「3度目の正直」という言葉があるが、このホテルに関しては4度目か5度目になるのかもしれない。
今週は、着工してから早くも15年。やっと建設工事が再開されたものの、いまだにその開業には不安が残る超高層カジノホテルの現状を写真を中心にレポートしてみたい。
計画、着工、中断、頓挫、倒産、そして買収、売却を何度も繰り返し、さらにオーナー企業のみならずホテル名までもが変わるなど、さまざまな話題を提供し続けながら今日に至っているそのホテルの現在の名前は「Fontainebleau」(フォンテンブロー)。
場所は北ストリップ地区で、地上 224m、67階、開業すればラスベガスで一番高いカジノホテルとなる。
外観だけは10年以上も前にほぼ完成しているものの、内部やカジノ、劇場、駐車場といった付随施設は未完成。
その高さゆえにラスベガスの摩天楼の中でもひときわ目立つ存在ではあるが、ここ数年いつのまにか話題になることが少なくなり、もはやその存在のみならず、名称変更のためか名前すらも忘れ去られていた。
ところが最近になって注目度が急上昇。その最大の理由は工事が再開され現場で動きが見られるようになってきたことに加え、名称が最初の Fontainebleau に戻ったことも大きい。実際に外観の目立つ位置に FB のロゴが付けられており、今回ばかりは開業への本気度がうかがえる。
これまでの経緯を、細かいことは省略して大きな変化だけを簡単に説明すると、マイアミビーチのリゾート Fontainebleau のオーナーのジェフ・ソファー氏がその姉妹物件としてラスベガス版のリゾートを計画し、2007年に北ストリップ地区で着工。
30億ドルを超える大きなプロジェクトではあったが、いわゆるリーマンショックに見舞われ計画は 2009年に頓挫。その時点ですでに外観はほぼ完成していたが、経営母体が倒産してしまったため、内装や付随施設の工事は完全にストップ。
2010年、その倒産物件をラスベガスでも広く知られる著名投資家のカール・アイカーン氏が約1.5億ドルという激安価格で買い取ることに。
しかしアイカーン氏は工事を再開することなく放置を続け、最終的には何もせずに雨ざらし状態のまま 2017年に買値の4倍に相当する約6億ドルで投資グループに売却。
その後しばらくその投資グループも特に大きな動きを見せなかったが、2020年、その投資グループの中心人物はホテル名を Fontainebleau から、自身の亡き息子の名前 Drew に変更し 2022年に開業すると発表。
さらにあの世界的なホテルグループ Marriott も開業後のホテル運営に関わることを発表するなど具体的な計画も示されたが、コロナ騒動の勃発により建設工事の再開は見合わせることになった。
そうこうしているうちに 2021年、突如そこに現れたのはなんとあのソファー氏。最初に Fontainebleau を計画した男だ。
ソファー氏はリーマンショックによる倒産で一度あきらめたこのプロジェクトを仲間の不動産投資会社などと手を組み買い戻すことに。実際に商談は成立し、名称を Fontainebleau に戻して 2023年末までに開業させると宣言。
実際に今年に入って工事を始める動きが見られるようになると、15年以上に及ぶプロジェクトがついに実現するのではないかと注目され始めた。
これまでの経緯はそんなところだが、業界関係者の中には実現を不安視する者も少なくない。
コロナの影響で大きく落ち込んだ客室需要が完全に戻ったわけではなく、しばらくは需給バランス的に採算を取ることがむずかしいと予想されるからだ。だとすると今後また工事が中断される可能性があると考えるべきなのかもしれない。
はたしてこのプロジェクトは実現するのか、それとも再び長い眠りにつくのか。現在の現場の様子を写真で紹介して今週のレポートを終わりとしたい。