コロナ騒動が始まって早くも2年。オミクロン株が落ちつけば、今度こそ普通の生活に戻れるのではないかといった専門家の話もあるようだが、まだまだ海外旅行は現実的ではない。
今週は、そんな状況下で苦しむ地元ラスベガスの旅行業界を応援するためのコラボレーション企画として、エイチ・アイ・エス の「クマ旅」を紹介してみたい。
自分の分身としてのクマが現地へ
コロナ騒動以降、自宅に居ながら世界各地を訪問できる新しい旅の形態「オンラインツアー」が何かと注目されている。
その一方で、「オンラインツアーは見て楽しめるけど、参加している気分になりにくい」、「オンラインじゃ写真も残らないし…」といった声があるのも事実。
たしかに CES(先日ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー業界のコンベンション)で披露されたようなホログラム装置(FaceTime の立体版のようなもの)などが普及しない限り、「自宅に居ながら自分自身が現地で記念撮影」なんてことはほぼ不可能。
でもあきらめるのはまだ早い。そんな不可能なことが、考えようによっては現実になるツアーがある。
「自分に代わって誰かに現地に行ってもらい、それをオンラインツアーにしたらどうか」との発想のもと、エイチ・アイ・エスが始めたのが通称「クマ旅」で、自分の分身としてのクマのぬいぐるみが自分の代わりに現地に行くツアーだ。
仮想空間の中でのツアーではない
「クマ旅? なんのこっちゃ」と思う読者も多いことだろう。「どうせ映像など仮想空間の中で行くツアーにちがいない」などと思うことなかれ。
実際にクマが運転手とガイドと一緒に本物の車輌に乗り、ラスベガスから数百キロ離れた目的地まで行って帰ってくる。つまり人間(申込者)にとってはオンラインツアーではあるが、自分の代理のクマにとっては正真正銘のリアルツアーというわけだ。
ちなみにオンラインツアーには千差万別いろいろあるが、一過性のイベントに近いものがほとんど。そんな中、この「クマ旅」は1年前からスタートし、コンスタントに毎月催行されているというから驚きだ。
参加者の満足度が高いことが継続できている理由と聞かされれば、体験しないわけにはいかない。さっそくラスベガス大全としても実際にこの「クマ旅」に参加してみた。
家族の一員となるクマに命名
まずエイチ・アイ・エスが用意したクマのぬいぐるみの色を選ぶところからこのツアーは始まる。色は、白、薄茶、こげ茶 の3種類。
色を決めたらそのクマに付ける名前も参加者が決める。その名前は大きな名札となってクマに付けられるので写真うつりという意味でビジュアル的に重要だが、命名自体は自分の本名でも、ニックネームでも何でもかまわない。
自分の分身と位置づけるのであれば自分の名前を付けるのが自然な流れだろうが、そのクマを受け取ったあと家族の一員として呼びたい名前が決まっているのであれば、それを使うのもありだろう。
(ツアー終了後、そのクマは実際にアメリカから日本まで申込者の元に郵便などで送られてくる)
グランドキャニオンまたはセドナ
色と名前を決めてそれを伝えれば、エイチ・アイ・エスが名札を付けてくれ、その瞬間に「自分の代わりに現地に行ってくれるクマ」の誕生となる。
あとは行き先の選択だが、このツアーの目的地は グランドキャニオン または セドナ の2ヶ所のみ。
オンラインツアーなのだからもっと幅広い選択肢があってもよさそうにも思えるが、クマが行くのはリアルツアー。旅行会社にとって厳しい昨今のビジネス環境を考えると、ラスベガスからの定番の人気観光地という意味でこの2ヶ所限定でもやむを得ないだろう。
グランドキャニオンもセドナも催行日は毎月あらかじめ決まっており自由に選ぶことは出来ないが、参加するのはあくまでもクマ。申込者がその日に拘束される必要はまったくない。
リアルツアーのあとオンラインツアー
リアルツアー当日のこまかい内容はネタバレになってしまうので避けるとして、クマがそのツアーから帰ってくると、後日おこなわれる報告会、つまり ZOOM による人間向けのオンラインツアーの日時と、それに参加するための ID やパスワードがメールで送られてくる。
その指定された日時に ZOOM にアクセスすると、クマと一緒に現地へ行ったツアーガイド、進行役、そしてあなたのクマが画面に映し出され、そこからいよいよ人間用のオンラインツアーが始まる。
そこで初めて自分の分身とのご対面ということになるわけだが、これがなかなか感動的。たかがぬいぐるみとはいえ、自分に代わって実際に遠方まで行ってくれたクマにはご苦労さんと言いたくなるような愛着が湧いてくるからなんとも不思議だ。
「リアルに参加している感」を体験
そんなオンラインツアーは早朝のラスベガスのカジノホテルの玄関前から始まる。その後、実際に道中で立ち寄った店やその歴史など、クマの写真と一緒に参加者自身も ZOOM 上で旅をすることに。
進行役やツアーガイドが従来のリアルツアーのときと同じようにいろいろ説明してくれるばかりか、ひんぱんに自分のクマが登場するので想像以上に「リアルに参加している感」を体験できること請け合いだ。
ちなみに所要時間は、クマが行ったリアルなツアーは朝から晩までの12時間を超える長時間ツアー、ZOOM によるオンラインツアーは約1時間。
大量の写真もダウンロード可能
ZOOM によるオンラインツアーのあと、さらに写真のアクセス・リンクも送られてくる。そこには ZOOMの中では紹介しきれなかった大量の写真が含まれており、好きなだけダウンロード可能というからありがたい。
スマホの待ち受け画面などにするのもよいし、大切な思い出としてフォトブックなどにするのもよいだろう。
そして 約2週間後(郵便事情などで多少前後することも)、ついに実際にグランドキャニオンやセドナに行ってくれたクマが手元にやって来る。あの絶景の岩の上に座っていたクマを手にしていると思うだけで、なんともいえない時空を超えた不思議な感動を覚えるはずだ。
決して安くはないが採算が心配
ここで気になってくるのはこのツアーの料金だろう。それはひとり、いやひとクマ $150。日本円にすると約17,000円といったところか。$20 前後で参加できるオンラインツアーが多い中(エイチ・アイ・エスでもその程度が普通)、かなり思い切った金額ではある。
とはいえリアルなグランドキャニオン1日観光ツアーに参加する場合の相場が$300以上であることを考えると、妥当かむしろ安いと言えるのかも知れない。
というのも、生身の人間であろうが、ぬいぐるみであろうが、行って帰ってくる手間や人件費、車輌代、ガソリン代などに大きな違いはないからだ。ランチ代こそ不要だが、ぬいぐるみの代金や日本への郵送費、さらにあれこれと土産が付くことを考えると、この $150で採算が取れているのか心配にもなってくる。
もちろんこの価格設定が高いか安いかは人それぞれだろうが、旅行ができないこの時期ならではの疑似体験としては十分すぎるほど楽しめ、そして何より、たとえぬいぐるみであっても一緒に旅行をしている雰囲気は一般のオンラインツアーとは一線を画すことだけは間違いない。
年齢・性別まったく気にする必要なし
参加を検討している読者にとって、料金と並び気になってくるのは参加者の年齢層や性別ではないか。しかしそのようなことはまったく気にする必要はない。
というのも、若い女性ばかりの中に高齢の男性が参加しようが、その逆であろうが、リアルツアーの車輌に同乗するのはクマだからだ。また後日おこなわれる ZOOM でのオンラインツアーの際に顔を出す必要もまったくない(もちろん出してもかまわないが)。
ちなみにエイチ・アイ・エスの担当者によると「クマ旅」へのこれまでの参加者は 30~40代の女性が比較的多いようだが、10歳未満や80歳以上の参加者も少なくないとのこと。これはコロナ前のリアルなグランドキャニオンやセドナのツアーの参加者の年齢分布に近いのではないか。
「コロナが落ち着いたら実際に行ってみたいので予習を兼ねて参加してみた」といったニーズもあるようで、実際にリアルなツアーの傾向と同様、セドナは女性層、グランドキャニオンはファミリー層の割合が多いらしい。いずれにせよ他の参加者の年令や性別はまったく関係ない。
卒業旅行から金婚式までニーズは多彩
ニーズといえば、聞くところによると参加理由は実に多彩とのこと。たとえば入院していて旅行ができない、高齢で体力的に無理といったコロナが終わっても旅行がむずかしい人たちもいれば、コロナで新婚旅行、結婚記念日、金婚式といった記念旅行をあきらめざるを得ないカップル、そしてそういった人たちへの家族からのサプライズ予約など、さまざまなニーズがあるようだ。
また今の時期だとコロナで卒業旅行に行けなくなってしまった学生の参加も増えると予想され、実際に昨年の実績として卒業旅行の参加者はかなり多かったとのこと。なお、卒業旅行であることを告げて申し込むと、卒業式の帽子が付いてくるようなので、その目的で参加する人は忘れずに。
また別プランでウエディングの衣装を着たカップルクマのハネムーン版(詳細は以下の申込みのリンクに)あるというから、さまざまな需要に応じてもらえそうだ。
最後に重要なこと。申込時に『ラスベガス大全を見た!』と伝えると、クマの郵送と一緒に記念ギフトも送られてくるとのことなので、ぜひ忘れないように。
この「クマ旅」の申込みは こちら まで。
以下はこのツアーの概要を説明する動画です。