週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1999年12月29日号
テロ不安で大晦日の混雑は例年以下 ?!
 数ヶ月前まで誰もが大混雑を予想していた大晦日のラスベガス。ところがその日が近付くにつれ “異変” を伝える報道が目立ち始めた。今では多くの関係者が 「今年の大晦日はそれほど人が集まらない」 と予想している。

 まず先陣を切ってこの異変を認めたのは他でもないラスベガス市観光局だ。大晦日の来訪者数をこれまでの予想値 75万人から 24万人へと大幅に下方修正した。
 “Visitor” という言葉で表現されている 「来訪者」 の定義がいまひとつハッキリしないが (ラスベガス郊外に住む地元民がストリップの歩行者天国へ行く場合も来訪者としてカウントされるのかどうか不明)、立場上、楽観的数字で観光業界を盛り上げなければならない観光局がその数値を 3分の1 に変更したことの意味はあまりにも大きい。75万人という数字を当て込み皮算用していた観光業者にとっては大きな痛手であるにちがいない。

 2000年祝賀ムードの “特需” を見込んで 「1泊 2000ドル」 などという強気のビジネスをもくろんでいた主要ホテルも今ではすっかり弱気になっている。多くのホテルがすでに大晦日の宿泊料金を 200ドル台に設定しており、これは昨年の大晦日とほぼ同じ水準であるばかりか、翌週の週末(1月8日)と比べても同等かむしろ安いぐらいだ。1月8日は大型コンベンションが予定されているとはいえ、1000年に一度の特異日の需要が通常の週末と同じというのはやはり異変といってよいだろう。

 人が集まらないことを認めているのはホテルだけではない。ひとり $200〜$400 程度で “ミレニアム記念ディナー” なる便乗商法をもくろんでいた多くの人気レストランも今ではその宣伝を完全に引っ込めている。もはや今年の大晦日は人出という意味ではまったく特異日ではないということのようだ。

 ではなぜこれほどまでにラスベガス人気が低下しているのか。
 多くの業界関係者は、「年末のホテルは異常に高い」 という既成概念が広く定着してしまっていたため、と分析している。
 これは便乗商法をもくろみ法外な料金設定をしていたホテル側に責任があるわけだが、一方で、航空便などの交通アクセスやホテルの客室キャパシティーに限界があることを無視して、例年の4倍近い 75万人などという根拠のない数字を発表してしまった観光局や、その数値をなんの疑いもなく報道していたメディア側にも責任があると、不満をあらわにする業界関係者も少なくない。

 しかし今回の人気の急降下は法外な宿泊料や無責任な予想値の発表ばかりではなさそうだ。じつは 12月に入ってから FBI (米国連邦捜査局)などがラスベガスがテロ攻撃のターゲットになっていることをさかんに警告しており、その種の報道が来訪者の減少に拍車をかけていることは多くの者が認めるところだ。
 FBI によると、中近東などの反米過激派グループが年末の繁華街をねらったテロ攻撃に出る可能性があり、すでにシアトルとバンクーバー間のカナダ国境検問所で爆発物を所持した過激派グループの一味が逮捕されたりしている。また、まったく別の過激派集団がシアトル発ラスベガス行きのアラスカ航空に乗るとの情報が数週間前から流れており、当局がアラスカ航空に特別捜査の協力を依頼していることが 26日明らかになった。

 FBI によると、恐いのは政治的過激派グループだけではないという。カルト集団も非常に危険であることを FBI は各メディアを通じて大々的に警告している。
 カルト集団の多くは、その教典の中で 1999年にこの世が終わるようなことを説いており、2000年がスムーズに来てしまうことは教団自体の存在を否定しかねない重大な出来事となってしまう。したがって教祖は教団の矛盾をつかれる前に集団自決やこの世の終わりの到来を意味するような破壊行為に出て日頃の言動とのつじつまを合わせる必要があり、それを実行しかねないカルト集団が世界中に無数に存在しているという。
 そのような報道が増えるにつれ、サリンなどから身を守るための毒ガスマスクの人気が高まっており、28日付のラスベガスの有力新聞ラスベガスリビュージャーナル紙によると、$100 前後の軍事用毒ガスマスクが飛ぶように売れているという。ちなみにオンラインで毒ガスマスクを販売している GasMask.com 社 (http://www.gasmask.com) にはラスベガスなどテロ警戒都市に住む一般市民から前年度比4倍増の注文が殺到しており、今月だけでも 30万個の毒ガスマスクが売れるという ( 30万という数字は信じがたいが、ラスベガスリビュージャーナル紙の報道ではそのようになっている)。

 芸能人なども、「2000年は妻とシャンペンを飲みながら自宅で迎えたい」 などとコメントする者が増えてきており、一般市民の間でも 「今年の大晦日は危険な繁華街よりも自宅で家族と」 というのが主流派となりつつある。ちなみに AP通信が発表したところによると、今年はハリウッドスターなど著名人の多くが年末の外出を控え自宅で新年を迎えるという。

 すでに厳戒態勢に入っているラスベガス国際空港では、当局が荷物検査やボディーチェックを厳しく行っており、実際にテロがラスベガスで発生する確率は極めて低いと思われるが、年末ラスベガスで過ごす予定の者は、あまり神経質になる必要はないものの、テロの危険性が報道されている事実だけでも頭の片隅に置いておいて損はないだろう。


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