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ラスベガス


 砂漠の中の「不夜城」といわれているラスベガスの歴史はそれほど古くない。市制こそ 1905年だが、ネバダ州がギャンブルを合法化したのは 1931年のことで、当時のラスベガスにはまだ何もなく、今日のようなにぎわいを見せ始めたのはせいぜいここ 50〜60年の話だ。
 発展のきっかけとなったのはもちろんフーバーダムの建設だが、完成直後の 1930年代後半においてはまだ特にめざましい発展が見られたわけではなく、ラスベガスは第二次世界大戦が終了するまでは人口2万人にも満たない小さな町にすぎなかった。(ちなみに 2015年における周辺都市も含めたラスベガスの人口は 200万人を超えている)

 戦後になっても「フラミンゴ」などが開業したものの、40年代はごく限られた採鉱者や軍関係の兵士、それにダム関連の作業員たちがささやかにギャンブルを楽しむ程度のローカルタウンにすぎず、今日のような国際観光都市になったのは、それよりもかなりあとのことだ。
 そうした黎明期を抜け出し、ラスベガスが本格的に開花し始めたのは、デザートイン、サンズ、サハラ、リビエラなどのカジノホテルが次々とオープンした 50年代に入ってからのことで、現在のような形態のラスベガスが形成され始めたのはそのころと考えてよいだろう。

 その後の発展はめざましく、またたくまに世界を代表するエンターテインメント・シティーへと変貌していくことになるわけだが、その原動力となったのがハリウッド・スターや芸能関係者らの努力によって作り上げられたラスベガス芸能文化で、エルビスプレスリー、フランクシナトラなどに代表されるエンターテインメントがこの街のビジネスモデルとなり、世界中から観光客を集めることに成功した。
 しかしながらショービジネスだけでこの街が発展してきたわけではない。カジノの存在こそが今日の繁栄を支えてきたことは疑う余地のない事実で、その結果、これまではラスベガスといえば「ギャンブル」というイメージがあまりにも強く、決して健全なイメージの街ではなかった。

 それを大きく変えたのが 90年代に入り続々と誕生したテーマパーク型巨大ホテル群で、その出現はラスベガスを ギャンブルの街 から、家族ぐるみで楽しめる 総合エンターテインメント・シティー へと変えていくことになった。
 実際に、MGMグランド・ホテルに隣接する空き地にはディズニーランド型の遊園地が建設されたり、サハラ・ホテルには最新鋭のローラーコースターが設置され一世を風靡した。
 しかし、現在も基本的には「カジノ一辺倒からの脱却 & 総合エンターテインメント・シティー」という流れに変わりはないものの、90年代後半に入ってから「子連れファミリーを相手にしていたのでは商売にならない」 というカジノホテルが増え始め、2000年以降、しばらく続いてきたファミリー路線の見直し機運が高まり、実際に無料や格安料金で提供されてきた子供向けアトラクション施設が次々と縮小もしくは閉鎖に追い込まれていった。(MGMの遊園地もサハラのローラーコースターも今はない)
 代わりに増えてきたのが、ナイトクラブ、高級ショッピングモール、カリスマシェフなどによる高級レストラン、高層コンドミニアムなどで、近年は確実に オトナ向けの高級総合総合エンターテインメント・シティー を目指す方向に変化しており、現在それのための大改革として、高級ナイトクラブ、デイクラブ、高級レストラン、高級ブランドのための商業施設などの新設や改築がいたるところで進められている。

 それらトレンドとはまったく別に、ラスベガスは コンベンション都市 としての側面も持っている。(右の写真はワールドマーケットセンター)
 以前からトレードショーや国際見本市などが多い都市として知られていたが、90年代以降のホテルの建設ラッシュにともなう宿泊施設の急増が、コンベンションの誘致に拍車をかけており、開催イベント数においても参加人数においても、すでにシカゴ、アトランタ、ニューヨークなどを抜き、世界一のコンベンション都市に成長している。
 実際に会場スペースの部分においても、ラスベガス・コンベンションセンター(写真右)、サンズ・エキスポ、マンダレイベイ・コンベンションセンター、ワールドマーケットセンターなどの巨大施設、さらには各ホテル内にある大型ボールルームなど、すでにその総床面積は世界最大で、その上さらに複数の大型コンベンション施設の新設が計画されるなど(旧リビエラホテルの跡地はコンベンション施設に生まれ変わる予定)、拡大の勢いはとどまるところを知らない。
 ラスベガスの強みは、宿泊施設とコンベンション施設の距離が非常に近いこと、空港の利便性(市内からわずか10分の距離)、エンターテインメント性が高いため人が集まりやすいことなど、都市構造そのものにも起因しており、一朝一夕に他の都市に逆転されることはないだろう。
 また、コンベンションで人が集まれば、結果としてホテル、レストラン、カジノなどの収益も伸び地元経済が活性することから、官民一体となったコンベンション誘致のための活動がさかんで、ラスベガス観光局のこの分野における予算は世界一といわれている。
 ただ、インターネットの普及に伴い、新製品の情報などは自宅にいながら手に入れることが可能となり、新製品と人が一堂に会する国際見本市のようなものは今後斜陽化するのではないかとの見方もあるなど、コンベンション都市としてのラスベガスの今後は不透明な部分も少なくない。

 さて、ラスベガスは世界遺産も含めた大自然観光スポットのゲートウェー都市でもある。
 日本人にとってはグランドキャニオンばかりが有名だが、アメリカ本土の西半分だけでも以下のようなすばらしい世界遺産が9ヶ所もあり、その中心にあるのがラスベガスだ。(赤い★印がラスベガスの位置。以下の各番号は地図の位置に対応)

  グランドキャニオン国立公園 (アリゾナ州)
  ヨセミテ国立公園 (カリフォルニア州)
  イエローストーン国立公園 (ワイオミング州など)
  カールズバッド国立公園 (ニューメキシコ州)
  メサ・ヴェルデ国立公園 (コロラド州)
  レッドウッド国立公園 (カリフォルニア州)
  オリンピック国立公園 (ワシントン州)
  チャコ文化国立歴史公園 (ニューメキシコ州)
  タオス・プエブロ (ニューメキシコ州)

 また世界遺産にはなっていないが、デスバレー、ザイオン、ブライスキャニオン などの国立公園のゲートウェー都市にもなっており、さらにモニュメントバレー、アンテロープキャニオン、セドナ などの人気観光スポットもラスベガスからアクセスすることになる。

 カジノやナイトショーを含む総合エンターテインメント、それにコンベンション、そして大自然観光がラスベガスの特徴であることはここまでに述べてきたが、その他にもラスベガスは「世界一」、もしくは「その業界の総本山」といった側面を持っている。
 たとえば、ボクシングの聖地であることは広く知られるところで、世界的なボクサーによる超ビッグマッチのほとんどがラスベガスで開催されている。
 ナイトクラブの世界でも当地が総本山で、人気や売上の世界トップ10 のクラブのほとんどは在ラスベガスのクラブだ。必然的に、世界中のDJにとってもラスベガスは世界最高の舞台で、この街での出演は一流DJとしてのステータスになる。(右の写真は、世界的に有名なDJ スティーヴ・アオキ氏が、人気ナイトクラブ Hakkasan にて、高級シャンペンを観客に吹きかけている場面)

 ウェディング業界でも当地が聖地で、ストリップ地区とダウンタウン地区の中間地点付近には、さまざまなスタイルのウェディング・チャペルが多数存在している。
 他の都市と比べて婚姻に関する役所の手続きが簡単とされ、実際に利用者の利便に配慮してか、婚姻届などを受け付ける役所の窓口も深夜12時までオープンしている(以前は24時間オープンだった)。まさに官民挙げてのサポートで、不夜城ラスベガスの面目躍如といったところか。

 スポーツの分野では、大規模な会場や宿泊施設が充実していることから、ボウリング、乗馬・馬術、ロデオの世界的な大会が毎年ラスベガスで開催され、当地が総本山とされている。
 また、フーバーダムによってせき止められて出来上がった巨大な湖「レイク・ミード」(写真右)が市内から車で1時間ほどの場所にあることから、バス釣りのメッカとしても知られ、そのレイクミードは世界中のフィッシング・ファンにとっての憧れの聖地だ。

 コンベンションと重複するかもしれないが、国際的な会議が毎年開催されることからハッカー集団の聖地でもある。インターネットの普及とIT技術の進化に伴い、高度な知識を持ったハッカーは各国政府や大企業などから引っ張りだこで、その分野においてもラスベガスは知る人ぞ知る世界の中心地だ。
 同じくコンベンションと重複するが、家具業界の聖地でもある。家具業界は、商品のサイズという意味で、保管倉庫も展示も特殊な環境が必要なことから、長い間、ノースキャロライナ州のハイポイント市が世界の中心地だったが、2000年以降、ラスベガスが家具業界専用の巨大な施設「ワールドマーケットセンター」を複数棟建設したため、今では存在感でハイポイント市を凌駕している。

 意外と知られていないのが 金(Gold)だ。ラスベガスが属しているネバダ州は別名「シルバー・ステート」ではあるが、実際には銀よりも金が有名で、2013年のデータによると 169トンを産出している。これは全米50州の産出量の 75%を占め、アメリカが世界第3位の金の産出国となり得たダントツの貢献州だ。
 ちなみにこの 169トンという数字は、全世界の年間産出量の 6% を占め、ネバダ州だけで、広大な国土を持つオーストラリアや中国、それに南アフリカ共和国に次ぐ世界第4位の産出国にランクされるというから驚きだ。
 そのようなわけで、金鉱山関連のビジネスは、カジノホテル業界に次ぐネバダ州第2の巨大産業となっている。

 最後にラスベガス市の人種別の人口構成比は、白人 46%、ヒスパニック系 33%、アフリカ系 11%、アジア系 8%、その他 2%。以下はラスベガスおよびネバダ州に関する統計データ。

 ラスベガスおよびネバダ州に関する統計データ (2014年) 
 ホテル数(モーテルも含む)  約 220
 その合計客室数 約 151,000室
 広義の区域のラスベガス市の人口 約 95万人
 ノースラスベガス市、ヘンダーソン市も含めた都市圏人口  約 210万人
 ネバダ州全体の人口 約 284万人


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