サマリン地区とグリーンバレー地区、ラスベガスに住むならどっち?

グリーンバレー地区の中心エリアを南北に走る Green Valley Parkway の標識。(筆者撮影、以下同様)

グリーンバレー地区の中心エリアを南北に走る Green Valley Parkway の標識。(筆者撮影、以下同様)

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 たまたまこの1ヶ月ほどの間に在米の読者から偶然同じような内容の問い合わせメールを2件いただいた。
 1件はホノルルから、もう1件はペンシルベニア州に在住の読者からで、「ラスベガスへの引っ越しを検討しているが、どのエリアがおすすめか? 日本人はどのへんに住んでいるのか?」といった内容だった。

 どちらの質問者にもすでにメールで返信させて頂いているが、この問い合わせを機会に当地で不動産業を営む知人からいろいろな情報や知識を得たので、今週はラスベガスの住宅コミュニティーについて触れてみたい。
 このサイトの読者はラスベガスフリークが多いようなので、当地への移住を考えている人は参考にして頂ければ幸いだ。

 他のアメリカの都市と同様、ラスベガスにも犯罪発生率が高いエリアとそうでないエリアがある。
 また当たり前のことではあるが、不動産価格(買い取りも賃貸も含めて)の高い安い、人気があるかどうかなど、エリアによってハッキリとした違いがあるのも他の都市と同様だ。
 つまり日本国内のような、駅や繁華街から離れるに従ってだんだん安くなるといった単純な構図ではない。

 そのような環境の中でベガス在住の日本人の多くはどのような場所に住んでいるのか。
 もちろん日本人といっても経済的に余裕がある人ない人さまざまなのであくまでも一般論ではあるが、やはり日本人の多くはたとえ安くても治安が悪い場所は避ける傾向にあり、一般的なアメリカ人たちのアベレージから比べると総じて安全かつ人気のエリアに住んでいるように見受けられる。人気のエリアは住宅価格も家賃も高くなりがちであることは言うまでもない。

高速道路 Summerlin Parkway への出口を示す標識。

高速道路 Summerlin Parkway への出口を示す標識。

 では人気のエリアとはどこで、これからラスベガスに移住する場合、どこを候補に検討するのが一般的なのか。
 具体的な場所としての結論から言ってしまえば、サマリン(サマーリンと表記されることも多い。スペルは Summerlin)とグリーンバレーGreen Valley)の二択といってよいのではないか。
 もちろんこの2つのコミュニティー以外にもサザンハイランド、アリアンテなど人気のエリアはいくつかあるので、「勝手に決めつけるな! オレが住んでいる場所もいいぞ!」との声が聞こえてきそうだが、話を単純化するためにサマリンとグリーンバレーという2大コミュニティーの対比という形で話を進めさせて頂きたい。

 サマリンもグリーンバレーも地図で探しても見つからないかもしれない。どちらも郵便などで使われる住所表記としての市町村名などではなく、デベロッパーが命名したコミュニティー名だからだ。
 それでも広く定着している名称であることは間違いなく地元民でこのコミュニティーの名前を知らない者はほとんどいないだろう。

 位置としては、サマリンはラスベガスの中心街(巨大カジノホテルが建ち並ぶストリップ地区)から西北西の方向に直線距離で15~20km ほどのエリア、グリーンバレーは同様に中心街から南東方向に10~15km ほどのエリアだ。

サマリン地区は総じて整然と整備されており、住宅街の道路の交通量は少ない。

サマリン地区は総じて整然と整備されており、住宅街の道路の交通量は少ない。

 どちらも広大な空き地に人工的に作られたベッドタウンで、昔から自然発生的に形成されたコミュニティーではない。
 デベロッパーが土地を取得した時期はかなり古いようだが、実際に開発が活発に動きだしたのは30年ほど前からだ。
 今ではほぼ完成に近づいているようにも見えるが、どちらのエリアにおいても住宅需要に応じて追加的な開発が行われたりしているという意味では現在進行系の新興住宅地といってもよいのかもしれない。

グリーンバレー地区の交差点でしばしば散見されるコミュニティーを示す標識。

グリーンバレー地区の交差点でしばしば散見されるコミュニティーを示す標識。

 余談になるが、デベロッパーといえばサマリンを開発したのは知る人ぞ知る大物実業家ハワード・ヒューズ氏、グリーンバレーはラスベガスの有力紙 Las Vegas SUN を発行している地元メディア界の大御所グリーンスパン社が関わっている。

グリーンバレー地区の交差点。

グリーンバレー地区の交差点。

 さて前置きが長くなってしまったが、これから当地に引っ越しを考えている人たちにとって気になるのはどちらの地区のほうがよいのかということになるだろう。
 その答えは単純ではなくライフスタイルによって異なってくるはずなので、以下にそれぞれの地区の長所をまとめてみた。

【サマリン地区の長所】

標高が高い:
 サマリンは標高800~900メートル、グリーンバレーは500~700メートルのエリアに広がる住宅地。
 「たったそれだけの違い?」と思われるかもしれないが、夏期の猛暑が厳しいラスベガスにおいてこの差はそれなりに体感できるレベルで、明らかにサマリンのほうが涼しい。もちろん冬期の気温はサマリンのほうが低いが、当地での生活においては冬の寒さよりも夏の暑さのほうが気になるのでこの高度差はサマリンの利点といってよいだろう。

◎ 中心街の西に位置している:
 ラスベガスに限らず地球上の多くの地域では西から東に風が吹く。したがって中心街の空気がサマリン側に流れてくることは少ない。
 サマリン地区のすぐ西側は砂漠地帯のため、西からの風による砂塵のようなものが心配されるが、それに悩まされるほどの悪天候はそれほど多くない。

◎ 街並みがきれい:
 本格的な開発が始まった時期がグリーンバレーよりもやや新しいことに起因しているのか、街並み全体が総じて美しい。

◎ 学校区のレベルが高い:
 細かい区分としての例外はあるかもしれないが、一般論として学校区のレベルはグリーンバレーよりもやや高いとされている。

◎ モールの規模が大きい:
 どこの都市にも存在するような一般的なショッピングモール以外に、両コミュニティーの中に独自のモールもあるが、サマリン地区の「Downtown Summerlin」のほうがグリーンバレー地区の「District at Green Valley Ranch」よりも規模が大きく店舗数的に利便性が高い。

◎ 地元民カジノの規模が大きい:
 観光客でにぎわうストリップ地区やダウンタウン地区のカジノとは別に、地元民向けのカジノがサマリン地区にもグリーンバレー地区にもいくつか存在しているが、その中で中心的な存在となっているサマリン地区のカジノ「Red Rock」とグリーンバレー地区の「Green Valley Ranch」を比べると、前者のほうが規模が大きくて立派。
(Green Valley Ranch がやや小ぶりになっているのは、建設時に地元民が住宅街の景観が損なわれるとのことで高さ制限やネオンサインの制限をしたため)
 ちなみにカジノが立派かどうかは住民にとって必ずしも良いこととは限らないが、地元民向けカジノ内にはギャンブル以外のエンターテイメント施設やレストランなども充実しているので非ギャンブラーにも利用価値がある。

【グリーンバレー地区の長所】

◎ 空港に近い:
 空港をほとんど利用しない人にとってはどうでもよいことかもしれないが、空港への近さはグリーンバレー地区の最大級のメリットといってよいだろう。飛行機の騒音もまったく気にならない。

◎ 中心街へのアクセスが良い:
 直線距離としてはどちらの地区からでも大差ないが、高速道路の位置関係でストリップ地区の繁華街へのアクセスはグリーンバレー地区からのほうが所要時間が少なくて便利。サマリン地区からの場合、南へ大きく迂回してから北上する形での走行になりかなり時間を要する。

◎ チャイナタウンへのアクセスも良い:
 大多数の日本人にとって和食やアジア系の食事は欠かせない。小規模な日系のスーパーであれば広範囲に点在しているが、アジア系の食材をたくさん扱う大規模なスーパーやアジア系のレストランはチャイナタウン地区に集中。そこへのアクセスはグリーンバレーにややアドバンテージがある。
 直線距離としてはサマリン地区からのほうがチャイナタウンに近かったりもするが、位置関係で高速道路を使いにくいため一般道で行くことになりがちで、高速道路を有効利用できるグリーンバレー地区よりも時間を要することが多い。

◎ 中心街の東に位置している:
 アメリカ人の間ではかなり知られている共通概念だが、どこの都市においても街の中心街(勤務先)よりも東側に住んだほうが通勤が快適。西側に住むと出勤時は朝日が、そして帰宅時は夕日が眩しくて運転しづらいばかりか事故の発生率も多いとされているからだ。特に春分や秋分の時期はこの問題が顕著化しやすい(道路がきれいに東西南北に配置されているアメリカの多くの都市では朝日や夕日が水平線近くから直接視界に入りやすくなるので)。日本と異なり車通勤が当たり前のアメリカならではの事情として知っておいて損はないだろう。

◎ 陸路でのロサンゼルスに近い:
 ラスベガスの住民がどの程度の頻度でロサンゼルスに行くかどうかは人によって異なるだろうが、近隣の大都市ということで友人や知人がロサンゼルス地区に住んでいるということも少なくないはず。車でロサンゼルスに向かう際はセントローズパークウェイ(146号線)で高速15号線にショートカット的にアクセスできるグリーンバレー地区のほうが所要時間が短くて済む。

◎ 不動産価格がやや安い:
 不動産を売る際のことを考えると安いことが必ずしもよいとは限らないが、これから取得する人や賃貸アパートに住む場合のことを考えると安いことはメリットだろう。
 一般論として両地区の不動産価格の差はこれまでサマリン地区のほうがやや高い程度だったが、コロナ以降、在宅勤務が広く定着してきたことにより通勤の必要性が少なくなってきたことが原因なのか、両地区の価格差は開く傾向にある。
 専門家によると同じ築年数で同じ広さの住宅の価格差はグリーンバレー地区のほうが2割程度は安いようだ。(もちろん例外もありグリーンバレー地区にも飛び抜けて高いエリアはあるが)

 以上のようにグリーンバレー地区のメリットは空港、中心街、チャイナタウンなどアクセスの利便性に集中している。逆に考えると日ごろあまり移動する必要がない人にとっては重要な要素ではない。
 したがって両地区への移住を検討する際の要点を単純にまとめると、「アクティブな現役世代、特に空港を頻繁に利用する人にとってはグリーンバレー地区が断然便利で、リタイヤ組、子供を持つ家庭、在宅勤務、自営業者などはサマリン地区のほうが便利と思われる」といえるのではないか。
 もちろんこれには異論があるだろうし、アクティブな世代といってもその生活形態はさまざまなので、あくまでも参考程度にして頂ければ幸いだ。

 どちらの地区に住むにせよ、ラスベガスの住環境は多くの人たちから高く評価されており、その証拠として実際に人口が常に増え続けている。
 評価されている大きな要因は街の規模が大きすぎず小さすぎず適度のサイズなため、生活に必要な施設やインフラが十分に整っているわりにはロサンゼルスなどの大都市に見られる交通渋滞やスモッグが少ないこと。そして何より自然環境だろう。

 ロサンゼルスやサンフランシスコとは異なり地震のリスクがほとんどないばかりか、アメリカ南東部や中部などのようなハリケーン竜巻に見舞われることもなく、シカゴ周辺など五大湖エリアのような極寒の季節もない。
 夏の猛暑が指摘されることはあるものの、湿気が低くカラリと乾燥しているため気温ほどは蒸し暑くなく、さらに1年中ほぼ晴天という恵まれた気候の都市はアメリカ広しといえどもそう多くはないはずだ。

 最後に余談になるがゴルフコースに関して。両地区ともに近隣エリアにゴルフコースは複数存在しているのでどちらもゴルフライフにおいては大差ない。
 具体的なコース名としてはパブリックコースだけでもサマリン地区にはベアーズベスト、シエナ、レッドロック、アロヨ、エンゼルパーク、ハイランドフォールズなど、そしてグリーンバレー地区とその近隣地区にはリオセコ、レガシー、ワイルドホース、レヴェール、ラスベガスナショナル、スタリオンマウンテン、ボールダークリークなど、どちらの地区にも車で20分程度の範囲内に多数のコースがあり、なおかつ交通渋滞がほとんどないのでゴルフ好きにとっては非常に恵まれた環境にある。

 というわけで長くなってしまったが、これまで住み続けた街にそろそろ飽きてきて移転を考えている在米の読者の皆さん、ラスベガスを検討してみる価値はあるかもしれませんよ!

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コメント(3件)

  1. pidera より:

    以前、現地ツアーでお世話になってた方が、グリーンバレーの方に住んでいて
    2回程お邪魔した事があります。
    コースから外れているから飛行機の音も全然聞こえませんでしたね。
    私もLASに住んでみたいと思いました。

  2. 負ギャンブラー より:

    ゴルフ旅行で両地区ゴルフ場と住宅見させてもらいましたが、サマリンの方は綺麗で高級な感じがしました。

  3. どっちも より:

    自分はスプリングバレーに住み、ヘンダーソンのグリーンバレーと、サマリン地区にコンドミニアムを所有して賃貸しています。両方とも家賃を高く設定できる地域です。ただ、サマリンはHOAが他地区の1.5倍するのには驚きました。お子さんがいるなら両地区が良いでしょうが、お子さんなしなら家賃の高い両地区に住む必要は無いと思います。

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