11月の第4木曜日、つまり今週の木曜日は秋の収穫を祝う感謝祭ことサンクスギビング・デー。
地方にバラバラに散って暮らしていた家族も、この日ばかりは一堂に集まり、ターキーを食べながら家族団らんを楽しんだりするのが、サンクスギビング・デーの典型的な過ごし方とされる。
そしてその翌日の金曜日がブラック・フライデー。晩秋の風物詩ともいえる全米規模の大バーゲンセールがおこなわれる日だ。
感謝祭の宴も終わり、のんびりした休日気分から年末のあわただしい気分に切り替わる消費者心理に相まって、小売業界ではこのブラック・フライデーを年末商戦のキックオフの日と位置づけている。(上の写真はファッション・アウトレットの入り口。クリックで拡大表示。以下、このページのすべての写真はファッション・アウトレット内で 11月20日に撮影されたもの)
そんなブラック・フライデー、過去に何度もこの週刊ラスベガス・ニュースで取り上げてきたためか、この時期になると、常連読者のラスベガス・リピーターから、「主要大型店や各アウトレットのセール開始時刻を教えてほしい」といった問い合わせが寄せられる。
しかしその種のことはそれぞれの店の公式サイトなどでも調べられるようになってきているので(翻訳機能の充実により、英語サイトでもわかりやすくなってきているはず)、今回はセールの開始時刻ではなく、ブラック・フライデーに異変が生じてきているという話題と、すっかり存在感がなくなってきているファッション・アウトレットの今ならではの魅力について書いてみたい。
ブラック・フライデーに関する近年の様子は、この週刊ニュースのバックナンバー第930号でもふれた通り、もはや「フライデー」の意味がなくなりつつある。セールの開始を金曜日の早朝ではなく、木曜日に繰り上げる店が増えてきたからだ。
一昔前までは、金曜日の早朝6時とか7時にオープンするのが普通だったが、ライバル店に客を取られまいと早朝4時、5時にオープンする店も出現。そのうちに深夜2時とかも珍しくなくなり、さらに競争が激化すると金曜日に切り替わる瞬間、つまり深夜零時にオープンするのが当たり前になっていった。
そこまでならば、まさにフライデーといえるが、ついに数年前から前日の木曜日にオープンしてしまう店も出現。
もはや「スタート時刻のフライング」ともいえる異常なまでの繰り上げ営業、そんなバカげたことを 大型スーパーのウォルマート、玩具店のトイザらス、家電量販店のベストバイ、百貨店のJCペニーなど、一流どころが先陣を切ってやり始めたものだから、他社も負けじとそれに追随。
ちなみに感謝祭の日は国民の祝日で全国的に休み。本来であれば、店は閉まっているのが当たり前で、家族団らんをゆっくり楽しむ日にセールがおこなわれることなど、10数年前にはだれも想像できなかったわけだが、とにかく今はブラック・フライデーがブラック・サーズデイになってしまっているのが現状だ。
ところが今年から異変も見られる。セール開始時刻の繰り上げ競争に終止符が打たれるかもしれないという動きだ。
家族団らんを優先させたい従業員に対して特別休日出勤手当を払ってまで出勤させることの人道的な是非はもちろんのこと、その割増の賃金を払ってまで木曜日に店を開けることの費用対効果、つまり利益につながっていないのではないかといった議論も出始め、今年から木曜日の営業を取りやめる店が散見され始めたのである。
全米規模の大型店としてはオフィスデポなどがその典型で、また全米最大のショッピングモール(店舗数約 500)といわれている Mall of America(ミネソタ州)が、木曜日は施設全体を閉めると宣言し注目されるなど、モール全体としての金曜日への回帰の動きも見られる。
来年以降、どっちの方向にトレンドが進むのか、こればかりはなんとも予測がむずかしいが、たぶん木曜日に営業する全国規模の大型専門店はもうこれ以上増えないのではないか。
では今年のラスベガスにおける実際の大型店やモールの状況はどうなっているのかというと、ウォルマート、ベストバイ、フライズエレクトロニクス、Kマート、メイシーズ、JCペニー、オールドネイビー、コールズ、トイザらス、バスプロショップなどがフライング組で木曜日からセール開始。
ホームデポ、コスコ、H&M、ホームグッズ、マーシャルズ、TJマックス、ノードストローム、オフィスデポ、サムズクラブなどが伝統を守る金曜日派だ。
モール全体としては、人気のプレミアム・アウトレットなど主要モールは木曜日にオープンすることになっているので、多くのテナントも木曜日に店を開けるはずだ。
ただ、コーチやケイト・スペードなど人気ブランドのテナントは毎年どこもごった返しているため、「行っても入店規制で長時間並ばされた」、「店の外に深夜並ぶのは非常に寒くてつらかった」 といったネガティブな声が少なくないのも事実。
そんな中、昨年あたりから大いに注目され始めたのが、ラスベガス市内から車で45分ほどの砂漠の中にあるファッション・アウトレットだ。近年このアウトレットは人気が低下気味で、通常の平日などは人影も少なく、存在自体が忘れ去られつつあると言っても過言ではない。
その理由は、ラスベガス市内にあるプレミアム・アウトレット・ノースの拡張工事に伴う店舗の増加により、ファッション・アウトレットに入店するブランドの多くがプレミアム・アウトレット・ノースにも重複存在していること、そしてもう一つの理由が、ファッション・アウトレットの管理会社が運行していたラスベガス市内からのシャトルバスが廃止になってしまったため、一般の観光客にとっては交通手段がなくなってしまったことだ。(タクシーでは片道100ドルを軽く超えてしまうので、レンタカー以外は現実的ではない)
そんなファッション・アウトレットではあるが、通常日は不人気でも、ブラック・フライデーのときだけは評価が高い。
なぜかというと地理的な利便性の悪さゆえに非常にすいているため並ぶ必要がほとんどないこと、並ぶ必要が無いため短時間で多くの店を回れること、そしてインドア構造のモールのため、屋外型のプレミアム・アウトレット・ノースのように寒い思いをしなくても済むということなど、利点はいくつかあるわけだが、今年はそれらメリットに加え、いくつかの店で店じまい在庫一掃セール (上の写真がまさにそれ)が予定されているという特別事情もある。
さらに、ファッション・アウトレットは、もともとラスベガス市内のアウトレットよりも総じて価格設定が低い傾向にあることも忘れてはならない。低い理由は、家賃が都市部ほど高くないこともさることながら、店舗の位置が市街地から遠く離れているため、メーカーにとって安売りをしやすい環境にあるからだ。各メーカーは、ブランドイメージを崩さないためにも、目立ちやすい都市部では極端な安売りは避けたいところで、早く在庫を処分したいときは、ファッション・アウトレットのような遠い不便な場所でやる傾向にある。
というわけで、毎年プレミアム・アウトレット・ノースの混雑ぶりや寒さにうんざりしているベガスリピーターやバーゲン・ハンターは、今年はファッション・アウトレットを目指してみるのも悪くないだろう。
モール全体の営業時間は、サンクスギビングの木曜日が午前10時から午後8時、ブラック・フライデーが午前8時から午後9時。開店時刻が極端に早くないまともな時間帯であることもうれしい。
入居ブランドは、コーチ、ポロ・ラルフローレン、ケイト・スペード、マイケル・コースなど、一通りの人気ブランドはほぼすべてそろっているが、ピンポイントで買いたいブランドがある場合は、公式サイトで確認したほうがよい。
なお、不便な位置にあるため、もちろんレンタカーが不可欠だが、運転が苦手だからといってあきらめる必要はない。
エイチ・アイ・エスの回し者ではないが、念のため紹介しておくと、同社ではバーゲン・ハンターたちのために、今年は特別このファッション・アウトレット向けのショッピングツアー($49)をブラック・フライデーに企画している。
帰路においては、「セブンマジックマウンテンズ」(この週刊ニュース第1008号に紹介記事あり)にも立ち寄るというから興味がある人は参加してみるとよいだろう。くわしくは同社ラスベガス支店の以下の公式サイトまで。
https://tour.his-usa.com/city/las/detail.php?tid=883