一般的にアメリカ(カナダのチームも含む)の4大プロスポーツといえば、野球、バスケットボール、アメリカンフットボール、アイスホッケーということになっており、以下がその各リーグだ。
(アルファベット順に書き出しただけで人気の順番とは関係ない)
MLB: Major League Baseball
NBA: National Basketball Association
NFL: National Football League
NHL: National Hockey League
今週は、これら4大スポーツのどれが一番人気なのか、その人気順を当地ラスベガスならではの方法で検証してみたい。
検証の前にまずは参考情報として直近シーズンにおける各リーグの年間試合数(プレーオフや優勝決定戦などを除く)とチーム数を書き出してみると以下のようになる。
MLB: 162試合 30チーム
NBA: 82試合 30チーム
NFL: 17試合 32チーム
NHL: 82試合 32チーム
NFL だけが突出して試合数が少ないことがわかるが、選手の疲労度やケガなどに配慮した結果このような試合数になっているだけで、試合数が少ないからといって人気がないというわけではない。
そもそもスポーツの「人気」とは何か。その定義はむずかしい。
観客動員数なのか入場チケットの販売総額なのか、はたまたテレビやネットなどでの放映回数や視聴率なのか。
さらに選手の年俸の総額などもリーグ全体の人気と相関関係がありそうだし、プロ選手に憧れてそのスポーツをやり始める子供たちの数なども人気と無関係ではないだろう。
それら定義を決めたところで調査対象の地域も決めなければ意味がない。
たとえば「日本」に限定するならば大谷選手が活躍している MLB が1番人気であることに疑いの余地はなく、多くの日本人が MLB のテレビ中継を見たり大谷選手の活躍を報じるニュースに一喜一憂しているはずだ。
その一方で NFL や NHL は日本ではテレビ中継すらほとんどなく、ごく一部のファン以外、関心は低いと思われる。NBA は八村選手に関する報道などで人気上昇中といったところか。
さて前置きが長くなってしまったが、地域はあくまでも北米に限定することにしてその人気を検証してみたい。
といっても上記の通り人気を測る要素は複数あり簡単に決められるものではない。
ではどうするべきか。実は当地ラスベガスには完璧ではないものの、そこそこ客観的に人気度を比較できるデータがある。スポーツブックだ。
スポーツブックとは、スポーツの試合結果に金銭を賭けることや、そのためのカジノ内の施設と考えればよい。
ラスベガスが所属するネバダ州のカジノ業界を監視している当局が、州内の各カジノの売上などを逐一集計しており、スポーツの種類ごとに集計された利益のデータも管理している。その数年分をこのページの下に列挙してみた。
そのデータを検証することで各スポーツの人気度を比較してみようというわけだが、少々注意も必要なので以下のことはあらかじめ理解しておいて頂きたい。
◎ 未成年者のギャンブル行為は禁じられているので、子供たちからの人気度などは反映されていない。
◎ 当局が集計した以下の数値は各スポーツに賭けられた金額(売上)ではなく利益。したがって、ハンデの設定や試合結果などによってはカジノ側の利益率が大きく変動することがあり、売上と利益が必ずしも比例関係にあるとは限らない。
◎ 各スポーツ全体に対する賭けのデータであり、各リーグに対するものではない。つまり、たとえば「バスケットボール」に対する集計値には NBA だけでなく、学生バスケに対する数値も含まれている。その結果、バスケとフットボールはカレッジリーグの人気が高いため、数値(利益)が大きくなりやすい傾向にある。
◎ 2019年までは「アイスホッケー」というカテゴリーでの集計はしていなかったため、NHL の数値は「その他のスポーツ」(Other)に含まれてしまっている。ちなみに「その他のスポーツ」にはボクシング、ゴルフ、テニス、カーレースなどが含まれておりその範囲は広い。2020年以降は「アイスホッケー」というカテゴリーが追加された。
◎ 2020年はコロナの影響でカジノが営業していなかった時期があり、その時期がレギュラーシーズンと重なったスポーツは集計値が少なく、また2021年も各スポーツのシーズンが変則的だったりしたため、2020年や2021年は通常時の傾向とは異る可能性がある。
◎ 2022年の数値は8月までのものであり、野球のシーズンはかなりカバーされているものの、その他のスポーツはシーズン全体がカバーされているわけではない。
◎ 金額の単位は 1000ドル。
【2015年の利益】
Baseball: $39,392
Basketball:$72,976
Football: $82,546
Other: $20,890
【2016年の利益】
Baseball: $32,204
Basketball:$66,632
Football: $91,243
Other : $18,648
【2017年の利益】
Baseball: $36,815
Basketball:$87,431
Football: $76,896
Other: $32,325
【2018年の利益】
Baseball: $ 47,133
Basketball:$ 99,602
Football: $102,458
Other: $ 28,907
【2019年の利益】
Baseball: $ 57,200
Basketball:$ 94,472
Football: $122,436
Other: $ 40,090
【2020年の利益】
Baseball: $ 22,126
Basketball:$ 56,303
Football: $127,715
Hockey: $ 9,722
【2021年の利益】
Baseball: $ 68,327
Basketball:$147,817
Football: $153,714
Hockey: $ 16,373
【2022年1月から8月までの利益】
Baseball: $ 75,362
Basketball:$122,748
Football: $147,287
Hockey: $ 17,718
さてこの数字をどう見るか。バスケやフットボールと比べるとカレッジ競技の注目度が低いとはいえ、MLBの試合数が多いわりには 野球の不人気ぶりが見て取れる。
逆に試合数が非常に少ないことを考慮するとフットボールの人気はかなり高いと見てよいだろう。
アイスホッケーのファンの中心はカナダであり、ネバダ州でのカジノ利用者の大半はアメリカ人であることを考えるとアイスホッケーの数値が低いのはやむを得ないといったところか。
最終結論としては、NFL、NBA、MLB、NHL の順に人気が高いと推測できる。
MLB の3位という順位は、野球が大好きな日本人にとっては意外な結果だったかもしれないが、歴史の長さで敬意を表することとして今週の記事を終わりとしたい。
◎ MLB: 1876年から
◎ NBA: 1946年から
◎ NFL: 1920年から
◎ NHL: 1917年から
(どのリーグも初期の時期は現在の呼称とは異なっていたが、リーグの原型がスタートした時期は上記の通り。なおプロ野球チームは1860年代から存在していたが、初期の記録は不明な部分も多いため、ナショナルリーグが発足した1876年を最初の年とした)
コメント(1件)
日本と違いアメリカでは大雑把に言うと、ブルカラーに人気のスポーツが野球で、ホワイトカラーに人気なのがフットボールなので、必然的に収入も大きく違うためスポーツブッキングに賭けられる金額も違うということがこれらの数字に影響していると思います。