新型コロナの影響で暗いニュースが多かったラスべガスだが、来訪者数の増加傾向やナイトショーの再開など、明るい話題も増えつつある今日このごろ。
そんな矢先、昨日ビッグニュースが飛び込んできた。必ずしも暗いニュースとは言い切れないが、明るいニュースではないだろう。時価総額でカジノ業界最大手のラスベガス・サンズ社(Las Vegas Sands Corp. ニューヨーク証券取引所:LVS、本社 ラスべガス)がラスベガスからの撤退を検討しているというから驚きだ。
具体的には、同社がラスべガスで運営するカジノホテル「ベネチアン」と「パラッツォ」、さらにはそれらホテルに隣接する巨大コンベンション施設「サンズ・エキスポ・コンベンションセンター」の売却先を探し始めたとのこと。
売却対象は既存の物件にとどまらない。現在サンズ社が、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンと共同で建設中の地球型多目的ホール「MSG Sphere」(ラスべガス版マディソン・スクエア・ガーデン)からも手を引くことになりそうなので、今回のニュースが真実であれば多方面に衝撃を与えそうだ。
社名に「ラスべガス」が入っている同社のべガス撤退など、にわかに信じがたいが、ニュースソースはウォールストリートの経済専門メディア、ブルームバーグ社なので信ぴょう性は高いように思える。
売却先の検討などはまだ始めたばかりとのことで、具体的な売り先の名前が上がっているわけではないが、金額としては全部まとめて約60億ドル程度(6000億円以上)で売却したいとしているなど、すでに具体的な数字が出てきていることを考えると、水面下ではかなり話が進んでいるのかもしれない。
地元ラスベガスのメディアでは、早くも売却先の候補として MGM社や Wynn社などの名前が取り沙汰されているが、新型コロナの影響でどこの会社も資金不足であるばかりか、需要的に新たにホテルを買い取る必要性がなく、今回の売却騒動の実現性を疑問視する声もある。
もちろんコロナ後の将来を見すえた買収ということもあり得るだろうが、よほど提示金額が安くならない限り、今の時期に大胆な企業買収などを決断することはむずかしいのではないか。
そもそもサンズ社自身が、ラスベガスでのカジノホテルの需要に見切りをつけた結果の行動とされており、今後のコロナの成り行きが見えて来るまでは、そう簡単には買い手が現れないような気がしないでもない。
ちなみにサンズ社は、社名にこそ「ラスべガス」が付いているものの、コロナ前からビジネスの軸足はマカオとシンガポールに置いており、ラスベガスにおける売上比率は全体の 15%程度とされている。
また、以前から表明していた日本のIR(Integrated Resort: ホテル、コンベンション施設、ショッピングモール、カジノなどを含む統合型リゾート)への参入も、日本側の政治的な状況やコロナ不況などを理由に、すでに断念することがほぼ決定済みだ。
そのような背景もあり、今後はマカオとシンガポールに経営資源を集中させることになりそうだが、そのマカオやシンガポールでもコロナの影響は甚大で、現時点ではとても利益を計上できるようなビジネス環境にはない。
それでもコロナからの回復は、マカオとシンガポールのほうがラスベガスよりも早いとの判断で、今回のベガスからの撤退を決断したとされているが、はたして買い手が現れるのか。
もし MGM社が手を挙げるとしても、すでに同社はラスべガスで圧倒的なシェアを占めており、独占禁止法が障害になるのではないかとの声も聞かれる。
Caesars社も経営状態は苦しい。消去法的には、地理的にベネチアンやパラッツォに近い Wynn 社が本命になるような気がしないでもないが、ホテルのグレード的に客層がかぶるので買収の必要性を感じるかどうか。今後の成り行きを見守りたい。
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