日本を離れてしばらく時間が経過すると、無性に和食系のものや中華系のものが食べたくなったりするもの。
だからといってストリップ地区のホテル街の和食店は非常に高い。フードコートに行けば中華系の料理を扱っている店はたくさんあるが、ゴージャスなベガスでチープなファーストフードは気が乗らないし、ラーメンを食べたい気分でもない。バフェィはすでに行ってしまった。
そんなときに最適なのが、いわゆる飲茶(やむちゃ)を楽しめる点心(Dim Sum)の店だ。それもちょっと豪華な。
今週は、全館で大改装が進行中のパームス(Palms)ホテル内にこのたびオープンした Dim Sum の店「Tim Ho Wan」を紹介してみたい。
このパームスホテルは「ストリップ地区のホテル」として語られる場合と、そうではない場合がある。
立地ポジションとしてはストリップ大通りには面していないが、このホテルからストリップ地区の中心街はすぐ近くに見えるし、逆も真なり。つまり、ストリップ地区からこのホテルも近くに見える。
そんなに近いなら「ストリップ地区のホテル」でいいじゃないか、と思いきや、距離にするとなんと中心街から約1.8km も離れている。
いくらなんでもそれは離れすぎ、とだれもが思うかもしれないが、ストリップ地区のホテルとされるマンダレイベイホテルやサハラホテルは中心街から 3km も離れていることを考えると、もはや地区の区分などどうでもいいといった感じになってしまう。
たしかにどうでもいい。とにかく中心街(ベラージオホテルやシーザーズパレスがある交差点)から 1.8km ほど西に位置するパームスホテル内にこの Tim Ho Wan はオープンしたわけだが、ベガス・フリークの読者は、「またそこに Dim Sum 店?」と思うにちがいない。
実は偶然にも、このエリアにはすでに2軒の Dim Sum 店が存在している。ゴールドコーストホテルの「Ping Pang Pong」と、リオホテルの「KJ Dim Sum」だ。
ゴールドコースト と リオは、パームスとは目と鼻の先、つまりこれらの3つのホテルは固まって存在しており、このエリアを「Dim Sum 街」と呼ぶのは早計かもしれないが、狭い範囲に3店が集中していることは注目に値する。
(その Ping Pang Pong と KJ Dim Sum に関しては、それぞれこの週刊ラスベガスニュースの 第1074号 と 第783号 に詳細情報あり)
そうなってくると、この Tim Ho Wan の説明においては、他の2店との比較という形で話を進めたほうが手っ取り早そうなので、そうさせてもらうと、まずは味のレベルについて。
味的には3店ともに甲乙つけがたく、もし差があると感じるとしたら、それは好みの問題ということになるだろう。どの店も、日本人の味覚から大きく外れているようなことはないので、味に関しては特に心配する必要はないし、あえて比較する必要もないと思われる。
次に料金的なことに関してだが、この Tim Ho Wan が他の2店よりも2割ほど高いという印象を受けた。そのぶんインテリアなどにおいてややリッチな感じが漂っているので、店の雰囲気と料金はトレードオフといったところか。
ここまでの説明では3店とも大差ないようにも思えるが、2つだけ大きな違いがある。それはこの Tim Ho Wan だけがワゴン式ではないということ。
一般的に Dim Sum 店においては、さまざまな料理を乗せたワゴンが客のテーブルの間を巡回し、客がそのワゴンから好きな皿を取るという方式と、通常のレストランと同じようにウェイトレスやウェイターにオーダーするという方式があるわけだが、Ping Pang Pong と KJ Dim Sum はワゴン式、この店はオーダー式を採用している。
どっちのほうがいいかは意見が分かれるところで、「ワゴン式のほうが楽しい」という意見もあれば、「オーダー式のほうが出来たての料理を楽しめる」という意見もあり、一概に優劣は語れないが、ワゴン式を期待している者は、この店に行くべきではない。
なお、オーダー自体は、あらかじめ用意されている用紙に必要な皿の数を書き込むだけなので、英会話などのことを気にする必要はない。
ただし着席してすぐに、お茶の種類を聞かれるので、その際は「ジャスミンティー」、「ポーレイティー」など、口頭で答える必要がある。
もう一つ大きな違いは料理の数。この Tim Ho Wan は約30種類のメニューの中からオーダーすることになるが、Ping Pang Pong や KJ Dim Sum のワゴンに乗って出てくる料理の数は 50を超えるといわれている。
何種類あろうが、せいぜい10種類も食べれば満腹になってしまうことを考えると、30種類もあれば十分ともいえるが、選択肢の多さにこだわる者は、やや物足りなさを感じるかもしれない。
なにやら欠点のようなことばかり書いてしまったが、この店にもいいことはある。
3店とも人気店のため、待たされる可能性が高いわけだが、この店の場合、入口にあるタブレット端末に名前とスマホの番号を入力しておけば、順番が来たらスマホ経由で知らせてもらえるので、現場に並んで待つ必要はない。(日本のスマホの場合で、店側からのメッセージを受信できないと思った場合は、電話番号を入力する部分を空白のままスキップしてかまわない。その代わり、受付スタッフの声が届く範囲に待機している必要がある)
厨房のエリアがガラス張りになっているので、仕込み作業などを間近で見ることができるのも、この店ならではの演出といってよいのではないか。
3店のうち、どの店に行くべきかはまさに好みの問題なので、バックナンバー 第1074号 や 第783号 などの情報を参考に各自で決めてもらうとして、最後に、この店の運営について触れておかないわけにはいかない。
なんとこの店は、日本のジャスダック市場に上場する WDI 社が運営している。
同社は、世界的なレストランチェーンのフランチャイジーや、現場でのオペレーションの請け負い業務などで急成長しており、Hard Rock Cafe、Tony Roma’s、California Pizza Kitchen など、だれもが知る有名店から、ハワイで話題のパンケーキ店 Eggs’n Things、さらにラスベガスで人気の焼き肉チエーン GEN など、数十のレストランブランドの運営に関わっている。
そしてこの Tim Ho Wan(添好運)も元々は香港でミシュランの星を獲得した有名店で、すでに WDI社はこのブランドで東京の日比谷、ニューヨーク、ロサンゼルス、ホノルルなどでも事業展開しており、ラスベガス店は数ある Tim Ho Wan の1店舗にすぎない。
ちなみに、このラスベガス店のマネージャーは東京の新宿に住んだことがあるという日本語が話せる Kiyoshiさんで(中国人と日本人を両親に持つハーフとのこと)、とってもフレンドリーに取材に応じてくれた。
営業時間は午前10時から深夜2時まで(金曜日は深夜3時まで)。
場所や行き方は、パームスホテルの正面玄関からカジノ内に入った場合、右手方向(西方向)に最後まで進んだ位置の右側。西側の駐車場からの場合は入ってすぐ左手。
ストリップ地区のホテル街から徒歩で行けないこともないが、近くに見えてもかなり遠いので、タクシーかウーバーを利用したほうがよいだろう。
コメント(3件)
Fastfood:ファーストフードでは通じません。
いつも楽しく読んでいます。(書き込みは初めてです)
このお店、日比谷店はいつも大行列ができて、1時間以上待ちもあるほどですよね。
ベガスで待たずに入れるならラッキー!
名物の「ベイクドチャーシューパオ」(メニューのB1)、味はいかがでしたか?
香港や日本のものと、同じ味なのかな。
一度、パームスまで足を延ばしたいと思いました。
日比谷店がそれほど混んでいるとは知りませんでした。日本でも人気があるんですね。
あいにくB1は食べていません。代表的な料理なのに食べずにすみませんでした。
もし次回のベガス訪問の際に食べる機会がございましたら、ご感想をお寄せいただければ幸いです。