ラスベガス郊外は全米で2番目に治安が良い安全な街

比較的安全とされるラスベガスの観光スポットの駐車場に掲示されている「車にはカギをかけ、カギを持って、荷物は隠せ」の注意書き。

比較的安全とされるラスベガスの観光スポットの駐車場に掲示されている「車にはカギをかけ、カギを持って、荷物は隠せ」の注意書き。

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 ここ数週間、幸いにも日本ではコロナ感染者が急減、そしてアメリカでも減少傾向にある。とはいえ日本からラスベガスへの旅行はまだ現実的ではない。
 実際にこのサイトもコロナ前に比べて相対的に在米の読者が多く、日本からの読者比率は確実に減っている。そのような事情から今週も一般の観光客には特に役に立ちそうもない話題になってしまうが、あらかじめご了承いただきたい。

 その話題とはずばり治安。日本からの観光客にとっても最大級の関心事のはずだが、今回の話題の対象はラスベガスのカジノホテルが並ぶ中心街ではなく、一般住民が住むヘンダーソン市の話。
 このヘンダーソン市はラスベガスのホテル街から南東方向に車でわずか15分ほどのエリア、つまりラスベガス国際空港(マッキャラン空港)を超えた先のあたりからさらに南東方向に伸びる住宅街で、地元の生活者にとってはラスベガスとヘンダーソンの違いや境界線などを意識するようなことはまずない。
 したがってこのエリアは連続した一続きの同じ生活圏であり、ヘンダーソンはラスベガスのベッドタウン的な行政区域と考えればよいだろう。

高速道路の標識。Henderson が空港方面にあることが見て取れる。

高速道路の標識。Henderson が空港方面にあることが見て取れる。

 そしてこのたび調査会社 AdvisorSmith が発表した統計によると、そのヘンダーソン市がなんとこの広大なアメリカ合衆国の中で2番目に安全な都市というから驚きだ。
 地元民としてはそのような実感はほとんどないが、その統計の信憑性はともかく不愉快な話ではないのでその安全都市ランキングを以下に書き出してみた。
 コロナで仕事が一時的に中断したことをきっかけに、転職したり転居を考えている人が多いと聞く。ラスベガスへの移住などを考えている読者がいたとしたら何らかの参考になるのではないか。

 今回の統計は都市の人口の規模に応じてスモール都市(10万人以下)、ミドル都市(10~30万人)、ラージ都市(30万人以上)の3つの部門に分かれており、人口約33万人のヘンダーソン市はラージ部門で全米第2位にランキングされた。そのラージ部門の安全都市ベスト20 (カッコ内は州名)は以下の通り。

1. Virginia Beach(バージニア)
2. Henderson(ネバダ)
3. El Paso(テキサス)
4. San Diego(カリフォルニア)
5. Honolulu(ハワイ)
6. Mesa(アリゾナ)
7. New York(ニューヨーク)
8. Santa Ana(カリフォルニア)
9. Anaheim(カリフォルニア)
10. Raleigh(ノースカロライナ)
11. San Jose(カリフォルニア)
12. Lexington(ケンタッキー)
13. Riverside(カリフォルニア)
14. Long Beach(カリフォルニア)
15. Boston(マサチューセッツ)
16. Fort Worth(テキサス)
17. Las Vegas(ネバダ)
18. Los Angeles(カリフォルニア)
19. Arlington(テキサス)
20. Sacramento(カリフォルニア)

 この結果を見て、「えぇー、ホノルルが?」とか「ニューヨークが安全なの?」などと思う読者がいるかもしれない。またロサンゼルス地区に土地勘がある者からすれば、その近郊都市の13位のリバーサイドや14位のロングビーチも「そんなに安全?」と意外に思うのではないか。

 そこで気になってくるのが今回の安全度を決めた基準や根拠だが、AdvisorSmith社によると人口1000人あたりの「Violent crimes」「Property crimes」を指数化したとのこと。
 ということは殺人や暴行などの暴力系の犯罪、そして空き巣や自動車泥棒などの窃盗系の犯罪などが統計の対象となっており、地震、竜巻、ハリケーンなどの天災交通事故の危険度などは含まれていないことになる。
 もともとアメリカは日本と比べると天災は少ないので、天災を含まないこの統計でも実際の生活者にとってのトータル的な身の危険度や安全度はそれなりに反映していると考えてよさそうだが、ヘンダーソンのみならずホノルルやニューヨークの読者もこのランキングを見て単純に喜ぶのは早いかもしれない。というのも各都市によって統計の条件や定義などが異なっている可能性があるからだ。

 犯罪が発生してもそれが警察などにレポートされなければ統計にカウントされない。レポートされるかどうかはその土地の環境などによってかなりばらつきがあると思われる。
 またレポートされても軽微の犯罪であれば警察が統計として残さないかもしれない。さらに統計として残しても起訴されるかどうかは別問題で、起訴の有無がこの統計でどのように扱われているかは不明だ。

 そもそも州や都市によって法律が異なるので犯罪の定義も統一されていない。たとえば「ステルシング」(日本語で表現するならば「捨てる寝具」ではなく「捨てる避妊具」。冗談はともかく詳しくは要検索)はカリフォルニア州では犯罪だが他州では犯罪ではない。
 また人口あたりの犯罪件数といっても、観光客など住民以外の来訪者が多い都市では統計の調整が必要だろう。
 以上のことからこの種のランキングは参考程度にとどめておくべきで一喜一憂するのもどうかと思うが、ヘンダーソンを含むラスベガス地区の住民や移住しようと思っている者にとって今回の全米2位はとりあえず嬉しい統計といってよいのではないか。

 蛇足ながら参考までに書いておくと、国をまたいだ都市別の犯罪統計などをときどき目にするが、それらはほとんど意味がないと考えたほうがよい。
 というのも国によって万引、自転車泥棒、家庭内暴力、脱税、汚職、売春、薬物、詐欺、金融犯罪、飲酒運転事故などをカウントしているかどうか基準が統一されていないからだ。また放火殺人などの重複犯罪を国によって1件とカウントする場合と2件とカウントする場合があるとも聞く。とにかく国を超えた犯罪統計は単純に比較することができないということを覚えておいて損はない。

 最後に再び話をアメリカに戻して、今回の順位の21位から最下位の59位までを以下に書き出し(30万人以上の都市は59しか存在しない)、今週の記事を終わりとしたい。

21. Colorado Springs(コロラド)
22. Bakersfield(カリフォルニア)
23. Fresono(カリフォルニア)
24. San Francisco(カリフォルニア)
25. Chicago(イリノイ)
26. Omaha(ネブラスカ)
27. Austin(テキサス)
28. Portland(オレゴン)
29. Columbus(オハイオ)
30. Phoenix(アリゾナ)
31. St.Paul(ミネソタ)
32. Tucson(アリゾナ)
33. Charlotte(ノースカロライナ)
34. San Antonio(テキサス)
35. Seattle(ワシントン)
36. Corpus Christi(テキサス)
37. Louisville(ケンタッキー)
38. Indianapolis(インディアナ)
39. Dallas(テキサス)
40. Denver(コロラド)
41. Washington(DC)
42. Cincinnati(オハイオ)
43. Oklahoma City(オクラホマ)
44. Stockton(カリフォルニア)
45. Aurora(コロラド)
46. Nashville(テネシー)
47. Minneapolis(ミネソタ)
48. Tulsa(オクラホマ)
49. Milwaukee(ウィスコンシン)
50. Houston(テキサス)
51. Baltimore(メリーランド)
52. Albuquerque(ニューメキシコ)
53. New Orleans(ルイジアナ)
54. Wichita(カンザス)
55. Oakland(カリフォルニア)
56. Cleveland(オハイオ)
57. Detroit(ミシガン)
58. Memphis(テネシー)
59. Kansas City(ミズーリ)

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