アメリカの宝くじ「MEGA MILLIONS」の次回の抽選日(米国時間2021年5月18日)の1等賞金の推定額が約4.7億ドル(約500億円)に膨れ上がっている。
今週は、その影響でここネバダ州とカリフォルニア州の州境に人が殺到しているという話と、そして過去記事でも紹介したことがあるが、1等的中時に受け取れる賞金額を少しでも高くする(期待値を高める)宝くじの買い方に関して書いてみたい。
1等が超高額になりやすい理由
アメリカではさまざまな地域で独自の宝くじ(番号選択式の宝くじ。いわゆるロト)がコンビニなどを通じて販売されている。その多くは各州が独自に運営するもので他州とは関係ないのが普通だ。
ところが MEGA MILLION などのように州を超えた広域で販売されているロトもある。そのようなロトの場合、販売枚数が多くなりがちであるばかりか 1等賞の的中確率が非常に低く設定されているため的中者が出ないことが多く、出ない場合は1等賞金が次回の抽選日に繰り越される仕組みになっていることから超高額になりやすい。
ネバダ州にはロトが無い
ちなみに MEGA MILLIONS を販売している州は全米 50州 のうちの 45州 と、ワシントンDC とバージン諸島。つまりほぼアメリカ全土で販売されているわけだが、なんとここラスベガスがあるネバダ州はその 45州に含まれていない。
理由はカジノ業界の保護であることはいうまでもないが、参考までに販売していない残りの4州は、地理的にアメリカ本土と切り離されているハワイ州とアラスカ州、南部アラバマ州、そしてモルモン教の総本山ともいえるユタ州となっている。
カリフォルニア州境に人が殺到
そのようなわけでラスベガスでは MEGA MILLIONS を買うことができない。買えないとなると買いたくなるのが人のさが。
ラスベガス市民にとっては身近な場所にカジノがたくさん存在しているが、カジノでは今回の500億円のような超高額は期待できないからか宝くじの需要は確実にあり、それがゆえに冒頭でふれたような「州境に人が殺到」という現象がときどき発生する。つまりラスベガス市民がとなりの州にロトを買いに行くというわけだ。
たった1軒だけの販売店
ネバダ州にとってのとなりの州とは、北東で接するユタ州、南東のアリゾナ州、西のカリフォルニア州ということになるが(オレゴン州とアイダホ州とも接しているが、ラスベガス市民にとってはあまりにも遠すぎるため論外)、ユタ州は前述のとおり販売しておらず、アリゾナ州はけっこう遠い。
結果的に車で30~40分で行けるカリフォルニア州ということになり、その州境の町 Primm は砂漠の中にポツリと存在している環境のため(寂れたアウトレットモールもあるが)ロトを販売している店は1軒しかない。
ラスベガスの都市圏の人口は約200万人。それだけの巨大市場に対してアクセス可能な販売店は事実上この1軒だけ。
そんな事情もあり、1等賞金が超高額になると連日長蛇の列ができ数時間待ちということも珍しくなく、先週から現在にかけてがまさにその状態にある。
なお、抽選日は毎週火曜日と金曜日の夜なので、日本時間の水曜日もしくは土曜日の昼頃には的中者が出てこの騒動が終わっているかもしれない。
買い方は簡単、QP でも OK
さてここからは買い方などについて。買い方は簡単で、店内に用意されている専用のカードで好きな番号を選び(番号を塗りつぶす)、レジにて現金と一緒に提出するだけだ。
ちなみに現在は大混雑している関係で、店内に入る直前の屋外にもカードが置かれているので(写真)、それを取って並びながら事前に番号を塗りつぶしたり準備しておくことも可能だ。
番号の選択は 1~70 までの番号の中から 5つ、そしてさらに Gold Mega Ball と称される 1~25 までの番号の中から 1つ選ぶ。自分で選ぶのが面倒という場合はコンピューターにランダムに選ばせる「クイックピック」(カード内に QP と表示されているところを塗りつぶす)にしてもよい。
番号を選び間違えるなど書き損じた場合は VOID を塗りつぶして無効にする。もちろん破り捨てて新たに書き直してもかまわない。
1枚2ドル、10回分の購入も可
1枚のカードで 5枚まで買うことができ、さらに次回以降の抽選にも同じ番号で参加したい場合は、カードの最上部にある「ADVANCE PLAY」の部分を記入することにより、最長 10回先の抽選日までのぶんを買うことができる。料金はロト1枚につき2ドル。
いくつかの州ではオンラインでも購入できるようになっているが、このコンビニがあるカリフォルニア州ではまだオンラインによる販売を開始していないばかりか、仮に開始されたとしてもその州内の住民であることが条件なのでラスベガス市民はこのコンビニまで出向くしかない。
1等の的中確率は3億分の1
1枚だけ買って全部の番号が的中する1等賞(通称、ジャックポット)の確率は中学校の数学レベル(順列・組み合わせ)で簡単に計算ができ、70 の中から 5つ選ぶ組み合わせと、25 の中から1つ選ぶ組み合わせの掛け算なので 3億257万分の1ということになる。日本人全員が3枚買えば一人くらいは当たりそうな確率だ。
ジャックポットが出た直後の抽選日の賞金は初期値にリセットされ 2000万ドル(約22億円)からスタート。的中者がいない場合は前回の売上に応じた金額が繰り越され、次回以降の賞金に加算される。
ちなみに今回超高額になっている理由は、2021年1月22日の抽選日以降、32回連続で的中者が一人も出ていない ことによる結果だ。
気になる分割受け取りと税金
ジャックポットの賞金は「30年間の分割受け取り」を選択した場合の金額なので全額を一度に受け取る場合の金額ではない。一括で受け取ることを希望した場合は、その時の金利などに応じて減額されることになっており、おおむね 60~65%程度の手取りになるのが普通だ。
この分割方式は、大金を一気に手にして人生が狂ってしまったり、全部使ってしまったりしないための配慮のようだが、多くの的中者は一括を希望するという。
ちなみに現時点における次回のジャックポットの推定値(売上によって変化)は日本円換算で約500億円と予想されているので一括払いの場合は 300億円ちょっとということになる。
「一括で減額されても300億円!」と興奮してはいけない。日本の宝くじとはちがい所得税の課税対象となっており、アメリカの国税と州税(州によって税率が異なる。ロトの所得には課税しない州もある)を取られると実質の手取りは約半分ほどになってしまうのが現実だ。
なお的中したロトのチケットの有効期限は州によって異なるが、抽選日から 90日から1年が一般的。
参考までに、旅行中の日本の在住者が的中した場合の税金にもふれておくと、とりあえず 30%ほどがアメリカ側で源泉徴収される可能性が高く、その後、日本に戻ったあとにその所得と納税分を税務申告して調整することになる。
期待値とは的中確率のことではない
さて一括受け取りによる減額や税金よりももっと心配しなければならないことがある。それは 複数の的中者 だ。1等に限り的中者が複数いた場合は分け合うことになるので、当選者全員が500億円というわけではない。
そこで重要になってくるのがロトの買い方。MEGA MILLIONS に限らず、番号選択制の宝くじを購入する際には、数学でいうところの「期待値」が高くなる番号を選ばないと損をすることになる。
ちなみに期待値とは各番号の出現率や各賞の的中率のことではない。どのような選び方をしても出現率や的中率(今回の場合 3億257万分の1)を変えることはできない。
期待値とは、それぞれの事象の発生確率(的中確率)と、的中した場合に受け取ることができる賞金から算出される「期待される平均的な受け取り金額」のこと。
たとえば、サイコロを投げて 1 から 6 のどの目が出ても 100円もらえるという賭けの期待値はもちろん 100円。1 から 5 の目はすべてハズレで 6 の目が出た時にだけ 600円もらえる賭けの期待値も100円。同様に 1 から 5 の目はすべてハズレで 6 の目が出た時にだけ 1200円もらえる賭けの期待値は 200円ということになる。
つまり的中率を変えることはできなくても、的中時の受取金額を大きくすることができれば、期待値を大きくすることも可能で、MEGA MILLIONS においてもそれが可能だ。
絶対に避けたい番号選び
それの方法は非常に簡単で、「多くの人が選ぶ番号は避ける」というだけのこと。その理由はもちろん「的中者が複数いた場合は賞金を分け合う」というルールになっているからだ。
この理論、つまり人気の番号を選べば一人あたりの受け取り額が下がってしまうという現象は過去の膨大な抽選結果からも明らかになっており、これを無視することは愚かな選択と断言できる。
以下が人気の番号を避けて期待値を高めるための具体的な戦略だ。くどいようだが、的中確率を高めるための戦略ではない。
◎ 戦略1 12番までの番号は選ばない。
◎ 戦略2 31番までの番号も選ばない。
◎ 戦略3 7 と 19 は最悪の番号。
◎ 戦略4 購入日の日付に関する番号も避ける。
◎ 戦略5 投票用紙内で幾何学的な意味をなす番号配置は避ける。
◎ 戦略6 なるべく大きな数字を選ぶ。
◎ 戦略7 スター選手の背番号などは避ける。
7番や 19番はなぜダメか
多くの人は自分や家族の誕生日、もしくはその日の日付などにちなんだ番号を選択する傾向にあるため、それらの番号は避けなければならない。
たとえば、5月18日生まれの人は、1、5、18 などを選択する。したがって、生まれた月として存在する番号、つまり 1 から 12 までは避けるべきで(戦略1)、同様に日付として存在する 31 までの数字も選択してはいけない(戦略2)。
19 は西暦として多くの人の誕生日に登場する数字であるため絶対に避けるべき最悪の番号だ(戦略3)。
同様に「ラッキーセブン」という言葉が存在している限り 7 が選ばれる確率もかなり高い。
また、ロトの購入日の日付を思いつきで選択する者も多いため、「月」に使われている 1 から 12 までの数字の中でも、その月の番号は特に避けたい(戦略4)。
幾何学的な配列も避けたい
投票用紙の番号配列において、選択番号の配置に幾何学的な意味を持たせるような買い方もよくない(戦略5)。たとえば四隅に印刷されている番号や(写真)、一ヶ所に固まって存在する番号、一直線に並ぶような番号などはランダムの番号よりもだれかが選択している可能性が高い。
「そんなに簡単に他人の幾何学模様と一致するものか」と思うかもしれないが、1億枚も売れれば(実際にジャックポット金額が増えたときは1億枚以上売れている)、同じような買い方をする者がいても何ら不思議ではないはずだ。
とにかく大きな番号を選べ
自分の住所の番地やアパートの番号などから選ぶ者も少なくないと言われているので、それに対する配慮も無駄ではない。つまり、数字が大きくなればなるほど実在数が少なくなるので(1番地や 2号室よりも 50番地や 60号室のほうが少ない)、なるべく大きな数字を選ぶことは有意な戦略といえるだろう(戦略6)。
スポーツ選手で圧倒的な人気を誇るスーパースターなどがいた場合、その選手の背番号なども避けるにこしたことはない(戦略7)。
運営者にとっての不都合な現実
このような戦略をバカにする者もいるが、実際に 7番や 19番、そしてその時期の月日に関する番号などが当選番号となった場合、的中者が確実に増える傾向にあるのは疑いのない事実だ。
ちなみにこの人気番号による当選者数の変動という現象は、1等などの高額の賞よりも4等賞や5等賞などのほうに顕著に現れやすい(1等はせいぜい数人しか的中しないため偶然のバラツキによる影響のほうが大きかったりする)。
もちろん4等賞や5等賞の賞金は当選者数で分け合うことなく固定された金額で払い戻されるため当選者数を気にする必要はないが、1等の複数的中者を避けるという戦略を行使する上でこの現実を理解しておくことは非常に重要だ。
このことは胴元、つまりロトを運営する側にとっても無関心ではいられない重要な現実で、むしろロトを買う側よりも運営する側のほうが強く意識していると思われる。
なぜなら、人気番号が当選番号となった場合、1等から末等まですべての賞において的中者が多く出てしまう傾向にあり、1等は払い戻しの総額が決まっているので的中者が何人出現しようが胴元にとって負担は同じだが、4等や5等は的中者の数に関係なく賞金額を決めているからだ。つまり 19番などの人気番号が当選番号に選ばれることは、払い戻し額が多くなってしまうという不都合な現実なのである。
3億通りをすべて買ったら
話が長くなってしまったが、どうせ同じ2ドルを払ってロトを買うのであれば、期待値が高くなる番号を選ばなければ損というのがこのレポートの最終結論だ。
もちろん的中しないことには意味が無いわけで、3億分の1という途方も無く低い的中確率を考えると、ここまでの話をあれこれ議論すること自体がバカバカしくなってしまうが、それでも何の苦労もなく複数当選のリスクを軽減でき、期待値を高めることができるのであれば、その作戦を実行しない手はないだろう。
なおこれは余談になるが、繰り越し金がどんどん積み上がって1等賞金が今回よりもさらに超高額になった場合、期待値が1枚のコスト(2ドル)を超えることがある。その場合、すべての組み合わせ、つまり約3億通りを6億ドルで買えば必ず的中することになり利益が出そうだが、自分以外にも的中者が複数出たら大損してしまう。やはり世の中にうまい話はないということか。
抽選日まで生きているかどうか
最後に異論もあるだろうが、この MEGA MILLIONS に限らず古今東西の宝くじにおいて、的中の夢を追い続けることは現実問題としてあまり賢い行動とはいえない。超高額の的中確率があまりにも低すぎる。
的中して億万長者になる場面を思い描くことは自由だが、それが現実のものとなる確率よりも、抽選日までに自分が生きているかどうかを心配するほうがはるかに現実的といえるのではないか。
それでも宝クジやロトを買いたいという場合は億万長者になることを夢見ながら買い続けるよりも、収益金が公共事業などに回されていることを意識しながら「社会に貢献している」との献身的な気持ちで買い続けたほうがハズレるたびにガッカリすることもなく心の健康に良いように思えるが、いかがだろう。
賢い人は買わないといわれる宝くじ。とはいっても「買わなければ当たらない」 、「当たった人は買っていた」といった命題がいつの時代も常に「真」であることもまた事実。たかが宝くじ、されど宝くじ。
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コメント(2件)
いつ行っても人が殆どいないPrimmに人が集まることがあるとはびっくり。以前はPrimmのアウトレット行き直行バスがストリップから出ていたほど人気があったんですけどね。プレミアムノース/サウスにないブランドがあるので、今でもたまに行きますけれど。
高額になると、Primm は本当に買うのに時間がかかるので、私は一番近いArizonaのコンビニで買ってます。Hwy 93 をキングマン方面に走り、峠を越えたらすぐにガソリンスタンドが出てくるので、そこで買えば相当時間はセーブできます。10分エクストラドライブで、数時間セーブできるならその方がいいですよね!
それでも金額が凄いと、買いに来る客数はかなり多くなりますが。Primm よりは超絶マシです^_^