合だったはずで、小さくスコアだけの扱いとはあまりにも寂しい。
決勝戦で自国アメリカと戦う対戦相手(日本かメキシコ)の準決勝での戦いぶりに興味がある読者はいないということなのか。
スター選手が多く参加した今大会がこの程度の扱いだと WBCそのものの今後の存続が心配になってきてしまう。次回大会からはもう少し各メディアが真剣に報道してくれることを願うばかりだ。
コメント(6件)
私のニューヨークの野球好きの友人に問い合わせたところ テレビではケーブルテレビで放映
新聞はほとんど出てない。ニュースにもなってない話題にもなってないのがアメリカの現実と言ってました。WBCはアメリカ国民に浸透するまでは
時間のかかるイベントと思います。
名古屋在住です。
少し前のラスベガス・ニュースによると、大全さん、WBC的中したようですね。おめでとうございます。
私も当たりました!2月末にウェストゲートホテルで挑戦しました。
8月にラスベガスに行くので、そこで換金します。
換金期間が365日に延びたのがホントに嬉しいです。
いつも楽しい記事をありがとうございます、
ちなみにもし、単純に日本優勝に賭けてたら、配当はどれくらいだったのでしょうか?(^^;
LA在住ベガス好き-賭けてなくて後悔中さま
私が賭けたときは、+275でした。
これは日本の競馬っぽくいうと2.75倍なので、仮に100ドル賭けたとすると275ドルですが、
賭けた100ドルも返ってきますので、375ドルになります。
2006年第一回WBCはスター選手どころかレジェンドクラスが大勢出ています。もしくは前年2005年の成績が素晴らしい選手が出ています。むしろ今回より上です。嘘書いちゃだめです。
WBCの決勝については、Wall Street Journalにびっくりするくらい情熱的な記事が載っていましたね
WBCで大いに興奮 忘れていた野球の醍醐味
https://jp.wsj.com/articles/im-excited-to-watch-baseball-what-is-wrong-with-me-194301f3