MGMグランド、ベラージオ、アリア、パークMGM など、ラスベガスで数多くの大型カジノホテルを運営している MGM Resorts International 社。
「日本びいき」という表現はしっくりこないかもしれないが、何やらこの会社、最近やけに日本が好きというか、日本関連のイベントが目立つ。
たとえば 3年前、MGMグランドのシアターで歌舞伎を公演し、同時にベラージオの前庭の湖で歌舞伎の水上ショーも開催。
そしてここ数年、毎年春にはベラージオの室内植物園が日本庭園をモチーフした装飾で埋め尽くされることは多くのベガスファンが知るところ。
また、同ホテルのアートギャラリーでは一昨年の秋から昨年の春まで本物の鎧や兜を展示するサムライ展が、そして昨年の秋から今年の4月まで草間彌生展が開催され、3月から6月にかけては室内植物園に大阪城が出現したことも記憶に新しい。
さらに今年の7月、パークMGMの前のプロムナードにハローキティーカフェがオープンしている。
こうした同社の一連の日本がらみの行動に対しては、「大阪への進出を意識してのことではないか」との噂が絶えない。
つまり、日本でもIR(Integrated Resort: ホテル、コンベンション施設、ショッピングモール、カジノなどを含む統合型リゾート)の建設を認める法案が通過したことから、その候補地として名乗りを上げている大阪でのリゾート建設に意欲を示す同社が、日本の関係者などに日本との親密度をアピールするためのパフォーマンスではないかという話だが、真相は定かではない。
ただ少なくとも言えることは、ここ数年、MGM社の幹部がたびたび大阪を訪問していることは疑いのない事実で、実際に「日本へ進出するなら大阪」ということは同社自身がはっきりと公言している。
そんな背景が影響しているのかどうかはさておき、このたびまた日本に関わる動きが新たに見られたのでそれを3つ紹介したい。
まず1つ目は折り紙による装飾。アリアホテルのメインロビーとノースロビーが、同ホテルのイベント・ディレクターで日系4世のステファニー・イシイさんの監修により、日本の紅葉をテーマにした折り紙で飾られた。ちなみに「折り紙」は英語でも「origami」として定着している。
カエデの葉が黄色から赤に変化するグラデーションを 17,300枚の折り紙で演出(メインロビーが 13,800枚、ノースロビーが 3,500枚)。さらに 300本の花、そして 16本のカエデの木が日本の秋の風情としてメインロビーにアクセントを添えている。
「紅葉をテーマにしているからといって日本とは限らない。担当が日系人でも、カエデが国旗となっているカナダをイメージしている可能性も」との異論があるかもしれないが、そのような心配は無用だ。アリアホテルの広報資料によると、本人が「祖母の日本庭園をイメージした」と語っているようなので、日本の紅葉であることは間違いない。
2つ目はベラージオのアートギャラリー「Bellagio Gallery of Fine Art」における日本人アーティスト大西康明氏の作品の展示会。
このギャラリーは規模こそ小ぶりだが、これまでにもゴッホ、ルノアール、ピカソ、ウォーホルなど超大物の作品がたびたび展示されてきたことで知られる格調高いギャラリーだ。
今回そのギャラリーに大西氏の代表的な作品「vertical volume」(半透明のポリエチレン製の膜を使ったシリンダー状の作品。広報資料ではシリンダーの数が12本となっていたが、実際には15本あった)を中心に複数の作品が展示されている。
ちなみにベラージオ側の大西氏の紹介文には、We have invited Osaka-based artist Yasushi Onishi… と書かれており、あえて大阪に触れているところが興味深い。もしくは考えすぎかもしれないが、始めから意図的に大阪に関わるアーティストを選んだということか。
開催期間は 8月12日から10月27日まで。残されている開催期間が短いので、興味がある人は急いだほうがよさそうだ。
開館時間は午前10時から午後7時まで(最終入館は 6:30pm)。入館料は一般 $10、65歳以上のシニア $5、地元民(ネバダ州の住民)$5、5歳以下は無料となっている。
最後は 10月26日に開催されるジャパンフェスティバル「Aki Matsuri」(秋祭り)。
このイベントは昨年までは郊外で開催されてきたが、今年はパークMGMに沿ったプロムナード「THE PARK」で開催される。MGM社が運営する場所というだけでなく、同社がメインスポンサーとなっているので、このイベントに対する意気込みは半端ではないようだ。
開催時間は午前11時から午後9時まで。参加は無料。THE PARK の位置は、パークMGMとニューヨークニューヨークホテルの間。
とりあえず以上だが、以下は MGM社の大阪IRに関する余談。
冒頭で触れたとおり、同社はラスベガスに数多くの大型カジノホテルを所有・運営しているが、そのうちのサーカスサーカス、そしてベラージオとMGMグランドを売却するのではないかとの噂が以前から業界内で囁かれており、このたびその話が現実のものとなりつつある方向で買い手側との交渉が進んでいる模様。
そしてこの売却は、大阪IRに参入することになった場合の資金調達のため、というのが業界関係者の間でのもっぱらの共通認識のようだが、その売却額程度の金額ではまったく足りないという話もある。
ちなみに同社の直近の株主総会では大阪IRそのものの話題は出たものの、その時点では具体的な資金調達の方法にはコメントがなかった。
なお、サーカスサーカスの売却は、完全にMGM社の手から離れる形での売却となる予定だが、ベラージオと MGMグランドに関しては、不動産の所有権だけの売却で、売却後も不動産をレンタルする形を取りながら、カジノの運営などは引き続き MGM社が担当する可能性が高い。
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