今週は、レンタカーを利用しない人たちにとってはまったく関係ない話ではあるが、近年レンタカー族も増えてきているようなので、あえてHOVレーンに関する話題を取り上げてみたい。
今週の月曜日(5月20日)から、ラスベガスの高速道路でHOVレーンが導入された。これに関するルールを知らないと、$250 の反則切符を切られることになりかねないのでレンタカー族は要注意だ。(下の写真内に「反則金 $250」が見て取れる)
HOVとは、high occupancy vehicle の略。直訳すると「高い占有率の車両」といった感じになるが、ようするに「人がたくさん乗っている車両」のことで、[2+ ONLY] と表示されている今回の現場における意味は「2人乗り以上の車両」ということになる。
したがって、HOVレーンは「2人乗り以上の車両のための車線」で、このたびその車線の運用がラスベガスの高速道路において始まった。
(都市によっては「2人乗り以上」ではなく「3人以上」という場合もある)
HOVレーンが導入される目的が、交通渋滞の緩和と排気ガスの削減であることは言うまでもない。
日本でもそうだろうが、アメリカにおける大部分の通勤通学のドライバーは1人乗りで運転している。そして渋滞が多い区間では、だれもがうんざりするもの。
そこで運輸当局はHOVレーンを導入し、「同じ方向に通勤通学する者を近所で探して2人以上で乗れば、すいすい走れる専用レーンを利用できますよ」とライドシェアを奨励しているというわけだ。
ちなみにHOVレーンのことを、ライドシェアリングレーン(ridesharing lane)とかカープールレーン(carpool lane)と呼ぶこともある。
(下の写真の一番左の車線がHOVレーン)
1人乗りから2人乗りに切り替えることによって、走行する車両の数が減り、ガソリンの消費量も排気ガスも削減でき環境にやさしいばかりか、その車線を利用する者にとっては交通渋滞を避けることができるため通勤通学の時間が短くなり、いいことづくめというわけだ。
(以下に記載したが、「いいことづくめではない」という反論も少なくない)
今回導入された区間の中で、一般の観光客のレンタカー族が最も利用しそうな場所は、高速15号線のストリップ地区からダウンタウン地区までの区間だろう。
観光客の場合、地元の通勤通学のドライバーと異なり、2人乗り以上が多いと思われるので、その場合はHOVレーンを走っても違反とはならないが、乗車人数以外にも、気を付けなければならないことがある。
それはHOVレーンへの出入りだ。HOVレーンは最も中央分離帯寄りの車線なので、必ず一般車線から進入することになるが、どのタイミングで入ってもいいというわけではない。
入っていいのは、一般車線とHOV車線を区切るペイントが白の点線になっている区間に限られ、白の二重線の区間では、そこを横切って入ってはならない。
(上の写真が白の点線の区間、下の写真が白の二重線の区間)
HOV車線から一般車線に出るときも同様で、出口が近づいたからといって、白の二重線をまたいで出ると違反になるので要注意だ。
ちなみに、出入りが可能な白の点線の区間は、ざっくり約1~2km ごとに用意されている。
なお、地元民もまだ慣れていないだろうとの配慮で、1ヵ月間は反則切符が切れれることはなく、捕まっても警告だけで済むとのこと。つまり反則切符が切られるのは 6月20日からということになる。
さてここからは余談。HOVレーンは、かなり以前からロサンゼルスをはじめ、さまざまな都市で導入されており、実はラスベガスでも北西部の一部の区間で導入されていた。
今回の導入で特に注目されている部分は、規制が「週7日、24時間」になっているということ。
他の都市のHOVレーンは、平日の通勤時間帯だけが対象となっているのが普通で、その場合、対象外の時間帯は 1人乗りでもHOVレーンを利用できる。なのに今回の導入では「週7日、24時間」になった。
これには「ラスベガスは24時間眠らない街。週末も働いている人が多く、出勤時間もバラバラだから」ということが理由にあるらしいが、地元民からは、時間帯の設定をしないことだけではなく、HOVレーンそのものの導入に反対する以下のような声も上がっている。
◎ ラスベガスには、他の大都市などで見られるような高層ビルが立ち並ぶ密集したビジネス街があるわけではなく、通勤先が集中しておらず、同方向へ向かう同乗者を探しにくい。ホテル街もかなり広範囲に広がっているため、同じホテルで働いていない限り、同乗通勤は現実的ではない。
◎ 24時間眠らない街であるからこそ、出勤時間もバラバラで同乗者を探しにくい。
◎ ロサンゼルスなどのような巨大都市ではないため通勤距離は比較的短く、短距離の走行ではHOVレーンの恩恵が少ない。せっかく何車線もまたいでHOVレーンに入っても、すぐに目的地に到着するので、また何車線もまたいで高速道路から降りなければならない。
◎ HOVレーンを一般レーンにしたほうが、全車線におけるトータル的な渋滞が緩和され環境にやさしいはず。ごくわずかな台数の2人乗りの車両がスムーズに走れるようなる一方で、他の大多数の車両の渋滞が悪化したのでは、全体としては環境にやさしくない。
といった反対意見もあり、当局側としては今後の様子を見て、規制時間帯などを見直す可能性もあるとのことだが、今回のHOVレーンの新設工事などにおいて、環境保護の関連機関などからの援助もあったことから、「3年ほどは見直す予定はない」などと発表しており、反対派の不満は収まる気配がない。
また、信号無視やスピード違反などの命にかかわる違反の反則金と比較して、HOV違反は特に命にかかわる違反ではないにもかかわらず $250 は高すぎるのではないかとの指摘もあり、今後さまざまな議論が出てきそうだ。
いずれにしても、レンタカー族はHOVレーンの存在には注意していただきたい。