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コスモポリタン




寸評
 ラスベガスの繁華街のほぼ中央にそびえる地上50階客室数約3,000の超高層高級カジノホテル。MGM系列でも Caesars 系列でもない独立系のカジノホテルで、オーナーは投資ファンド大手の Blackstone Group
 現在ラスベガスで最も高級で、最も使いやすいとの呼び声が高い人気のカジノホテルではあるが、そのぶん宿泊料金も総じて高いのが難点。人気の理由のキーワードは、以下に示す「コンドミニアム」「垂直移動」

沿革
 2004年の計画から 2010年の完成までの間に、世界的な不動産不況リーマンショック(英語では The Great Recession とか The Financial Crisis などと呼ぶのが一般的で、リーマンショックという言葉はあまり使われない)に見舞われ、計画そのものやオーナーシップまでもが変わってしまうという紆余曲折を経ながら、苦難の末に誕生したのが、このコスモポリタン。
 その激動の詳細をくわしく説明することは簡単ではないが、結果だけをひとことで言ってしまうならば、超高層コンドミニアム(日本でいうところのタワーマンション)として建設された物件がホテルになってしまった、ということになる。

 リーマンショック直前の好景気に沸いていた 2003年〜2006年のころは、ラスベガスでの超高層コンドミニアムは、造れば造っただけ飛ぶように売れるという時代だった。そして業界関係者の多くは、「もっと高い値段で、まだまだ売れる」と考えていた。
 そんなムードの中、あるデベロッパーは、総工費約40億ドルというとてつもない巨額のプロジェクトを思いつき、ベラージオホテルのすぐ脇に隣接する土地を買い上げ、超高層コンドミニアム「コスモポリタン」を2棟を建てる計画を大々的に発表。
 当然のことながらそのような巨額は、手持ちの資金だけでは不十分で、銀行団(ドイツ銀行が中心)から多額の建設資金を借り入れることに。
 銀行側も、「完成したユニットを高額で完売できれば、簡単に返済してもらえるはずだ」との安易な考えで、何の疑いもなくローンに応じてしまった。
 そして 2005年に着工。工事も順調に進んでいた 2008年、まさかのリーマンショックに見舞われ、ベガスの不動産バブルが崩壊
 工事を完成させたとしても、個々のユニットは予定の販売価格の半額でも分譲できない状況が見えてくると、銀行団は追加融資を渋るようになり、建設の継続が困難に(この種のローンは、建設開始時に全額を融資するわけではなく、建設の進捗状況に応じて段階的に融資するのが普通)。結局、計画は一時的に頓挫し、デベロッパーも倒産
 困ったのは銀行を始めとする資金提供者たちだ。追加融資を打ち切り、工事の完成を待たずに撤退したところで、すでに貸したローンの全額が返って来る可能性は低い。
 結局、最大の債権者であるドイツ銀行が工事途中の物件のすべての権利や義務を引き受けることになり、他の債権者とも合意。
 所有権を得たドイツ銀行としては、自分の判断でどうにでもできるようになったものの、銀行は銀行、不動産業ではない。このまま物件を持ち続けるわけにもいかないので、なるべく早い時期に換金する必要があるわけだが、そのためにはとりあえず建設工事を完成させるしかないと判断。
 しかし、不動産バブルの崩壊により、個々のコンドミニアムのユニットは思った値段で販売できる状況にはなく、短期間で全ユニットを完売させ換金するためには激安価格で叩き売るしかないことが見えてくると、コンドミニアムとして完成させることを断念。
 そこで思いついたのがホテルへの計画変更だ。コンドミニアムとして完成させるよりもホテルにしたほうが換金に有利との判断だ。
 そんな紆余曲折を経て、2010年にカジノホテルとして何とか完成にこぎつけたわけだが、銀行がカジノホテルを持ち続けることは本業ではないので、買い手を探す必要が出てきた。
 一時期、両となりのベラージオとアリアホテルを所有する MGM社が、買い手として名乗り出そうになったこともあったが、同社も同様にリーマンショックで資金的な体力を失っており、買収は断念
 そのあとさらにさまざまな交渉などを経たあと、結局現在のオーナーである Blackstone Group の手に渡ることになった。
 とはいえ、彼らも投資ファンドであるため、いつまで所有し続けるかわからない。最近また MGM社が買い取るのではないかとの噂も出てきている。

 このようなドタバタ劇を聞かされると、経営も不安定のように見えてしまいがちで、利用者としては不安な気持ちになってしまうかもしれないが、それはまったく心配無用だ。利用には何ら支障がないようにきちんと運営されている。
 結果的に、このコンドミニアムからホテルへの変更は、利用者にとってはいいことずくめだったという現実を受け入れ、このホテルの抜群の利便性を大いに享受すればよいのではないだろうか。

良いところ
 上記の通り、もともとはコンドミニアムだったため、一般のカジノホテルとは違った部分がいくつもある。
 たとえば、全室がそうなっているわけではないものの、多くの部屋において、キチネット(簡易キッチン)やバルコニーが付いている。またベッドルームやリビングスペースも総じて広く、浴室も同様だ。

 よいことは客室だけではない。建物全体も一般のカジノホテルとは大きく異なっている。それは人々の動き、つまり館内における動線「垂直移動」を前提に設計されているということ。
 一般のカジノホテルにおいては、宿泊客にできるだけ長時間カジノ内に滞在してもらいたいがために、1階にあるカジノと同じフロアにレストラン、劇場、プール、ナイトクラブ、宴会場などを配置し、さらにフロントロビーから客室へのエレベーター乗り場までの移動も、カジノ内を通過しなければ行けないように、わざわざ対角線上に配置するレイアウトになっているのが普通だ。
 結果的に、どこへ行くにも徒歩での水平移動の距離が長くなりがちで、それがラスベガスのカジノホテルにおける標準設計として、利用客にも受け入れられてきた。
 一方、このコスモポリタンの場合、当初の予定がコンドミニアムだったため、動線は垂直移動が原則。具体的にはレストラン街、ショッピング街、プール、ナイトクラブ、劇場、宴会場のすべてが、カジノとは異なる階に配置されることとなった。
 その結果、移動は徒歩ではなくエレベーターということになり、自力での移動距離は極めて少なくて済む。駐車場も地下にあるため、水平移動することなくエレベーターで直行可能だ。

 このようなことは日本のホテルでは当たり前のことなので、特に大きなメリットと感じないかもしれないが、ラスベガスのカジノホテルを一度でも体験した者にとっては、これがどれほど画期的なことであるかわかるはずだ。
 カジノの喧騒にふれずに客室から直接レストランに行けるホテルなど、この街にはほとんど存在しない。PARK MGM(2018年春まではモンテカルロホテルと呼ばれていた)はかなり便利な使いやすいレイアウトで知られているが、それでも水平移動が原則の設計になっている。
 というわけで、健康のため歩数を少しでも増やして運動をしたい、という人には期待はずれのホテルかもしれないが、大多数の人にとっては、ラスベガスでは異例ともいえる便利な造りになっているホテル と考えてよいだろう。

 じつは建物の構造だけでなく、立地条件も抜群だ。通称「フォーコーナズ」と呼ばれるストリップ大通りとフラミンゴ通りの交差点を街のど真ん中とするならば、ベラージオ、バリーズ、シーザーズパレスなどのほうがそこに近いことになるが、この3つのホテルには広い前庭がある。つまり具体的には、ベラージオの場合、その前庭に大きな湖が、バリーズの場合は商店街が、シーザーズパレスの場合、屋外簡易シアターや広場があり、客室から街へ出るまでにはかなりの時間を要する。
 一方、このコスモポリタンには前庭が一切ない。館内から一歩踏み出せば、そこはもうストリップ大通りだ。実際に滞在してみればわかるが、この違いは決して小さくない。

 ストリップ大通りといえば車線がいくつもある巨大な道路。位置によって多少の増減はあるが、コスモポリタン前の車線の数は片側6車線、合計12車線、左折レーンが増やされている部分では片側7車線のところもある。参考までに、ニューヨーク・ニューヨーク前の交差点は片側8車線になっている部分も。
 話が車線数に飛んでしまったが、地上の横断歩道を渡るには、信号待ちをしなければならないばかりか、人ごみをかき分け急いで渡る必要がある。歩道橋も上り下りがあり何かとめんどくさい。
 ところがなんとありがたいことに、コスモポリタンの飲食街である2階のフロアには、向かい側のプラネットハリウッドホテル側に渡るための歩道橋が直結している。つまり地上に降りることなくストリップ大通りを渡れるというわけだ。
 さらに言うならば、コスモポリタンの南側にも2階に直結した歩道橋があり、アリアホテルおよび超高級モール「クリスタルズ」へも地上に降りることなく行けるようになっている。

 客室の窓から(バルコニーから)の景色も他のホテルと比べると総じて良いということも付け加えておきたい。特の高層階の北側に面した部屋からの景色は、ベラージオの噴水ショーが見えるなど抜群だ。仮に南側の部屋になったとしても、アリアホテルなどを含むシティーセンターが見える景色で、他のホテルにおける裏側の部屋の景色よりは遥かにまともな景色が期待できる。

 というわけで、客室内が広く、館内の移動も楽で、街へ出るのもすぐ、道を渡るのも簡単、景色も良い、という5拍子そろった抜群の利便性を誇っているのがこのコスモポリタンということになる。

悪いところ
 宿泊料金が高いこと、それにつきる。日によって異なることもあるが、だいたいの日において、ベラージオ、ベネチアン、シーザーズパレス、ウィンなどの高級ホテルよりも高い。

 大した問題ではないが、正面玄関前の車寄せの部分が狭いので、タクシーやウーバーを利用する際、何かとごちゃごちゃしており、さわがしいのが難点といえば難点か。といっても、一般の宿泊者がその部分を使うのは、到着時と帰るとき以外にはあまりないので、それほど気にする必要はないだろう。ちなみにその正面玄関はストリップ大通り側から見て反対側に位置している。

雑情報
 このコスモポリタンは同じ高さ(184メートル)の超高層ビル2棟で構成されており、その位置的な理由から、通称 West Tower(西棟)、East Tower(東棟)と呼ばれていたが、近年それぞれ Chelsea TowerBoulevard Tower と命名された。
 わかりやすい名前をなぜわざわざ変えたのかはともかく、どうせ宿泊するなら東棟ほうがよい。理由は単純で、ストリップ大通りに近いから。つまり東棟のほうが、街に出入りする際の歩く距離が短くて済む。ちなみにチェックインカウンターは西棟のほうに近い。
 とはいえ、どちらの棟も近接しており位置的に大差ないのであまり気にする必要はないだろう。というのも、仮に西棟だったとしても、ストリップ大通りへのアクセスは、ベラージオ、バリーズ、シーザーズパレスなどと比べると遥かに便利で、特に大きな不便を感じることがないからだ。

 このコスモポリタン、英語の意味が「洗練された国際的な都会人」ということが理由ではないだろうが、ここのナイトクラブ MARQUEE はベガス屈指の人気を誇っており、イケている男女のクラバーが集結することで知られている。
 また、夏期限定ではあるが、ナイトクラブの屋上デッキのプール施設でデイクラブも開催。自称「都会派」の(つもりでいる?)若い男女が水着姿でプールに集結し、昼からオトナの世界を満喫しているので、興味がある人は足を運んでみるとよいだろう。

 奥まった怪しげな場所に(もちろんカジノフロアではない階)、「Rose. Rabbit. Lie.」と呼ばれる、小劇場のような会員制ダイニングルームのような酒場のような、都会派男女のための不思議な空間があるので、これも行ってみるとよい。どんなショーやイベントが行われているかについては、そのつど確認する必要があるが、会員制ではないので、変な服装をしていない限り入場可能なはずだ。

ホテルのグレード ★★★★★
 ラスベガスのカジノホテルとしては、最高級グレードということで異論はないはず。

立地条件 ★★★★★
 立地条件は、前述の通り超一等地にあり申しぶんない。すぐ目の前に位置するベラージオホテルの噴水ショー、パリスホテルのエッフェル塔や凱旋門、プラネットハリウッドホテルのミラクルマイルなどはいうにおよばず、ミラージュホテルの火山ショー、LINQプロムナードの大観覧車、フォーラムショップスなどへも徒歩で行くことが可能。南方面への移動も、館内直結の歩道橋でアリアに行けるようになっているなど、総じて恵まれた立地環境にある。

バス停の位置 ★★★★
 南北に長いストリップ大通りの移動に欠かせないのが公営バス。(運賃は、発行時刻から2時間有効な乗車券が6ドル、24時間有効券が8ドル、72時間有効券が20ドル。バス停にある自販機で購入可能)
 すべてのバス停に停車する2階建てのバス DEUCE と、主要のバス停にしか停車しない急行の2連結バス SDX の2系統があるわけだが、DEUCE は停車回数が多すぎ利便性が悪いので、交通手段ではなく、むしろストリップ地区の景色を眺めるための遊覧的な乗り物と考えるべきだろう。
 結局、多くの場合、SDX を使うことになるわけだが、幸いにも、DEUCE のみならず SDX が停車するバス停もコスモポリタンのすぐ近くにある。
 そのバス停の位置は、南方向に行く路線の場合、コスモポリタンとベラージオの間にある交差点のところ。北行きの路線は、その交差点をプラネットハリウッドホテル側に渡って(信号機あり)少し左に行った、パリスホテルの前の歩道に面したところ。
 ちなみに、人気のショッピングスポット「Premium Outlets North」へは、その北行き路線の SDX に乗ればよい。猛暑の夏に人気の室内アウトレット「Premium Outlets South」へは南行の SDX で行くことができ、とにかくコスモポリタンは、バス停に関しては利便性が極めて高い。
(DEUCE、SDX は、それぞれの路線に付けられた愛称。そのバス停に SDX も停車するのか、それとも DEUCE だけしか停車しないのかは、バス停に立っている小さな看板を見れば、それぞれのロゴマークが描かれているのでわかるようになっている。多くのバス停には DEUCE のマークしか描かれていない)

ショッピングの利便性 ★★★★
 「フォーラムショップス」、「ファッションショーモール」、「グランドキャナルショップス」などの大型ショッピングモールはストリップ地区の北寄りに位置しているため、これらの場所にひんぱんに出かける予定の者にとって、コスモポリタンはやや南すぎるといえなくもない。
 それでもストリップ大通りを渡るだけの(館内の2階と直結している歩道橋がある)プラネットハリウッドホテル内には、庶民的なショッピングモール「ミラクルマイル」があり、同じく別の歩道橋で渡るだけの場所に超高級ショッピングモール「クリスタルズ」があるので、決してショッピングに不向きなホテルではない。
 また、飲み物など、滞在中に必要な雑貨類の購入に関しては、歩道橋でプラネットハリウッド側に渡るだけのところに Walgreens(全米規模の大型ドラッグストアのチェーン店)があるので、何ら不便を感じることはないはずだ。(館内にある小さなコンビニはべらぼうに高い)
 さらに、「ミラクルマイル」内には、みやげ物を買う際のショップとして日本人観光客から絶大なる支持を集めている ABC Stores(ハワイで多店舗展開をしているコンビニスタイルのギフトショップ)もある。

レストラン ★★★★★
 レストラン街はカジノフロアの上の階にあり、各種さまざまな店が軒を並べている。
 一般的に高級ホテルでは、そのホテルの格に合わせた高級店ばかりが出店している傾向にあるが、ここではフレンチ、イタリアン、シーフード、ステーキを始めとする高級店はもちろんのこと、カジュアルなハンバーガーショップや中華、そして近年話題となっているエッグスラットの店、さらにはラーメン店Momofuku)もあるなど、ジャンル的にも価格帯的にも選択肢の幅が広く、多様性への配慮がうかがえる。
 また、2018年秋、今までスポーツブック(スポーツの試合結果にお金を賭けるカジノの一部門)だった場所を改装し(スポーツブックは1階に移動)、カジュアル店の集合体 BLOCK-16 を新設するなど、飲食部門の拡充に余念がない。ちなみに、その BLOCK-16 には、ラスベガスの地元民向けに多店舗展開している和食店が、手巻き寿司の専門店(Tekka Bar)として出店。結局、ラーメンのみならず寿司も楽しめるようになるなど、このホテルは日本の味に恋しくなった際の駆け込み場所としても重宝しそうだ。

ハネムーン ★★★★
 ハネムーンのカップルに向いているホテルかどうかという意味では、宿泊料金を気にしない限り、このコスモポリタンは、一生に一度の(そうでない人もいるが)思い出の旅にふさわしいホテルといってよいだろう。
 ただ、ホテル全体のイメージが、高級シティーホテルのような印象が強いだけに、旅慣れた都会的な感覚のカップルには向いているものの、そうでないカップルには、のんびりしたリゾート気分でくつろげるベラージオなどのようなテーマホテルのほうがよいかもしれない。
 テーマホテルのほうがのんびりしているという具体的な根拠はまったくないが、だれがどう見てもコスモポリタンよりもベラージオやパリスのほうが「のんびり感」が漂っているような印象を受けるはずだ。

レンタカー利用者 ★★★★★
 レンタカー利用者にとって、このホテルは、意外とメリットが多い。
 たとえば、すでに述べてきた通り、客室棟の真下に位置する地下に駐車場があるため、エレベーターによる垂直移動だけで行き来できるということ。これは、比較的駐車場が使いやすいとされる PARK MGM でも成し得ないことで、大いなるアドバンテージといってよいだろう。
 ちなみにラスベガスの大型カジノホテルのほぼすべてにおいて、駐車場施設は、客室棟とは別の離れた場所に配置されているため、水平移動を必要としており、例外はこのコスモポリタンパラッツォだけとなっている。
 もうひとつこの駐車場のいいところは、混雑しやすいストリップ大通りを通ることなく、西側に抜ける裏道を使って高速15号線方面に行けるということ。ただこの道は、一般観光客にはあまり知られていない道なので、事前によく勉強しておいたほうがよいだろう。
 なお、地下駐車場への進入路と、ホテルのメインロビーへ通じる道がほぼ共通になっており、道幅も狭くなっている部分があるので、出入りに際には接触事故とか道を間違えたりしないよう注意したい。

子連れファミリー ☆☆☆☆
 子どもたちに負担をかけたくないので歩く距離をできるだけ少なくしたい、という意味では子連れファミリーがこのホテルを利用したくなる気持ちも理解できなくはないが、都会的な洗練された大人が、大人の空間を楽しみに来る場所なので、ホテルのコンセプト的には子供の利用は論外と考えるべきだろう。


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