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グランドキャニオン・ウエスト (ウエストリム)  



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英語名   GRAND CANYON WEST
住所   地理的にはアリゾナ州内ではあるが、先住インディアン居住区内
電話   N/A
アクセス   空路によるツアーが一般的だったが、道路が整備されたため陸路も便利に。

 旅行代理店のパンフレットなどを見ていると グランドキャニオン・ウエスト あるいは グランドキャニオン・ウエストリム (西壁) という聞き慣れない言葉を目にすることがある。
 米国政府が指定したグランドキャニオン国立公園内にはサウスリムやノースリムはあってもグランドキャニオン・ウエストなどという場所はないはずだが、このなぞのグランドキャニオン・ウエストとはいったいどこにある何なのか?

 まずは、通常のグランドキャニオン国立公園 (世界遺産) について知っておく必要があるので、その説明から始めたい。
 米国政府が指定したグランドキャニオン国立公園区域内には大きく分けて二つの観光エリアがある。ひとつが、Gキャニオン形成の主役であるコロラド川を挟んだ北側に位置するノースリム (北壁)、そしてもうひとつがその南側に位置するサウスリム (南壁)だ。
 どちらも海抜 2000メートル以上で、コロラド川が流れる谷底と台地との落差も 1500メートル以上あるという意味では、似たようなものではあるが、ノースリムのほうがやや高く、その標高差の分だけノースリムは冬場に降雪でアクセスできなくなることが多い。また夏期においても、空港や道路などの交通インフラが悪いため、ノースリムを訪れる人は非常に少なく、大多数の人はサウスリムを訪れているのが現状だ。

 景色もサウスリムのほうが良いというのが定説だ。海抜がより高いノースリムの方が景色が雄大と思われがちだが、論理的に考えれば、そうでないことはすぐにわかる。
 自分が立つ位置の絶壁は自分からは見えないわけで、より高くて雄大なノースリムを眺めるためには、自分はサウスリム側に立つ必要があり、さらに太陽光の条件もサウスリムから見たほうが有利だ。
 理由は簡単で、北側を向いているサウスリムの壁面には太陽光がほとんど当たらないが、ノースリムには良く当たる。つまりノースリムから見たサウスリムは写真撮影でいうところの逆光になるため、サウスリムからノースリムを見たほうが絶壁が高く、なおかつ明るくくっきり見えるというわけだ。(ただし夏至に近い時期の夕陽や朝日の時間帯は、太陽がかなり北寄りに位置するため、短時間ではあるが、サウスリムからの方が逆光になることがある)

 ということで、 【 Gキャニオン観光 = サウスリム 】 という図式は、グランドキャニオンが米国政府によって国立公園に指定されて以来、長らく定着している常識的な概念なのである。

 さて前置きが長くなってしまったが、近年この不動の地位を占めるサウスリムに対して、「グランドキャニオン・ウエスト」 あるいは 「グランドキャニオン・ウエストリム (西壁)」 と呼ばれる新たな場所が脚光を浴びてきている。
 その最大の理由は、2007年に出現した 「スカイウォーク」 (Skywalk) の存在だ。(写真右、クリックで拡大表示。この写真はスカイウォークが完成する直前に空から撮影されたもの)
 絶壁から突き出すように設置されたU字型の通路で、床面はガラス張り。つまり、足元から谷底が透けて見えるという奇想天外なスリル満点の施設だ。

 自然保護がうるさいアメリカにおいて、自然破壊とも景観破壊とも言えそうなこのような施設の建設が許可されたのはなぜか。
 じつは、その背景には明快な理由がある。このウエストリム地区は、通常のアメリカ合衆国の法律が及ばないインディアン居住区なのである。
 ここでいうインディアンとは、白人がヨーロッパからアメリカ大陸へ渡って来るよりも以前からこの地域に住んでいた先住民のことで、彼らはアメリカ建国の歴史の中で白人から土地、住居、物資、権利、時には生命までを奪い取られてきたという悲しい過去を持っている。
 そのようなインディアンに対して現在の米国政府は、一般のアメリカ市民に対する法律を超越した特別扱いとして、古来から続く彼ら独自の生活習慣やルールを認めており、その治外法権的なことが許される区域を明確に指定したのがインディアン居住区で、このウエストリム地区は、「ワラパイ族」 という部族が統治する領土内にある。
 実際に現地に行くと、観光客以外は、一部の一般アメリカ人労働者を除き、ワラパイ族の人たちがほとんどだ。顔立ちが一般のアメリカ人とはハッキリ異なるのですぐにわかる。
 ちなみに、米国政府が認定している先住インディアンの部族数は現在 562 で、彼らの大多数は、米国内に 314ヶ所存在するインディアン居住区内で生活している。
 「州と同格の自治権が与えられている」、というのがインディアン居住区に対する現在の米国内での一般的な法解釈で、もちろんこのウエストリム地区も例外ではなく、まわりからどんなに 「環境破壊だ」 と言われようが、領土内であれば、彼らが好きなものを建設できるというわけだ。
 なお実際にスカイウォークを建設したのは、ワラパイ族にこの奇想天外な企画を持って行った在米の中国系ビジネスマンで、入場料などの収益を、このビジネスマンとワラパイ族で分け合う契約になっている。
 収益といえば、彼らは、有料のスカイウォークのみならず、ウエストリム地区に入ることに対しても高額な進入料を徴収しているので (ツアーの場合、ツアー料金の中に含まれている)、サウスリムに比べてラスベガスに近いにもかかわらず、ツアー料金は一般的に高い。

 さて、グランドキャニオン観光を計画する際、このウエストリムをどのように位置付け、どのように考えるべきか。
 ずばり、景色だけを楽しむ目的であれば国立公園、つまりサウスリムに行くべきだろう。
 理由は、絶壁の落差や谷の幅など、サイズ的な部分においてウエストリムはサウスリムに比べてやや劣るからだ。両リムを大ざっぱに比較するならば、落差がおおむね 4:3、谷の幅が 2:1 の差がある。
 参考までに具体的な数字で示すと、サウスリムの主要ビューポイントの大地の標高は 2150m 前後、川底が 730m、つまりその落差は 1420m。ウエストリムの場合、大地 1450m、川底 360m で、落差は 1090m。
 であるならば、だれもウエストリムに行かないのではないか、と思われがちだが、必ずしもそうではない。スカイウォークの存在以外にも、ウエストリムにはそれなりの特徴がある。

 たとえば、うるさいアメリカの法律に縛られていないため、絶壁に手すりがまったく無いなど、荒削りの部分が多く、「大自然のままのワイルドな感じがいい」 といった声が少なくない。
 また、距離的にラスベガスから近いため、空路のツアーの場合、飛行時間がサウスリムツアーの約半分程度となっており、乗り物酔いなどを心配する人たちから、その部分を評価する声も聞かれる。
 陸路の場合も、これまで長らく道路が舗装されていなかったため非常に不便だったが、2014年7月、全線舗装されたことにより、ラスベガスから片道2時間半で行けるようになった。ちなみにサウスリムは片道約5時間。
 さらに、ヘリコプター飛行や川下り、また絶景を見ながらの屋外ランチなどもウエストリムならではの特徴といってよいだろう。ハイカーたちに配慮する騒音規制などが厳格なサウスリムでは、ヘリコプターを使って谷底に降りることは許されておらず (指定された空域の上空を飛行することは可能)、また川下りも厳しく制限されている。ゴミが大量に出かねない屋外バーベキューなども、サウスリムにおいては所定の場所以外では厳禁だ。
 一方、ウエストリムではなんでもありなので、結果的に、その種のアクティビティーが組み込まれたツアーが可能となっている。

 冬期に、降雪でツアーが中止になりにくいのもウエストリムの利点といってよいだろう。標高2000メートルの位置にあるサウスリムの空港に比べ、標高1460メートルのウエストリムの空港は、雪で閉鎖になる確率が低い。
 先住インディアンたちと触れ合える可能性があるのも、このウエストリムでの楽しみのひとつだ。
 余談になるが、近年の最先端の研究によると、インディアンは日本人と共通の DNA を持っていることが明らかになりつつあり、彼らはアジアからアリューシャン列島、ベーリング海を渡りアラスカ経由で現在のアメリカ大陸に住み着いたといわれている。たしかに背が低くずんぐりむっくりしたその体型はどことなく日本人に似ていなくもない。

 ということで純粋に景色だけを楽しむならサウスリムで決まりで、スカイウォーク、ヘリコプター、川下り、手すり無しなど、ワイルドな体験をしたい者はウエストリムを選べばよいだろう。
 ウエストリムへ行く方法は、空路のツアー、陸路のツアー、レンタカーの3種類ということになるが、陸路のツアーが断然おすすめだ。理由は、道路が全線舗装され片道2時間半で行けるようになったため、飛行機を使う時間的なメリットがほとんどないばかりか、陸路のツアーのほうが金額的に空路のツアーよりもかなり安いからだ。
 レンタカーは人数が増えれば割安感が出てくるが、運転技術や英語力はもちろんのこと、さらにはパンク、事故、故障などに対する危機管理能力も求められるので、一般的にはあまりおすすめできない。道中、ほとんど交通量がない場所を、かなりの距離を走らなければならず、また携帯電話が使えない可能性が高いからだ。ちなみに 2014年9月時点では、ベライゾン社以外の携帯電話は電波が届かない。そしてなにより、アメリカの法律や常識が通じない別世界であること、それが一番のおすすめできない理由だ。
 ちなみに、レンタカーで行ったとしても、一人につき $50 ほどの 「入国料」 のようなものを支払わないと、領土内に入れてもらえない。各ビューポイントへもレンタカーでは行けない。全員が強制的にワラパイ族が運営するバスに乗る必要がある。さらにスカイウォークを渡るには $30 以上が必要だ。
 すべてのレンタカーは入口で検問を浮け、武器やアルコール類を持っていないか質問を受けることになる。アルコール類を隠し持っていることが発覚すると、ワラパイ族の警察に捕まる。捕まった場合の処分はまちまちなので、ここでハッキリ書くことはできないが、とにかく 「郷に入っては郷に従え」 の精神で、ワラパイ族のルールに従ったほうがよい。

 最後に補足を。サウスリム地区内 (国立公園内) の絶壁沿いにある道路で西方向へ延びている部分を 「ウエストリム」 と呼ぶことがある。これはあくまでも 「サウスリム地区内の西側部分」 という意味であって、今回ここで取り上げているウエストリムとはまったく別の場所なので混同しないように。


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