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国立原爆博物館  



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英語名   NATIONAL ATOMIC TESTING MUSEUM
住所   755 East Flamingo Road Las Vegas, NV 89119
電話   702-794-5151
アクセス   場所はベラージオやバリーズがある交差点からフラミンゴ通りを東へ 2km 行った地点。路線バスでも行けないことはないが、タクシー利用がおすすめ。徒歩はきつい。

 原爆に関する情報を一堂に集めたかなり本格的な博物館。オープンは 2005年2月。開業時に使われていた名称 Atomic Testing Museum は、2012年1月、オバマ大統領の署名により、国定の一級博物館に昇格したため、National Atomic Testing Museum に改められた。
 名称的には 「National」 が加わっただけの変更ではあるが、National があるとないでは大ちがいで、この昇格を機会に世界最高レベルの博物館とされるスミソニアン博物館の傘下に入ることに。ちなみに、National が付く博物館は全米でわずか 40ヶ所ほどしか存在せず、超一流の博物館の証でもある。

 さて、その National 以下の部分、つまり Atomic Testing Museum を日本語で表現する場合、どのように和訳すべきか。
 そのまま訳せば 「原子力試博物館」 ということになってしまうが、これだと何のことだかわからない。原発関連の施設との誤解も招きそうだ。
 異論もあるかもしれないが、展示内容の実態を直視しながら最も単純明快に表現するならば、ここはやはり 「原爆博物館」 と和訳すべきだろう。
 名称内に bomb や weapon は含まれていないが、展示の中心が核兵器であることは疑う余地がなく (原発に関する展示もまったく無いわけではないが、限りなくゼロに近い)、それは売店で売られている記念グッズ (写真右下、クリックで拡大表示) のデザインなどを見るまでもなく明らかだ。
 また、水爆を含めて 「原爆」 と呼ぶことには多少のためらいもあるが、館内での技術的説明を見る限り、ウラン型やプルトニウム型がメインとなっており、「核兵器博物館」 とするよりも 「原爆博物館」 とした方が日本人の一般的な感覚としてはなじみやすいだろう。

 話題が原爆となると、被爆国日本にとっては非常に敏感な問題で、また当事国アメリカにとっても政治的な論争に発展しやすく、扱いが非常にむずかしいのが世の常。
 事実、首都ワシントンにあるスミソニアン博物館では、広島での原爆投下機 「エノラゲイ」 の展示などをめぐって論争が尽きず、犠牲者の数から原爆投下の是非、さらには真珠湾から戦争責任問題まで、「展示やその説明において、歴史的・政治的な公平さを欠いている」 といった論争は終わりを見ない。
 そんな題材だけに、この博物館も取材する際は神経を使うばかりか、取材を受ける側も日本のメディアに対しては過敏になりがちのようだが、とりあえず他のアメリカ系メディアと一緒にごく普通に館内をガイドしてもらえた。(当然のことではあるが)
 広島や長崎に関する資料の前などでは我々に対して多少気まずい思いもあったのではないかと思われるが、きちんと任務を果たし詳しく案内してくれた現場スタッフには感謝したい。ここでは加害者、被害者という立場を抜きに学術的資料の展示として史実や現実を直視すべきだろう。実際の展示内容もあくまでも 「サイエンス」 に重点が置かれており、政治的なことに関してはかなり限定的だ。

 さて、なにゆえエンターテインメントの街ラスベガスにこの種の博物館がお目見えしたのかということになるが、それはもちろん言うまでもなく、ラスベガスが属するネバダ州が米ソ冷戦時代に核実験場となっていたからだ。
 今でこそ臨界前(未臨界)地下核実験しか行なわれていないが (包括的核実験禁止条約 CTBT で、地上および大気圏での実験は禁止されている。なお直近に行なわれた臨界前核実験は 2010年 6月で、通算 24回目)、米ソ冷戦時代はそれこそおびただしい数の核実験がこの地で行なわれており、現場から百キロメートル以上離れていたとはいえ、「ギャンブルやエンターテインメントの街」 が 「核実験場の近隣」 であったことは疑いのない事実。(右上の写真は、自動車のナンバープレートのデザインのひとつとして近年公募でノミネートされたものだが、反対意見が多くボツになってしまった。ちなみにアメリカでは各州が、その州ゆかりのものをデザインしたプレートを作るのが一般的)
 この博物館も、そんな実験場 (NTS: Nevada Test Site) での史実を紹介することに重きが置かれており、展示品や写真の多くが、その実験場の関係者や関係機関から提供されたものだ。
 ちなみにこの博物館の運営母体は The Nevada Test Site Historical Foundation (NTSHF) で、そのメンバーには NTS に従事していた元軍人なども名を連ねているという。

 館内をすべて見て回った感想としては、かなり充実した展示という印象を受けた。特に 「グランドゼロシアター」 (爆心地劇場) と呼ばれる施設はよくできており、大気圏核実験の様子を映像と振動と風でかなりリアルに疑似体験できるようになっている。
 一連の施設の建設に際しては国からも一部補助金が出たとのことだが、基本的にはほとんどが寄付金でまかなわれており (2012年の昇格までは民間施設だったため)、そういう意味ではなかなか立派な内容といってよいだろう。もちろん NTSHF が NPO (Non Profit Organization。非営利団体) であることは言うまでもない。

 被爆国の者がこの種の展示を 「立派」 と評することには異論があるかもしれないが、ここは政治的な観点は抜きに学術的な展示として評価したい。
 もちろん、日本の降伏を報じる当時の新聞、アインシュタインがルーズベルト大統領に宛てた手紙、J.F.ケネディー大統領が NTS を訪れている写真、ソビエトと対峙する展示 (写真右)、日本のマグロ漁船「第五福竜丸」の被曝状況を研究した科学者として知られる西脇安(にしわき・やすし)氏から米国に送られた直筆の手紙、冷戦終結の象徴ともいえるベルリンの壁の現物など、政治色がまったくないわけではないが、おおむね思想的な部分は排除され、また、核兵器そのものに対しても反対派の抗議デモの写真を展示するなど、全体としては中立的な立場が守られている (見方によってはそう見えない者もいるだろうが)。環境破壊や人体への影響などに関する問題提起のための展示スペースもある。
 一ヶ所だけ違和感を覚えたのは、見学通路の最後の部分にある 「911同時多発テロ」に関する展示。倒壊したニューヨークのワールドトレードセンタービルの鉄骨などの残骸、犠牲者、国旗などが展示されているが、アメリカのナショナル博物館なので、ある程度の愛国心の高揚などはやむを得ないとしても、サイエンス博物館の主旨としてはそぐわない演出という印象を受けた。

 広島や長崎の写真に関しては、スミソニアン博物館での騒動と同様、「もっと悲惨な写真を展示すべき」 などといった意見が読者からも寄せられるが、その種の展示に対してはアメリカ側の世論などを背景とした 「できることとできないことの限界」 のようなものも見え隠れしており、そういった議論はここではあえて避けることとしたい。
 蛇足ながら、広島と長崎の話が出たついでにふれておくと、年表の展示において、広島、長崎、終戦の日付がそれぞれ 8/6、8/9、8/14 と記載されていた。つまり広島と長崎の日付は日本の認識と同じだが、終戦記念日だけが異なっている。「8/15 が終戦記念日」 と認識している我々にとっては少々違和感があるが、時差の問題もさることながら、「終戦の瞬間」 の定義が日米の間で微妙に異なっている可能性もあり非常に興味深い。御前会議での決定、ポツダム宣言受諾を連合軍側に伝えた瞬間、玉音放送など、どれを終戦とし、またどこの国の時間で定義するかによって 「終戦日」 は変わってくるということか。
 なお、福島での原発事故により、核に対する関心が高まったのか、例年 55,000人前後で推移してきた年間来場者数が、2011年には前年比15%増加したというから興味深い。

 さて話題をこの博物館に行って見るべきかどうかということに変えると、その答えはむずかしい。
 当たり前の表現になってしまうが、興味がない者が行っても得るものがないだろう。また、政治的資料はそれほど多くないため、米ソ冷戦時代の裏話的な情報などに興味がある者が行ってもあまり楽しめないかもしれない。
 では軍事マニアのような者が行くべき場所かというと、そうでもなさそうだ。マニアの興味の対象となりがちな戦略的技術、たとえば ICBM や SLBM といった核弾頭の運搬手段に関する展示などはほとんどないからだ。また、多核弾頭ミサイルに対する迎撃といった超高度な技術なども非常に興味深いところだが、そういった情報ももちろん公開されていない。
 この展示はあくまでも原子力、とりわけ原子爆弾そのものに対する開発の史実、特に机上の計算ではなく実験 (testing) という現場からの客観事実を写真、映像、模型などで提供する場所で、そういったことに興味がある者が行けば極めて有意義な知識や情報を得ることができるが、そうでない者は退屈する可能性もある。
 できることならば、上の自動車のナンバープレートの写真 (クリックで拡大表示) の右側に赤い小さな文字で描かれている公式の意味を理解できる程度の知識はあったほうがよい。
 公式といえば、アインシュタインがそれを発表してから 2005年が 100年目に当たり、そんな彼の偉大なる功績 (1921年にノーベル物理学賞) をたたえるために国連も 2005年を 「世界物理年」 (The World Year of Physics 2005) とした。この博物館が 2005年にオープンしたのもその一環といわれている。科学に興味がある者は彼の功績を顧みながらぜひこの施設を訪れてみるとよいだろう。

 展示場脇にはささやかながら記念グッズを販売する売店もある。帽子が $5 など (写真右)、非営利団体であるためか、この種のショップとしてはかなり安く、また当局から無税販売の認可を受けており、消費税の 8.10% は課せられない。
 入館料は一般が $22 で、62才以上と 18才未満が $20。6才以下は無料。開館時間は月曜日から土曜日が 10:00am 〜 5:00pm、日曜日が 12:00pm 〜 5:00pm。
 行き方は、ストリップ地区から路線バスでも行けるが、運行本数が少ないのでタクシーが便利だ。運転手に 「National Atomic Testing Museum, please!」 などと言えばわかってもらえるはずだが、わかってもらえない場合は、「755 East Flamingo Road 」 と番地を告げればよい。料金はベラージオなどがある交差点付近から $10 前後。所要時間は約5分。


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